すべての事件は裏の家でおきていました。

羽月☆

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2 ご褒美に可愛いワンピースと指輪を借りて散歩をしていたら。

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言いつけられた洗面台の掃除はした。
私がしないとお母さんがすることになる。
仕事から帰ってきたお母さんが髪の毛の落ちた洗面台を見て、いっそう疲れるのは可哀想で。


着替えをして、自分のゴミ箱のゴミを下に持っていく。


自分の部屋はきれいだった。
こまめにコロコロとロールを転がして、あとは出したものはきちんと元の場所へしまうことを心がけて。
基本はそれだけでいいんだから。


それが出来たらそんなに酷くはならないはずなのに。


一応姉の部屋をのぞこうと思った。


命令じゃなくて軽いお願い口調だった。
でもそれは決して言葉通りじゃないのだ。
部屋がそのまま手つかずだったら、忙しかったのか、じゃあ何をしてたのか、問い詰めるように聞かれるだろう。
忙しいか、暇かで言ったら姉のほうが時間はあると思う。
たまたま今日は私が休みだっただけだ。


ゴミ箱を空にするくらいと掃除機をさっとかけるくらいならやってあげてもいいとも思った。
だから軽い気持ちでドアを開けて、後悔した。


一度閉じたドア。


きっと今日は初デートで気合が入ってたんだろう。
この間、そう本当にこの間だが酷く酔って帰って来て彼氏と別れたと聞いた気がした。

可哀想だと思ったが、数週間後には浮かれた笑顔で次の彼氏の話をしてた気がする。


週末前の金曜日。
今日は帰らないのでは?

姉の気持ちも分かる。
経験がなくても、想像はできる。
服もバッグもアクセサリーも、いろいろと考えて吟味したんだろう。
その試行錯誤のあとは目の前にある。

出したものを元の場所に片付ける、基本中の基本のそれが出来ない人なのだ。
二度寝をしてしまったとかじゃない、きっとこの部屋の荒れ模様からするに、しっくりこないと悩んで時間が過ぎたんだろう。

それを可愛いと思ってあげてもいい。
他人ならそう思ってもいい。
このまま部屋のドアを閉めて回れ右して良かったら、そう思えるかもしれない。



ただ、今朝の奮闘だけじゃない気もするのだ。
この乱れ具合はそれだけじゃない。


机の上はすごい、ゴミ箱もすごい、ベッドの上は酷い。
床に掃除機なんてかけるところがないくらいに、床なんて見えないのでは?


これは日ごろの蓄積の産物だろう。
だらしないくらい、いっそだらしないと言い切れる。
それなのに、家の外の姿はそんな事を全く感じさせないのだ。



仕方ないので歩く道を作りながら床の物を拾い上げていく。
広い部屋ではないから何とかはなる。
拾えばすぐに床が見えてくるくらいの広さだし。


ベッドの上に服を種類別に乗せていく。


どうして下着もこんなに悩んだんだろう・・・・・。
セットで三種類放り投げられていた理由が分からない。
朝着替えたらしい・・・・と思いたい。
昨日のお風呂後の下着は・・・・どこへ?

クローゼットを開けると、そこにもゴチャッとした世界が広がっていた。

物が多い、飽きっぽい、よく失くしものをする。

というわけで時々私が貰うものがある。
少し大人びた持ち物を私は大切にしまい、時々使う。

そこは素直に半分感謝する。


とりあえずクローゼットも整頓しながら、時々自分の体に当てて鏡を見たりして。
開いたスペースに服や小物を収めていく。

クローゼットのゴチャの中から少し前に見たことのあるワンピースを見つけた。
可愛いデザインがもはや、というか元々、姉にはに似合わなそうな。


そう思うけど家の外では普通の可愛い大学生でいられてるらしい(本人談)。
私も家族も想像できないが、それらしく振舞えるらしい。
だから彼氏が切れることがない。
一呼吸置くくらいの休憩を挟むと次が出来る。
今回は一呼吸もつくほどもなかったかも。

絶対重なったりはしないと言うあたり、きちんとけじめはつけてるらしい。

手にしたワンピースは今の私でも着れるくらいの可愛いデザインで。
大学生より私くらいの年の子でもいいと思う。
鏡に映した自分の姿も褒めてあげたいくらい可愛いくて、いい感じで。

こっそり机の開いてるスペースによけておいた。

同じように残りをしまいこみ、ベッドは軽くコロコロをしてシーツをきれいに伸ばして整え。
机の上のものをきれいに揃えて重ね、開いたスペースにアクセサリーを乗せておく。

その中に可愛いリングを見つけた。
着けてるのを見たことがない。
もしやプレゼントだろうか?

さっきのワンピにも似合いそうじゃない?

それも端によけておいた。

軽く掃除機をかけて、ゴミを捨て、窓を開けて空気を入れ替えた。

ワンピースと指輪をもって自分の部屋に行く。
鏡の前でさっさと着替えてみた。

私は普通、姉は細い。
サイズは問題ない。
絶対私のほうが似合うから!!

裾をつかんでクルクルとまわりチェックしてもそう思った。
指輪をして満足。


姉の部屋に行き、下着は椅子の上に置いた。
窓を細く開けるだけにして、小さなバッグを適当に借りて財布と鍵を持って出かけた。

ご機嫌にゆれる裾。
よく考えたら、姉にはかなり短いのでは?

私の膝辺りで裾はゆれてる。

特にこれといって用事はない。
でもせっかく可愛い格好もしたし、適当な道を歩いて散歩する。

ずっと住んでる町だけど、時々見知らぬ景色に会う。

学校をサボってるって思われるかな?

それでも創立記念日。
堂々と散歩できてうれしい、しかも散歩日和、姉には初デート日和。
気分がいいから姉の分まで太陽と青空に感謝する。

何年もあんな姉の妹をやってると、心も広くなるのだ。

緑の植木と樹木のこんもりした公園を通り過ぎる。
子どもの声は聞こえない。
もっと後だろうか?
久しぶりの晴れ間でお母さんたちは洗濯が忙しいだろう。
午後にはもっとにぎやかになるんだろうか?


そんな静かな時間だったから、高く、細い声も聞こえた。

『みゃ~。』それは一匹の声じゃないと思う。

捨て猫?

急いで入り口に走り公園に入って、聞こえた辺りを探す。
でも探すまでもなかった、人がいてすぐに分かった。
その人の手に子猫がいた。三匹?

へんてこなボサボサのニット帽をかぶった少年のような男の人。
ウォーリーの本で見るような帽子。
あんなの売ってるの?
まずそこから突っ込みたい。
色を間違ったらコントの囚人用の帽子みたい。
丸くてすっぽりかぶるタイプ。
赤白なのも・・・・変。

よくみると服装もかなりいい加減。
首が伸びたような古いTシャツにサイズの合わないシャツを羽織っている。
これもかなりの色あせ感。
汚れてもいる。

子猫を引き取っても餌に何をあげるのって感じで・・・・。

近寄れずにじっと見てたらいきなり顔を上げられて、目が合った。

すぐには逸らせなくて、そのまま二人見詰め合って、さすがに歩き去ろうとしたときに驚いた顔をされた。

何??

なんとなく・・・・あれ・・・・・・??????

最初から小汚いイメージが先行して、すぐには分からなかった。

知ってる人だった。
だって今日は創立記念日、同じ学校の生徒は休み。
そしてその中でも同じクラスだったらすぐ分かるはずなのに。

先に気がつかれなかったら、そのまま去っていたかも。

あまりにもイメージが違いすぎた。



頭のいい委員長。

冷静できっちりとして真面目で、信頼されて好かれてる。
冷たいとかの印象はなくて優しそうな委員長。
まさか・・・・そんな小汚いなんて印象まったくないのに。
制服はいつもきちんとアイロンがかかり、乱れなく着ているタイプだし。

なのにあの帽子?服?

開いた口がふさがらない。


立ち上がろうとした委員長が手の中の子猫に改めて気がついた。

よく見たら背後にダンボールがあった。

そうだった、とりあえず委員長より猫猫。


「委員長、捨て猫なの?」

名前はまだない・・・・訳はないのに皆に委員長と呼ばれている。
名前は呼んだことがないので・・・・・まあ、いいだろう。

「うん、ここでダンボールに入って鳴いてた。」

まさか捨てた本人じゃないだろう。
そもそもこの辺に住んでるの?

近所を歩く格好としてもそれはどう?
まあ、個人の趣味はどうでもいいか。

委員長に近づいた。

子猫を一匹貰って抱く。

可愛い。
生後すぐというわけではない。
ある程度母猫が母乳を上げていたんだろう。
勝手に連れていかれただろう母猫も今は寂しく思ってるだろう。

必死に細い声で鳴く子猫。

手にしたら、もう、離せない。



昔、家にも猫がいた。
姉がおねだりして買った猫だった。
姉が忙しくなり私が世話をして、結局最後の最後まで面倒を見た。

数年前に天寿を全うした。

普段は適当にマイペースで撫でるだけだった姉が号泣した。
私も悲しくて、悲しくて、でもつらそうに息してるのを見て、もういいと何度も言った。
だから今は楽になったんだと、良かったねと思って私は涙をこらえた。

いつもお世話になっていた病院に挨拶に行って、動物の霊園を紹介してもらった。
パンフレットを握り締めて、母親に電話をしてもらい、引き取ってもらい、さよならして、何度か合同のお墓にも行った。

姉はその一連には参加してなかったけど、別にいい。

あれから、私も学校と塾で家にいる時間は少し減った。
姉も大学生になり、家が無人の時間も多くて、代わりのペットを探そうなんて誰も言い出さなかった。
色んなものも、もう捨てた。


「かわいい。飼いたい。」

「小坂しおりさん、飼えるの?」

何故かフルネームで呼ばれた。
さすが委員長。
私なぞの名前をフルでよくご存知で。

「分からない、前には飼ってたけど。お母さんも仕事してるから、どうだろう。委員長は?」

「僕も、前はいた。一匹くらいなら・・・・でも聞いてみないと分からない。」


今、ここには三匹いる。
本当は一緒に飼ってあげられたらいいのに。


「この子達、普通の雑種猫だよね。」

「そうだね。普通の雑種のミックスだよね。」

白黒、キジトラ、黒にちょっと白。
そんな毛色だった。
それでもきれいな毛並みで、目もまあるくて、顔もつぶれてなくて、尻尾もまっすぐで、可愛い。

本当に手放せなくて。

「ねえ、お母さんに聞いてみたいんだけど。この子も抱いてて。」

委員長に手の中の子猫を渡して、写真を勝手に取って、家族のラインで聞いてみた。

『捨て猫を見つけたの。飼ったら駄目かなあ?』

『可愛い、飼いたい。お世話しなさい。』

お母さんの返事ならうれしいけど、さすがにその無責任さは姉からの返事だった。
レスポンスの早いこと。
授業中なんだろう。デートの最中じゃなくて良かったと思った。
邪魔したら怒るかも。
それとも新しい彼氏と一緒に顔を寄せて画像を見るとか?

まあいい。姉はどうでもいい。

肝心のお父さんとお母さんからも返事が続いてきた。

『責任もって飼えるならいいけど。三匹は多すぎない?大変よ。お小遣いなくなるよ。』

あくまでも現実的な母親。
病院代餌代も言い出した私が出すシステムらしい。

『癒されそうだなあ。週末は遊んであげられるけど、どうだろう。三匹だと家が大変なことになりそうだなあ。』

さすがに住宅ローン返済係の父親。だからその心配は分かる。


委員長にライン画面を見せる。


「僕も一応聞いてみる。」

そう言って今度は三匹を全員私が抱いた。

写真を撮って同じように画面上に会話をしてるらしい。
兄弟がいるんだろうか?
お母さんが主婦とか、おじいさんおばあさんが一緒にいるとか?

「あっちに座らない?」
そういってベンチに誘った。

委員長がダンボールも持ってきた。

古いタオルが敷かれていた。

携帯が着信を知らせる。

「あ、来た。」

そういって画面を見せてくれた。

「三匹は無理よ。いずれ他の人に渡すという約束が出来るなら一匹だけならいいけど。おじいちゃんところは?」

これで二匹は安泰。
後一匹。

おじいちゃんは?

そう思って見上げたら、当然分かったらしい。


「ねえ、近くにおじいちゃんの家があるから、一緒に来てもらえないかな?もしいいって言ったらどの子を誰が飼うか決めようよ。」

うれしそうな明るい笑顔で言われた。

一緒に歩き出した。

「ねえ、どうかな?飼ってくれるかな?」

「ちょっと期待するけど、どうかな。」

委員長が歩き出した方向は、私の家がある方向。

「委員長はこの辺に住んでたの?」

「ううん、違うよ。今日は休みだから、おじいちゃんのところに顔を出したんだ。」

「その格好で?」

思わず聞いてしまった。

「ん?」

立ち止まった委員長が自分の姿を見下ろして赤くなる。

「違うよ、これは、おじいちゃんの家庭菜園の手伝いをするから、汚れるからって、要らない服を借りたんだよ、違うよ、本当に、違うから。」

泣きそうな顔で否定する。
まあ、そうよね。
でも帽子も必要だったの?
明らかに帽子は委員長のよね。おじいさんの帽子なの?

つい頭に視線が行く。

「あ、・・・これは、これは・・・昔気に入ってたヤツで、さすがにもういらないから・・・・・、今日で最後で・・・・。」

じゃあ、昨日までは最後じゃなくて、今まで気に入ってかぶってて、大切にしていた一品?

どんな格好とその帽子が合うのか分からない。
赤白ボーダー、スッポリかぶる綿素材。

視線がそこから外れないけど。

頑張って猫を見た。



委員長が二匹、私が一匹抱いている。
ダンボールはつぶして持ってきている。

汚れたダンボールを小脇に挟んでる辺り、本当に要らない服なのかも。


休みの日におじいちゃんの家庭菜園の手伝いをする孫。
どこまでも優等生だ。
着替えるくらい本格的に手伝ったんだろう、役に立ったんだろう。


二人で並んで歩く。
お互いの猫を見合いながら。
とても和やかともいえる二人。


でも・・・・・。
なんとなく嫌な予感がしてきた。明らかに私の家のほう。
すごい近くだったりする?


嫌な予感は、過去の出来事を思い出すから。


それも発端は姉。


ああ・・・・じわじわと嫌な予感が私を襲い、足が鈍くなる。


昔のことだし忘れてる?
おじいさんだし、もう忘れてる?


立ち止まった家、やっぱり私の家の近くで・・・・というか裏じゃん。
まさに嫌な思い出しかない家だった。


私がいたらうまく行く話しも行かないかも。
回れ右して逃げようと思ったら、野太い声が降って来た。


「一総、どこ行ってたんだ?着替えもしないで。」

「おじいちゃん、ただいま。ねえ、お願いがあるんだけど。」

「ああ?」

おじいさんが猫を見て、後ろの私にも気がついて。

「デートしてたのか?せめて着替えたほうがいいのに。」

「ち、違うよ。」

思いっきり否定されたけど、当然です。

ここの人にとっては私は『敵』レベル・・・の女の子の妹。



回れ右は間に合わなくて。
そっと顔をあげた。
当然目も合った。
ゆっくり近寄ったら気がつかれた。


驚いた顔をされた。
ちょっとだけ私の首が引っ込んだ気がする。

昔のゴタゴタと今の子猫は別の話ですよね・・・・・・。
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