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第1章

第1話 ロリっ子がいたよ ①

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「ふぁぁ」

 モニターから目を離し、手にしていたコントローラーをローテーブルの上に置く。

 グググとバンザイをするように伸びをして、ビーズクッションの上で俺は寝転んだ。

 ずぶぶと体がクッションに沈み込むのを感じながら、閉じた目を両手でもみもみ。

 目を開けて、埋もれたままふと首だけ動かし壁の時計を見ると……。

 ありゃ、日付け変わってるじゃん、思ったよりこのゲームはハマるよね、続けたい気もあるけど、お風呂も入れてないし、でも眠すぎだからセーブして今日は寝ちゃおっと。

 まあ夜更かしようが朝に起きなくても良いんだけどね。

 どうせ学校には行かないし……。

 ……いつからだろう、学校に行くのが辛くなって、校門をくぐれなくなったのは……。

 俺はぼーっと天井を眺めながら思い返す。

 確か中学校に入学して、もうすぐ初めての夏休みって頃だったかな。

 それまでは新しく友達もできて、遊ぶ予定も沢山あったはずなのに、どこで歯車がズレてしまったのか。

 突然だった、いきなり誰も俺と話どころか挨拶もしてくれなくなったっけ、それに……。

「はぁ」

 上半身を起こし、コントローラーでセーブを選択。

 カーソルを『はい』に合わせ、ポチっと押した瞬間――!

「ぬおぉぉおー! 目がぁぁー! 目がぁぁー!」

 某有名アニメ映画の台詞を口にしてしまうほど、液晶テレビの画面から光が――!

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ――テレビが光ってチカチカしていた目がやっとまともになってきた。

 まわりが見えるようになってきたけど……まっ白い床に後は空かな、白い雲が浮かんでいて、白い床を滑るように横へ流されている。

 それにビーズクッションに座っていたのに、なぜか床に座っていた。

『は~い♪ 皆さ~ん、いらっしゃいませ~、異世界への旅立ちの時間だよ~』

 そこに突然可愛らしい声が響いた。

 混乱していたのか思考が上手く働かなかったけれど、ビクッとなりながらも声のした方に目だけを向ける。

『……あれ? 元気ないなぁ~、せっかくみんなには良いスキルを選んでもらおうと思ってたのに~』

 ……え!? ちょっと待って、異世界!? スキル!? それにここどこ!? 
 それもだけどなんでロリっ子が宙に浮いてるの!? 可愛いけど、じゃなくてみんなって俺しかいなくない!?

『ん~? 君達には後の混乱を避けるため、お互い見えないし~、精神耐性をつけたから冷静になってるはずなんだけど~』

 コテっと首を傾げるロリっ子は、ふわふわっと俺の方に飛んでくる。

『それなのに……混乱してる子がいるみたいだね』

 つ~とその動きを目線で追い、俺の正面にまで来て、またコテっと首を傾げるロリっ子を見つめる。

 か、可愛い……っ! じゃねえだろ!

 俺は急いで浮いてるロリっ子から少しでも離れるように、全力であと退ずさろうとしたのに体が、いや、首すら動かない。

 な、なんなのこれ!  夢!? 夢なの!? それとも金縛りなの!? ねえそうでしょ!

『おかしいなぁ、騒がれると面倒だから声も出せず、体も動かないようにしてたのに』

 空中で真っ白なワンピースを着て、ふよふよ浮きながら、腕を組んで悩んでるような顔をしたロリっ子は『へぇ』と、何か納得したような顔で、透き通るような金色の髪の毛を人差し指にくるくると絡める仕草で今度はニコニコと笑い始めた。

 そして俺の方を向いて言葉を続ける。

『えっと、ロリっ子って僕の事が見えた君の名前は~』

 じぃ~っと俺を見つめるロリっ子。

 ……あっ! ロリっ子で僕っ子! 属性が二つも!

東雲しののめ 友里ゆうり君だね~、やっぱり面倒だし特別製の耐性スキルを付けちゃおっか』

 内心、ちょっとズレたところに興奮している気もしないでもないけど、ロリっ子はあろうことか、ゲームをしていて今晩は洗えてないボサボサ頭に手を置いた。

 ちょいちょいちょいちょい! なに触ってるの!

『よしよし、じゃあ君のスキルはロリキラーで良いかな?』

 いやいやロリキラーってそんなの嫌に決まってるし! そりゃ君の事は可愛いと思うけど、ってだからここどこ!? スキルって異世界召喚とかのお約束!?

 それなら俺は引きこもりで運動もしてないし、武器持って戦ってモンスターとか倒せ……るのかな?

 あっ、でもスキル次第だけど、もらうものによって変わってくるよな? 戦闘職で戦って無双とかも格好いいけど、魔法は使いたいよね。

 できたら全属性、火水土風に光と闇、後は補助系や、回復系、転移とかも便利そうだし、無限収納と鑑定は必須だよね、後は……。

 思わず凄い勢いで考えちゃったけど、この状況でなに考えてんの俺っ!

 スーっとさらに俺の方に近付いてくるロリっ子。

 おでこがくっつき、鼻と鼻がくっつくくらいまで――。

 ――ふにゅんって! 鼻! 鼻が
 くっついてるよ! ストップストップ! 俺のファーストキスを奪う気なの! 可愛いからカモーンだけど、そんなのはやっぱり付き合ってからだよね!

『ふ~ん。手まで動かせるんだ、凄いね』

 おでこと鼻からロリっ子の感触が離れた。

 離れて見えた顔は少し驚いた顔をしている。

 そして今度はいたずらっ子の顔になってニヤリと笑った。

『くふふ、その考え面白そうだね、じゃあ友里君はそんな感じで~』

 頭の手は離してくれたみたいだけど、まだ目の前、三十センチも離れてないところで覗き込むような格好で浮くロリっ子。

 何かを思い付いたようにポンと手を叩き、また頭に手を乗せてきた。

『あっ! でもそのままじゃ面白くないし~、身体が持たないだろうから~、僕の独断と偏見で~、こーしてあーして、ほいっと! よし友里君はこれで良いね♪ 次は~、そこの君だ~』

 ロリっ子はふよふよスーっと俺の前から移動して、あっち行きこっち行き。

 えと、俺なにかされたの? ファーストキスはなんとか手で防御したから守れたけど、流れ的にスキルが付いたって考えるのが普通だよね?

 さっきまで考えがまとまらなかったのに、この状況でなぜか落ち着いて冷静に考えられるようになったし。

 こういうのは異世界物の小説なら精神耐性が付いたって事なのかな?
 ……あ、そう言えば付けたみたいな事言ってたよ。

 ロリっ子に目を戻すと、うろうろ浮かびながらなにもないところで止まって、なにもないように見えるところに手を伸ばし、少し話しているように口が動くのが見えたが話し声は聞こえない。
 手を引っ込めるとまた移動して、手を伸ばしているロリっ子。

 あれ? 手は俺のファーストキスを守るために動いたけど、今度は普通に首が動いてるじゃん!

 そう言えばこんな時はあれだよね。

 私は全身が動く事を確かめた後、よっこいしょと立ち上がり――っ!

 ステータス!
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