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第三章・偶然の連続
19・あなたの心は…
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あなたの心の片隅にさえ、私は住めないの?結婚からもうすぐ三年…未だ私はあなたにとって、他人と同じなのだろうか。
確かに私は、クリスティンの子を身籠れてはいない。だけどこの段階で、それも使用人から愛人をだなんて言葉を聞くとは思ってなかった…これが現実なの?
あれからクリスティンは、どう答えたのだろうか…怖くてそれ以上は聞いていられなかった。ただ思うのは、あのままだったならクリスティンの妻はフェリシアで、今頃子供達に囲まれていただろうこと。そして何よりショックだったのは、あの行動が家令に言われてのことだったなんて…
最近になって夫婦としての触れ合いが増えていた。早く帰った時は食事を共にし、そして夜のことも…
それを私は単純に嬉しいと、あなたも私との行為を望んでくれているんだと思っていたのに…違ったのね?
それがあなたの純粋な行動ではなくて、あくまで仕方なしにという真実に愕然とする…
──悔しくて、哀しい!
私はこれからどうなってしまうのだろう。信じられる人を失って、何もかもが虚しいわ…
使用人にさえ軽視される侯爵夫人なんて、この家に必要なのかしら?そんなふうに思ってしまう…
それから私は直ぐに体調を崩し、寝込みがちになった。そうなった時、思い浮かべたのはお母様のこと…
私達の結婚式の後、病弱だったお母様は療養の甲斐もなく亡くなられた。あんなに私の結婚を喜んでくれていたのに…
心にポッカリと穴が開いたようになり、塞ぎがちになった私を、あなたは優しく慰めてくれたわね?あの時はまだこの結婚に戸惑っていて、自信も一切なかった。そんな私はあなたの優しさで救われて…
そしてこの人となら夫婦としてやっていける…今は愛されていなくとも、いつの日にか本当の意味で夫婦になれるのだと思っていたのに!
「ああ、どこまでいっても独りよがりだったんだわ…」
病床で一人、そう呟く。そして私はこの生活の限界を感じていた…
+++++
「シルビア様、まだ病み上がりですし、もう少ししたら屋敷に入りましょうね」
ケイトの私を気遣うそんな声に微笑む。やっと病が癒えて体調も回復してきた私は、今日は暖かく天気も良いので庭に出てみた。ケイトと二人、見慣れた庭園をゆっくりと歩く。最近雨が降り続く季節に入ったようで、ずっと長雨が続いていた。だけど今日は久しぶりに空に晴れ間が覗いている。歩いていると少し気分が良くなり、雨にも殆ど影響を受けずに力強く咲く薔薇を愛でながら歩いて、庭園の中程にあるベンチに座る。
「妃殿下が、王子様をお産みになったそうです」
遠慮がちにケイトがそう告げる。病床の私を近くで見ていたケイトは、それを言いにくかったに違いない。だけど侯爵夫人が知らない訳にはいかないだろうと、意を決して伝えることにしたよう。それに「そうなの」と力無く返し、スゥーッと頬を撫でる風を感じ取る。
「それで第二王子様の特徴は…どうだったのかしら?」
フェリシア達の言ったこと…そんなのある訳ないとは思っている。心ではどうあっても、クリスティンは家門に危険を及ぼすことはしない筈だわ。当主として…
あのお茶会で言ったことは、私に不安を植え付けたかったのか貶めたかったのかは知らない。そして私達を疑惑の渦中に落としておいて、結局はどうだったのかという興味からのこと。
「王子様の瞳は、青紫色の珍しいものだったそうです。髪色は第一王子様と同じで、輝くばかりの金髪だと聞いていますが…あっ!」
結局はフェリシアと同じパープルアイ?と少しだけホッとした時、ケイトが何かに気付いたように声を上げる。それを不思議に思って見つめると…
「今思い出しました…あの孤児院にいたエリックです。あの子、希少な金の瞳でしたよね?まるで王族のような…」
それを聞いてギョッとする。そうだわ…金の瞳!王族以外で全くないとは言えないが、それにしても見事な黄金色だった…それも特徴が薄められているようなものではなく、まるで直系のような眩しい輝きを放っていて…
──どういうことだろう?だけどこれって…
「このことは他言しない方がいいわね。あなたと私の胸だけに留めておきましょう。でなければ…危険だわ!」
私とケイトは思ってもみない事実に、顔を見合わせて大きく頷く。だけどこれがこの先とんでもないことに繋がるなるなんて、この時の私には想像も出来ないことだった。それよりも私は…
「離婚してください!」
ある日の午後、私は意を決して夫の執務室へと向かった。自分からそう言い出したけど、こちらを見ようともしないあなたに、心がズキリと痛む。私はもう、疲れ果てていた…
そして床に臥せっている間に考えたのは、もうこれ以上好きになりたくないし、そして嫌われたくはないということ。
もしも私がこの先も妊娠出来なかったとしたら、あなたはどうする?高位貴族家の夫人としては愛人も黙認するべきなのかも知れない。だけど私には無理!それに耐えられそうにない…
きっとショックを受けてあなたを責めてしまうだろう。そしてそれを決断したあなたを恨むわ!それが元でいがみ合うようになり嫌われたら?もう生きてはいけない…
──だから私からあなたの元を離れるわ。こうなった以上それも仕方がないと思う…
耐えきれないほどの心の痛み。だけど敢えて別れる決心をした。あなたはどうする?フェリシアを変わらず愛しているあなたは、平然としているのかしら。それとも…
確かに私は、クリスティンの子を身籠れてはいない。だけどこの段階で、それも使用人から愛人をだなんて言葉を聞くとは思ってなかった…これが現実なの?
あれからクリスティンは、どう答えたのだろうか…怖くてそれ以上は聞いていられなかった。ただ思うのは、あのままだったならクリスティンの妻はフェリシアで、今頃子供達に囲まれていただろうこと。そして何よりショックだったのは、あの行動が家令に言われてのことだったなんて…
最近になって夫婦としての触れ合いが増えていた。早く帰った時は食事を共にし、そして夜のことも…
それを私は単純に嬉しいと、あなたも私との行為を望んでくれているんだと思っていたのに…違ったのね?
それがあなたの純粋な行動ではなくて、あくまで仕方なしにという真実に愕然とする…
──悔しくて、哀しい!
私はこれからどうなってしまうのだろう。信じられる人を失って、何もかもが虚しいわ…
使用人にさえ軽視される侯爵夫人なんて、この家に必要なのかしら?そんなふうに思ってしまう…
それから私は直ぐに体調を崩し、寝込みがちになった。そうなった時、思い浮かべたのはお母様のこと…
私達の結婚式の後、病弱だったお母様は療養の甲斐もなく亡くなられた。あんなに私の結婚を喜んでくれていたのに…
心にポッカリと穴が開いたようになり、塞ぎがちになった私を、あなたは優しく慰めてくれたわね?あの時はまだこの結婚に戸惑っていて、自信も一切なかった。そんな私はあなたの優しさで救われて…
そしてこの人となら夫婦としてやっていける…今は愛されていなくとも、いつの日にか本当の意味で夫婦になれるのだと思っていたのに!
「ああ、どこまでいっても独りよがりだったんだわ…」
病床で一人、そう呟く。そして私はこの生活の限界を感じていた…
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「シルビア様、まだ病み上がりですし、もう少ししたら屋敷に入りましょうね」
ケイトの私を気遣うそんな声に微笑む。やっと病が癒えて体調も回復してきた私は、今日は暖かく天気も良いので庭に出てみた。ケイトと二人、見慣れた庭園をゆっくりと歩く。最近雨が降り続く季節に入ったようで、ずっと長雨が続いていた。だけど今日は久しぶりに空に晴れ間が覗いている。歩いていると少し気分が良くなり、雨にも殆ど影響を受けずに力強く咲く薔薇を愛でながら歩いて、庭園の中程にあるベンチに座る。
「妃殿下が、王子様をお産みになったそうです」
遠慮がちにケイトがそう告げる。病床の私を近くで見ていたケイトは、それを言いにくかったに違いない。だけど侯爵夫人が知らない訳にはいかないだろうと、意を決して伝えることにしたよう。それに「そうなの」と力無く返し、スゥーッと頬を撫でる風を感じ取る。
「それで第二王子様の特徴は…どうだったのかしら?」
フェリシア達の言ったこと…そんなのある訳ないとは思っている。心ではどうあっても、クリスティンは家門に危険を及ぼすことはしない筈だわ。当主として…
あのお茶会で言ったことは、私に不安を植え付けたかったのか貶めたかったのかは知らない。そして私達を疑惑の渦中に落としておいて、結局はどうだったのかという興味からのこと。
「王子様の瞳は、青紫色の珍しいものだったそうです。髪色は第一王子様と同じで、輝くばかりの金髪だと聞いていますが…あっ!」
結局はフェリシアと同じパープルアイ?と少しだけホッとした時、ケイトが何かに気付いたように声を上げる。それを不思議に思って見つめると…
「今思い出しました…あの孤児院にいたエリックです。あの子、希少な金の瞳でしたよね?まるで王族のような…」
それを聞いてギョッとする。そうだわ…金の瞳!王族以外で全くないとは言えないが、それにしても見事な黄金色だった…それも特徴が薄められているようなものではなく、まるで直系のような眩しい輝きを放っていて…
──どういうことだろう?だけどこれって…
「このことは他言しない方がいいわね。あなたと私の胸だけに留めておきましょう。でなければ…危険だわ!」
私とケイトは思ってもみない事実に、顔を見合わせて大きく頷く。だけどこれがこの先とんでもないことに繋がるなるなんて、この時の私には想像も出来ないことだった。それよりも私は…
「離婚してください!」
ある日の午後、私は意を決して夫の執務室へと向かった。自分からそう言い出したけど、こちらを見ようともしないあなたに、心がズキリと痛む。私はもう、疲れ果てていた…
そして床に臥せっている間に考えたのは、もうこれ以上好きになりたくないし、そして嫌われたくはないということ。
もしも私がこの先も妊娠出来なかったとしたら、あなたはどうする?高位貴族家の夫人としては愛人も黙認するべきなのかも知れない。だけど私には無理!それに耐えられそうにない…
きっとショックを受けてあなたを責めてしまうだろう。そしてそれを決断したあなたを恨むわ!それが元でいがみ合うようになり嫌われたら?もう生きてはいけない…
──だから私からあなたの元を離れるわ。こうなった以上それも仕方がないと思う…
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