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13 夏の終わり
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私は今日学園に来ています。
学生でありながら魔眼研究に携わっておられるヒュードリック様に呼び出されていたためです。
私がヒュードリック様に初めてお会いしたのは生徒会の1件が起きる前のことでした。
入学式の日にマリアさんとの間に赤い糸が現れた男性の中で、彼だけはマリアさんと全然会っていません。
そのことが気がかりだった私は彼が学園内に所有する研究所を訪れてみたのです。
最初はこれまでお会いした男性の誰とも違うタイプの彼と上手く話せるか不安でしたが、専門家から聴くことのできる魔眼の話は実に興味深く、たまにお話しをしたり、頼みごとをされる仲になりました。
そんな彼との用事も終わり、日が傾き始めたころ帰宅しようとしていると学園の中庭の方から女性の怒鳴り声が聞こえてきました。
侵入者の可能性もあったので身を潜めつつ中庭の方へ歩いていくと、そこにはマリアさんを数人の女生徒が囲んでいる光景があります。
「アルビオン殿下の婚約者はセラフィム様なのですよ!貴方の不用意な行動でセラフィム様にご迷惑がかかることが分からないのですか!?」
「アルビオン殿下は将来この国の頂点に立ち民を導かれるお方です。貴方のような男爵家の娘がまさか釣り合っていると思うのですか!」
私が危惧していた問題が起きているようです。
殿下に近付き過ぎるマリアさんをよく思わない方々の不満がいつか爆発するとは思っていました。
でも一体なぜこのタイミングで?
マリアさんは生徒会で学園に来られていたとして、他の方々が学園にいる理由が分かりません。
あるとすれば、今日もしくは昨日あたりにマリアさんを急いで問い詰める必要がある何かが起きたといったところでしょうか。
私が状況を見極めていると、激昂した女生徒の1人が遂にマリアさんの顔を叩こうとします。
「そこまでです!」
私はそれを見てすぐに飛び出し、彼女たちの注意を引きつけ近付きます。
「「「セラフィム様!?」」」
私が学園にいることは想定外だったのか、マリアさんを囲んでいた女生徒は驚きの声を上げました。
私はマリアさんのもとに辿り着くと手を差し伸べ、座り込んでしまった彼女を立たせます。
「大丈夫だったかしら、マリアさん?」
私が尋ねると弱々しく頷きます。
私はバツが悪そうな顔をしている彼女たちの方を見て
「私は今からマリアさんの話を聞きます。その後貴方たちの話も聞くので私の教室で待機してください。」
と告げると、観念したように皆さん首を縦に振り、とぼとぼと歩いて行かれました。
あれからマリアさんを慰め、彼女視点の状況説明を受けた私は皆さんを待たせた教室に着きました。
と言ってもマリアさんはどうして自分があのような目にあったのか理解されていないみたいでしたが。
私が入室すると、皆さんは裁きを受ける罪人のように沈んだ雰囲気で待っています。
「まず誤解されているようですが、私は貴方たちを叱るつもりはありません。ただ、教えていただきたいことがあるのです。」
私の言葉に驚いた様子の彼女たちでしたが、うち1人が挙手をします。
「セラフィム様が私たちに尋ねたいことというのは、どうして今日マリア・オルトランデさんを問いただしていたかですよね?」
私が肯定すると、彼女は続けます。
「実は昨日の昼に見てしまったんです。アルビオン殿下とあの男爵令嬢が2人で食事をしているところを。それもまるで恋仲のような雰囲気で…」
その言葉を口にした途端に我慢できなくなったように泣く彼女に声をかけることも出来ず、私はただ先日の殿下とのお茶会を思い出していました。
夏の終わりが来るのに紛れて、私と殿下の終わりも涼しい秋の風に乗って訪れたようです。
学生でありながら魔眼研究に携わっておられるヒュードリック様に呼び出されていたためです。
私がヒュードリック様に初めてお会いしたのは生徒会の1件が起きる前のことでした。
入学式の日にマリアさんとの間に赤い糸が現れた男性の中で、彼だけはマリアさんと全然会っていません。
そのことが気がかりだった私は彼が学園内に所有する研究所を訪れてみたのです。
最初はこれまでお会いした男性の誰とも違うタイプの彼と上手く話せるか不安でしたが、専門家から聴くことのできる魔眼の話は実に興味深く、たまにお話しをしたり、頼みごとをされる仲になりました。
そんな彼との用事も終わり、日が傾き始めたころ帰宅しようとしていると学園の中庭の方から女性の怒鳴り声が聞こえてきました。
侵入者の可能性もあったので身を潜めつつ中庭の方へ歩いていくと、そこにはマリアさんを数人の女生徒が囲んでいる光景があります。
「アルビオン殿下の婚約者はセラフィム様なのですよ!貴方の不用意な行動でセラフィム様にご迷惑がかかることが分からないのですか!?」
「アルビオン殿下は将来この国の頂点に立ち民を導かれるお方です。貴方のような男爵家の娘がまさか釣り合っていると思うのですか!」
私が危惧していた問題が起きているようです。
殿下に近付き過ぎるマリアさんをよく思わない方々の不満がいつか爆発するとは思っていました。
でも一体なぜこのタイミングで?
マリアさんは生徒会で学園に来られていたとして、他の方々が学園にいる理由が分かりません。
あるとすれば、今日もしくは昨日あたりにマリアさんを急いで問い詰める必要がある何かが起きたといったところでしょうか。
私が状況を見極めていると、激昂した女生徒の1人が遂にマリアさんの顔を叩こうとします。
「そこまでです!」
私はそれを見てすぐに飛び出し、彼女たちの注意を引きつけ近付きます。
「「「セラフィム様!?」」」
私が学園にいることは想定外だったのか、マリアさんを囲んでいた女生徒は驚きの声を上げました。
私はマリアさんのもとに辿り着くと手を差し伸べ、座り込んでしまった彼女を立たせます。
「大丈夫だったかしら、マリアさん?」
私が尋ねると弱々しく頷きます。
私はバツが悪そうな顔をしている彼女たちの方を見て
「私は今からマリアさんの話を聞きます。その後貴方たちの話も聞くので私の教室で待機してください。」
と告げると、観念したように皆さん首を縦に振り、とぼとぼと歩いて行かれました。
あれからマリアさんを慰め、彼女視点の状況説明を受けた私は皆さんを待たせた教室に着きました。
と言ってもマリアさんはどうして自分があのような目にあったのか理解されていないみたいでしたが。
私が入室すると、皆さんは裁きを受ける罪人のように沈んだ雰囲気で待っています。
「まず誤解されているようですが、私は貴方たちを叱るつもりはありません。ただ、教えていただきたいことがあるのです。」
私の言葉に驚いた様子の彼女たちでしたが、うち1人が挙手をします。
「セラフィム様が私たちに尋ねたいことというのは、どうして今日マリア・オルトランデさんを問いただしていたかですよね?」
私が肯定すると、彼女は続けます。
「実は昨日の昼に見てしまったんです。アルビオン殿下とあの男爵令嬢が2人で食事をしているところを。それもまるで恋仲のような雰囲気で…」
その言葉を口にした途端に我慢できなくなったように泣く彼女に声をかけることも出来ず、私はただ先日の殿下とのお茶会を思い出していました。
夏の終わりが来るのに紛れて、私と殿下の終わりも涼しい秋の風に乗って訪れたようです。
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