すべての事件は裏の家でおきていました。

羽月☆

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5 お腹が痛い事 

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委員長と仲いい男の子に聞かれた。

「猫飼い始めたんでしょう。一総のとこの猫の妹なんだって?」


「うん。近くの公園で捨て猫を見つけたの。偶然遊びにきてた委員長と会って、一匹づつもらって、無事に家族になれたの。」


「一総に勉強教えてもらってるんだよね。」


何でそんなことまで教えてるの・・・・内緒にして欲しいのに。

「分からないところがあって。委員長、頭いいから。」

向こうで名前を呼ばれたふりをして「じゃあ。」そういって離れた。



先週はたっぷり三人と三匹と過ごした。
私と二人の時よりもおじいさんも楽しそうで。
当たり前だ、本当の孫だし。
二人より三人、二匹より三匹のほうがにぎやかだし。


夏の花火の話もした。

あと1ヶ月先のこと。

「夏休み、塾のない日はここに来ようかな。泊りがけで。そうしたら会えるね。」

当たり前のように笑顔で言われた。
何も言わなかったら、急いで付け足された。

「ほら、ナオはよくアンと会えるけど、一路だけが一人だから。」

「おじいちゃんの収穫も手伝わないといけないし。」



「そうだね、宿題手伝ってもらいたいなあ。」


「勿論。じゃあ、約束。楽しみだね。」


おじいさんがいない時にそんな会話をした。



私は本当に一人でおじいさんのところにいることが多い。
声をかけていなくても庭に回り、廊下にいるナオに手を振り、アンを放して庭で遊んであげる。

たいてい買い物に行っているだけだからすぐに帰ってきてくれる。

車の音がしたら玄関に回って家に上げてもらう。


「しおりちゃんのおかげだなあ、今年は一総が夏休みにも泊まりに来てくれるって、ちょいちょい週末も来てくれるのにね。」

「私じゃなくて一路のおかげですよ。」

「そういうことかな?」


「もし二人と三匹がいなかったら寂しかったなあ。最近はすっかり幸せらしくて、かおりさんも挨拶で手を振ってくれるくらいだから。危うく寂しい思いをするところだった。ナオはやっぱりばあさんから頼まれた福の神様かもしれないなあ。」

「大切に可愛がってください。」

お姉ちゃんにはまだここに遊びに来てることは言ってない。
お母さんから聞いたかもしれないけど、直接は話はしてない。


偶然が重なってここに来るようになって、楽しかった最初の頃。


でも最近はここに来てもぼんやり考え事をすることが多くなったのかもしれない。


『今日は元気がないかな?』

おじいさんにそう聞かれることがたまにある。

おじいさんがいなくて一人で座っていると、あんやナオを見ていても何も考えてない事がある。



ふと、顔を上げてアンを探したら、背中にナオが乗っていてアンがつぶされそうに見えた。
ナオはいっそうたくましく大きくなっていた。

「あん!・・・・ナオやめて。」

いきなり大きな声で叫んだから、台所にいたおじいさんがびっくりしてきてくれたみたい。

「これ、ナオ。」
びっくりした私もあんに近寄ったから、ナオは離れそうになっていた。

おじいさんがゆっくりナオを抱き上げて離してくれた。

「あん。」

背を低く小さくなってるあんを抱き上げた。
そこから部屋の隅に行ってナオとおじいさんから離れた。

いじめてるんじゃないのは分かった。
喧嘩でもなくて・・・・。
分かっていたけど、嫌だった。


あんを抱きしめて籠を持った。
大きくなったけど体だけなら入るから、大人しく入ってくれてるから。
でも籠に入れないで抱き上げたまま。

「大きな声を出してごめんなさい。」


そう言っておじいさんの家から出た。


家に帰って貯金通帳を持って降りてきた。

ずっと言われてたけど、可哀想だと思って私が嫌がっていた手術。
病気でもないのにお腹が痛いことになる。
あんは大人しいから外には出ないから、そう言って反対してた。

でも多分、駄目みたい。

涙が出てきた。

勝手にお腹を切られるの?

「ごめんね。」


お姉ちゃんがちゃんと説明してくれた。
ほとんどのペットは受けてるし、野良猫もそうなってる。
何度も子供を生むのもすごく猫には大変なことだから、人間と同じで命がけだから、長生きしてもらうためにする人もいるから。
本当に人間の盲腸の手術と同じくらい簡単で、すぐ終るから。
麻酔をされて寝てる間に終わるから。


そう説明されても首を縦に振らなかった。

でもやっぱり駄目だと思った。

お母さんが帰ってくるまであんを抱いたまま、そこにいた。


ただいまとお母さんが帰ってきて、暗い部屋の電気をつけた。
私がいるのを見てびっくりしたみたい。


「やだ、何してるの?しおり、どうしたの?」

「お母さん、やっぱりお腹の手術してもらう。あんには我慢してもらう。」

通帳はテーブルにおいていた。
私が貰ったお年玉をずっと貯めていてくれた通帳。

「そう、いいの?」

「うん。そのほうがいいんだよね。」

「そうね。」

「じゃあ、週末一緒に病院に行きましょう。予約をとるから、何時でもいいの?」

「うん、いい。お願いします。」

「後でね。」


お母さんが買って来たものを冷蔵庫にしまいこみ、ご飯の準備をする。
あんはすっかり腕の中で寝ていた。

最初の頃よりずっと大きくなった。
両手のひらに乗るくらいだったのに。

今はさすがに無理。


お気に入りのあんのソファに寝かせた。
自分で体の場所をちょっと動かしてそのまま目を閉じてる。

手を洗ってお母さんの手伝いをする。

いつもより無言の私がちょっとだけ気になるみたいだけど、手術のことだと思ってるだろう。
あんなに嫌がっていた私が、何で急にそう思ったのかは聞かれなかった。


ただすごく怖かった。
子猫だと思ってたナオがいきなり大人になったみたいで。
あんはまだ子猫だと思ってるし、小さくて怖くて動けないみたいだったし。

それにすごく嫌だった。


ご飯を食べて、お風呂に入って、宿題をさっさと終らせて寝た。



次の日、委員長も避けてるけど、この間声をかけてきた沼田君も避ける。
自分ではそう思ってるけど多分誰も気がつかない。
もともと話はしないから。


昼すぎからすごくお腹が痛くなった。
原因も分かってるから、大人しく保健室に行って寝かせてもらった。

薬を勧められたけど、飲まなかった。

カイロを貰ってお腹に貼って大人しく寝ていた。


昨日早く寝たのに、あんまり眠れなくて。
1時間ぐらいだと思うけどぐっすり眠れた。


午後の授業が終って友達が迎えに来てくれた。
荷物も持ってきてくれた。
午後の授業の分の宿題のプリントとノートのコピーもついていた。
分担で分かりやすく説明も書き込んでくれたらしい。

痛みも落ち着いて起き上がった。

皆にお礼を言って、保健の先生にもお礼を言った。


「ああ、しおりさん、これクラスの子かな、預かったの。ぐっすり寝てるって言ったら帰っていったけど、これを渡して欲しいって言ってた。」

白い袋にポカリスウェットとりんごジュースが入っていた。
自動販売機で買ってきてくれたらしい。

誰だろう?

のぞいた中に手紙が入っていた。
取り出して開こうとしてたら、端の方に書かれた名前が見えた。

友達の中の誰かだと思ってたのに、委員長の名前だった。
『一総』そう書かれていたのが見えた。

当然そこにいた友達も見た。

「委員長?」
「名木君?」

「・・・・・そうみたい。」
顔が赤いかも。

みんなの視線が私に集まってる気がする。

「先生に頼まれたのかな?」
とりあえずそう言った。


心配してくれたのかもしれない。

名前以外に文字が書いてあったけど、今は読めない。

袋に突っ込んで適当にバッグに入れた、あんまり大切に扱ってないフリをした。

「重い。」

小さくつぶやいた。


紅美ちゃんがずっとこちを見てるのにも気がついた。

元気になったように笑顔になって皆で保健室を出た。

廊下の向こうに委員長らしき人がいた気がしたけど、すぐにいなくなったみたい。

学校では本当に声をかけられることはないから。
それはお願いしたし。
そうしてくれている。

多分理由は分かってないと思う。
本当のところの事は気がついてないんだと思う。

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