運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜

第十八章

出産と結婚発表⑧

「さくら」

　舞台上から名前を呼ばれ、さくらは椿を抱っこし、怜の母が蘭を抱っこした状態で、桂も一緒に怜の横まで進む。

　会場のどよめきも、マスコミのフラッシュの音も最高潮だ。

「妻のさくらと息子の桂、双子の娘の椿と蘭です」

　怜からの紹介に、会場は一瞬シンッと静まり返った。目の前の出来事が信じられず、呆然としている。マスコミのフラッシュだけが、驚きのニュースに鳴り響き続けた。

　徐々に状況を理解した人から、拍手が湧き起こる。怜と少しでもお近づきになりたいと着飾って来た女性達からは、悲鳴が聞こえる。

　やっと、世間にさくらを紹介できた。これからは、さくらに寄ってくる男共をもっと堂々と追い払うことが出来ると、さくらに対する独占欲は収まるどころか、強くなっている。

　さくらは会場を見回し、改めて神楽坂家の、そして怜の凄さを知った。お客様の中に、さくらでも知る著名人がたくさん見える。

　ところどころから、妬みの視線を感じるが、怜に愛されていることに自信を持って堂々としていようと思った。

　予想通り、翌日の新聞各社やテレビやSNSでは、怜の結婚が大きく取り上げられた。

『冷酷王子が溺愛王子へ』

　などと、見出しを出すところもあるくらい、世間に大きな衝撃を与えた。

　併せて、神楽坂リゾートも注目の的だ。

　年中暖かい沖縄の地で、ウインタースポーツが体験出来る。これには、沖縄の島民が驚きと期待を寄せる。

　ゴルフにテニスにプールにグランピングにと施設も充実し、更には託児所も完備されている。

　もちろん、子供を中心に考えられたエリアも、今までにあるようでなかった年代別で考えられているアイデアが、話題を呼んでいる。

　レセプションパーティーの後、グランドオープン一ヶ月後からの宿泊予約も開始されたが、ものの数分で一年近くが埋まってしまった。

　リゾート内の施設、特に屋内人工スキー場とスケートリンクには、島民からの問い合わせが相次ぎパンク状態だ。

　宿泊客以外の一般利用は、島民の日を作るほどになっている。

　さくらの何気ないひと言だったが、神楽坂リゾートを成功に導く大きなひと言になった。