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第六章

二年の歳月①

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 田崎のパーティーでさくらに惚れ一夜を共にし、帰国したら彼女とこれからのことを話し合おうと思っていた。

 ところが現実は、仕事を辞めて住まいも解約され行方が分からない。途方に暮れる。

「これからどうする?」

 陸斗に聞かれても、怜の答えはひとつしかない。

「一生掛かってもさくらを探す。諦めるなんてありえない」
「……。そんな簡単に見つかるとは思えないけど」
「誰になんと言われようが、俺の相手はさくらしかいない」

 ここまで怜に言わせるのだ。どんな縁談がきても、どんな女性が近寄ってきても取り付く島もないだろう。

「田崎の方はどうする?」
「暫くはほっとけ。今は父親が仕切ってるからいいが、あいつの代になったらダメだろう。その時が来たら、うちとは縁を切ればいい。ただ、切るにもそれなりの理由がいる。監視はしといてくれ」
「ああ。あいつらだけ結婚してもいいのか?」
「アホとクソ女だろう?どうせ上手く行くわけない。ヤツも直ぐに腹黒女に気づいて後悔するさ。さくらを選んだことは褒めてやるが、最終的に選んだのがあれだぞ」


****

 さくらが居なくなってから、ニ年の月日が経った。

 あの後、悠太が副社長に就任し、半年後には来栖亜美と結婚式を挙げた。

 だが、そこからが転落の一途を辿っている。さくらの抜けた穴を補うために、悠太の秘書として働き始めた亜美は、結婚してもそのまま居座り続け副社長夫人として、威張り散らしているのだ。本来なら、社長が注意するところだが、タイミング悪く体を壊し、実質副社長の悠太が今は田崎の指揮をとっている。

 仕事が忙しい悠太と、悠太の目の届かないところで威張り散らし、更には贅沢三昧の亜美。

 田崎の業績は右肩下がりで、止まるところを知らない。

 そこに、亜美が嫌で辞めていく社員が続出する。最初は、社員が辞めていく理由がわからなかった悠太だったが、あまりにも続くので理由を調べると、自分の妻が原因だと知り愕然とする。

 この時になって、やっと悠太は亜美の本当の姿を知るのだった。

 神楽坂から傘下としての契約を解除され、田崎ホールディングスの行く末は見えている。

 後悔しても、もう手遅れだった……。
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