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3 彼女の事情と私の事情 ~響の見過ごせない事~
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最初の新人研修の時に思った。
見るからに騙されそうだった。
最初からシャイを体現したような、存在の薄さと一歩引いた感じ。
どうしたらあそこまで個性的に、ある意味個性的になれるのか。
たいていそのあたり、うまくしようとする努力と、ちょっとした自己主張と演技力を兼ね備えて大人になるはずなのに。
ある意味では素直にそのまま、ありのまま。
今までもそれで来れたんだから幸せかもね。
そんなことを思ってた。
結局一言も会話せずに終わった。
だって大体わたしも偉そうには言えない。
十分観察できるくらい離れたところにいた、これまた私も一人で。
誰も私に近寄ってこようとはせず、無言の研修期間を過ごした。
あの日は本当に偶然だった。
仕事終わりに買い物をして、普段行かないエリアをふらふらしてた。
前方の横断歩道、向こうの通りへ渡る二人に見覚えがあった。
あぁ。
アイツはろくでもない、よりによって彼女に手を出さなくてもいいだろうに。
ため息をついた。
でも嬉しそうにアイツを見上げる顔を見てたら、私が何かを言えるわけもない。
どうしようもないアイツの噂は彼女まで届いてないらしい。
ほんとに嫌な気分にさせる奴め。
それから数ヶ月、真実はとうとう彼女の耳にも届いたらしい。
離れて座っていた私の耳にも届いた。
最悪の真実だけど、いっそさっぱり絶ちきれるだろう。
大勢の中の一人に過ぎないと知ったんだから。
どうしようもない奴とこき下ろされてる。
その分少しはすっきりと諦められるだろう。
それでも落ち込んで見える彼女に声をかけた。
混乱の極み!そんな顔をしていた。
そして今、目の前にいる。
どうしても話をしたかった。
中途半端に声をかけて余計な心配をさせてるかもしれない。
その心配は取り除いてあげたい。
我ながら、珍しい世話焼きぶりを見せたと思う。
今ではたった一人残った同期の女子社員。
一年過ぎただけ、その間に少なかった女子は結局ボロボロと辞めて行った。
そして二人。うまく迎合できないハグレ者のふたりが残った。
どうせなら仲良くしてもいいじゃない?
勝手に思い、そのきっかけにしたのかもしれない。
友達としても、面倒なさそうなタイプ。
ちょっと頼られるくらいはあるだろうけど、うるさく馴れ馴れしくしてくることもなさそう。
大体無駄な合コンに引っ張り出されることもないだろう。
私を利用するなんて考えもしないようなタイプ。
そんな友達がいい。
見るからに騙されそうだった。
最初からシャイを体現したような、存在の薄さと一歩引いた感じ。
どうしたらあそこまで個性的に、ある意味個性的になれるのか。
たいていそのあたり、うまくしようとする努力と、ちょっとした自己主張と演技力を兼ね備えて大人になるはずなのに。
ある意味では素直にそのまま、ありのまま。
今までもそれで来れたんだから幸せかもね。
そんなことを思ってた。
結局一言も会話せずに終わった。
だって大体わたしも偉そうには言えない。
十分観察できるくらい離れたところにいた、これまた私も一人で。
誰も私に近寄ってこようとはせず、無言の研修期間を過ごした。
あの日は本当に偶然だった。
仕事終わりに買い物をして、普段行かないエリアをふらふらしてた。
前方の横断歩道、向こうの通りへ渡る二人に見覚えがあった。
あぁ。
アイツはろくでもない、よりによって彼女に手を出さなくてもいいだろうに。
ため息をついた。
でも嬉しそうにアイツを見上げる顔を見てたら、私が何かを言えるわけもない。
どうしようもないアイツの噂は彼女まで届いてないらしい。
ほんとに嫌な気分にさせる奴め。
それから数ヶ月、真実はとうとう彼女の耳にも届いたらしい。
離れて座っていた私の耳にも届いた。
最悪の真実だけど、いっそさっぱり絶ちきれるだろう。
大勢の中の一人に過ぎないと知ったんだから。
どうしようもない奴とこき下ろされてる。
その分少しはすっきりと諦められるだろう。
それでも落ち込んで見える彼女に声をかけた。
混乱の極み!そんな顔をしていた。
そして今、目の前にいる。
どうしても話をしたかった。
中途半端に声をかけて余計な心配をさせてるかもしれない。
その心配は取り除いてあげたい。
我ながら、珍しい世話焼きぶりを見せたと思う。
今ではたった一人残った同期の女子社員。
一年過ぎただけ、その間に少なかった女子は結局ボロボロと辞めて行った。
そして二人。うまく迎合できないハグレ者のふたりが残った。
どうせなら仲良くしてもいいじゃない?
勝手に思い、そのきっかけにしたのかもしれない。
友達としても、面倒なさそうなタイプ。
ちょっと頼られるくらいはあるだろうけど、うるさく馴れ馴れしくしてくることもなさそう。
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そんな友達がいい。
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