苦手なものを克服する一番いい方法は?

羽月☆

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15 雨が上がって虹が出る。その時ふと思ったこと。

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次の日、やっぱり直接原市さんにはお礼を言った。
だってわざわざ感想を求めてやってきたから、お礼から入るし。
近くに来る頻度は全く変わらず、マイペースでこっそり励まされてるような、背中を押されてるような私。

今、一体自分がどういう状況なのか、一度整理したいところだ。
だって週末遊びに行こうと普通に誘われた。

『ほら、潤君に太郎を紹介するって、午後の散歩がないからゆっくりでいいんだ。土曜日にちょっとだけ遠出しよう。』

そう誘われた。
なんとなく椎名ちゃんの手の平の上?
郷里さんに引っついて私も乗っかってる?

そして私もうれしくてもちろん予定した。

「どこに行きたいですか?」

『やっぱり・・・・・どこがいいかな?』

聞いてくれても、ちょっとわからない。遠出ってどのくらいを想定してるの?

『せっかくだから海と夜景、遅くなっていいなら、大丈夫?』

「はい。大丈夫です。」

『温泉つけちゃうと離れ離れだしね、やっぱり限られてくるね。』

一人で温泉に入って・・・二時間後集合とか?
さすがに無い。

あとは海沿いのどのあたりかの問題。
まあ、本当に候補は少ない。
それでも久しぶりで楽しみ、遠出!
天気が心配だったけど、何とかお昼間は持ちそう。
夜の夜景がちょっと残念かも。
でもビルの中からなら多少の雨でもいいから。




傘は折りたたみを持っていた。
ただ本当に急に降ってきた。
傘を出すより当然走り出す方が先。
まだビルの中にいるより外にいたい時間だった。
予報では昼の間は晴れるはずだったのに・・・・。
皆が一斉に屋根の下に逃げ込んだ感じだった。
風がちょっとだけ気持ち良くて、建物とは離れていたから、走ったけど結構濡れた。

上着は手にしていて、薄いワンピースが濡れた。
肌にはりついて冷たいし、気持ち悪い。
アスファルトの上だったので酷い水撥ねはしてない。
取りあえず屋根の下でハンカチで拭いて、両腕をさするように乾かす。
体温で乾くくらいの薄い生地だ。
乾いたら上着を羽織ればいい。

でも自分を抱くように腕をさする私はとても寒そうな子猿にでも見えたのかもしれない。
気の毒そうな顔をして見られた。

「大丈夫、阿里ちゃん?」

「大丈夫ですよ。薄い生地なので体温で乾きます。そうしたら上着を着ます。」

「郷里さんは大丈夫ですか?」

私より雨に近くて標的が大きい?
髪が濡れている。
ハンカチを手にしてるけど、もっと拭いたほうがいいのに。
ハンカチを取りあげて、雫の落ちそうな横髪を拭こうとした。
ちょっとびっくりされた。
ただ、残念!見えてるところでも届かなかった。
背伸びしたのにあとちょっと遠かった。雫だけ取れた感じだ。
だからハンカチをそっと抜き取られて自分で拭き始めた郷里さん。

「暖かいものが飲みたいですね。でも中は涼しいから今入ったら風邪ひきそうです。」

雫を拭き終わった郷里さんが、後ろに立った。

「阿里ちゃん、ちょっとだけそのままで。」

後ろから緩く体が近づいて、シャツを広げて濡れてない部分で覆ってくれた。
ビックリしたけど動けない。声も出なかったから良かった。
俯いて隣近所を見る。
いつの間にか人は減ったらしい。
既に中に入って暖かいコーヒーでも手にしてるのかもしれない。
簡単に包まれるくらい小さい私は郷里さんの体温をもらって、徐々に服も乾いてきた気がする。

「郷里さんが濡れます。」

「大丈夫。あと少しで乾くかも。出来たらこのままでいて。」

「はい。」

シャツを貸してくれても良かった気もするけど、濡れてるのかも。


Tシャツ越しに心音も聞こえる。
それはちょうど耳のあたりだった。
そのリズムに温かく包まれて。
緩く肩のあたりで巻き付いた腕に自分の手を乗せた。
その冷たい私の手を覆うように、さらに大きな手がかぶさる。
前に頭に乗せられた手だった。大きいし、暖かい。


そんなの分かってるけど。

冷えていた体も温まり、手の平も暖かくなった。

雨も小降りになって来た。

乾いた気もするけど、どうなんだろう?
重なった手の平を少し自分に寄せたら、少し力を入れられた。

「阿里ちゃん、本当に、嫌じゃない?」

「ないです。」

「良かった。大分暖まったね、どう?」



「後少しだけ、このままでいてください。」

「うん、いいよ。暖まるまでそうするから。」

もう乾いてると思う。
郷里さんが言うように、薄い生地は二人の体温に挟まれてすっかり乾いてると思う。
そして体も熱くなるくらいに体温は戻って来てる。
冷たかった手の平もすっかり暖まった。

でもあと少しだけこのままでいたいと思ったから、そうお願いした。

初めての距離だけど、本当に安心する。

「郷里さん。」

「ん?」

「暖かいです。」

声は随分上でしてる。それでもゆっくり顔が近づいてきた気がした。

「阿里ちゃん、冗談じゃなくて、本当にいらないなんて思わないと思うよ。ずっとこうしていたいくらいだから。」


いらないって、随分前の話だけど。
別に気にしてない・・・・というか考えてもいなかった。
美沙子の冗談だと思うし。

郷里さんが私に対して、ちょっと違うなって思うこともあるかもしれない。
でも今のところそれはないよって言われたみたいだった。
そう伝わった。

「郷里さん、今までも、小さい人が良かったんですか?」

少し背中が離れた気がする。

「そんなことないけど。」

それじゃあ分からない。否定もしてない。

「私は郷里さんが思うより気が強いかもしれませんよ。今まで見せてなかったですか?気がついてませんか?」

「少し知ってる。怒るとちょっとだけ怖いかな。でも椎名もそんな感じで、そんなにマシュマロみたいな女の子はいないって言われてる。『どうせ女性は誰もが金属加工されていくんだから。』って、父親が言ってた。」

「それは騙されるなっていう、ありがたいアドバイスですか?」

「う・・・・・ん、甘く見るな、強いぞっていう警告かも。ねえ、どうしてそんな事突然言い出したの?」

「なんだか守られてる感じなんですが、そんな時ばかりじゃないですよって、一応私も一般的な警告です。詐欺だとか二重人格とか言ったらダメなんですよ。」

「小さくて可愛いとそんな事も許されそうだね。」

「もし許してきたんだとしたら・・・・・って話です。」

「そんな・・・先輩だといっても5年分しか長く生きてないのに。」

「それだけで充分です。」

「そんなに濃い生き方はしてないよ。」

手を離して向きを変えた。
いつの間にか雨もやんでいた。建物から人が出てくる。

「おかげで乾いたみたいです。ありがとうございました。」

巻き付いていた手が少し浮いた。
外に出た人がザワザワとする。
虹が出たみたいだ。
空気が一瞬にして洗い流されて、太陽が顔を出したから、虹もご機嫌に顔を出した。

「綺麗ですね。」

「これを見るために降りこまれたのかな?」

「ちょっと近くで話をするためかもしれません。」

「そう思ってくれたらうれしい気がする、うん、うれしい。」

「そうですよ、きっと。」

さっきと違って距離はあるけど、すごく笑顔を近くに感じられる。

きちんと返事したいと思うくらいには。
まだしてなかった返事。
考えてからって言って、あんまり考えてもいなかった。

郷里さんの手を取って歩き出した。
さっき歩いていた端の方へ。

水たまりがあるけど、器用によけながら。

端に立って横に二人で並んで。
残念ながら虹はもう消えていた。

「郷里さん、大分、お待たせしました。」

「何?」

「ずっと中途半端のままだったのに、優しくしてもらってありがとうございました。だから、安心して、すごく大好きになりました。いつも優しくて、暖かくて、大きくて。あれから郷里さんの気持ちが変わってなければ、これからもよろしくお願いします。」

きちんと向き合ってそう告げた。
一度目を伏せて、また上げて、しっかりと目を見た。

「変わるわけないよ。嫌われてても変らなかったのに。」

「ありがとうございます。」

「阿里ちゃん、こちらこそよろしくお願いします。」

「はい。しばらくは金属加工されないで、全力で守られたいです。」

「多少固くても、冷たい金属でも、触ってるところは温かくなるし、大丈夫・・・・だと思う。」

一歩距離をつめて、腰あたりの服につかまって背伸びをした。
郷里さんがビックリした後すぐに近寄ってきてくれたから、届いた。

軽く音がしただけで恥ずかしくなった。
俯くより先に抱きしめられて、赤い顔は見られずに済んだかも。
またすっぽりと包まれた。

「郷里さんが外でするなんて意外でした。」

「さっきのは出来立ての彼女にせがまれたからだよ。」

「そうでした?」

「うん。」

暖かいものを飲もうと、建物に入った。
二階のテラス席から外を見る。
思ったより雲が動いて、しばらくは雨は降らなそうだった。

「太郎君は雨の日も元気に散歩に行くんですか?」

「もともとは喜んでたけど、散歩係の椎名が面倒がってたら、すっかり雨の日は諦めるようになったよ。」

「今日は新しい人との散歩で緊張してないですかね?」

「そんなに繊細じゃないから。椎名がいたら横にいるのが誰でも同じだと思う。」

「郷里さんは気になりませんか?」

「写真は見せてもらったんだ。大人しそうな感じだったから、まあいいかな。椎名の方が強そうだし。」

それは郷里さんの前だとそうかもしれませんが・・・・。

「せっかくのうれしい日だし、あとで写真撮ろうね。」

「郷里さん、それを椎名ちゃんに見せるんですよね。」

「う・・ん、嫌なら見せないけど。」

「隠せる自信はないですよね。」

「ない。」

「じゃあ、私の携帯で撮って、郷里さんに送ります。変なのはダメです。」

「そんな変な写真は椎名も見たくないと思う。」

赤くなってますが、意味が違います。変な顔って事です。
そんな浮かれた写真は撮りません。
そう言いながらもさっそく携帯を出した。
郷里さんの横に立って、手を伸ばす。
入らない・・・・。
郷里さんに携帯を取り上げられて、さっきよりちょっとだけ重なる。
せっかく背景を入れたかったのに、残念ながら郷里さんの体で見えない。
やっぱり壁だった。
そう言えば最初の頃、そう思ってた。
写真を見ながらそう思って、郷里さんの携帯に送った。
コーヒーを飲み終わる頃には大分時間が経っていた。
見える空は少しずつ薄暗くなってきた。

「あっ・・・・。」

携帯を見て、郷里さんが画面を見せてくれた。
太郎と二人の高校生、椎名ちゃんと男の子が噂の潤君だろう。
郷里さんの眉間にしわが寄る。
そろそろ妹離れしてください。
笑顔の可愛い男の子だった。
確かに椎名ちゃんの言いなり君になりそう。
太郎にも負けそうなくらい。


ササっと返信したらしい郷里さんが携帯をしまった。

「太郎君も椎名ちゃんも楽しそうで良かったですね。」

「そうだね。」

さっきしまった携帯を取り出して。

「椎名も同じ事言ってる。阿里さんもお兄ちゃんも楽しそうで良かったじゃないって。」

・・・・・さっきの写真もう見せたんですか?
そうなんですよね。
今夜報告会ですか?

「ん?あ、ごめんね。終わりにする。邪魔しないからデートに集中しろってって書いてあるし。」

筒抜けの感じが不思議です。
普通の兄妹ってだいたいそうなの?

「ね、雨降らなければあそこに行こう。」

そう言って歩き出した。
手はつなぐより、腰に来た。
私の手はどこに置けばいいんだろう。
よくわからないので郷里さんの手に重ねた。
結局そこで指を重ねて自分の腰に手を置いた感じの形になった。
これは正しいのだろうか?
郷里さんの腰はちょっと大きいので疲れそうで。
のんびり歩いていても雨が降り出すことはなかった。
ところどころに出来た水たまりにも明かりが写って綺麗だった。
途中何度か止まって写真を撮った。
そのたびに郷里さんの顔がガクンと落ちてくる。
やっぱり身長の差って不便。
でもそんな事も随分慣れた。
大きな壁だから、いつでももたれたら優しく受け止めてくれると思うことに。

ビルの海側にはたくさんの人がいる。
雨は降らなくて、曇り空のまま持ちこたえて、夜景に変わった。
見てるのは人工の光の連なり。
空はどうでも良くなった。
分厚い窓にはりつくように立ち、斜め後ろから重なるようにして見る夜景。
優しく腰に当てられた手を引き寄せて手の平を重ねて指を少しだけ絡める。
夜景を見てたはずなのに、うっすらとガラスに映る自分たちを見ている。

「郷里さん、太郎君の散歩はいつも何時に行くんですか?」

「別に決まってないよ。平日は椎名が遅いと行けない時もあるし、週末昼に長めに一回とか、そんな日もあるし。外に行きたいというより、一緒に歩きたいってタイプみたいだから。ずっと家にいると運動不足だし、できるだけ週末は二回行くようにしたいけど。今日は椎名に頼んできたから大丈夫だよ。」

「明日は誰が行くんですか?」

「どうだろう。自分かな。」

「そうですよね。」

「一緒に行く?」


「いいえ。」

そうじゃない。

思ってたことはそうじゃない。


でも、そんな事は今日伝わるわけはない。


ゆっくり移動する。
手は離して、ガラスをなぞるように動いた。
もちろん付いて来てくれることを疑ってない。

四角い建物をガラスに沿って一周する。
ゆっくりと進んでも元の場所に戻るのに、そんなに時間はかからない。

また同じところで立ち止まる。

「どうしようか?」

「そろそろ帰った方がいいですか?」

「ラッキーにも社会人のいい大人には門限がないんだけど。」


「太郎君の散歩があります。」

「もう終わってるよ。雨が降ったら諦めてると思うし。ご機嫌な椎名がグリグリと可愛がってるか、美味しいおやつをもらってるかも。」


「今日の散歩じゃないです。」

「どういうこと?」

まったく思い当たらないみたいで、そう聞かれた。

「すみません、ちょっと間違いでした。」

そう言って歩き出した。

高層階から地上へ。
エレベータではほんの一瞬だった。
手をつないで歩き出す。
もう一日が終わった感じだった。
あと少し、電車に乗ったら勝手に今日の終点まで運ばれるだろう。

ゆっくり歩くスピードを落とした。

外にはガラス越しにさっきまで見ていた夜景が広がってる。
それでも自分の視線では綺麗には見えない所もある。
もっと上の視点からでも、同じだろうか?

隣の郷里さんを見た。
こっちを見てくれていた。
つないだ手を外して、腕を組んだ。
ちょっと近くなった。

見通しのいい場所が少しだけあった。
建物が邪魔しない場所。

そこで写真を撮る人も多い。

その手前で郷里さんが立ち止まった。
急に向きを変えて、閉まったお店のシャッターのところに移動した。
明かりもあんまり届かないし、せっかくのきれいな景色も全く見えないのに。

「阿里ちゃん、さっきのはうれしい誘いかと思ったんだけど、勘違いだった?すぐに気が変わった?」

向き合って両手で腰を引き寄せられた。
その腕に手を乗せた。

「太郎君が・・・・・、寂しがります。」

「椎名がいるよ。なんなら明日は日曜日だから、父親も母親もいるよ。」

「私が一緒にいてもらってもいいんですか?明日まで、ずっと近くにいて欲しいんです。」

「もちろん、喜んで。」

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