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14 誤魔化すなんて、そんな事はやっぱり無理だったドラゴン。
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月曜日の朝礼をやり過ごし
一人で研究室にいる。
緩む頬を誰にも気づかれないように。高田さんにバレないように。
ブルブルとモーター音が響く室内。
手元はおろそかにしないように集中する。
はぁ。
少し緊張を解いて点滅のカウントダウンを眺める。
そんなことの繰り返しで時間がたっていた。
ノックの音がしてすぐにドアが開き声がした。
・・・・来た、それは覚悟のうち。むしろ二時間は我慢したんだろう。
「白石、邪魔する。」
声に反応して振り向いた瞬間、週末にどうなったか、自分の顔色が白状してる気がする。
一度視線から逃れても動揺を手放せず、それでも実験器具からは距離を取る。
「お疲れ様です。」
一区切りつける振りで手を動かし、覚悟を決めて、ゆっくり振り向く。
ドアを背にしたままニヤリとした笑顔を見た。
無理です皐月さん、やっぱり隠せない気しかしません。
「白石君、どうかなぁ。役に立った先輩に何か報告することないかなぁ?」
「あの、おかげで皐月さんの誤解もとけて、仲良くしてもらうことになりました。ありがとうございました。」
「そう、良かったよね。皐月さんかぁ。その皐月さんがそう言えて言った?で、実はどうだったかなぁ、大人になった感想は?」
んんっ?
「えっと。」
何で、何がバレてる?
体が勝手にじんわりと湿る。汗、冷や汗が。
「可愛いなぁ、樋渡も初めてのタイプだろうから可愛いがってもらえるぞ。
いいなぁ。」
高田さんが顔を寄せてくる。
耐えられない。
だから、誤解されるんだって。
・・・・・カーテン閉めてください、あ、逆ですか?
ガラスの向こう、怖くて見れないです。
「リュウ・・・・、とか呼ばれてるか?」
真似をするように上ずった声で、耳元で囁かないでください。
椅子がテーブルまで下がりぶつかる音がする。
高田さんがやっと離れた。
「ほんと良かったな。」
わりと普通の顔で言われた。
「お、お、お世話になりました。」
きちんとお辞儀をしてお礼を言った。
じゃあなと言って出て行った高田さん。
とりあえず感謝。
心配してくれたんだろうか?
ガラスの向こうを見ると高田さんを中心に人が群がり、こっちをチラチラ見る目?声が聞こえなくてもやったと口が動いてる気が。まさかと思いますが…。
不安で見ていた自分を振り返った高田さん。横一列になって全員でおめでとうコールをしてる気がする。
バラしたんですね。
恥ずかしくて出れないじゃないですか。
誰が、いつから気が付いてたんですか?
怒られるかも。
ため息はつかれるかも。
皐月さんとの約束はあっさり破られて、今や研究室の共通認識となってしまいました、多分。
不可抗力だとしても、怒りますか?
だって初めから彼女がいないことはバレていた。
この研究室に配属されたのは自分だけ。
そして歓迎会はとにかく飲まされた。
弱くないと言ったから、遠慮なく飲まされた。
そして当然会話は自分の彼女の話に。
今まで付き合った人は・・・・いたようないないような。
友達から恋人になる段階、そのあたり。
そのあたり、いい感じになるころに振られた。
本当は他にも好きな人がいて予選で漏れてしまったと分かった。
せめてそれが決勝戦なら慰められるのに。
あくまでも予選。
本選前の予選。出場枠をかけての予選だった。
今思い出してみて、彼女がそんなにモテたんだろうか?ちょっと疑問。
自分から好きになったわけではない、話しかけられて仲良くなって、何度か会って、それが普通になって。
友達以上と思っていた自分の読みも外れていたのではないかと、今なら思う。
あの時きっとみんな思ったと思う。
ただの仲のいい友達。
もしや予選枠にも入ってなかった?
自分でも少し弱気なところがあり、積極的に動くのは苦手で。
だからハキハキした女性に憧れていた。
何度も高田さんと皐月さんのやり取りを見ていた。
高田さんは自分のなりたい男性像で、明るく楽しそうに仕事をして、人との距離の取り方がうまい。男女とも高田さんと話してると笑顔になるような。
そんな先輩を対等か、むしろやりこめてる皐月さん。
それで美人で・・・・憧れた、ずっと見ていたいと思うほどに。
ある時高田さんがいない時に皐月さんが来た。
「あ、高田さんは今日は外回りです。」
ちょっとキョロキョロする皐月さんにそう言った。
初めて声をかけた日。
手帳には星マークがついてる。自分だけの記念日だ。
ドキドキはしていた。
「ありがとう。だから空気が澄んでるのね。」
そう冗談を言って素敵な笑顔を向けてくれた。
やられた。本当に綺麗だったから。
思わず笑顔になったかもしれないけど、同時に真っ赤にもなっただろう。
くるりと向き直った後だったので気が付かれてないかもしれない。
うれしような寂しいような。
高田さんの彼女の話は聞いてたので、ちょっとだけ仲がいいとは思っても疑ってはいなかった。
仲がいいんだろうと思っていた。
でも自分が惹かれていくにしたがって、ちょっとだけ複雑に思ったりもした。
何度か見かけても、いつも高田さんの席にまっすぐに行く皐月さんにとって自分は視界にも入ってないかもしれない。確実に認識もされてないだろう。
それが現実で。
うらやましくて、妬ましくて。
だから偶然のことだったけど高田さんに気持ちがバレて、手伝ってやると言われた時は本当にうれしかった。自分だけで知り合うことは不可能に近く、高田さん経由が一番安心安全の近道だった。
まさかあんなに素早く動いてくれるとは。
毎月飲んでるみたいなので偶然のタイミングかもしれないが、うれしかった。
まったく違う方向に話が進みそうになってるのが分かった時は、本当にびっくりしたけど。
今思うとそんな誤解すら面白く、可愛いエピソードとして一緒に笑える。
昨日だってすごく必死だった。
本当はすごく必死で、すごく頑張った。
・・・・色っぽく言われた感想。半分くらいはお世辞だったとしても、いい。
褒めてもらえてすごくうれしかった。
きっとわかってないんだろうなあ。
・・・・・わかられてても恥ずかしい。
どうなんだろう・・・・・。
一人で研究室にいる。
緩む頬を誰にも気づかれないように。高田さんにバレないように。
ブルブルとモーター音が響く室内。
手元はおろそかにしないように集中する。
はぁ。
少し緊張を解いて点滅のカウントダウンを眺める。
そんなことの繰り返しで時間がたっていた。
ノックの音がしてすぐにドアが開き声がした。
・・・・来た、それは覚悟のうち。むしろ二時間は我慢したんだろう。
「白石、邪魔する。」
声に反応して振り向いた瞬間、週末にどうなったか、自分の顔色が白状してる気がする。
一度視線から逃れても動揺を手放せず、それでも実験器具からは距離を取る。
「お疲れ様です。」
一区切りつける振りで手を動かし、覚悟を決めて、ゆっくり振り向く。
ドアを背にしたままニヤリとした笑顔を見た。
無理です皐月さん、やっぱり隠せない気しかしません。
「白石君、どうかなぁ。役に立った先輩に何か報告することないかなぁ?」
「あの、おかげで皐月さんの誤解もとけて、仲良くしてもらうことになりました。ありがとうございました。」
「そう、良かったよね。皐月さんかぁ。その皐月さんがそう言えて言った?で、実はどうだったかなぁ、大人になった感想は?」
んんっ?
「えっと。」
何で、何がバレてる?
体が勝手にじんわりと湿る。汗、冷や汗が。
「可愛いなぁ、樋渡も初めてのタイプだろうから可愛いがってもらえるぞ。
いいなぁ。」
高田さんが顔を寄せてくる。
耐えられない。
だから、誤解されるんだって。
・・・・・カーテン閉めてください、あ、逆ですか?
ガラスの向こう、怖くて見れないです。
「リュウ・・・・、とか呼ばれてるか?」
真似をするように上ずった声で、耳元で囁かないでください。
椅子がテーブルまで下がりぶつかる音がする。
高田さんがやっと離れた。
「ほんと良かったな。」
わりと普通の顔で言われた。
「お、お、お世話になりました。」
きちんとお辞儀をしてお礼を言った。
じゃあなと言って出て行った高田さん。
とりあえず感謝。
心配してくれたんだろうか?
ガラスの向こうを見ると高田さんを中心に人が群がり、こっちをチラチラ見る目?声が聞こえなくてもやったと口が動いてる気が。まさかと思いますが…。
不安で見ていた自分を振り返った高田さん。横一列になって全員でおめでとうコールをしてる気がする。
バラしたんですね。
恥ずかしくて出れないじゃないですか。
誰が、いつから気が付いてたんですか?
怒られるかも。
ため息はつかれるかも。
皐月さんとの約束はあっさり破られて、今や研究室の共通認識となってしまいました、多分。
不可抗力だとしても、怒りますか?
だって初めから彼女がいないことはバレていた。
この研究室に配属されたのは自分だけ。
そして歓迎会はとにかく飲まされた。
弱くないと言ったから、遠慮なく飲まされた。
そして当然会話は自分の彼女の話に。
今まで付き合った人は・・・・いたようないないような。
友達から恋人になる段階、そのあたり。
そのあたり、いい感じになるころに振られた。
本当は他にも好きな人がいて予選で漏れてしまったと分かった。
せめてそれが決勝戦なら慰められるのに。
あくまでも予選。
本選前の予選。出場枠をかけての予選だった。
今思い出してみて、彼女がそんなにモテたんだろうか?ちょっと疑問。
自分から好きになったわけではない、話しかけられて仲良くなって、何度か会って、それが普通になって。
友達以上と思っていた自分の読みも外れていたのではないかと、今なら思う。
あの時きっとみんな思ったと思う。
ただの仲のいい友達。
もしや予選枠にも入ってなかった?
自分でも少し弱気なところがあり、積極的に動くのは苦手で。
だからハキハキした女性に憧れていた。
何度も高田さんと皐月さんのやり取りを見ていた。
高田さんは自分のなりたい男性像で、明るく楽しそうに仕事をして、人との距離の取り方がうまい。男女とも高田さんと話してると笑顔になるような。
そんな先輩を対等か、むしろやりこめてる皐月さん。
それで美人で・・・・憧れた、ずっと見ていたいと思うほどに。
ある時高田さんがいない時に皐月さんが来た。
「あ、高田さんは今日は外回りです。」
ちょっとキョロキョロする皐月さんにそう言った。
初めて声をかけた日。
手帳には星マークがついてる。自分だけの記念日だ。
ドキドキはしていた。
「ありがとう。だから空気が澄んでるのね。」
そう冗談を言って素敵な笑顔を向けてくれた。
やられた。本当に綺麗だったから。
思わず笑顔になったかもしれないけど、同時に真っ赤にもなっただろう。
くるりと向き直った後だったので気が付かれてないかもしれない。
うれしような寂しいような。
高田さんの彼女の話は聞いてたので、ちょっとだけ仲がいいとは思っても疑ってはいなかった。
仲がいいんだろうと思っていた。
でも自分が惹かれていくにしたがって、ちょっとだけ複雑に思ったりもした。
何度か見かけても、いつも高田さんの席にまっすぐに行く皐月さんにとって自分は視界にも入ってないかもしれない。確実に認識もされてないだろう。
それが現実で。
うらやましくて、妬ましくて。
だから偶然のことだったけど高田さんに気持ちがバレて、手伝ってやると言われた時は本当にうれしかった。自分だけで知り合うことは不可能に近く、高田さん経由が一番安心安全の近道だった。
まさかあんなに素早く動いてくれるとは。
毎月飲んでるみたいなので偶然のタイミングかもしれないが、うれしかった。
まったく違う方向に話が進みそうになってるのが分かった時は、本当にびっくりしたけど。
今思うとそんな誤解すら面白く、可愛いエピソードとして一緒に笑える。
昨日だってすごく必死だった。
本当はすごく必死で、すごく頑張った。
・・・・色っぽく言われた感想。半分くらいはお世辞だったとしても、いい。
褒めてもらえてすごくうれしかった。
きっとわかってないんだろうなあ。
・・・・・わかられてても恥ずかしい。
どうなんだろう・・・・・。
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