すべての事件は裏の家でおきていました。

羽月☆

文字の大きさ
4 / 31

4 暑い夏の日に絡まる子猫と美味しい野菜と内緒にしたい時間

しおりを挟む
学校では全力で知らないふりをしてる。
絶対目が合わないよう。
それは無理しなければ普通の事だった。
今まで話したことなんてなかったくらい。


私が仲良くしてる友達の中に男の子がいない。
だから特に普通なのだ。

ただ、問題はいつも一緒にいる女の子の友達の中に一人、委員長を好きかもって思う子がいて。
だから・・・・・。

仲がいいのに何故か言い出せない。

逆にその子がおじいちゃん家の仲間に入れたらうれしいと思う、喜んでくれると思う。
そんな笑顔なんて簡単に思い浮かぶのに。
言い出せずにいる。

もしかして勘違いかも。

そう思い込んで。


あの二日後、無事に『あん』は私の家族になった。
家族が揃った夕方には取り合いになるように交代で抱っこして。
ゲージもお皿もリードも、餌も、自分のお金で買った・・・・と言いたいけど、お母さんとお父さんにお金を足してもらった。
姉は『デートでお金がないからゴメンね。』とあんに謝り、私には『はい、これあげる。』とバッグと指輪を持ってきて、その一言で片づけた。
ワンピースはコロコロをかけてスプレーをかけてすっかり私のものになっていた。
結局、あの日のセット丸ごともらったんだからいい。


前の時もときどき気まぐれにご飯とか、おやつを買ってきてくれたし、疲れてしまった時は時々看病も代わってくれたから。


他の二匹は友達家族に引き取られたと言った。
それが裏のおじいさんとその孫とは言ってない。


「ねえねえ、猫の飼い主、男の子でしょう?あの日デートだったの?」

何でそう思ったのか分からない。

「先に同級生が見つけてたの。だから一緒に話し合って決めたの。たまたまだよ。」

「たまたま可愛い服を着ていた時に、たまたま同級生と一緒に猫を見つけたの?」

「うん。ビックリした。」

それは本当だから、別に普通に答えた。
ちょっとだけガッカリしてる気がする。
揶揄いたかったのだろう。


あの服を着てたのはたまたまだ。

掃除のご褒美だし。


そう言えばお礼はなかったな。

随分住みやすいきちんとした部屋になってたはずなのに。
ビックリするほどの変化だったはずなのに。

お礼があのワンピースなら、そっちの方がいいか。



時々お母さんたちのいない時におじいさんの家のナオに会いに行く。
姉が昔にくれた可愛い籠にあんをいれて連れて行く。

二匹が仲良く絡み合うのはとても可愛い。

おじいさんと一緒に眺めながら話をして。

「ナオはあんより大きい。」

「男の子だからなあ。」

そう言われた。


「じゃあ、一路も大きくなったかもしれないですね。」

「今週来るって言ってたよ。一総から何も聞いてない?」

「はい。学校で話をすることはないです。」

「まったく?」

「はい、仲のいい・・・・・友達が・・・・・。」

「友達がどうしたの?」

「委員長の事を好きかもしれないです。何となくそうかなって思ってたくらいで、はっきりは聞いたことはないけど。」

「人気があるかな?兄の一真ほどは、そのあたりは器用そうじゃないなあ。」

「クラスで二人くらい、そんな感じの子がいます。他のクラスの子は知りませんが。もともと私が委員長と話をすることなんてなかったから。」

「これから仲良くもらえしてもらえたらうれしいけど。」


「はい。勉強も分かりやすく教えてくれるし、すごくいい友達です。」

笑顔で答えた。


『その子も連れて来ればいい。』
そうは言われなかったことにホッとした。

あの子は近所というわけじゃない。
委員長の家だって、そう近い訳じゃない?実は知らない。
もし、委員長の家が近かったりしたら、猫を見に行けたかな?
そうじゃなくても仲良くなったら、勉強を教えてもらいたいと言い出せたかな?

すごく上手だから、誰でも苦手な人は教わりたいかも。



「かおりさんは最近来ないけど、デートで忙しいかな?」

「そうみたいです。毎日遅いし、週末はいないことも多いし。」

「相手が社会人だから、週末は一緒に遊びたいんだろうしなあ。」

社会人・・・・・学生じゃないの?
何となく大学生だと思ってた。

大人と付き合ってるの?
家族は誰も知らない。

もはやお姉ちゃんがいなくても気にしないし。
連絡だけはしてくるから、心配してない。


自由で楽しそうなお姉ちゃんが時々羨ましい。
年齢が離れてるから、大人に見える。
掃除もできないし、振る舞いもとても自己中心的でどうしようもないけど、許されてるし、外ではきちんとしてるならいいとして、そんなお姉ちゃんが羨ましい。


あと6年後、私はどうしてるんだろう?
お姉ちゃんは結婚しててもいい年齢。
家から出てるだろう。
きっと私も両親も寂しいと思ってるだろう。
騒がしいお姉ちゃんがいなくなったら、静かな家になるかもしれない。
平和な家の中を物足りなく思うだろうか?
おじいさんも寂しいと思うかもしれない。

私はいつまでここに来ていいんだろう。



「じゃあ、しおりちゃん、今週ここに来れる?」

「・・・・はい。」

「一路と一総が来るのは土曜日の午後らしい。泊りがけで来るって。勉強も教えてもらえるみたいだよ。」

「・・・・宿題があったら、教えてもらいます。」

「うん、お願いしておいた。数学が得意になりたいみたいだって言ったら、凄いやる気を出してる。」


そう言って携帯を見せてくれた。

今やり取りをしてたらしい。

私がぼんやりしてる間に勝手にいろいろと話が進んでた。
私が今ここにいることも伝わってる。

『え~、何でおじいちゃんの方が仲良くしてるの?僕は学校でも全然話もしないのに。』

その会話も読んでしまった。
勝手に孫のように居座る同級生をどう思ってるんだろう。


ここに他にもいて欲しい人はいるんだろうか?
紅美ちゃんの顔が浮かぶ。



「そういえば最初気にしてたけど、一真とかおりさんのあの時の喧嘩は面白かったね。しっかり者といわれてた一真をコテンパンにやっつけて、すごく落ち込んでたよ。ご両親が謝りに来て、次の日には本人が来て。上がっていろいろ話をしたら面白い子で、それから時々遊びに来てくれてるんだよ。最近はお酒が飲みたい時にお酒持参でやってくるよ。すっかり仲良しで、ばあさんも可愛がってたんだけどね。かおりさんのお陰で、ばあさんがいなくても寂しがってる暇はなかったな。」


お姉ちゃんはいつの間にかここで役に立っていたらしい。
おばあさんが亡くなったことも知らなかった。
本当に裏の家のことなのに。


「今度一緒に来たらいいよ。」

おじいさんはそう言ってくれた。

「はい。その内に。」

私はそう答えた。

やっぱりお姉ちゃんは外ではちゃんとやれてるんだ。
私より大人で。


ナオとあんは疲れて眠ったらしい。
二匹がくっついて眠っていた。


可愛い。

写真を撮る。

おじいさんも写真を撮って早速委員長に送ったらしい。

私の携帯が鳴った。


『聞いた?今週は一路と泊まりに行きます。三匹揃うね。楽しみ。』

『そうだね。』

そう返信した。

あっさりした返信だった。


「委員長が今週は全員揃うから楽しみだって言ってます。」

「ほう、そっちに連絡が行った?待ってるのに来ないはずだ。」



起きてきたあんをまた籠に入れて家に帰った。

大きくなったら集合することはなくなるんだろうなあ。
猫は縄張りを主張するから、いつまでも兄弟ではいられないと思う。
あと少しかな・・・・。




週末、土曜日の午後に委員長から連絡が来た。

『遊びに来ました。そろそろ来ない?二匹がじゃれ合ってるのを見てるのも楽しいです。』

そう言われるとあんが寂しそうに見える。

また籠に入れて、勉強道具を持って裏の家に行った。

「おじいさんのところに一路と委員長が来たから行ってくる。ついでに勉強教えてもらってくる。」

お母さんにそう言って出かけた。

「これ持って行きなさい。」
お菓子を持たされた。

わざわざ仕事帰りに買ってくれたらしい。
美味しそうなお菓子だった。

「ありがとう。」

梅雨に入っても、あんまり雨が降らなくて、いつも暑い。
朝から水やりが忙しいらしいけど、おじいさんのお野菜はすくすく育ってるらしい。

野菜をおやつの様に出してくれる。
この間のトウモロコシは美味しかった。

切ってないトマトも、薄くもないキュウリも普通に食べられるようになった。
あそこでなら食べられる。
とてもおいしいから。


「こんにちは。」

ドアを開けて声をかけたら、ナオが出てきた。

「どうぞ~。」

奥から委員長の声が聞こえてきた。

「お邪魔します。」

ナオと一緒に籠から出したあんも走って行く。

いつもの部屋に行くと一路も迎えに来てくれた。

「一路、大きくなったね。元気?」

「元気だよ。すくすくデブ猫になりそうなくらい育ってるでしょう?」

委員長が答えてくれた。

「ナオより大きいね。」

「ナオは野菜を食べてるらしいから。うちは皆が勝手におやつをあげたがるんだよ。どんどん贅沢になってるし、困る。」

そう言いながらも小さなおやつのパウチがあるが、あんは食べたことないおいしそうなやつだった。
一度美味しいのを食べさせるとカリカリを食べなくなると聞いた。
私のお小遣いでは贅沢は出来ない。

「委員長、後で宿題の分からないところ教えてもらってもいい?」

「もちろん。」

「こんにちはしおりちゃん。ちゃんと勉強道具持ってきたんだね。」

「はい。分かりやすく教えてくれるからうれしいです。この間のテストも点数が上がりました。これお母さんからお礼です。」

お菓子を差し出した。

「ありがとう。別にいいのに。教えるのは楽しいし、点数が上がったって聞くとやる気が出るなあ。」


「他の人にも教えてるから、皆成績が良くなるかもね。」

この間女子が教わってるのを見た。

「そうなったら問題が難しくなるかも。」

「え~、それは困る。」

何も言わないけど、二人とも、私が思ってる子だった。
一人は友達の紅美ちゃん。
嬉しそうに報告に来た。


『名木君、教えてくれるの上手。分かりやすい。』


その表情も分かりやすかった。
とても言えない。
どうしても言えない。
やっぱり言いたくない。


「猫飼ってる事は誰かに言った?」

「うん、友達には言ったよ。」

じゃあ、その内伝わるね。
見に行きたいって言われるかも。
いいよってなるんだろうなあ。

あんと私は行くことはない。
一路はここに来ないと会えないと思ってる。

今は三匹仲良く追っかけっこをしてる。
すごいスピードで小さい塊が走る。

一匹だとあんは大人しい猫だけど、懐かしい兄弟みんなで遊んでる今は楽しそう。


結局土曜日も日曜日も数時間をおじいさんの家で過ごした。
日曜日のお昼もごちそうになってしまった。
冗談のようにお母さんが楽できていいって言ってた。
手伝いなさいって言われてる。
でもあんまり手伝うことはない。

「一総と一路と遊んでていいよ。運ぶのだけは手伝ってもらうから、声かけるからね。」

「はい。」

そう言って委員長のところに戻る。


「ねえ、夏休みも遊びに来るから。一緒に宿題やろう。」

「うん。」

「ねえ、誰かと毎年花火見に行くの?」

「去年は友達と行った。」

「今年も誘われてる?」

「まだ。」

「地元はきっと友達と行くでしょう?他のところ一緒に行かない?・・・・暇ならおじいちゃんも行くかも。」

「うん。」

本当はうれしくて、そう思って答えてるのに、紅美ちゃんの顔がちらつく。


「無理には誘わないから、大丈夫だよ。」

ちょっと嫌がってると思われただろうか?
別に二人じゃない。
おじいさんも一緒。
じゃあ、いいのに。

内緒の思い出が増えるけど。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?

とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。 高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。 明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!! そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。 「なぁ、俺と結婚しないか?」 直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。 便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。 利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

幼馴染に10年片想いしてたら、冷酷御曹司にプロポーズされました

ほーみ
恋愛
 春の匂いが、駅前の並木道をくすぐる。満開の桜の下、私はひとり歩いていた。駅までの道は、高校時代、彼とよく歩いた道だ。  制服姿の学生が笑いながらすれ違っていくのを横目に、私はスマホを見下ろした。  「今日、伝えるって決めたんじゃなかったの?」  送信したきり返信のないメッセージ。画面には「既読」の文字があるだけだった。  ――渡瀬 湊。私が10年間片想いをしている、幼馴染。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

処理中です...