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第三章~フレイヤ国、北東領地エルム~
第二話
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自警団が駆け付けたようで、背後から慌ただしい男たちの声が現場に響いた。
「ルピナ様、本国から救援部隊が向かっております。それとセイヴァ本部からも支援部隊を送るそうです」
戻ってきたルヴィがルピナの背後から凛と声を掛けてきた。
「本部から? フレイヤ支部からではないのか?」
「そのようです」
わざわざ本部から送るとは、仰々しい気もするが、そのほうが事故処理は早く片付くし、何より住民の安全が最優先だ。
フレイヤ支部の親はジルニクス帝国のセイヴァ本部だが、支部の隊員はフレイヤ国の人間が大半だ。支部長は本部の人間らしいが、フレイヤの法と行政に従い運営されているので、かなりフレイヤ側に寄り添っている。それはそれで有難い。
しかし、本部から派遣されるとなると、支部の者では心持たない部分でもあるのだろうか。
「ルピナ様、気分がすぐれませんか? 呆然としていたようにお見受けしたので」
「そうか、私は大丈夫じゃーー」
ルピナは思った以上に自分の声が出ていない事実に、多少の動揺を感じていると自覚した。
目の前で人が息を引き取った瞬間を初めて見た。お隣のロマノ帝国では政権争いが激しく、王族が命を落とす現実が当たり前のようにある中、フレイヤはまだ平和だなと、噛み締めた。
「そのお方は――」
「ベフェナ小国のジェイド第一王女じゃ。もしかすると王族と貴族が乗っていた船だろうな。私が見た限りでは、生存者は皆無じゃ」
目尻がじわっと熱くなり、露が眼の縁に溜まった。零れる前に、ルピナは涙を拭った。
「最近、ベフェナでの出来事と言えば何じゃ」
ルピナは立ち上がって、手の中の何かに意識しながら、現場の一点を見据えた。
「確か、魔獣族の村の遺跡が発見されました。まぁ、魔獣族の遺跡は世界中で発見されているので、さほど珍しい発見でもないですし。我が北東領地のヴァジ村にも遺跡はございます」
ルヴィの回答は的確だった、もちろんルピナも把握していた出来事だが、とりあえずルヴィに訊いておけば不足分も補える。よくよく周囲を見渡すとそこら辺に遺体らしきものが見えた。妙なイブ臭さに思わず鼻口を手で押さえた。この惨状の中でもルヴィは冷静だなぁと感心した。
「ですが噂によれば、ベフェナ小国で発見された遺跡から、何か珍しい物が発見されたとか、噂程度しか分かりませんが」
「そうか、ルヴィでさえ掴めぬ秘密か。ならルヴィ、これは何だか分かるか?」
ルピナはジェイドから託された何かを、ルヴィの前で手を開いて、見せた。
「ジェイド王女が私に託したのじゃ、ロマノ帝国のザイド皇子に渡してくれと。確か、ロマノとベフェナは同盟国じゃ、お互い顔見知りであっても不思議ではないし、遺跡の情報のやり取りだってあったであろう」
見せられたルヴィは、石のような塊に目を凝らし、眉間に皺を寄せて正体を探っていた。
「これは何でしょうか」とルヴィはぽつっと零した。
ルヴィならと期待したが、こればかりは仕方がない。
「さすがに知らぬか。ジェイド王女に託されたが、こいつの正体までは申されなかった。遺跡と関係しておるかは分からぬが、黙って届けてやることがジェイド王女の報いになるのだろうか」
「それは何とも、判断しかねますが、先ずはベフェナで何が起こったのかと、事故の原因を探るべきでしょう」
さすがルヴィの的確さにはルピナも「そうじゃな」と頷くしかない。
この世から旅立った小国の姫にもう一度頭を下げ、ルピナは託された物を強く握って、その場を自警団に任せた。
「ルピナ様、本国から救援部隊が向かっております。それとセイヴァ本部からも支援部隊を送るそうです」
戻ってきたルヴィがルピナの背後から凛と声を掛けてきた。
「本部から? フレイヤ支部からではないのか?」
「そのようです」
わざわざ本部から送るとは、仰々しい気もするが、そのほうが事故処理は早く片付くし、何より住民の安全が最優先だ。
フレイヤ支部の親はジルニクス帝国のセイヴァ本部だが、支部の隊員はフレイヤ国の人間が大半だ。支部長は本部の人間らしいが、フレイヤの法と行政に従い運営されているので、かなりフレイヤ側に寄り添っている。それはそれで有難い。
しかし、本部から派遣されるとなると、支部の者では心持たない部分でもあるのだろうか。
「ルピナ様、気分がすぐれませんか? 呆然としていたようにお見受けしたので」
「そうか、私は大丈夫じゃーー」
ルピナは思った以上に自分の声が出ていない事実に、多少の動揺を感じていると自覚した。
目の前で人が息を引き取った瞬間を初めて見た。お隣のロマノ帝国では政権争いが激しく、王族が命を落とす現実が当たり前のようにある中、フレイヤはまだ平和だなと、噛み締めた。
「そのお方は――」
「ベフェナ小国のジェイド第一王女じゃ。もしかすると王族と貴族が乗っていた船だろうな。私が見た限りでは、生存者は皆無じゃ」
目尻がじわっと熱くなり、露が眼の縁に溜まった。零れる前に、ルピナは涙を拭った。
「最近、ベフェナでの出来事と言えば何じゃ」
ルピナは立ち上がって、手の中の何かに意識しながら、現場の一点を見据えた。
「確か、魔獣族の村の遺跡が発見されました。まぁ、魔獣族の遺跡は世界中で発見されているので、さほど珍しい発見でもないですし。我が北東領地のヴァジ村にも遺跡はございます」
ルヴィの回答は的確だった、もちろんルピナも把握していた出来事だが、とりあえずルヴィに訊いておけば不足分も補える。よくよく周囲を見渡すとそこら辺に遺体らしきものが見えた。妙なイブ臭さに思わず鼻口を手で押さえた。この惨状の中でもルヴィは冷静だなぁと感心した。
「ですが噂によれば、ベフェナ小国で発見された遺跡から、何か珍しい物が発見されたとか、噂程度しか分かりませんが」
「そうか、ルヴィでさえ掴めぬ秘密か。ならルヴィ、これは何だか分かるか?」
ルピナはジェイドから託された何かを、ルヴィの前で手を開いて、見せた。
「ジェイド王女が私に託したのじゃ、ロマノ帝国のザイド皇子に渡してくれと。確か、ロマノとベフェナは同盟国じゃ、お互い顔見知りであっても不思議ではないし、遺跡の情報のやり取りだってあったであろう」
見せられたルヴィは、石のような塊に目を凝らし、眉間に皺を寄せて正体を探っていた。
「これは何でしょうか」とルヴィはぽつっと零した。
ルヴィならと期待したが、こればかりは仕方がない。
「さすがに知らぬか。ジェイド王女に託されたが、こいつの正体までは申されなかった。遺跡と関係しておるかは分からぬが、黙って届けてやることがジェイド王女の報いになるのだろうか」
「それは何とも、判断しかねますが、先ずはベフェナで何が起こったのかと、事故の原因を探るべきでしょう」
さすがルヴィの的確さにはルピナも「そうじゃな」と頷くしかない。
この世から旅立った小国の姫にもう一度頭を下げ、ルピナは託された物を強く握って、その場を自警団に任せた。
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