堕ちた貴族の復讐譚~バニーガールな魔術師から与えられた能力は、何度もで生き返る力だった

101

文字の大きさ
5 / 20
王国編

謁見

しおりを挟む
アルベールたちが通路を進むと、やがて大きな両開きの扉が見えてくる。
 扉の前には衛兵が二人、控えていた。
 彼らもアルベールたちに気づき、一歩前に踏み出してきた。

「ただいま御前会議の最中です。ご遠慮下さい」
 が、兵士たちの顔はアルベールの隣にいるのが、フィオナーレンだと気付くと顔色を変えた。
「務め、ご苦労様。でもね、開けて欲しいの」
「……申し訳御座いません。しかしながら、謁見が終わるまでは決して開けるなという規則ですので」
「その規則は陛下の子にも適応されるの? 緊急の用件だったとしても?」
「それは……」
「これによって損害が出た場合は、私は迷わずあなたちを告発するわ」
 王女によるその言葉が後押しになり、兵士たちは左右に避け、扉を開ける。
 重たい扉が開かれれば、謁見の間が広がった。
「……おい、あんまり無茶をするな」
 笑み混じりに言えば、フィオナーレンは「王女の特権よ」と少し得意げに答えた。

 入り口から玉座にまで敷かれた赤絨毯の上を進む。
 謁見の間の天井で光り輝くのは、ダイヤモンドで飾られたシャンデリア。

 突然の訪問者に、その場の誰もが口を噤み、しんと静まりかえった。
 そこには王国の文武百官が居並んでいる。

 アルベールはそこにいる人間たちに目をやる。
 王に一番近い順から言えば、高級貴族で侯爵でもある宰相のガリバルディ・グ・ショア。
 次いで本来は父のいるべき場所にいる、次席大将(アルベールの父は首席大将)で子爵のロッソ・マディス。
 他にも各職務大臣に、伯爵など貴顕が顔を揃えている。
 誰もが、アルベールの姿に唖然としていた。

 アルベールたちは右膝を折って、礼をする。
 玉座の上にいる男、リュート4世が目を剥く。
「ふぃ、フィオナーレン、何をしているっ!」
「何をしているとはどういうことでしょうか、父上っ。――アルベールが目を覚ましたので連れて来たまででございますっ」
 アルベールは王を真っ直ぐ見れば、王がたじろぐ。
「何があったのかフィオから聞きました。私の父が謀反を働いたなどということは事実無根にございますっ!」
 すると、宰相のガリバルディが前に出る。
「何を言うかっ。手紙に記されていた通り、洞窟には武器弾薬が揃っていたのだぞ。それが大きな証拠ではないか」
「その通りっ! しっかりと証拠も揃っているっ!」
 そう言ったのは、次席大将のロッソ。
 しかしそんな小物になどアルベールは目を向けない。
「帝国の策謀ではないのでしょうか? 帝国が父を覗くために為にそのような策を……」

 帝国とはハルヴァー帝国。
 蝶の形にも似ているデールドン大陸の西方を治めている軍事国家である。
 王国とはこれまで何度も戦火を交え、現在も戦争の真っ直中である。
 
 アルベールの声に、応じたのは宰相。
「アルベール殿。信じられない気持ちは分かる。しかし洞窟の場所は王都にも近く、そこにまで帝国の動きがあるとの報告はなく、そんな大規模な間諜の動きがあるとも聞いたことがない」
 アルベールは初めてそこでガリバルディやロッソを睨み付ければ、二人はたじろぐ。
「父上がいなくなったのに、随分と嬉しそうですね」
「馬鹿な!」
「何を根拠に!」
 ガリバルディとロッソは顔を真っ赤にして叫ぶ。

 二人にとって父ウンベルトは、目の上のたんこぶだ。
 百回戦えばまさに無敗。
 稲妻のような速さで用兵術で敵う者はいないという勇将――人々は雷神と読んだ。
 さらにウンベルトは行政や民政にも明るく、宰相などいらない。
 文武百官から絶大な信頼もある、王の右腕。
 プライドの高い貴族ほど嫌い、民衆ほど慕う。
 王よりも人気があったほど。
 
「父はこの国を愛し、守る……それだけを心を誓っていた。一体これまで何度帝国の軍を破ったのか。謀反などする理由はありません!」
 だが王の言葉は冷めていた。
「ともかく、この件についてはもう終わり。過ぎたことだ」
(叔父上。どうしてそんな冷たいのですか)
 同じ母から生まれた両者は王国の両輪と謳《うた》われるほど、仲が良かった。
「であれば、どうか、私に跡目を継がせて下さいっ。私がベルストラーザ公爵家の当主になります」
 宰相は笑う。
「謀反人の家族にそのまま位を継がせるなどありえん。爵位の剥奪はもう決まっている」
「お願いで御座います! 私に陛下への二心はありません! 私は……ううう」
 腹の痛みに右膝をついてしまう。
「アルベール!」
 フィオナーレンが寄り添ってくれる。
「父上、お願いいたします! どうか、アルに爵位を次ぐことをお許し下さいっ。アルは私の許嫁なのです! 爵位がなければ、周りがおかしく思いますっ!」
 王は首を横に振った。
「ならん。話はこれでお終いだ。下がれ」
「父上!」
 宰相が王に進言する。
「陛下。このような不逞《ふてい》の輩、放っておけば、どのような災いを呼ぶかも知れません。どうか、厳正な処罰を」
「落ち着け、宰相……。確かに本来であればアルベールも連座させるべきだが、フィオナーレンを苦しめたくはない。婚約は破棄とし、庶民として生きよ」
「父上! どうしてですかっ!?」
 フィオナーレンは反発の声を上げるが、迫ってきた衛兵が二人の間に割って入り、引き離した。
「……フィオ。俺は大丈夫だから!」
「いや! いやよっ! 私はアルを……」
「絶対戻って来る。それまで待っててくれっ!」

 アルベールは謁見の間から追い出される。
 扉を守っていた衛兵に笑われながらも背中を向けて歩き出した。

「あいつら、ひっどぉ~い!」
 いつの間にか、イザベラが肩を並べていた。
「とにかく汚名をすすぐ必要がある」
「どうするのぉ~?」
「……それは、分からないけど」
「ふふん♪」
「何がおかしいんだ」
「力を使えばいいじゃ~ん♪」
「あんなもの使ってどうするんだ。父上が謀反人であるという手紙をどうにかするには日が経ちすぎてる」
「じゃなくって~。死ねば一日をやり直せるんだからぁ、かなり無茶なことも出来るんだよぉ~? たとえば~……あの偉そうなオヤジたちをめちゃくちゃ脅しまくる、とか~」
 イザベラの提案は、思いの外よかった。
 確かにあの連中に対しては悪感情しかない。
 ならば、多少手荒な真似も出来るというもの。
 アルベールの顔に、イザベラが笑う。
「ふふ♪ あたしの提案にのる?」
「そうだな。やってみよう。失敗したら、やり直せばいい」
「えへへ~♪ さすが私が選んだだけあるぅ~♪ 話が分かるぅ~♪ でもさ~、どうしてそこまで親の無実を確信できるのぉ~? 本当に謀反をしてたかも知れないのにぃ~」
「それはない」
「ん?」とイザベラは首をかしげた。
「父上ならもっとうまくやる。ばれるような下手は踏まないさ」
 そのことをアルベールは確信していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...