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4 暑い夏の日に絡まる子猫と美味しい野菜と内緒にしたい時間
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学校では全力で知らないふりをしてる。
絶対目が合わないよう。
それは無理しなければ普通の事だった。
今まで話したことなんてなかったくらい。
私が仲良くしてる友達の中に男の子がいない。
だから特に普通なのだ。
ただ、問題はいつも一緒にいる女の子の友達の中に一人、委員長を好きかもって思う子がいて。
だから・・・・・。
仲がいいのに何故か言い出せない。
逆にその子がおじいちゃん家の仲間に入れたらうれしいと思う、喜んでくれると思う。
そんな笑顔なんて簡単に思い浮かぶのに。
言い出せずにいる。
もしかして勘違いかも。
そう思い込んで。
あの二日後、無事に『あん』は私の家族になった。
家族が揃った夕方には取り合いになるように交代で抱っこして。
ゲージもお皿もリードも、餌も、自分のお金で買った・・・・と言いたいけど、お母さんとお父さんにお金を足してもらった。
姉は『デートでお金がないからゴメンね。』とあんに謝り、私には『はい、これあげる。』とバッグと指輪を持ってきて、その一言で片づけた。
ワンピースはコロコロをかけてスプレーをかけてすっかり私のものになっていた。
結局、あの日のセット丸ごともらったんだからいい。
前の時もときどき気まぐれにご飯とか、おやつを買ってきてくれたし、疲れてしまった時は時々看病も代わってくれたから。
他の二匹は友達家族に引き取られたと言った。
それが裏のおじいさんとその孫とは言ってない。
「ねえねえ、猫の飼い主、男の子でしょう?あの日デートだったの?」
何でそう思ったのか分からない。
「先に同級生が見つけてたの。だから一緒に話し合って決めたの。たまたまだよ。」
「たまたま可愛い服を着ていた時に、たまたま同級生と一緒に猫を見つけたの?」
「うん。ビックリした。」
それは本当だから、別に普通に答えた。
ちょっとだけガッカリしてる気がする。
揶揄いたかったのだろう。
あの服を着てたのはたまたまだ。
掃除のご褒美だし。
そう言えばお礼はなかったな。
随分住みやすいきちんとした部屋になってたはずなのに。
ビックリするほどの変化だったはずなのに。
お礼があのワンピースなら、そっちの方がいいか。
時々お母さんたちのいない時におじいさんの家のナオに会いに行く。
姉が昔にくれた可愛い籠にあんをいれて連れて行く。
二匹が仲良く絡み合うのはとても可愛い。
おじいさんと一緒に眺めながら話をして。
「ナオはあんより大きい。」
「男の子だからなあ。」
そう言われた。
「じゃあ、一路も大きくなったかもしれないですね。」
「今週来るって言ってたよ。一総から何も聞いてない?」
「はい。学校で話をすることはないです。」
「まったく?」
「はい、仲のいい・・・・・友達が・・・・・。」
「友達がどうしたの?」
「委員長の事を好きかもしれないです。何となくそうかなって思ってたくらいで、はっきりは聞いたことはないけど。」
「人気があるかな?兄の一真ほどは、そのあたりは器用そうじゃないなあ。」
「クラスで二人くらい、そんな感じの子がいます。他のクラスの子は知りませんが。もともと私が委員長と話をすることなんてなかったから。」
「これから仲良くもらえしてもらえたらうれしいけど。」
「はい。勉強も分かりやすく教えてくれるし、すごくいい友達です。」
笑顔で答えた。
『その子も連れて来ればいい。』
そうは言われなかったことにホッとした。
あの子は近所というわけじゃない。
委員長の家だって、そう近い訳じゃない?実は知らない。
もし、委員長の家が近かったりしたら、猫を見に行けたかな?
そうじゃなくても仲良くなったら、勉強を教えてもらいたいと言い出せたかな?
すごく上手だから、誰でも苦手な人は教わりたいかも。
「かおりさんは最近来ないけど、デートで忙しいかな?」
「そうみたいです。毎日遅いし、週末はいないことも多いし。」
「相手が社会人だから、週末は一緒に遊びたいんだろうしなあ。」
社会人・・・・・学生じゃないの?
何となく大学生だと思ってた。
大人と付き合ってるの?
家族は誰も知らない。
もはやお姉ちゃんがいなくても気にしないし。
連絡だけはしてくるから、心配してない。
自由で楽しそうなお姉ちゃんが時々羨ましい。
年齢が離れてるから、大人に見える。
掃除もできないし、振る舞いもとても自己中心的でどうしようもないけど、許されてるし、外ではきちんとしてるならいいとして、そんなお姉ちゃんが羨ましい。
あと6年後、私はどうしてるんだろう?
お姉ちゃんは結婚しててもいい年齢。
家から出てるだろう。
きっと私も両親も寂しいと思ってるだろう。
騒がしいお姉ちゃんがいなくなったら、静かな家になるかもしれない。
平和な家の中を物足りなく思うだろうか?
おじいさんも寂しいと思うかもしれない。
私はいつまでここに来ていいんだろう。
「じゃあ、しおりちゃん、今週ここに来れる?」
「・・・・はい。」
「一路と一総が来るのは土曜日の午後らしい。泊りがけで来るって。勉強も教えてもらえるみたいだよ。」
「・・・・宿題があったら、教えてもらいます。」
「うん、お願いしておいた。数学が得意になりたいみたいだって言ったら、凄いやる気を出してる。」
そう言って携帯を見せてくれた。
今やり取りをしてたらしい。
私がぼんやりしてる間に勝手にいろいろと話が進んでた。
私が今ここにいることも伝わってる。
『え~、何でおじいちゃんの方が仲良くしてるの?僕は学校でも全然話もしないのに。』
その会話も読んでしまった。
勝手に孫のように居座る同級生をどう思ってるんだろう。
ここに他にもいて欲しい人はいるんだろうか?
紅美ちゃんの顔が浮かぶ。
「そういえば最初気にしてたけど、一真とかおりさんのあの時の喧嘩は面白かったね。しっかり者といわれてた一真をコテンパンにやっつけて、すごく落ち込んでたよ。ご両親が謝りに来て、次の日には本人が来て。上がっていろいろ話をしたら面白い子で、それから時々遊びに来てくれてるんだよ。最近はお酒が飲みたい時にお酒持参でやってくるよ。すっかり仲良しで、ばあさんも可愛がってたんだけどね。かおりさんのお陰で、ばあさんがいなくても寂しがってる暇はなかったな。」
お姉ちゃんはいつの間にかここで役に立っていたらしい。
おばあさんが亡くなったことも知らなかった。
本当に裏の家のことなのに。
「今度一緒に来たらいいよ。」
おじいさんはそう言ってくれた。
「はい。その内に。」
私はそう答えた。
やっぱりお姉ちゃんは外ではちゃんとやれてるんだ。
私より大人で。
ナオとあんは疲れて眠ったらしい。
二匹がくっついて眠っていた。
可愛い。
写真を撮る。
おじいさんも写真を撮って早速委員長に送ったらしい。
私の携帯が鳴った。
『聞いた?今週は一路と泊まりに行きます。三匹揃うね。楽しみ。』
『そうだね。』
そう返信した。
あっさりした返信だった。
「委員長が今週は全員揃うから楽しみだって言ってます。」
「ほう、そっちに連絡が行った?待ってるのに来ないはずだ。」
起きてきたあんをまた籠に入れて家に帰った。
大きくなったら集合することはなくなるんだろうなあ。
猫は縄張りを主張するから、いつまでも兄弟ではいられないと思う。
あと少しかな・・・・。
週末、土曜日の午後に委員長から連絡が来た。
『遊びに来ました。そろそろ来ない?二匹がじゃれ合ってるのを見てるのも楽しいです。』
そう言われるとあんが寂しそうに見える。
また籠に入れて、勉強道具を持って裏の家に行った。
「おじいさんのところに一路と委員長が来たから行ってくる。ついでに勉強教えてもらってくる。」
お母さんにそう言って出かけた。
「これ持って行きなさい。」
お菓子を持たされた。
わざわざ仕事帰りに買ってくれたらしい。
美味しそうなお菓子だった。
「ありがとう。」
梅雨に入っても、あんまり雨が降らなくて、いつも暑い。
朝から水やりが忙しいらしいけど、おじいさんのお野菜はすくすく育ってるらしい。
野菜をおやつの様に出してくれる。
この間のトウモロコシは美味しかった。
切ってないトマトも、薄くもないキュウリも普通に食べられるようになった。
あそこでなら食べられる。
とてもおいしいから。
「こんにちは。」
ドアを開けて声をかけたら、ナオが出てきた。
「どうぞ~。」
奥から委員長の声が聞こえてきた。
「お邪魔します。」
ナオと一緒に籠から出したあんも走って行く。
いつもの部屋に行くと一路も迎えに来てくれた。
「一路、大きくなったね。元気?」
「元気だよ。すくすくデブ猫になりそうなくらい育ってるでしょう?」
委員長が答えてくれた。
「ナオより大きいね。」
「ナオは野菜を食べてるらしいから。うちは皆が勝手におやつをあげたがるんだよ。どんどん贅沢になってるし、困る。」
そう言いながらも小さなおやつのパウチがあるが、あんは食べたことないおいしそうなやつだった。
一度美味しいのを食べさせるとカリカリを食べなくなると聞いた。
私のお小遣いでは贅沢は出来ない。
「委員長、後で宿題の分からないところ教えてもらってもいい?」
「もちろん。」
「こんにちはしおりちゃん。ちゃんと勉強道具持ってきたんだね。」
「はい。分かりやすく教えてくれるからうれしいです。この間のテストも点数が上がりました。これお母さんからお礼です。」
お菓子を差し出した。
「ありがとう。別にいいのに。教えるのは楽しいし、点数が上がったって聞くとやる気が出るなあ。」
「他の人にも教えてるから、皆成績が良くなるかもね。」
この間女子が教わってるのを見た。
「そうなったら問題が難しくなるかも。」
「え~、それは困る。」
何も言わないけど、二人とも、私が思ってる子だった。
一人は友達の紅美ちゃん。
嬉しそうに報告に来た。
『名木君、教えてくれるの上手。分かりやすい。』
その表情も分かりやすかった。
とても言えない。
どうしても言えない。
やっぱり言いたくない。
「猫飼ってる事は誰かに言った?」
「うん、友達には言ったよ。」
じゃあ、その内伝わるね。
見に行きたいって言われるかも。
いいよってなるんだろうなあ。
あんと私は行くことはない。
一路はここに来ないと会えないと思ってる。
今は三匹仲良く追っかけっこをしてる。
すごいスピードで小さい塊が走る。
一匹だとあんは大人しい猫だけど、懐かしい兄弟みんなで遊んでる今は楽しそう。
結局土曜日も日曜日も数時間をおじいさんの家で過ごした。
日曜日のお昼もごちそうになってしまった。
冗談のようにお母さんが楽できていいって言ってた。
手伝いなさいって言われてる。
でもあんまり手伝うことはない。
「一総と一路と遊んでていいよ。運ぶのだけは手伝ってもらうから、声かけるからね。」
「はい。」
そう言って委員長のところに戻る。
「ねえ、夏休みも遊びに来るから。一緒に宿題やろう。」
「うん。」
「ねえ、誰かと毎年花火見に行くの?」
「去年は友達と行った。」
「今年も誘われてる?」
「まだ。」
「地元はきっと友達と行くでしょう?他のところ一緒に行かない?・・・・暇ならおじいちゃんも行くかも。」
「うん。」
本当はうれしくて、そう思って答えてるのに、紅美ちゃんの顔がちらつく。
「無理には誘わないから、大丈夫だよ。」
ちょっと嫌がってると思われただろうか?
別に二人じゃない。
おじいさんも一緒。
じゃあ、いいのに。
内緒の思い出が増えるけど。
絶対目が合わないよう。
それは無理しなければ普通の事だった。
今まで話したことなんてなかったくらい。
私が仲良くしてる友達の中に男の子がいない。
だから特に普通なのだ。
ただ、問題はいつも一緒にいる女の子の友達の中に一人、委員長を好きかもって思う子がいて。
だから・・・・・。
仲がいいのに何故か言い出せない。
逆にその子がおじいちゃん家の仲間に入れたらうれしいと思う、喜んでくれると思う。
そんな笑顔なんて簡単に思い浮かぶのに。
言い出せずにいる。
もしかして勘違いかも。
そう思い込んで。
あの二日後、無事に『あん』は私の家族になった。
家族が揃った夕方には取り合いになるように交代で抱っこして。
ゲージもお皿もリードも、餌も、自分のお金で買った・・・・と言いたいけど、お母さんとお父さんにお金を足してもらった。
姉は『デートでお金がないからゴメンね。』とあんに謝り、私には『はい、これあげる。』とバッグと指輪を持ってきて、その一言で片づけた。
ワンピースはコロコロをかけてスプレーをかけてすっかり私のものになっていた。
結局、あの日のセット丸ごともらったんだからいい。
前の時もときどき気まぐれにご飯とか、おやつを買ってきてくれたし、疲れてしまった時は時々看病も代わってくれたから。
他の二匹は友達家族に引き取られたと言った。
それが裏のおじいさんとその孫とは言ってない。
「ねえねえ、猫の飼い主、男の子でしょう?あの日デートだったの?」
何でそう思ったのか分からない。
「先に同級生が見つけてたの。だから一緒に話し合って決めたの。たまたまだよ。」
「たまたま可愛い服を着ていた時に、たまたま同級生と一緒に猫を見つけたの?」
「うん。ビックリした。」
それは本当だから、別に普通に答えた。
ちょっとだけガッカリしてる気がする。
揶揄いたかったのだろう。
あの服を着てたのはたまたまだ。
掃除のご褒美だし。
そう言えばお礼はなかったな。
随分住みやすいきちんとした部屋になってたはずなのに。
ビックリするほどの変化だったはずなのに。
お礼があのワンピースなら、そっちの方がいいか。
時々お母さんたちのいない時におじいさんの家のナオに会いに行く。
姉が昔にくれた可愛い籠にあんをいれて連れて行く。
二匹が仲良く絡み合うのはとても可愛い。
おじいさんと一緒に眺めながら話をして。
「ナオはあんより大きい。」
「男の子だからなあ。」
そう言われた。
「じゃあ、一路も大きくなったかもしれないですね。」
「今週来るって言ってたよ。一総から何も聞いてない?」
「はい。学校で話をすることはないです。」
「まったく?」
「はい、仲のいい・・・・・友達が・・・・・。」
「友達がどうしたの?」
「委員長の事を好きかもしれないです。何となくそうかなって思ってたくらいで、はっきりは聞いたことはないけど。」
「人気があるかな?兄の一真ほどは、そのあたりは器用そうじゃないなあ。」
「クラスで二人くらい、そんな感じの子がいます。他のクラスの子は知りませんが。もともと私が委員長と話をすることなんてなかったから。」
「これから仲良くもらえしてもらえたらうれしいけど。」
「はい。勉強も分かりやすく教えてくれるし、すごくいい友達です。」
笑顔で答えた。
『その子も連れて来ればいい。』
そうは言われなかったことにホッとした。
あの子は近所というわけじゃない。
委員長の家だって、そう近い訳じゃない?実は知らない。
もし、委員長の家が近かったりしたら、猫を見に行けたかな?
そうじゃなくても仲良くなったら、勉強を教えてもらいたいと言い出せたかな?
すごく上手だから、誰でも苦手な人は教わりたいかも。
「かおりさんは最近来ないけど、デートで忙しいかな?」
「そうみたいです。毎日遅いし、週末はいないことも多いし。」
「相手が社会人だから、週末は一緒に遊びたいんだろうしなあ。」
社会人・・・・・学生じゃないの?
何となく大学生だと思ってた。
大人と付き合ってるの?
家族は誰も知らない。
もはやお姉ちゃんがいなくても気にしないし。
連絡だけはしてくるから、心配してない。
自由で楽しそうなお姉ちゃんが時々羨ましい。
年齢が離れてるから、大人に見える。
掃除もできないし、振る舞いもとても自己中心的でどうしようもないけど、許されてるし、外ではきちんとしてるならいいとして、そんなお姉ちゃんが羨ましい。
あと6年後、私はどうしてるんだろう?
お姉ちゃんは結婚しててもいい年齢。
家から出てるだろう。
きっと私も両親も寂しいと思ってるだろう。
騒がしいお姉ちゃんがいなくなったら、静かな家になるかもしれない。
平和な家の中を物足りなく思うだろうか?
おじいさんも寂しいと思うかもしれない。
私はいつまでここに来ていいんだろう。
「じゃあ、しおりちゃん、今週ここに来れる?」
「・・・・はい。」
「一路と一総が来るのは土曜日の午後らしい。泊りがけで来るって。勉強も教えてもらえるみたいだよ。」
「・・・・宿題があったら、教えてもらいます。」
「うん、お願いしておいた。数学が得意になりたいみたいだって言ったら、凄いやる気を出してる。」
そう言って携帯を見せてくれた。
今やり取りをしてたらしい。
私がぼんやりしてる間に勝手にいろいろと話が進んでた。
私が今ここにいることも伝わってる。
『え~、何でおじいちゃんの方が仲良くしてるの?僕は学校でも全然話もしないのに。』
その会話も読んでしまった。
勝手に孫のように居座る同級生をどう思ってるんだろう。
ここに他にもいて欲しい人はいるんだろうか?
紅美ちゃんの顔が浮かぶ。
「そういえば最初気にしてたけど、一真とかおりさんのあの時の喧嘩は面白かったね。しっかり者といわれてた一真をコテンパンにやっつけて、すごく落ち込んでたよ。ご両親が謝りに来て、次の日には本人が来て。上がっていろいろ話をしたら面白い子で、それから時々遊びに来てくれてるんだよ。最近はお酒が飲みたい時にお酒持参でやってくるよ。すっかり仲良しで、ばあさんも可愛がってたんだけどね。かおりさんのお陰で、ばあさんがいなくても寂しがってる暇はなかったな。」
お姉ちゃんはいつの間にかここで役に立っていたらしい。
おばあさんが亡くなったことも知らなかった。
本当に裏の家のことなのに。
「今度一緒に来たらいいよ。」
おじいさんはそう言ってくれた。
「はい。その内に。」
私はそう答えた。
やっぱりお姉ちゃんは外ではちゃんとやれてるんだ。
私より大人で。
ナオとあんは疲れて眠ったらしい。
二匹がくっついて眠っていた。
可愛い。
写真を撮る。
おじいさんも写真を撮って早速委員長に送ったらしい。
私の携帯が鳴った。
『聞いた?今週は一路と泊まりに行きます。三匹揃うね。楽しみ。』
『そうだね。』
そう返信した。
あっさりした返信だった。
「委員長が今週は全員揃うから楽しみだって言ってます。」
「ほう、そっちに連絡が行った?待ってるのに来ないはずだ。」
起きてきたあんをまた籠に入れて家に帰った。
大きくなったら集合することはなくなるんだろうなあ。
猫は縄張りを主張するから、いつまでも兄弟ではいられないと思う。
あと少しかな・・・・。
週末、土曜日の午後に委員長から連絡が来た。
『遊びに来ました。そろそろ来ない?二匹がじゃれ合ってるのを見てるのも楽しいです。』
そう言われるとあんが寂しそうに見える。
また籠に入れて、勉強道具を持って裏の家に行った。
「おじいさんのところに一路と委員長が来たから行ってくる。ついでに勉強教えてもらってくる。」
お母さんにそう言って出かけた。
「これ持って行きなさい。」
お菓子を持たされた。
わざわざ仕事帰りに買ってくれたらしい。
美味しそうなお菓子だった。
「ありがとう。」
梅雨に入っても、あんまり雨が降らなくて、いつも暑い。
朝から水やりが忙しいらしいけど、おじいさんのお野菜はすくすく育ってるらしい。
野菜をおやつの様に出してくれる。
この間のトウモロコシは美味しかった。
切ってないトマトも、薄くもないキュウリも普通に食べられるようになった。
あそこでなら食べられる。
とてもおいしいから。
「こんにちは。」
ドアを開けて声をかけたら、ナオが出てきた。
「どうぞ~。」
奥から委員長の声が聞こえてきた。
「お邪魔します。」
ナオと一緒に籠から出したあんも走って行く。
いつもの部屋に行くと一路も迎えに来てくれた。
「一路、大きくなったね。元気?」
「元気だよ。すくすくデブ猫になりそうなくらい育ってるでしょう?」
委員長が答えてくれた。
「ナオより大きいね。」
「ナオは野菜を食べてるらしいから。うちは皆が勝手におやつをあげたがるんだよ。どんどん贅沢になってるし、困る。」
そう言いながらも小さなおやつのパウチがあるが、あんは食べたことないおいしそうなやつだった。
一度美味しいのを食べさせるとカリカリを食べなくなると聞いた。
私のお小遣いでは贅沢は出来ない。
「委員長、後で宿題の分からないところ教えてもらってもいい?」
「もちろん。」
「こんにちはしおりちゃん。ちゃんと勉強道具持ってきたんだね。」
「はい。分かりやすく教えてくれるからうれしいです。この間のテストも点数が上がりました。これお母さんからお礼です。」
お菓子を差し出した。
「ありがとう。別にいいのに。教えるのは楽しいし、点数が上がったって聞くとやる気が出るなあ。」
「他の人にも教えてるから、皆成績が良くなるかもね。」
この間女子が教わってるのを見た。
「そうなったら問題が難しくなるかも。」
「え~、それは困る。」
何も言わないけど、二人とも、私が思ってる子だった。
一人は友達の紅美ちゃん。
嬉しそうに報告に来た。
『名木君、教えてくれるの上手。分かりやすい。』
その表情も分かりやすかった。
とても言えない。
どうしても言えない。
やっぱり言いたくない。
「猫飼ってる事は誰かに言った?」
「うん、友達には言ったよ。」
じゃあ、その内伝わるね。
見に行きたいって言われるかも。
いいよってなるんだろうなあ。
あんと私は行くことはない。
一路はここに来ないと会えないと思ってる。
今は三匹仲良く追っかけっこをしてる。
すごいスピードで小さい塊が走る。
一匹だとあんは大人しい猫だけど、懐かしい兄弟みんなで遊んでる今は楽しそう。
結局土曜日も日曜日も数時間をおじいさんの家で過ごした。
日曜日のお昼もごちそうになってしまった。
冗談のようにお母さんが楽できていいって言ってた。
手伝いなさいって言われてる。
でもあんまり手伝うことはない。
「一総と一路と遊んでていいよ。運ぶのだけは手伝ってもらうから、声かけるからね。」
「はい。」
そう言って委員長のところに戻る。
「ねえ、夏休みも遊びに来るから。一緒に宿題やろう。」
「うん。」
「ねえ、誰かと毎年花火見に行くの?」
「去年は友達と行った。」
「今年も誘われてる?」
「まだ。」
「地元はきっと友達と行くでしょう?他のところ一緒に行かない?・・・・暇ならおじいちゃんも行くかも。」
「うん。」
本当はうれしくて、そう思って答えてるのに、紅美ちゃんの顔がちらつく。
「無理には誘わないから、大丈夫だよ。」
ちょっと嫌がってると思われただろうか?
別に二人じゃない。
おじいさんも一緒。
じゃあ、いいのに。
内緒の思い出が増えるけど。
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