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23 一総が記憶を思い出したころ
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兄の一真とは三歳違う。
普通に仲は良かったと思う。
丁度兄がしっかり者ぶりたいくらいで、弟は尊敬する先輩に甘えたくなるくらいの年の差だ。
両親が共働きのせいもあり、小さいころから幼稚園のお迎えはおじいちゃんかおばあちゃんに来てもらって、そのままおじいちゃんの家で遊んでて、夕方母親に連れられて帰るパターンが多かった。
体も丈夫で、問題を起こす方でもなく、大人しくおじいちゃんの家でも一人で遊んでいたと思う。
手がかからなかったと思う。
少なくとも兄よりは。
その頃、裏の家に同じ年頃の姉妹がいたらしい。
でも一緒に遊んでた記憶はない。
幼稚園も小学校も一緒じゃなかった。
週末にお姉ちゃんが妹のお世話を頼まれるとよく連れてきていたらしい。
「お姉ちゃんも一人で面倒見るのは嫌だったんだろう。それにやっぱり任されると不安もあるからね。妹がけがをしたり、元気がなかったりしたら、よくおばあちゃんが呼ばれてたよ。お母さんに連絡するよりも先におばあちゃんを呼びに来たから、一回か二回は一緒に病院にも連れて行ったかな?」
たまたま自分たちと会わなかったのか、本当に記憶はない。
それでも兄と姉のほうのかおりさんはお互い記憶があったのだろう。
そしてあの日、事件が起きた。
おじいちゃんもおばあちゃんもいなくて子供だけで遊んでた。
多分買い物にでも行ってたんだろう。
その時点で四人が庭にいた。
やっぱりその前にも遊んだことがあるのだろうか?
兄とかおりさんにも三歳くらいの年の差があった。
生意気で兄っぽさを前面に出してた兄一真と、面倒ながらも信頼されて期待に応えてた姉かおりさん。
よくは分からないけど、気がついたら二人が言い合っていた。
かなり大きな声でお互いを罵倒していた。
かおりさんは年下の兄を圧倒するくらいの豊富なボキャブラリーと勝気な態度で、兄は精一杯の虚勢をはって何とか迎え撃っていた。
ごめんとは言えない兄。
引くに引けないかおりさん?
側で小さな女の子が泣いていた。
妹のしおりちゃんだったと思う。それ以外にはいないだろう。
ビックリして泣いたらしい。
自分は泣きはしないが驚いた。
あの時は兄の相手が凶暴なサイに見えた。
弟はお兄ちゃんを心配していた、今にも弾き飛ばされそうなお兄ちゃんを。
その内二人の距離が近づいてグーで殴り合う、髪を掴む、蹴りが入る。
女の子は逞しく育つらしい・・・・。
兄はまだまだ子供だったのだ・・・・。
そんな事を思ったけど、気がついたら小さな女の子が手を握って来て、いっそう大きな声で泣き出して。
その内座りこんで。
二人が見えないように正面に座って頭を撫でた。
昔、自分が怖がって足が止まった時に兄がよくしてくれたように。
犬におびえる自分、お母さんの迎えが遅くて寂しくて泣きそうになった時の自分に兄がしてくれてたように。
「大丈夫だよ。」
「大丈夫だよ。」
そう繰り返し、おじいちゃんとおばあちゃんが早く帰って来てくれたらいいってずっと思ってた。
その内車の音がして帰ってきてくれた。
すぐに気がついたおじいちゃんに二人は離されて、あっけなく勝負は終わった。
どう見ても兄の方がボロボロだった。
それを見て安心したのか、悔しかったのか、自分も泣きそうになった。
おばあちゃんが隣の小さな女の子を慰めて、手を引いて家に入った。
おじいちゃんが二人両方に謝らせているのを見ながら、自分もおばあちゃんと女の子について家に入った。
やっとドキドキが落ち着いた。
それまでやっぱり怖かったし、不安だったのだ。
大丈夫だって女の子に言いながら自分でも自分に言っていた。
自分も怖くてとても二人を止めたりすることは出来なかった。
一人だったらちょっとくらい泣いてたかも。
「やめてよ~。」
そう言いながら泣いてたかも。
その後の事はあんまりよく覚えてない。
その話はニ、三回おじいちゃんの家でされていた。
兄はもう何とも思ってないのか、ちょっとだけ拗ねるくらいですんでいた。
いろんな話を聞いて記憶もちょっとは脚色されたかもしれない。
別に忘れててもいい記憶、忘れたい事件ではあったから。
きっと兄にとっても、自分以上に。
中学になって久しぶりに思い出した。
「一総、しおりちゃんと同じ中学だってな。可愛いくなってるだろう?」
「誰?」
「裏の家の二人姉妹の妹の方だよ。何度か一緒にここで遊んだりしただろう?」
「まったく、覚えてないけど・・・・・。」
「お姉さんのかおりさんは、一真と殴り合いの喧嘩をしただろう。その時にもいた小さな方の女の子だよ。」
「ああ・・・・・。」
そこまで言われて思い出した。
最初はそんな感じだった。
そう、久しぶりに引っ張り出した古い記憶だった。
だってあれから随分経っていた。
その間一度も会ってないと思う。
「何?同じ中学なの?名前なんだったっけ?」
「小坂かおりちゃんが姉でしおりちゃんが妹。同じ年だよ。しおりちゃんも小さかったし、覚えてるかどうかは分からないなあ。かおりちゃんはあれからよく遊びに来てくれるんだけど、しおりちゃんは全くだね。」
『こさかしおり』覚えておこう。
小さな女の子だと思ったけど同じ年だったのか。
クラスにはいない時点でしゃべる確率は低い。
自分がいきなりしゃべりかけても変だし。
そのまま二年になって、すぐに気がついた。
名前を見て『ああ、小坂しおりがいる。』みたいな感じだった。
どの子だろうってくらいには興味がわいたし、知らない女の子の中では一番に覚えた。
やっと名前と顔が一致したとも言う。
面影と言われても、本当にわからない。
小学生になるかならないかの頃の事件だから。
小学生になっておじいちゃん家に行くのも本当の時々になった。
迎えが必要でなく、一人で留守番もできる年ごろになったからだ。
時々おじいちゃんの家庭菜園を手伝った。
植物を楽しそうに育てるおじいちゃん。
小さいころから採れたての野菜をそのまま齧っていたせいで好き嫌いもない。
頼まれたら収穫の手伝いに行って、大量の野菜を持たされて母親に届ける。
皆が喜ぶのだ。
だから手伝いは嫌いじゃなかった。
小学生の頃におばあちゃんが死んだ。
おじいちゃんがしょんぼりとしていて、両親が心配していて、一番時間がある自分が泊まりに行ったり、顔を出したりした。
時々玄関や庭でおじいちゃんを呼ぶ声がすることがあった。
「おじいちゃん。聞いて~、今日ね・・・・。」
と続く明るい声を覚えるころ、ちょっとだけ顔が見たくて、家の中に入り行儀悪くのぞいた。
てっきり大人だと思っていた。
それは声から若いとは思ってたけど、話の内容がたいていは彼氏の話だったから。
半分以上はうれしい報告、時々文句、残りは世間話、食べ物や芸能人の話やら。
少し話をしていつも帰って行った。
よく考えれば社会人の時間じゃなかったかもしれない。
まさか高校生だったとは。
誰だろう?
「おじいちゃん、随分若い友達だね。高校生だったよ。」
「そうだよ。裏の二人姉妹の女の子。お姉ちゃんのかおりちゃんだよ。」
『姉かおり』
そう認識した。
「仲良しなの?」
「そうだよ、あの一真との喧嘩の後からも仲良しでね、おばあちゃんともよく話をしてたけど、いなくなってからは心配してよく声をかけてくれるんだよ。いい子なんだよ。しおりちゃんはシャイで目が合ってもお辞儀をされたらすぐいなくなるんだけどね、かおりちゃんはあの通り元気だからね。」
おじいちゃんが元気になったのは『姉かおり』によるところが大きいと分かった。
本当に随分元気になったと思う。
良かったと思う。
ちょっとだけ安心していた。
そして中学二年になって『姉かおり』の妹『小坂しおり』
完璧にやっと認識できた。
何となく落ち着いた。
おじいちゃんから話を聞いてても顔が分からなくて想像だけだったから。
それでも話しかけることはなかった。
彼女の方が本当にシャイなのか、友達と話をするのは見ても、滅多に他の人と話をしてるのを見てない。男子はなおさらだ。
時々目で追ってしまうのは、ちょっとだけ知ってるからだ。
『姉かおり』さんとは確かに印象が違う。
同じパワーだったらあの喧嘩の時もめちゃくちゃセコンド並みに応援してたかも。
あの時はさすがに怖がって泣いていたから。
手をつないだり、頭を撫でたり、そんな事をついでに思い出して照れてしまう。
「一総、どうした?」
友達が不審に思ったのだろうか聞いてきた。
「ああ、何でもない。頭が飛んでた。」
「珍しい。なあ、宿題教えて。」
沼田とは一年の頃から同じクラスで仲がいい。
すっかり宿題を教える係になってる。
考え方を教えようとしても手っ取り早く答えを知りたがる。
テストの時に困るのに。
そう何度か言ってるのだが。
梅雨の晴れ間は忙しい。
おじいちゃんの畑仕事を手伝うことになっていた。
何て有意義な週末・・・・。
同じ兄弟でも兄は野菜に何の思い入れもなく、だからか好き嫌いも多い。
美味しいのに。
むしろ変にマヨネーズとかつけなくても、そのままが一番おいしいのに。
皮ごと食べると音も歯ごたえも変わる。
そんな自分を横目で見ながら今日もせっせとピーマンや玉ねぎを皿の端に追い出している。
本当に子供だ。
さすがにそう思う。
そんな面倒な食べ方、いつまでするんだろう。
彼女の前でそんなことしたら呆れられると思うのに。
兄に彼女がいることは聞いた。
うっかり、本当にどんなうっかりだよといいたくなるけど間違ったメッセージがいきなり届いたのだ。
しかも家族みんなに。
一斉に何?何?と吹き出しが付いた。
皆が家にいた週末土曜日のことだった
しばらく沈黙があったあと、『間違い』と吹き出された。
気の毒に、家族みんなそう思っただろう。
夕飯の時には格好の話題となった。
その為に文字では誰も聞かないでいたのだから。
名前まで出して、ちゃらちゃらとデートの約束をしようとした兄。
皆の前で白状させられた。
『姉かおり』さんも高校生で楽しく彼氏とのデートの話をしていたから不思議じゃない。
兄はそれなりにかっこいいかもしれない。
自分とはタイプが違う。
真面目な顔をすればかっこいいかもしれない。
今、両親に根掘り葉掘りと聞かれて真っ赤になってる顔からは想像できないけど。
明日の夕方、兄はデート。
自分は創立記念日で休み。
梅雨の中でも天気はいい予報。
自分はじいちゃんのところで畑仕事なのに・・・・。
別にいいけど。
天気は良くて、家族で兄を送り出した。
嫌な顔をしながらも出て行こうとする兄にお母さんは特別にお小遣いをあげていた。
なんだって~・・・・と思った。
自分も支度をして出かけた。
頭が焼けるからいつも麦わら帽子を借りる。
でもチクチクするから、その下に専用の帽子を持って行く。
お気に入りの赤白ボーダーの可愛い帽子だった。
小学生のころにかぶっていたもので今はボロボロになってきた。
頭のサイズはあんまり変わらないらしい。
雨予報もないので自転車でおじいちゃんの家に行く。
ちなみに出かける時に自分もお小遣いをもらったのでほくほくと笑顔だった。
やはり兄弟は平等に扱われた方がいい。
じいちゃんの服を借りて汚れてもいいようにした。
雨が降らない時にやる仕事がたくさんあるのだ。
収穫をして、雑草を抜いて、新しいものを植えて、ダメになったものを土に埋めて。
雨が降らないと暑い日になる。
汗だくになって、タオルで汗を拭いて、冷えた麦茶を飲んで。
廊下でゴロン、そのまま後ろに倒れた。
疲れた。
余り肉体労働には向いてない。
腕が疲れた腰が疲れた。
横でじいちゃんも同じことを言う。
「今日兄ちゃんはデートなんだ。昨日皆にバレて揶揄われて、すっかり白状させられたんだ。同じ年の違うクラスの美人だって。写真はないって言い張るから見せてもらえてないけど。」
「そうか、一真もやるなあ。」
「兄ちゃんは真面目な顔をするとかっこいいから。」
「まあな、好みだろう。一総は優しそうだし、頭も良さそうだし。そんな子が好きな女の子もいるだろう?」
「知らない。別に誰もそう言ってくれない。」
それでもときどき小坂しおりさんを見てて、近くにいる子と目が合うことがあった。
変な誤解をされないように自然にしてるつもりなのに。
気がつくと目が合う。
気がついてるんだろうか?
まさか彼女に変な事言ってないよな。
ただただお礼が言いたいんだけど。
『姉かおり』さんがおじいちゃんに優しくしてくれて助かってると。
元気をもらってるらしいと。
姉かおりさんは大学生になり、20歳を超えてお酒が解禁になったらしい。
おじいちゃんとたまに飲んでいるらしいことをちらりと聞いた。
一人分じゃないお酒の空瓶が転がってる事があったからだ。
『ああ、裏のかおりちゃんが強くてね。』
そう言っていた。
喧嘩が強いとお酒も強いらしい。
じゃあ酔っぱらって喧嘩をしたらどうなるんだろう。
最強じゃん。
恐ろしい。
妹にもその気はあるのだろうか?
全く性格は違いそうだけど。
そんな事を考えながら見てたこともある。
「じゃあ、じいちゃん、もうひと頑張りしようか?」
「ああ、もう終わりだよ。一気に片付いた。一総のお陰だよ、ありがとう。」
「もう終わり?」
「ああ、そうだよ。」
呆気なかったのだろうか?
せっかく元気を取り戻したのに。
おじいちゃんはまだ伸びている。
起き上がってそのままふらふらと散歩に出て行った。
汚れたじいちゃんの野良着だと言うことをすっかり忘れていた。
こっそり裏の家を見ながら、玄関に『小坂』と書かれていたのを確認した。
しらっとその前を通り過ぎてそのまま歩く。
公園まで来た頃、結構歩いたなとやっと気がついた。
人がいない公園。
せっかく晴れたのに子供たちはどこにいるんだろう?
日陰を歩きながらぼんやりと晴れた空の下の遊具を見る。
ここで遊んだことはあったのだろうか?
まったく記憶がない。
自分一人では来ないけど、おじいちゃんや兄となら来たかもしれない。
そう思ってたら、微かに猫の声が聞こえた。
声のする方に歩いて行く。
段ボールに三匹の子猫がうずくまっていた。
中の一匹が起きだして鳴いたらしい。
見てる間にもう一匹も起きだして、残り一匹はまだ寝てる。
他の二匹が段ボールをよじ登ろうと足を動かし踏みつけられてもまだ寝てる。
このキジトラは根性座ってるなあ。
上から見てるだけでも面白かった。
けど、やっぱり手に取らずにはいられない。
明らかに捨て猫だろう。
まだ雨の日じゃなかっただけでも良心的だと思いたい。
雨の日だったら肺炎を起こしていたかも。
まだまだ子猫だ。
ある程度は親猫が育てたらしいが、まだかわいい子猫だ。
二匹を抱き上げて、腕に乗せて、もう一匹のキジトラを撫でる。
親猫だと思ったのか、目を開けて首を伸ばしてくる。
可愛い、本当に可愛い。
キジトラも抱きあげて三匹抱える。
「どうしようか、お前たち。ここはあんまり人が来ないな。お腹空いてるか?」
答があるわけはないけど、連れて帰るのはどうだろう。
無責任に連れて帰るわけにもいかない。
立ち去りがたくしばらく撫でていた。
後ろで足音がした。
振り向いて、ものすごくびっくりした。
でも向こうはそうでもないらしいかな?
クラスメートだと気がついた自分に遅れて、やっと気がついたらしい?
何で?
小坂しおりさんと小さな温かい塊を撫で合いながら。
結局一匹づつなら飼ってもらえるかもというラッキーな子猫たち。
あとはおじいちゃんに聞いてみるしかない。
多分大丈夫。
一人より誰かいた方がいいよね。
それが猫でも。
一緒におじいちゃんの家に誘った。
そうは言っても裏の家だし。
自分だって中学になって初めて聞いて思い出したんだから。
彼女もあの時の兄弟の一人が僕だとは気がついてないと思う。
おじいちゃんの家につくまでその事は本当に何も言わなかった。
お互いに。
さすがにびっくりしていた。
どう言えばいいのか、言い出せないまま、おじいちゃんに見つかった。
「一総、デートだったのか?」
そんな訳ない。
恥ずかしい。
ただの散歩の途中だよ。
それより今は猫だった。
彼女がおじいちゃんに挨拶する。
顔見知りだからサラリと。
おじいちゃんが猫を飼ってくれると分かって二人ともホッとした。
家に上がってもらう。
おじいちゃんが楽しそうに野菜を洗ってる気がする。
僕はお昼をごちそうになる予定だったし。
その間にいろいろと話をした。当然猫の事だ。
汚い段ボールは外に置いておいた。
おじいちゃんに新しい段ボールを貰った。
手から下ろしたら歩き出して、探検してる。
まだ早く走るほどではないけど、かわいい。
写真を取る。
女の子だった子を彼女がもらうことになった。
日曜日までここに預けて、色々必要なものをみんなで買いに行き、連れて帰ることになった。
それでも手放したくないらしい。ずっと抱いてる。
そしてずっと大人しく抱かれてる。
服にはすっかり猫の毛がついているけど。
自分も着替えをした。
ボーダーの帽子も脱いで、髪の毛をちょっとだけ濡らして整えた。
よく見たら変な恰好だった。
まさかこんな格好でデートする奴はいない。
彼女もいつもの制服と違って印象が変わってた。
どこかに出かけるわけでもないのに、あんなに可愛い恰好をしてたんだろうか?
どこかに出かける予定があったとか?
それでも一緒にお昼ご飯を食べて、話をしてたら、一緒に勉強まですることになって。
出かける予定はなかったらしい。
明日から学校でも話が出来ると喜んだのに、さり気なく猫の話はしないで欲しいと言われた。
理由も聞いたからそうかと思った。
じゃあ、ダメなのか。
でも写真を送る約束をしてたからIDを交換したし、夏休み勉強を教える約束もした。
まだ先だけど楽しみだった。
普通に仲は良かったと思う。
丁度兄がしっかり者ぶりたいくらいで、弟は尊敬する先輩に甘えたくなるくらいの年の差だ。
両親が共働きのせいもあり、小さいころから幼稚園のお迎えはおじいちゃんかおばあちゃんに来てもらって、そのままおじいちゃんの家で遊んでて、夕方母親に連れられて帰るパターンが多かった。
体も丈夫で、問題を起こす方でもなく、大人しくおじいちゃんの家でも一人で遊んでいたと思う。
手がかからなかったと思う。
少なくとも兄よりは。
その頃、裏の家に同じ年頃の姉妹がいたらしい。
でも一緒に遊んでた記憶はない。
幼稚園も小学校も一緒じゃなかった。
週末にお姉ちゃんが妹のお世話を頼まれるとよく連れてきていたらしい。
「お姉ちゃんも一人で面倒見るのは嫌だったんだろう。それにやっぱり任されると不安もあるからね。妹がけがをしたり、元気がなかったりしたら、よくおばあちゃんが呼ばれてたよ。お母さんに連絡するよりも先におばあちゃんを呼びに来たから、一回か二回は一緒に病院にも連れて行ったかな?」
たまたま自分たちと会わなかったのか、本当に記憶はない。
それでも兄と姉のほうのかおりさんはお互い記憶があったのだろう。
そしてあの日、事件が起きた。
おじいちゃんもおばあちゃんもいなくて子供だけで遊んでた。
多分買い物にでも行ってたんだろう。
その時点で四人が庭にいた。
やっぱりその前にも遊んだことがあるのだろうか?
兄とかおりさんにも三歳くらいの年の差があった。
生意気で兄っぽさを前面に出してた兄一真と、面倒ながらも信頼されて期待に応えてた姉かおりさん。
よくは分からないけど、気がついたら二人が言い合っていた。
かなり大きな声でお互いを罵倒していた。
かおりさんは年下の兄を圧倒するくらいの豊富なボキャブラリーと勝気な態度で、兄は精一杯の虚勢をはって何とか迎え撃っていた。
ごめんとは言えない兄。
引くに引けないかおりさん?
側で小さな女の子が泣いていた。
妹のしおりちゃんだったと思う。それ以外にはいないだろう。
ビックリして泣いたらしい。
自分は泣きはしないが驚いた。
あの時は兄の相手が凶暴なサイに見えた。
弟はお兄ちゃんを心配していた、今にも弾き飛ばされそうなお兄ちゃんを。
その内二人の距離が近づいてグーで殴り合う、髪を掴む、蹴りが入る。
女の子は逞しく育つらしい・・・・。
兄はまだまだ子供だったのだ・・・・。
そんな事を思ったけど、気がついたら小さな女の子が手を握って来て、いっそう大きな声で泣き出して。
その内座りこんで。
二人が見えないように正面に座って頭を撫でた。
昔、自分が怖がって足が止まった時に兄がよくしてくれたように。
犬におびえる自分、お母さんの迎えが遅くて寂しくて泣きそうになった時の自分に兄がしてくれてたように。
「大丈夫だよ。」
「大丈夫だよ。」
そう繰り返し、おじいちゃんとおばあちゃんが早く帰って来てくれたらいいってずっと思ってた。
その内車の音がして帰ってきてくれた。
すぐに気がついたおじいちゃんに二人は離されて、あっけなく勝負は終わった。
どう見ても兄の方がボロボロだった。
それを見て安心したのか、悔しかったのか、自分も泣きそうになった。
おばあちゃんが隣の小さな女の子を慰めて、手を引いて家に入った。
おじいちゃんが二人両方に謝らせているのを見ながら、自分もおばあちゃんと女の子について家に入った。
やっとドキドキが落ち着いた。
それまでやっぱり怖かったし、不安だったのだ。
大丈夫だって女の子に言いながら自分でも自分に言っていた。
自分も怖くてとても二人を止めたりすることは出来なかった。
一人だったらちょっとくらい泣いてたかも。
「やめてよ~。」
そう言いながら泣いてたかも。
その後の事はあんまりよく覚えてない。
その話はニ、三回おじいちゃんの家でされていた。
兄はもう何とも思ってないのか、ちょっとだけ拗ねるくらいですんでいた。
いろんな話を聞いて記憶もちょっとは脚色されたかもしれない。
別に忘れててもいい記憶、忘れたい事件ではあったから。
きっと兄にとっても、自分以上に。
中学になって久しぶりに思い出した。
「一総、しおりちゃんと同じ中学だってな。可愛いくなってるだろう?」
「誰?」
「裏の家の二人姉妹の妹の方だよ。何度か一緒にここで遊んだりしただろう?」
「まったく、覚えてないけど・・・・・。」
「お姉さんのかおりさんは、一真と殴り合いの喧嘩をしただろう。その時にもいた小さな方の女の子だよ。」
「ああ・・・・・。」
そこまで言われて思い出した。
最初はそんな感じだった。
そう、久しぶりに引っ張り出した古い記憶だった。
だってあれから随分経っていた。
その間一度も会ってないと思う。
「何?同じ中学なの?名前なんだったっけ?」
「小坂かおりちゃんが姉でしおりちゃんが妹。同じ年だよ。しおりちゃんも小さかったし、覚えてるかどうかは分からないなあ。かおりちゃんはあれからよく遊びに来てくれるんだけど、しおりちゃんは全くだね。」
『こさかしおり』覚えておこう。
小さな女の子だと思ったけど同じ年だったのか。
クラスにはいない時点でしゃべる確率は低い。
自分がいきなりしゃべりかけても変だし。
そのまま二年になって、すぐに気がついた。
名前を見て『ああ、小坂しおりがいる。』みたいな感じだった。
どの子だろうってくらいには興味がわいたし、知らない女の子の中では一番に覚えた。
やっと名前と顔が一致したとも言う。
面影と言われても、本当にわからない。
小学生になるかならないかの頃の事件だから。
小学生になっておじいちゃん家に行くのも本当の時々になった。
迎えが必要でなく、一人で留守番もできる年ごろになったからだ。
時々おじいちゃんの家庭菜園を手伝った。
植物を楽しそうに育てるおじいちゃん。
小さいころから採れたての野菜をそのまま齧っていたせいで好き嫌いもない。
頼まれたら収穫の手伝いに行って、大量の野菜を持たされて母親に届ける。
皆が喜ぶのだ。
だから手伝いは嫌いじゃなかった。
小学生の頃におばあちゃんが死んだ。
おじいちゃんがしょんぼりとしていて、両親が心配していて、一番時間がある自分が泊まりに行ったり、顔を出したりした。
時々玄関や庭でおじいちゃんを呼ぶ声がすることがあった。
「おじいちゃん。聞いて~、今日ね・・・・。」
と続く明るい声を覚えるころ、ちょっとだけ顔が見たくて、家の中に入り行儀悪くのぞいた。
てっきり大人だと思っていた。
それは声から若いとは思ってたけど、話の内容がたいていは彼氏の話だったから。
半分以上はうれしい報告、時々文句、残りは世間話、食べ物や芸能人の話やら。
少し話をしていつも帰って行った。
よく考えれば社会人の時間じゃなかったかもしれない。
まさか高校生だったとは。
誰だろう?
「おじいちゃん、随分若い友達だね。高校生だったよ。」
「そうだよ。裏の二人姉妹の女の子。お姉ちゃんのかおりちゃんだよ。」
『姉かおり』
そう認識した。
「仲良しなの?」
「そうだよ、あの一真との喧嘩の後からも仲良しでね、おばあちゃんともよく話をしてたけど、いなくなってからは心配してよく声をかけてくれるんだよ。いい子なんだよ。しおりちゃんはシャイで目が合ってもお辞儀をされたらすぐいなくなるんだけどね、かおりちゃんはあの通り元気だからね。」
おじいちゃんが元気になったのは『姉かおり』によるところが大きいと分かった。
本当に随分元気になったと思う。
良かったと思う。
ちょっとだけ安心していた。
そして中学二年になって『姉かおり』の妹『小坂しおり』
完璧にやっと認識できた。
何となく落ち着いた。
おじいちゃんから話を聞いてても顔が分からなくて想像だけだったから。
それでも話しかけることはなかった。
彼女の方が本当にシャイなのか、友達と話をするのは見ても、滅多に他の人と話をしてるのを見てない。男子はなおさらだ。
時々目で追ってしまうのは、ちょっとだけ知ってるからだ。
『姉かおり』さんとは確かに印象が違う。
同じパワーだったらあの喧嘩の時もめちゃくちゃセコンド並みに応援してたかも。
あの時はさすがに怖がって泣いていたから。
手をつないだり、頭を撫でたり、そんな事をついでに思い出して照れてしまう。
「一総、どうした?」
友達が不審に思ったのだろうか聞いてきた。
「ああ、何でもない。頭が飛んでた。」
「珍しい。なあ、宿題教えて。」
沼田とは一年の頃から同じクラスで仲がいい。
すっかり宿題を教える係になってる。
考え方を教えようとしても手っ取り早く答えを知りたがる。
テストの時に困るのに。
そう何度か言ってるのだが。
梅雨の晴れ間は忙しい。
おじいちゃんの畑仕事を手伝うことになっていた。
何て有意義な週末・・・・。
同じ兄弟でも兄は野菜に何の思い入れもなく、だからか好き嫌いも多い。
美味しいのに。
むしろ変にマヨネーズとかつけなくても、そのままが一番おいしいのに。
皮ごと食べると音も歯ごたえも変わる。
そんな自分を横目で見ながら今日もせっせとピーマンや玉ねぎを皿の端に追い出している。
本当に子供だ。
さすがにそう思う。
そんな面倒な食べ方、いつまでするんだろう。
彼女の前でそんなことしたら呆れられると思うのに。
兄に彼女がいることは聞いた。
うっかり、本当にどんなうっかりだよといいたくなるけど間違ったメッセージがいきなり届いたのだ。
しかも家族みんなに。
一斉に何?何?と吹き出しが付いた。
皆が家にいた週末土曜日のことだった
しばらく沈黙があったあと、『間違い』と吹き出された。
気の毒に、家族みんなそう思っただろう。
夕飯の時には格好の話題となった。
その為に文字では誰も聞かないでいたのだから。
名前まで出して、ちゃらちゃらとデートの約束をしようとした兄。
皆の前で白状させられた。
『姉かおり』さんも高校生で楽しく彼氏とのデートの話をしていたから不思議じゃない。
兄はそれなりにかっこいいかもしれない。
自分とはタイプが違う。
真面目な顔をすればかっこいいかもしれない。
今、両親に根掘り葉掘りと聞かれて真っ赤になってる顔からは想像できないけど。
明日の夕方、兄はデート。
自分は創立記念日で休み。
梅雨の中でも天気はいい予報。
自分はじいちゃんのところで畑仕事なのに・・・・。
別にいいけど。
天気は良くて、家族で兄を送り出した。
嫌な顔をしながらも出て行こうとする兄にお母さんは特別にお小遣いをあげていた。
なんだって~・・・・と思った。
自分も支度をして出かけた。
頭が焼けるからいつも麦わら帽子を借りる。
でもチクチクするから、その下に専用の帽子を持って行く。
お気に入りの赤白ボーダーの可愛い帽子だった。
小学生のころにかぶっていたもので今はボロボロになってきた。
頭のサイズはあんまり変わらないらしい。
雨予報もないので自転車でおじいちゃんの家に行く。
ちなみに出かける時に自分もお小遣いをもらったのでほくほくと笑顔だった。
やはり兄弟は平等に扱われた方がいい。
じいちゃんの服を借りて汚れてもいいようにした。
雨が降らない時にやる仕事がたくさんあるのだ。
収穫をして、雑草を抜いて、新しいものを植えて、ダメになったものを土に埋めて。
雨が降らないと暑い日になる。
汗だくになって、タオルで汗を拭いて、冷えた麦茶を飲んで。
廊下でゴロン、そのまま後ろに倒れた。
疲れた。
余り肉体労働には向いてない。
腕が疲れた腰が疲れた。
横でじいちゃんも同じことを言う。
「今日兄ちゃんはデートなんだ。昨日皆にバレて揶揄われて、すっかり白状させられたんだ。同じ年の違うクラスの美人だって。写真はないって言い張るから見せてもらえてないけど。」
「そうか、一真もやるなあ。」
「兄ちゃんは真面目な顔をするとかっこいいから。」
「まあな、好みだろう。一総は優しそうだし、頭も良さそうだし。そんな子が好きな女の子もいるだろう?」
「知らない。別に誰もそう言ってくれない。」
それでもときどき小坂しおりさんを見てて、近くにいる子と目が合うことがあった。
変な誤解をされないように自然にしてるつもりなのに。
気がつくと目が合う。
気がついてるんだろうか?
まさか彼女に変な事言ってないよな。
ただただお礼が言いたいんだけど。
『姉かおり』さんがおじいちゃんに優しくしてくれて助かってると。
元気をもらってるらしいと。
姉かおりさんは大学生になり、20歳を超えてお酒が解禁になったらしい。
おじいちゃんとたまに飲んでいるらしいことをちらりと聞いた。
一人分じゃないお酒の空瓶が転がってる事があったからだ。
『ああ、裏のかおりちゃんが強くてね。』
そう言っていた。
喧嘩が強いとお酒も強いらしい。
じゃあ酔っぱらって喧嘩をしたらどうなるんだろう。
最強じゃん。
恐ろしい。
妹にもその気はあるのだろうか?
全く性格は違いそうだけど。
そんな事を考えながら見てたこともある。
「じゃあ、じいちゃん、もうひと頑張りしようか?」
「ああ、もう終わりだよ。一気に片付いた。一総のお陰だよ、ありがとう。」
「もう終わり?」
「ああ、そうだよ。」
呆気なかったのだろうか?
せっかく元気を取り戻したのに。
おじいちゃんはまだ伸びている。
起き上がってそのままふらふらと散歩に出て行った。
汚れたじいちゃんの野良着だと言うことをすっかり忘れていた。
こっそり裏の家を見ながら、玄関に『小坂』と書かれていたのを確認した。
しらっとその前を通り過ぎてそのまま歩く。
公園まで来た頃、結構歩いたなとやっと気がついた。
人がいない公園。
せっかく晴れたのに子供たちはどこにいるんだろう?
日陰を歩きながらぼんやりと晴れた空の下の遊具を見る。
ここで遊んだことはあったのだろうか?
まったく記憶がない。
自分一人では来ないけど、おじいちゃんや兄となら来たかもしれない。
そう思ってたら、微かに猫の声が聞こえた。
声のする方に歩いて行く。
段ボールに三匹の子猫がうずくまっていた。
中の一匹が起きだして鳴いたらしい。
見てる間にもう一匹も起きだして、残り一匹はまだ寝てる。
他の二匹が段ボールをよじ登ろうと足を動かし踏みつけられてもまだ寝てる。
このキジトラは根性座ってるなあ。
上から見てるだけでも面白かった。
けど、やっぱり手に取らずにはいられない。
明らかに捨て猫だろう。
まだ雨の日じゃなかっただけでも良心的だと思いたい。
雨の日だったら肺炎を起こしていたかも。
まだまだ子猫だ。
ある程度は親猫が育てたらしいが、まだかわいい子猫だ。
二匹を抱き上げて、腕に乗せて、もう一匹のキジトラを撫でる。
親猫だと思ったのか、目を開けて首を伸ばしてくる。
可愛い、本当に可愛い。
キジトラも抱きあげて三匹抱える。
「どうしようか、お前たち。ここはあんまり人が来ないな。お腹空いてるか?」
答があるわけはないけど、連れて帰るのはどうだろう。
無責任に連れて帰るわけにもいかない。
立ち去りがたくしばらく撫でていた。
後ろで足音がした。
振り向いて、ものすごくびっくりした。
でも向こうはそうでもないらしいかな?
クラスメートだと気がついた自分に遅れて、やっと気がついたらしい?
何で?
小坂しおりさんと小さな温かい塊を撫で合いながら。
結局一匹づつなら飼ってもらえるかもというラッキーな子猫たち。
あとはおじいちゃんに聞いてみるしかない。
多分大丈夫。
一人より誰かいた方がいいよね。
それが猫でも。
一緒におじいちゃんの家に誘った。
そうは言っても裏の家だし。
自分だって中学になって初めて聞いて思い出したんだから。
彼女もあの時の兄弟の一人が僕だとは気がついてないと思う。
おじいちゃんの家につくまでその事は本当に何も言わなかった。
お互いに。
さすがにびっくりしていた。
どう言えばいいのか、言い出せないまま、おじいちゃんに見つかった。
「一総、デートだったのか?」
そんな訳ない。
恥ずかしい。
ただの散歩の途中だよ。
それより今は猫だった。
彼女がおじいちゃんに挨拶する。
顔見知りだからサラリと。
おじいちゃんが猫を飼ってくれると分かって二人ともホッとした。
家に上がってもらう。
おじいちゃんが楽しそうに野菜を洗ってる気がする。
僕はお昼をごちそうになる予定だったし。
その間にいろいろと話をした。当然猫の事だ。
汚い段ボールは外に置いておいた。
おじいちゃんに新しい段ボールを貰った。
手から下ろしたら歩き出して、探検してる。
まだ早く走るほどではないけど、かわいい。
写真を取る。
女の子だった子を彼女がもらうことになった。
日曜日までここに預けて、色々必要なものをみんなで買いに行き、連れて帰ることになった。
それでも手放したくないらしい。ずっと抱いてる。
そしてずっと大人しく抱かれてる。
服にはすっかり猫の毛がついているけど。
自分も着替えをした。
ボーダーの帽子も脱いで、髪の毛をちょっとだけ濡らして整えた。
よく見たら変な恰好だった。
まさかこんな格好でデートする奴はいない。
彼女もいつもの制服と違って印象が変わってた。
どこかに出かけるわけでもないのに、あんなに可愛い恰好をしてたんだろうか?
どこかに出かける予定があったとか?
それでも一緒にお昼ご飯を食べて、話をしてたら、一緒に勉強まですることになって。
出かける予定はなかったらしい。
明日から学校でも話が出来ると喜んだのに、さり気なく猫の話はしないで欲しいと言われた。
理由も聞いたからそうかと思った。
じゃあ、ダメなのか。
でも写真を送る約束をしてたからIDを交換したし、夏休み勉強を教える約束もした。
まだ先だけど楽しみだった。
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