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第十二章

弟と邪魔者③

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「お前が落ち着け」
「落ち着いてられるか。何?結婚?女性と?」
「当たり前だ」
「誰?どこの誰なんだ?兄さんのお眼鏡に叶う女性なんかいるのか?」
「近々会わせる」
「はあ?沖縄に来て出会ったのか?結婚って早すぎないか?」
「落ち着け。早すぎない。いや遅いくらいだ。最近出会ったわけではない」

 もう、今は何を言われてもキャパオーバーな陽は、とにかく気持ちを落ち着け、女性に会って見極めようと思う。兄のことだから、神楽坂の金や地位目当ての女性は選ばないだろう。

 一瞬にして江藤の存在を忘れ去るほどの衝撃を受けた。

 だが、江藤が現れたことで、事態はややこしくなって行くのだ。怜に見初められたい一心でここまで来た女は、嵐を巻き起こす。

 疫病神を連れて来てしまった……。

 沖縄入りをしたばかりの企画開発部のメンバーは、明日まではフリーだ。みんなチェックインをしたあと好きに過ごしている。

 陽はもちろん怜と一緒に行動する。元々仲の良い兄弟で、陸斗も含めよく食事に行く。

「陽は何が食べたいんだ?」

 今日着いたばかりの弟に、夕食に食べたい物を聞く怜。陽と陸斗は驚く。今まで、怜は人に意見を聞くことなく何でも決めてきた。

「なんか、兄さんが優しい……」
「はあ?早く決めろ」
「あ、ああ。せっかく、沖縄に来たんだから沖縄料理?」
「なぜ俺に聞く。沖縄料理ね。陸斗」

 なぜか急に機嫌が良くなり、陸斗を見る怜に陽は全く訳が分からない。

「ああ、はいはい。彩だな。連絡入れとく」
「彩って何?兄さんの彼女??」
「はあ?何言ってんだ?沖縄料理を食べたいんだろう?」
「へっ?まさか店の名前?紛らわしい」
「まあ行ったらわかるよ」

 陸斗は、さくらや桂や彩葉の説明に関しては、全て怜に任せることにした。どのタイミングでどのように紹介するのか楽しみでもある。

 
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