がさつと言われた私の言い分は。

羽月☆

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11 迷走をやめて前を向いて歩きだす、さりげなく二人で。

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さっさと部屋を出て待ち合わせの店でぼんやりする。

とりあえず少しお試し期間をとお願いすることにした。
それでいいと言ってくれるなら、だけど。

コーヒーを貰い席に着く。
携帯を置いてひたすらカップの端の小さな穴を見る。
別に何も見えないけど。

席の前に気配を感じて顔を上げると竜君がいた。
びっくりした。
携帯を見る。
別に何も連絡はなかった。

「早く来てたんです。皐月先輩よりちょっとだけ。びっくりしました。」

だって約束にはまだ30分以上あって。
まだ口をつけてないコーヒー。
だって見てただけ。

竜君のカップを持ってみるとまったく減ってない感じ。

「少し飲んでから行こうか。」

「どこかお店決めてますか?」

「ううん、適当でいい?」

「はい。来ないところなので分からないです。皐月先輩よく来ますか?」

「うん、ここでたまにコーヒー飲むくらい。」

「私服初めてだね。なんとなくイメージ通り。」

「皐月先輩もそんなイメージです。シンプルな格好がかっこいいです。」

なんだかちょっとがっかりもした自分に呆れる。
デートの時はもっとそれらしいかっこうをするのよ・・・・と思ったから。

「何時に起きてたの?」

「いつも9時前には起きます。」

「特に予定はなかった?」

「はい、全然大丈夫でした。昨日、高田さんから連絡があって、すっかり忘れてたって。」

「他にも何か言ってたでしょう?」

そう聞いたら、急に真っ赤になって。

「まあ、いろいろ。」

何を言ったんだあいつは。

「本当に、可愛がられてる?」

「普通です。楽しい人です。放っとくと一人でいるタイプなので、わざわざ話をしに来てくれる感じです。」

「あんまり信じられないけど。別に自分から話さなくても輪の中にいそうなのに。」

「そうですか?得意じゃないですよ。」

確かにあの時も完全に存在感なかったからね。

「今までどんな子と付き合った?」

口をつけようとしたコーヒーを離して、真っ赤になりながら首を振る竜君。

何?
まさか・・・・・。

じっと見てたらうつむかれて。

本当にまさか?
聞いてはいけない質問だった?

「だって最初から可愛い女の子が似合いそうだなあって思ってたんだけど。子猫みたいなやわらかそうな子。」

下を向いて首を振る。

「好みじゃない?」

振られていた首は止まった。

好みではある?
私にはない要素ですが。

「妹いる?」

「はい。」

変わった話題にちょっと顔が上がった。

「可愛がってるんじゃない?」

「小さい頃だけです。すっかり生意気になって、自分なんか手軽な子分みたいでした。」

「子分は普通手軽だけど、・・・立場が逆転したの?」

「はい。外では猫かぶりの可愛い振りをして、家では小さな暴君でした。」

「でも可愛いんでしょう?」

「最近ちょっとだけ大人になったようです。社会に出て、少し大人になっていろいろ振る舞いを改めてくれてます。」

「皐月先輩は?」

「三人姉妹。弟欲しかったなあ。」

こんな弟がいたら撫で回して可愛がりたいのに。
そう思って見てしまった。

「弟は嫌です。」

小さく、でもはっきり言われて、現実に戻った。

コーヒーを飲んで、じゃあ行こうかと席を立つ。
二つのカップを片付けてもらう。


お店を出て腕を組むように巻きつけるとびっくりされた。

「あ、ごめん。」

「いえ。」

ゆっくり手を離そうとすると止められて。
昨日よりはっきりと手をつないで歩いた。

商店街を歩き適当なお店を選んで入る。

「美味しいですね。」

家庭的なお店だった。
オムライスを口に入れてうれしそうにスプーンを持つ竜君。
思わずこっちも笑顔になる。

「本当に可愛いわね。その笑顔も同じくらい美味しそうよ。」

笑顔が解けてびっくりしたような顔になる。
そんな変化も楽しい。

「本当に。」

「皐月先輩は?」

「美味しいよ。ちょっと食べる?」

自分のハンバーグを指す。

「いえ、皐月先輩はどんな人と付き合ってきましたか?きっと大人っぽい人ですよね。」

「・・・・ああ。」

ずいぶんタイムラグがある質問だった。
どうして急に思い出したの?

「まあ、普通よ。優しい笑顔が出来る人は多いけど、そんな無邪気な笑顔にはなかなか会えない。」

「たくさんいますよ、きっと。」

下を向いてる表情は分からないけど。

食事を終わりにして少し商店街を歩いた。

誘ったのは私だから。返事をされるって思ってる?待ってる?
座ってるときはつい忘れてしまうけど、意外に背が高い。
ヒールを履いても気にならないくらいには。
今日は高さのない靴だから余計にそう思う。

「竜君・・・・。」

ガラス越しに子犬がじゃれるのを少し背を低くして見ている。
小さなペット屋さんのショーウィンドウだった。

「はい。」

優しく動物を見てた視線がこっちに向いて、表情が消えた。

「しばらく一緒に仕事の後に飲みに行ったり、こうやって休みの日にご飯に行ったり。誘ってもいい?」

「はい。もちろんです。僕もたいしたことじゃなくてもメッセージ送っていいですか?」

「うん、いつでも。」

まあ、それをお試し期間というか、友達というか、先輩後輩の付き合い。

あ、腕組んだり、手をつないだっけ・・・・。
ちょっと違うか。

まあ、そんな感じで。
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