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第四章

消えた彼女⑤

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「実は、彼女と付き合ってたんです。ですが、今回お見合いの話がきて、条件が良かったので結婚することに決めました。だから、彼女には今までより会う回数が減ってしまうと話したんです」
「「……」」

 すでに怜の怒りは最高潮だが、陸斗がなんとか最後まで話を聞くように制している。

「そこで、彼女が急に怒り出しまして、浮気相手にも不倫相手にもなるつもりはないと、退職届を叩きつけて辞めました。引き継ぎもせず。そんな無責任な女だとは思いもしなかった」

 この言葉を聞いた瞬間、怜は悠太の胸ぐらを掴み思いっきり殴った。すごい音と共に悠太は床に倒れ込む。一発では足りないと更に殴りかかろうとする怜を陸斗が止める。

「怜、止めとけ。こいつを殴るだけ無駄だ。こんな腐ったやつを相手にするな」
「悠太どうしたの?大丈夫?」

 音を聞いた亜美がノックもなしに入ってくる。

「無責任だと?お前みたいな常識の欠落している男には、腹黒女がお似合いだ。今後一切さくらに関わるなよ。さくらに何かあったら田崎ホールディングスもおしまいだ」

 悠太は、怜の言葉に身震いする。怜なら冗談ではなく、簡単に潰せるだろう。敵に回してはいけない人を敵に回した。自分の選択肢が間違っていたと気づいても、もう遅い。

 怜が冷酷な笑みを残し田崎ホールディングスを後にした……。

 怒り冷めやらぬまま、待っていた神楽坂の車に乗り込んだ。これから、どうしたらいいのか見当がつかない。

「怜どうする?お前の様子だと連絡先も交換してないよな?」
「ああ」
「住まいだけでもわかったら……。俺が調べてみるから待ってくれ。ただ、今は個人情報が厳しいから時間が掛かるかもしれない」
「頼む」

 必死に頑張って帰国した怜に待ち受けていた現実。陸斗まで切なくなる。しかも、パーティー後の話を聞いて、当日だけでもショックだったはずのさくらへの悠太の言葉に、怜が思わず手が出たのも頷ける。

 さくらはどこにいるのか……。

 そして、さくらの住まいを見つけた頃には、彼女は本当に消えてしまっていた。

 さくらの住んでいたマンションは解約されていたのだ。不動産会社がたまたま神楽坂グルーブの子会社だった。担当者に聞くと、電話で荷物の処分と解約の連絡があったそうだ。

 手掛かりが全くなくなった――。

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