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24 一総が目にする、花火の下で揺れる花柄
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週末、どちらかはおじいちゃんのところに来た。
ナオに会いに、一路を会わせるために。
その前に彼女に連絡をすると、たいてい合わせてあんを連れてきてくれた。
三匹を遊ばせてる間、一緒に勉強したり、おじいちゃんと話をしたり。
彼女が来る前にソワソワと待っていたらしい。
大人しく普通に待ってるつもりでも、おじいちゃんにそう言われた。
その通りです。
「しおりちゃんのおかげで孫までも毎週来てくれるようになって、楽しいなあ。週末が充実するなあ。」
「別に、ナオと一路が寂しくないようにだよ。あんはナオと会おうと思えばいつでも会えるだろうけど。一路は僕が連れてこないと会えないから。」
「ふんふん。」
おじいちゃんはわざとそう言ったのだろう。
彼女がいない時で良かった。
僕だってここに来るのを楽しみにしてる。
ナオとあんと会うのも、彼女と会って話をするのも、一緒に勉強するのも、全部。
隠してるのに、隠せてないならしょうがない。
だって、今でも学校では全く視線すら合わない。
話しかけられることもない。
避けられてる気がするくらいだ。
何でだろう?
そんなに?
沼田と話をしてて勉強を教えたことがバレてしまった。
別に沼田にも教えてる・・・答えを。
その話が巡ったのか、急に勉強を教えて欲しいと言う女子が増えた。
中には便乗して答えを写す男子もいる。
沼田タイプだ。
だけど他の子はちゃんと聞いてくれる。
分かりやすいと褒められたら、それはうれしいけど。
週末いつものように三人と三匹で集合する。
夏休みのことを話した。
宿題を一緒にしようと誘ってみた。
ついでに花火の話もしてみた。
昨日、兄が彼女と行く花火を考え中だと聞いた。
そうか・・・・と思った。
誘ってみてもいいかな?
夜だから、おじいちゃんも誘って保護者同伴ならご両親も許してくれるかも。
そんなに遠い所は行かないし、見るのも人混みの多い所じゃなくても、近くからじゃなくていい。
ちょっとくらい音がズレても、人混みは迷子になるし、危険だから。
そう誘ったら『うん』とは答えてくれた。
ちょっとうれしそうな表情とは違う気がしたけど。
ある日、おじいちゃんから連絡が来た。
『最近しおりちゃんが元気ない、どうしたんだろう?』
残念だけどおじいちゃんが知らない事は僕も知らない。
『分からない。学校では普通だと思う。』
そう言った。役に立たない孫で、クラスメートです。
でもそんなかな?
そして別の日、またおじいちゃんからの連絡だった。
『さっきまであんとしおりちゃんがいたけど、ナオがあんを襲ってしまって、しおりちゃんがあんを抱いて飛んで帰ってしまいました。すごく怖がってたし、もう来てくれないかも。よく謝ってくれるか?』
おじいちゃんがしょんぼりうなだれる様子が思い浮かぶ。
『様子を見よう。僕も謝る。』
そう返した。
いきなりあんと彼女がおじいちゃんのところに行かなくなったらきっと寂しがるから。
それは可哀想だ。
すっかり若い友達に慣れてるから。
次の日、午後から彼女が教室にいなかった。
保健室に行ったと聞いたから、ジュースを買ってお見舞いに行ってみた。
保健室にお見舞いなんて、それが変わってるなんて思いもしなくて、寝てると聞いて先生に預けた。
メモに名前を書いてちょっとだけ文章も書いて一緒にいれた。
結局午後は全部の授業を休んだ。
どうしたんだろう。
保健室の先生は心配ないよって小さい声で言ってた。
元気ないって言ってたおじいちゃんの方が正しかったのだろう。
僕は全然気がついてなかったのに。
その後もなかなか話が出来ないでいたし、ナオのことも謝れずにいる状態で。
やっぱり明らかに避けられてる。
ガッカリした。
自分の方が元気がなくなる。
放課後に、友達と別れて職員室に行くと言う声が聞こえてきて、チャンスだと思った。
そっと時間差で教室を出て外で待っていた。
ビックリしたらしくて僕を職員室に通してくれようとしてくれたけど、違う。
「話がしたいんだけど。」
名前を呼んで、そう伝えた。
「おじいちゃんが元気がなくて。」
それも付け加えた。
ずるかったかもしれないけど。
「分かった。」
そう言われて歩き出した彼女の後をゆっくりとついて行く。
教室を出て、門を出て。
ある程度学校から離れたところで横に並んで話をした。
立ち止まってくれた彼女からジュースのお礼を言われた。
あんの手術をすることになったと教えられた。
しばらく行けない事と、ちょっと前にビックリして帰ったことをおじいちゃんに謝っておいてと。
それだけ言って走って行った。
僕の話は?
僕も話があったのに、何も話はしてないじゃないか。
そう思った。
さっきのはただのお礼と伝言だよ・・・・・。
遠くに走った彼女を追いかけるわけにもいかなかった。
週末、もう一度連絡してみたけど、やっぱり同じ答えだった。
手術は無事に終わって帰って来てるらしい。
寂しい週末だった。
本当に。
自分ではそんなつもりはなかった。
沼田に猫の話と数学の話をちょっとだけしたらバレてしまった。
クラスのみんなにバレてしまった。
でも彼女と僕のおじいちゃんが友達だって話が主だったから、学校でも全然話をしない自分と彼女に何かを言う奴はいなかった。
そして自分に勉強を教えて欲しいとお願いする子はやはりいた。
休み時間を使って、普通に教える。
分かりやすいとは言われる。
相変わらず褒められると喜んでしまうけど、それが良くなかったらしい。
彼女がおじいちゃんに言ったそうだ。
『委員長に教わりたい子はたくさんいるから、自分は邪魔しないように塾に行く。』と。
全然違うのに。
おじいちゃんが気の毒な顔をして自分を見る。
彼女はあんを連れて来ることはなくなったけど、時々は顔を出してはくれるらしい。
それは決まって平日の夕方なんだけど。
まだ塾は始まってないのに。
週末は何をしてるんだろう?
夏休み前のテストが返って来た。
彼女が成績が上がってたと喜んでる声が聞こえた。
良かったね、そう言ってあげたいけど、自分のお陰ではないから、多分言わない。
何て意地が悪いんだろう。
だって、彼女も数学のことくらいは僕に報告してくれてもいいのに・・・・・。
ちょっとだけ思ったりもした。
夏休みが迫ってくる。もうすぐだ。
せっかく一緒に勉強する予定だったのに、すべて白紙になった。
じゃあ、花火は?
もちろん無理だろう。
「ねえ、名木君。夏休み誰かと花火に行くの?」
「うん、誘ってるけど。まだ分からない、返事待ち。」
「そうなんだ。遊んだりとかも。」
「うん、出来たら誘いたいと思ってるんだけど、どうかな?自分の塾もあるし。宿題もいっぱいでなんだかんだ忙しいよね。絶対遊ばせないためだね。お互い楽しめたらいいね。」
そう言った。それくらいなら誰にでも言える。クラスメートだし。
女子でも男子でも。
花火もきっと白紙だろう。
三週間も塾に行くらしい。自習室で勉強するって張り切ってるらしい。
全部おじいちゃんが教えてくれた。
何も言えない。頑張ってねとも、なんとも。
そんなチャンスすらないから。
あったら少しは何か言えるのに。
でも、もしかして・・・・・嫌われたのかな?
猫のことを言ってしまったし。
内緒にって頼まれてたのに。
夏休みが始まっても相変わらずだった。
じいちゃん経由の情報を転がすのみ。
元気らしい。あんも彼女も。
塾に友達が出来て、猫が好きだからあんに会いに来てくれるのが楽しみだと教えてくれたらしい。
そんな事もあるかもね。
塾で友達。
自分が通う塾では話をすることはあっても、遊びに行くまではなかった。
よっぽど仲良くなったのだろう。
そう思った。
そんなある日、駅で彼女を見かけた。
偶然を喜んだ。
そう思った後、すごくびっくりして、がっかりした。
彼女はこっちに気がつかない。途中まで近寄ったのに。
彼女の視線は隣の男に向いていた。
仲良く話をしてる、すごく楽しそうに。
塾のある日だと思う。
まさか・・・塾の友達が男だとは少しも思ってなかった。
てっきり女の子だとばっかり思ってた。
猫好きの友達、確かにそれしか聞いてない。
男でも当てはまる条件だけど、勝手に女の子だと思ったのは自分だった。
背中を向けて気づかれないように急いで離れた。
さすがにおじいちゃんに心配された。
「どうした?一総。」
「ねえ、おじいちゃん、彼女の塾の友達は男の子かもしれないよね。」
「う~ん、それはないと思うけど。将来動物病院の看護師さんになりたい人って言ってたから、まあ、いなくはない・・・・・、いるかな?女の子だと思うけど。」
「そんな事直接聞けばいいのに。」
「無理だって。本当にここ以外で話をすることもないんだから。」
「一総がそれで満足できないなら、ちゃんとそう言えばいいのに。」
ここでも学校でもない所、あるだろうか?ある?
公園とか?
「聞いといてやるよ。女の子だと思うけどなあ。」
それが友達の女の子だとしたら、さっきの相手は誰だろう。
別に友達が一人とは限らない。
毎日増えるかもしれない。
その中に男の子がいるかもしれない。
「あ、やっぱり女の子だな。萌ちゃんって言ってるな。すまん、忘れてた。」
昔のログを見返してくれたらしい。
ここでも話をして、携帯で連絡もとり合うらしい。
おじいちゃん、それはずるい。
僕よりずっと近い友達じゃん。
地域での花火の日。
本当に花火の『は』の字も言いだす事なく。
ぼんやりとしてた約束はすべてゼロになった気がした。
他の友達とも約束はしてなかった。
仕方なくおじいちゃんのところに行った。
「おう、何だ普通の恰好をして。かおりちゃんもしおりちゃんも浴衣を着て可愛かったぞ。写真撮れば良かったかな?」
ナオを構いながら猫パンチを受けながら聞き流す。
「帰りは通るから会って褒めればいいよ。」
いつ帰ってくるか分からないのに、庭で蚊に刺されながらずっと待つ自分。
変だし。
避けられてるし。急ぎ足で走って行かれたら、立ち直れない。
結局塾の友達の女の子にあんを紹介したらしい。
あの男が誰かは分からないまま。
「暇ならイカ焼きでも買ってきてもらおうかな?」
「一総も食べたいものを買って来ればいいし。」
そう言われてお金を渡された。
少し涼しくなってるけど、会場となった学校はすごく混んでいて、とりあえずイカ焼きだけ買って、うんざりした。
こんなに人がいるんだから、知った顔に会いそうだけど、誰にも声をかけられなかった。
この中にいるんだろう。
浴衣を着て可愛くなってる彼女が。
ぼんやりして人の来ない所を歩いていたら、携帯に照らし出された顔にビックリした。
思わず近寄って声をかけた。
「しおりさん。」
ビックリして顔をあげられた。
そりゃあそうだろう。偶然が過ぎるよな。
よくわかったねと言われた。
あんの写真を見てたらしい。
ちょっと冗談のように話しをして。
思ったよりちゃんと話をしてくれる。
久しぶりなのに、気がついてるんだろうか?
そのまま横にいる時に花火が始まった。
友達と離れ離れになったらしい。
一緒に見ると言ってそのまま横にいた。
暗い中、空高く上がった花火の明かりが闇を照らす。
音がやむとまたしばらく暗くなる。
花火の明かりに、浴衣の華がぼんやりと浮かぶ。
可愛いと思う。
おじいちゃんが褒めていたよ、そう教えたいけど、時々じっと見つめられる目が勝手に自分の期待を乗せてる気がして。
出来るだけ頭上の花火だけを見て話をしてた。
天気もよくて少し風がある日。
それは絶好の花火空で、雲にも邪魔されず、煙もゆっくり吹き飛んで。
すごくいい日だった。
最後にドドドンと鳴り続ける花火。
終わった後、放送があった。
彼女の携帯には友達から連絡があったらしい。
急いで向かおうとするのを止めた。
おじいちゃんのところで待ってると伝えた。
来てほしいと。
そう言う気持ちで誘った。
ちょっと決めかねたような返事だったけど、来てくれるかもと思った。
彼女と別れて急いでイカ焼きを届けた。
冷えてもまた焼けばいいから。
「彼女に偶然会ったよ。友達とはぐれて一人でいたのを見つけて、一緒に見てきた。」
「遅いと思ったら。」
「終わったら待ってるから来てほしいと声をかけたよ。」
おじいちゃんの眉が器用に上がった。
「上出来じゃないか。」
笑われた。
「それじゃあ、迎えに行けばいい。一人は寂しい道だし、バスに乗るとは限らないから。もしすれ違ったら連絡するから、引き留めてるから。」
迎えに行こうとしたら手をひかれた。
着替えをすればいいから。
あっという間に浴衣に着替えさせられた。
そのまま歩いて学校に向かう。
本当にこれでバスに乗って帰ってくるなんてことになったらがっかりだけど。
駅もバスも混んでるだろう。
きっと歩いて帰って来てくれる。
公園にたどり着いた。
すれ違ってはいない。
携帯に連絡もない。
柵にもたれてぼんやりする。
向こうから足音がしてきた。
そのたびに顔をあげて、ガッカリして地面を見る。
そうして数組、数人を見送った。
大丈夫だろうか?
違う道を通って、おじいちゃんの家にも寄らずに自宅に帰ってるとかは?
それでも見覚えのあるシルエットが浮かんだ。
一人だった。
バッグをちょっとだけ振りながら、下駄の踵で音を出すように歩いてくる。
うれしくて立ち上がって近寄ったら、すごくびっくりされた。
暗いから迎えに来たと告げた。
一緒に並んで帰る。
本当に暗くて寂しい道だった。
昼間なら明るくて静かだろうけど、夜は確かに寂しい。
一緒にいてもらえて良かったと言われた。
おじいちゃんに感謝だ。
揺れる袖が視界に入り、大きな花が街灯の明かりの中で動く。
すごく気になってしまう。
いつもと違う服がこんなに印象を変えるなんて。
つい姿を見ようとしてしまって目が合う。
誤魔化すように話をしようとするけど、思いつかないタイミングもある。
それでも時々話をしながら歩いた。
楽しい時間だったと思ってもらえたらうれしい。
おじいちゃんの家に上がってもらい、写真も撮って、最後に裏の家まで送った時に一緒に勉強しようと誘った。
考えるようにしながらもうなずいてくれて、明日のお昼ごろにと約束をした。
やっと最初の予定みたいな夏休みになる。
週末は自分の塾もない曜日だから。
ずうっと、付き合える。
浴衣の裾が乱れるくらいにご機嫌で裏の家に帰った。
次の日、知らない女の人の声がして玄関に出た。
若い女の人、見覚えがある。
その後ろに彼女の顔、少しごめんねって言うようなそんな顔。
やっぱり。
本当に通い慣れてる感じで、話をしながら奥に行った『姉かおり』さん。
明らかに申し訳なさそうな顔をした彼女を促す。
おじいちゃんが一層喜んだ。
裏の可愛い姉妹がやっと2人そろった!そう満足そうだった。
いきなりお礼を言われた。
「あの時はありがとう。しおりをずっと慰めてくれたんだよね。」
いきなりされた話はずっと昔の話だった。
『あの時』とはやっぱり『あの事件の時』だろう。
戦い最中の兄姉は脇目も振らず敵に夢中だったと思ったのに、こっちのことまで見ていたなんて、余裕ありありだったらしい。
まったく思い当たらない彼女。
しょうがない、泣くほどビックリしたことで他の事なんて覚えてないんだろう。
お姉さんに言われてもピンと来てないみたいだった。
それでもサラリとお礼を言われた。
お姉さんがデートだと帰って行って、お昼ご飯にした。
お昼の後は約束通り勉強を。
単純に興味がないらしく本当に覚える気力が湧いてこないようだった。
特に歴史。
一生懸命面白さを説明したつもりなのに、まったくピンとこないらしい。
今ではご当地キャラクターとか仮装っぽい人がいたりして盛り上がり、『歴女』なんて言葉もあるけど、もともとゲームなども男子がはまりそうな感じだった。
今はもっと二次元でもイケメン漫画風で女子受けしそうだ。
漫画もゲームも今一つらしい彼女に今度漫画を貸してあげることにした。
そうしてまた未来に約束の種をまいた。
おやつにおじいちゃんの焼きもろこしを豪快に食べながら、どこかに遊びに行こうと誘った・・・・おじいちゃんが、半分無理やり・・・・かもしれないが。
あと少しの夏休みの中で実現するのだろうか?
具体的な話は全くでなかった。
未来はやっぱり分からない。
兄の写真を見ながら話をしていたら、あの日の記憶が刺激されたらしい。
改めてお礼を言われた。
思い出してくれたのが嬉しかった。
ぼんやりとした記憶かもしれないけど、その中ではすごく近くに一緒にいたから。
兄の事をかっこいいと言う彼女、少しがっかりな気持ちもしてたけど、その兄があの日の記憶を引き出してくれたんだとしたらお礼を言いたい。
ナオに会いに、一路を会わせるために。
その前に彼女に連絡をすると、たいてい合わせてあんを連れてきてくれた。
三匹を遊ばせてる間、一緒に勉強したり、おじいちゃんと話をしたり。
彼女が来る前にソワソワと待っていたらしい。
大人しく普通に待ってるつもりでも、おじいちゃんにそう言われた。
その通りです。
「しおりちゃんのおかげで孫までも毎週来てくれるようになって、楽しいなあ。週末が充実するなあ。」
「別に、ナオと一路が寂しくないようにだよ。あんはナオと会おうと思えばいつでも会えるだろうけど。一路は僕が連れてこないと会えないから。」
「ふんふん。」
おじいちゃんはわざとそう言ったのだろう。
彼女がいない時で良かった。
僕だってここに来るのを楽しみにしてる。
ナオとあんと会うのも、彼女と会って話をするのも、一緒に勉強するのも、全部。
隠してるのに、隠せてないならしょうがない。
だって、今でも学校では全く視線すら合わない。
話しかけられることもない。
避けられてる気がするくらいだ。
何でだろう?
そんなに?
沼田と話をしてて勉強を教えたことがバレてしまった。
別に沼田にも教えてる・・・答えを。
その話が巡ったのか、急に勉強を教えて欲しいと言う女子が増えた。
中には便乗して答えを写す男子もいる。
沼田タイプだ。
だけど他の子はちゃんと聞いてくれる。
分かりやすいと褒められたら、それはうれしいけど。
週末いつものように三人と三匹で集合する。
夏休みのことを話した。
宿題を一緒にしようと誘ってみた。
ついでに花火の話もしてみた。
昨日、兄が彼女と行く花火を考え中だと聞いた。
そうか・・・・と思った。
誘ってみてもいいかな?
夜だから、おじいちゃんも誘って保護者同伴ならご両親も許してくれるかも。
そんなに遠い所は行かないし、見るのも人混みの多い所じゃなくても、近くからじゃなくていい。
ちょっとくらい音がズレても、人混みは迷子になるし、危険だから。
そう誘ったら『うん』とは答えてくれた。
ちょっとうれしそうな表情とは違う気がしたけど。
ある日、おじいちゃんから連絡が来た。
『最近しおりちゃんが元気ない、どうしたんだろう?』
残念だけどおじいちゃんが知らない事は僕も知らない。
『分からない。学校では普通だと思う。』
そう言った。役に立たない孫で、クラスメートです。
でもそんなかな?
そして別の日、またおじいちゃんからの連絡だった。
『さっきまであんとしおりちゃんがいたけど、ナオがあんを襲ってしまって、しおりちゃんがあんを抱いて飛んで帰ってしまいました。すごく怖がってたし、もう来てくれないかも。よく謝ってくれるか?』
おじいちゃんがしょんぼりうなだれる様子が思い浮かぶ。
『様子を見よう。僕も謝る。』
そう返した。
いきなりあんと彼女がおじいちゃんのところに行かなくなったらきっと寂しがるから。
それは可哀想だ。
すっかり若い友達に慣れてるから。
次の日、午後から彼女が教室にいなかった。
保健室に行ったと聞いたから、ジュースを買ってお見舞いに行ってみた。
保健室にお見舞いなんて、それが変わってるなんて思いもしなくて、寝てると聞いて先生に預けた。
メモに名前を書いてちょっとだけ文章も書いて一緒にいれた。
結局午後は全部の授業を休んだ。
どうしたんだろう。
保健室の先生は心配ないよって小さい声で言ってた。
元気ないって言ってたおじいちゃんの方が正しかったのだろう。
僕は全然気がついてなかったのに。
その後もなかなか話が出来ないでいたし、ナオのことも謝れずにいる状態で。
やっぱり明らかに避けられてる。
ガッカリした。
自分の方が元気がなくなる。
放課後に、友達と別れて職員室に行くと言う声が聞こえてきて、チャンスだと思った。
そっと時間差で教室を出て外で待っていた。
ビックリしたらしくて僕を職員室に通してくれようとしてくれたけど、違う。
「話がしたいんだけど。」
名前を呼んで、そう伝えた。
「おじいちゃんが元気がなくて。」
それも付け加えた。
ずるかったかもしれないけど。
「分かった。」
そう言われて歩き出した彼女の後をゆっくりとついて行く。
教室を出て、門を出て。
ある程度学校から離れたところで横に並んで話をした。
立ち止まってくれた彼女からジュースのお礼を言われた。
あんの手術をすることになったと教えられた。
しばらく行けない事と、ちょっと前にビックリして帰ったことをおじいちゃんに謝っておいてと。
それだけ言って走って行った。
僕の話は?
僕も話があったのに、何も話はしてないじゃないか。
そう思った。
さっきのはただのお礼と伝言だよ・・・・・。
遠くに走った彼女を追いかけるわけにもいかなかった。
週末、もう一度連絡してみたけど、やっぱり同じ答えだった。
手術は無事に終わって帰って来てるらしい。
寂しい週末だった。
本当に。
自分ではそんなつもりはなかった。
沼田に猫の話と数学の話をちょっとだけしたらバレてしまった。
クラスのみんなにバレてしまった。
でも彼女と僕のおじいちゃんが友達だって話が主だったから、学校でも全然話をしない自分と彼女に何かを言う奴はいなかった。
そして自分に勉強を教えて欲しいとお願いする子はやはりいた。
休み時間を使って、普通に教える。
分かりやすいとは言われる。
相変わらず褒められると喜んでしまうけど、それが良くなかったらしい。
彼女がおじいちゃんに言ったそうだ。
『委員長に教わりたい子はたくさんいるから、自分は邪魔しないように塾に行く。』と。
全然違うのに。
おじいちゃんが気の毒な顔をして自分を見る。
彼女はあんを連れて来ることはなくなったけど、時々は顔を出してはくれるらしい。
それは決まって平日の夕方なんだけど。
まだ塾は始まってないのに。
週末は何をしてるんだろう?
夏休み前のテストが返って来た。
彼女が成績が上がってたと喜んでる声が聞こえた。
良かったね、そう言ってあげたいけど、自分のお陰ではないから、多分言わない。
何て意地が悪いんだろう。
だって、彼女も数学のことくらいは僕に報告してくれてもいいのに・・・・・。
ちょっとだけ思ったりもした。
夏休みが迫ってくる。もうすぐだ。
せっかく一緒に勉強する予定だったのに、すべて白紙になった。
じゃあ、花火は?
もちろん無理だろう。
「ねえ、名木君。夏休み誰かと花火に行くの?」
「うん、誘ってるけど。まだ分からない、返事待ち。」
「そうなんだ。遊んだりとかも。」
「うん、出来たら誘いたいと思ってるんだけど、どうかな?自分の塾もあるし。宿題もいっぱいでなんだかんだ忙しいよね。絶対遊ばせないためだね。お互い楽しめたらいいね。」
そう言った。それくらいなら誰にでも言える。クラスメートだし。
女子でも男子でも。
花火もきっと白紙だろう。
三週間も塾に行くらしい。自習室で勉強するって張り切ってるらしい。
全部おじいちゃんが教えてくれた。
何も言えない。頑張ってねとも、なんとも。
そんなチャンスすらないから。
あったら少しは何か言えるのに。
でも、もしかして・・・・・嫌われたのかな?
猫のことを言ってしまったし。
内緒にって頼まれてたのに。
夏休みが始まっても相変わらずだった。
じいちゃん経由の情報を転がすのみ。
元気らしい。あんも彼女も。
塾に友達が出来て、猫が好きだからあんに会いに来てくれるのが楽しみだと教えてくれたらしい。
そんな事もあるかもね。
塾で友達。
自分が通う塾では話をすることはあっても、遊びに行くまではなかった。
よっぽど仲良くなったのだろう。
そう思った。
そんなある日、駅で彼女を見かけた。
偶然を喜んだ。
そう思った後、すごくびっくりして、がっかりした。
彼女はこっちに気がつかない。途中まで近寄ったのに。
彼女の視線は隣の男に向いていた。
仲良く話をしてる、すごく楽しそうに。
塾のある日だと思う。
まさか・・・塾の友達が男だとは少しも思ってなかった。
てっきり女の子だとばっかり思ってた。
猫好きの友達、確かにそれしか聞いてない。
男でも当てはまる条件だけど、勝手に女の子だと思ったのは自分だった。
背中を向けて気づかれないように急いで離れた。
さすがにおじいちゃんに心配された。
「どうした?一総。」
「ねえ、おじいちゃん、彼女の塾の友達は男の子かもしれないよね。」
「う~ん、それはないと思うけど。将来動物病院の看護師さんになりたい人って言ってたから、まあ、いなくはない・・・・・、いるかな?女の子だと思うけど。」
「そんな事直接聞けばいいのに。」
「無理だって。本当にここ以外で話をすることもないんだから。」
「一総がそれで満足できないなら、ちゃんとそう言えばいいのに。」
ここでも学校でもない所、あるだろうか?ある?
公園とか?
「聞いといてやるよ。女の子だと思うけどなあ。」
それが友達の女の子だとしたら、さっきの相手は誰だろう。
別に友達が一人とは限らない。
毎日増えるかもしれない。
その中に男の子がいるかもしれない。
「あ、やっぱり女の子だな。萌ちゃんって言ってるな。すまん、忘れてた。」
昔のログを見返してくれたらしい。
ここでも話をして、携帯で連絡もとり合うらしい。
おじいちゃん、それはずるい。
僕よりずっと近い友達じゃん。
地域での花火の日。
本当に花火の『は』の字も言いだす事なく。
ぼんやりとしてた約束はすべてゼロになった気がした。
他の友達とも約束はしてなかった。
仕方なくおじいちゃんのところに行った。
「おう、何だ普通の恰好をして。かおりちゃんもしおりちゃんも浴衣を着て可愛かったぞ。写真撮れば良かったかな?」
ナオを構いながら猫パンチを受けながら聞き流す。
「帰りは通るから会って褒めればいいよ。」
いつ帰ってくるか分からないのに、庭で蚊に刺されながらずっと待つ自分。
変だし。
避けられてるし。急ぎ足で走って行かれたら、立ち直れない。
結局塾の友達の女の子にあんを紹介したらしい。
あの男が誰かは分からないまま。
「暇ならイカ焼きでも買ってきてもらおうかな?」
「一総も食べたいものを買って来ればいいし。」
そう言われてお金を渡された。
少し涼しくなってるけど、会場となった学校はすごく混んでいて、とりあえずイカ焼きだけ買って、うんざりした。
こんなに人がいるんだから、知った顔に会いそうだけど、誰にも声をかけられなかった。
この中にいるんだろう。
浴衣を着て可愛くなってる彼女が。
ぼんやりして人の来ない所を歩いていたら、携帯に照らし出された顔にビックリした。
思わず近寄って声をかけた。
「しおりさん。」
ビックリして顔をあげられた。
そりゃあそうだろう。偶然が過ぎるよな。
よくわかったねと言われた。
あんの写真を見てたらしい。
ちょっと冗談のように話しをして。
思ったよりちゃんと話をしてくれる。
久しぶりなのに、気がついてるんだろうか?
そのまま横にいる時に花火が始まった。
友達と離れ離れになったらしい。
一緒に見ると言ってそのまま横にいた。
暗い中、空高く上がった花火の明かりが闇を照らす。
音がやむとまたしばらく暗くなる。
花火の明かりに、浴衣の華がぼんやりと浮かぶ。
可愛いと思う。
おじいちゃんが褒めていたよ、そう教えたいけど、時々じっと見つめられる目が勝手に自分の期待を乗せてる気がして。
出来るだけ頭上の花火だけを見て話をしてた。
天気もよくて少し風がある日。
それは絶好の花火空で、雲にも邪魔されず、煙もゆっくり吹き飛んで。
すごくいい日だった。
最後にドドドンと鳴り続ける花火。
終わった後、放送があった。
彼女の携帯には友達から連絡があったらしい。
急いで向かおうとするのを止めた。
おじいちゃんのところで待ってると伝えた。
来てほしいと。
そう言う気持ちで誘った。
ちょっと決めかねたような返事だったけど、来てくれるかもと思った。
彼女と別れて急いでイカ焼きを届けた。
冷えてもまた焼けばいいから。
「彼女に偶然会ったよ。友達とはぐれて一人でいたのを見つけて、一緒に見てきた。」
「遅いと思ったら。」
「終わったら待ってるから来てほしいと声をかけたよ。」
おじいちゃんの眉が器用に上がった。
「上出来じゃないか。」
笑われた。
「それじゃあ、迎えに行けばいい。一人は寂しい道だし、バスに乗るとは限らないから。もしすれ違ったら連絡するから、引き留めてるから。」
迎えに行こうとしたら手をひかれた。
着替えをすればいいから。
あっという間に浴衣に着替えさせられた。
そのまま歩いて学校に向かう。
本当にこれでバスに乗って帰ってくるなんてことになったらがっかりだけど。
駅もバスも混んでるだろう。
きっと歩いて帰って来てくれる。
公園にたどり着いた。
すれ違ってはいない。
携帯に連絡もない。
柵にもたれてぼんやりする。
向こうから足音がしてきた。
そのたびに顔をあげて、ガッカリして地面を見る。
そうして数組、数人を見送った。
大丈夫だろうか?
違う道を通って、おじいちゃんの家にも寄らずに自宅に帰ってるとかは?
それでも見覚えのあるシルエットが浮かんだ。
一人だった。
バッグをちょっとだけ振りながら、下駄の踵で音を出すように歩いてくる。
うれしくて立ち上がって近寄ったら、すごくびっくりされた。
暗いから迎えに来たと告げた。
一緒に並んで帰る。
本当に暗くて寂しい道だった。
昼間なら明るくて静かだろうけど、夜は確かに寂しい。
一緒にいてもらえて良かったと言われた。
おじいちゃんに感謝だ。
揺れる袖が視界に入り、大きな花が街灯の明かりの中で動く。
すごく気になってしまう。
いつもと違う服がこんなに印象を変えるなんて。
つい姿を見ようとしてしまって目が合う。
誤魔化すように話をしようとするけど、思いつかないタイミングもある。
それでも時々話をしながら歩いた。
楽しい時間だったと思ってもらえたらうれしい。
おじいちゃんの家に上がってもらい、写真も撮って、最後に裏の家まで送った時に一緒に勉強しようと誘った。
考えるようにしながらもうなずいてくれて、明日のお昼ごろにと約束をした。
やっと最初の予定みたいな夏休みになる。
週末は自分の塾もない曜日だから。
ずうっと、付き合える。
浴衣の裾が乱れるくらいにご機嫌で裏の家に帰った。
次の日、知らない女の人の声がして玄関に出た。
若い女の人、見覚えがある。
その後ろに彼女の顔、少しごめんねって言うようなそんな顔。
やっぱり。
本当に通い慣れてる感じで、話をしながら奥に行った『姉かおり』さん。
明らかに申し訳なさそうな顔をした彼女を促す。
おじいちゃんが一層喜んだ。
裏の可愛い姉妹がやっと2人そろった!そう満足そうだった。
いきなりお礼を言われた。
「あの時はありがとう。しおりをずっと慰めてくれたんだよね。」
いきなりされた話はずっと昔の話だった。
『あの時』とはやっぱり『あの事件の時』だろう。
戦い最中の兄姉は脇目も振らず敵に夢中だったと思ったのに、こっちのことまで見ていたなんて、余裕ありありだったらしい。
まったく思い当たらない彼女。
しょうがない、泣くほどビックリしたことで他の事なんて覚えてないんだろう。
お姉さんに言われてもピンと来てないみたいだった。
それでもサラリとお礼を言われた。
お姉さんがデートだと帰って行って、お昼ご飯にした。
お昼の後は約束通り勉強を。
単純に興味がないらしく本当に覚える気力が湧いてこないようだった。
特に歴史。
一生懸命面白さを説明したつもりなのに、まったくピンとこないらしい。
今ではご当地キャラクターとか仮装っぽい人がいたりして盛り上がり、『歴女』なんて言葉もあるけど、もともとゲームなども男子がはまりそうな感じだった。
今はもっと二次元でもイケメン漫画風で女子受けしそうだ。
漫画もゲームも今一つらしい彼女に今度漫画を貸してあげることにした。
そうしてまた未来に約束の種をまいた。
おやつにおじいちゃんの焼きもろこしを豪快に食べながら、どこかに遊びに行こうと誘った・・・・おじいちゃんが、半分無理やり・・・・かもしれないが。
あと少しの夏休みの中で実現するのだろうか?
具体的な話は全くでなかった。
未来はやっぱり分からない。
兄の写真を見ながら話をしていたら、あの日の記憶が刺激されたらしい。
改めてお礼を言われた。
思い出してくれたのが嬉しかった。
ぼんやりとした記憶かもしれないけど、その中ではすごく近くに一緒にいたから。
兄の事をかっこいいと言う彼女、少しがっかりな気持ちもしてたけど、その兄があの日の記憶を引き出してくれたんだとしたらお礼を言いたい。
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