公園のベンチで出会ったのはかこちゃんと・・・・。(仮)

羽月☆

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30 少しの違和感も見逃せないのです。

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「まな、起きる?」

聞きなれた声が頭の上から聞こえる。

「・・・・うん。」

なんとなく起きなきゃと思って返事はしたのに目が開かない。
もう少しこのままでいたい。あったかくて安心する。気持ちいい。
だからこのままがいいって。起きない、起きたくない。
お願い。もっと。
もっと・・・・。自分の声で少し目が覚めてきた。

重い。
目が開いた、佐野さんがいた。自分は上から見下ろされてる。

「おはよう、まな。」

「おはようございます。」

胸に顔ををうずめて嬉しそうに言う。

「初めてだ、寝ぼけたまなにおねだりされたの。」

「へ?」

知らない、なに?

「光司さん、朝から何を聞いたんですか?」

「別に。起きようって言ったのに嫌だって抱きついてきたから背中撫でたら、もっとって言われて。どんどん欲しがって。恥ずかしいなあ。」

胸でぐりぐりしてくる。わざとだ。絶対。

「今日はデートの約束です。忘れてませんよね?」

ちゃんと聞いておこう。行きますよね、大丈夫ですよね。

「ちゃんと覚えてるよ。楽しみにしてたんだから。どこ行く?」

「大丈夫です、決めてますから。」

「じゃあ起きる?」

「・・・・起きます。」

「残念。」

ギュッとされてつぶやかれた。

ちょっとだけ私もし返して離れた。出かけるから。
ちゃんと起きて支度をして部屋を出る。手をつないでゆっくりと駅へ。
自転車だとつまらないから、歩きたいとお願いした。

今日は水玉を買いに。
電車に乗って隅の方で手をつないだまま外を見る。

「どこで買い物するの?」

通過駅の大きな駅を答える。学生の頃からよくそのあたりで買い物していた。
今は動きやすい楽な格好で働いているし、出かけることもないのですごく久しぶりの買い物だった。

「お店も良く行くお店です。多分あんまり時間もかかりません。パパっと決めれる方ですから。」

「ゆっくり選んでもいいよ。お昼ご飯はどうする?その後は?」

「えっと特に決めてないです。どこか行きたいお店ありますか?」

「うん、別にないけど、せっかくだから滅多に行かないところに行かない?」

「はい。どこでも。」

「ねえ、荷物になるし買い物はあとでいい?」

「はい。大丈夫です。」

そう言って途中で乗り換えして高い高い建物を目指した。
観光客と旅行客、多国籍な人々に混じり並んで展望台へ行く。
透明な箱から見える景色がぐんと離れていき、あっという間に街並みが小さくなった。
ガラス越しに見える遠くの景色、最高の天気とは言えないけど滅多に見れない景色だった。

「夜もきっときれいですよね。」

「そうだね、夜の方がよかったかもね。」

ほとんどガラスにへばりつくように柵にもたれて遠くを見る。
後ろから軽く巻きつけられた手を感じる。

「初めてきました。光司さん来たことありましたか?」

「僕も初めて。」

「凄いよね、あっという間に出来た感じだった。」

「そうですね。数年前にはなかったんですもんね。」

「下のお店を見てみよう。美味しい食べ物屋さんもあるかも。」

しばらくぐるりと回り景色をつなげる。
エレベーターで下に降りると平日なのに人がいっぱいだった。

「混んでますね。」

「そうだね。さらっとお店を見て回ろうか?」

ゆっくり歩いていると手ぬぐいのお店を見つけた。
日本的な絵柄も多く外人さんに好まれてるみたいだ。
当然梅雨シーズンの絵柄もあり、カエルや水玉もたくさんあった。
一緒にお店に入り数枚を選んで購入する。
沢山あっても困らない。首に巻いたら可愛いかな?頭でもいいかな?

「真奈、似合うんじゃない?仕事で使うんでしょう?」

「はい。」

「ねえ、小さいのはさやかちゃんに買って行く?」

「はい。可愛い、似合いそうです。」

大人ならバンダナだけど子供ならもっといろんな使い方が出来そう。使わないときはカフェテーブル用の布巾にしてもいいし。

「本人は知らないけど知ったら稲葉さん喜ぶだろうなあ。」

「光司さん、教えてあげて。是非お店に来てもらって欲しいです。忙しいですかね?」

「真奈が来てほしいって言えば来るよ、きっと。」

「じゃあ、来てほしいです。伝えてください。」

「僕のいる時にね。」

「喜んでくれるとうれしいなあ。」

パン屋さんを見つけたら立ち寄って買ってみる。
和食のお店で食事をしてそのままお店を見て回る。
あるお店のディスプレイの前で佐野さんが立ち止まる。

「ねえ、真奈、こういうの嫌い?」

ポーズをとったマネキンを指さされる。
ヴィヴィッドなオレンジが大人っぽいデザインのワンピースだった。
かっこいいけど、ちょっとカッコつけすぎ。

「嫌いじゃないけど、これだと靴とかバッグも大人っぽくなります。これ着てどこに行くんですか?」

「似合うと思うけど。」

「光司さん、私にこんな大人の印象を持ってます?」

自分でもびっくりだ。
どうあっても子供っぽいと思ってるのにこんな服をすすめられるなんて。

「たまにはこういう大人っぽいのも見たいなあって。」

「素敵ですけど、似合いません。こんなかっこいいの。」

「そうかなあ?」

名残惜しそうに見ている。
だってゆったりとした服の方が好きだから。
しばらく行くとまた指をさす。

「これはもっとカジュアルで可愛いよね。」

さっきの大人女子と違いかなり可愛い、楽そう。
もともとデート用の服を買いに来たんだから佐野さんがいいならいい。

「これ着てデートに行ってもいいですか?」

「僕とならいいよ。」

にっこり笑われる。

「当たり前じゃないですか。」

お店に入り他の服も見る。水玉は探すと意外にない。
小さいのはちょっと、少し大きなインパクトあるものにしたいのに。小物でいいか。
ディスプレイの服と同じものがあった。色違いで三色展開、サイズフリー。

「これとこれ、着てみれば。」

どっちの色も好き。手に取って比べる。手持ちの服を考えて持ってない色味を選ぶ。
近くにきた光司さんの手には他にも5枚くらいの服があった。

「光司さん、何してるんですか?そんなに必要ないと思いますよ。」

「いいから着てみようよ。似合うよ、絶対。」

ちらりと値札を確かめる。決して安くはない。大人買いはしません、出来ません。

「真奈、勝手に脱がないでね。見せてね。」

「もう分かってますから、声が大きいです、恥ずかしいです。」

カーテンを閉めて試着室に入る。自分で色を決めた一枚。やっぱりいい感じに落ち着く。

「光司さん、いますか?」

返事がなくてカーテンを開けてみる、いない。もうどこに行ったの?
あ、帰ってきた。
また一枚スカートを持ってる。

「あの・・・・。」

「あ、似合うね。いいね。これもね。」

スカートを勝手に置かれた。ちゃんと店員さんに言わないと。
次々と試着して結局二枚のワンピースを買ってもらった。

「自分で買うのに。」

「いいの。」

「ありがとうございます。」

荷物を持ってもらって外へ出る。

「ねえ、真奈、あのオレンジの服も買わない?」

「だってあんなきれいな服着てどこ行くんですか?」

「美味しいご飯食べに行く。僕もスーツ着ていく。いいじゃない?」

「それ以外着ないともったいない。値段だって分からないし。」

「じゃあさ、あれ着てうちの両親に会ってくれる?」

・・・・断りにくい様にしてる。

「今日買った服じゃダメですか?」

「うん、ちょっと大人っぽくした真奈を見たい。試着してダメなら諦める。」

「だってすごく・・・高そう。」

「いいから、いいから。ね。」

手を引かれてあの店に連れていかれた。
しっかり覚えてるところが絶対その気だったと思わせる。
遠くからでも目立つ色。綺麗。
お店に入り店員さんに早速聞いてる素早さ。
色違いがあるらしい。きれいなブルー、深いグリーン、元気なオレンジ。
サイズもそろって三色を体に当てられた。ブルーは下げられた、グリーン・・・。落ち着いた感じ、着やすそう。オレンジはとにかくきれい。
勝手に店員さんと話を決めて試着室へ連れていかれた。
すぐに値札を見ると、やっぱり高い。
多少はいい服を着て挨拶に行きたいけど、でも今日買ったのでもいいのではと思ってたのに。

「真奈、どう?」

カーテンの向こうでテンション高めに聞いてくる。

「まだ脱いでもいないです。待ってください。」

「うん、楽しみ。」

とりあえずグリーンを。
凄く落ち着いていてしっくりくる。すごくきれいなデザイン。スタイルよく見えるようにカットとラインが入っていて。すごく素敵。
実はこっそり光司さんのスーツを見てみた。
とてもいいスーツだと思う。生地がしっかりしていて。高いものを買って大切に着てるから。
でもこのワンピース、グリーンなら長く着れそう。
カーテンをちょっと開けると本当にこっちを向いて待っていてくれた。

「うん、やっぱり似合うよ。すごく。」

意外にしっとりと言われた。

「写真撮って比べよう。」

そう言って前と後ろと横を撮られた。

「ね、オレンジも着てみて。」

カーテンを閉められた。
オレンジを着て鏡を見る。マネキンが来ていたら素敵だったけど、どうしても自分じゃ負けちゃう。正直ガッカリされそうで、見せたくない。

「真奈?どう?」

ゆっくりカーテンを開ける。足が見えてそこにいるのは分かる。でも顔を上げたくない。

「真奈、ちゃんとまっすぐしてみてよ。」

「うん、やっぱりこっちかなあ?」

え?何で?

「これ似合わないと思う。こんな色だと私が着られてる感じになって。負けます。」

「そんなことないと思うよ。ね、鏡よく見て。明るい、元気さと上品な感じと、すごく大人っぽい感じになる。きれいだよ、似合うよ。」

そう言われて、少し離れて鏡を見る。
華やかな色、明るさと若さと上品さ。

「真奈、笑って、楽しそうな顔して。似合うから。」

そう言われて手をつながれた。ぶんぶんと振られた手にほらほらって言われたようで、笑顔になる。

「ね、似合うよね。」

ちょっと待ってて、と言って勝手にハンガーをかき分けてカーディガンを持ってきた。

「これを羽織ったりして、こんな感じ。少し面積が抑えられてぐっと着やすくもなるし。」

もはや店員さんも寄ってこない。遠巻きに見ている。

「緑もぐっと落ち着くけど、こっちの方がいい。もう少し秋冬ならあっちの色だけど、いいじゃない春夏ならこのくらい明るくても。キャンペーンが終わったら行こうね、千葉。」

それはやっぱり実家の事で。

合わせてカーディガン選ぶと言ってまたどこかへ、さすがに脱いで一旦レジに預ける。
きれいな白を選んで一緒に買ってもらった。私の中で一番高い服。
コートより高いワンピース。さっさと支払いをしてくれた、買ってくれた。
もしかして実家はとてもお金持ち?
増えた紙袋も持ってもらって外に出る。


「あの・・・実家ってもしかしてお金持ちですか?大きな家で、いろいろと厳しいとか?」

「へ、普通の一軒家だよ。二階建て。もう自分の部屋はないんじゃないかな。荷物置き場になってそう。厳しくもないし。この間父親にも話をしてくれてとっても喜んでた。楽しみだって。二人して手ぐすね引いて待ってるよ。僕も久しぶりなんだ・・・数年ぶり。一緒に帰ってもらいたいのは僕の方だったりして。」

そう言いながら買い物を終わり。休憩にコーヒー屋さんに入る。

「ね、真奈。千葉に行くの日曜日になると思うんだ。うちの親もまだ仕事してるし。また今日子さんにお願いしちゃうんだけど。そのまま月曜日は千葉に泊まって日の出を見ようよ。せっかく行くんだからさ。実家は海沿いじゃないけど少し電車に乗って海沿いに行こう。」

楽しそうに言う。キャンペーンが終わり梅雨が明けるころ。

「はい、お願いします。」

青い海にも映えるオレンジのワンピースを思う。
きっと最高の笑顔になれそうな気がする。

結局服を数枚買ってもらった。
その荷物も持ってもらって、帰って来た。

初めてのお出かけは終了。

もうすぐもうすぐと思ってもなかなか梅雨シーズンにはならない。
雨が降っても続かず、逆に暑い日が多い。
とうとう6月になってキャンペーンが始まった。

朝一番に来てくれるいつものお客様は同じ。
特に梅雨も関係ないけど、あんまりキャンペーンも関係なかったり・・・・・。
一生懸命に作った貼り紙は褒めてもらえたからいいか。

やっぱり看板娘の力はすごくて、さやかちゃんの口コミで来てくれる親子が増えた。

たくさん作ったカエルの小物ももらって行ってくれて嬉しい限り。
たまに雨が降るとやっぱりちょっとだけ寂しい。

毎日どこかに水玉をいれたり、さやかちゃんと同じようにカエルの髪飾りをつけたりして元気にレジに立っていた。

今日も昼間はスーツを着て調査会社の手伝いに行った光司さん。
何だかスーツを見慣れ過ぎてしまって、最初の虫取り網姿が恋しくなる?
最近どこの家からも脱走するペットはいなくて調査会社の仕事と、子供の送り迎えが主だと言うことだった。

そうなると夜にパソコンに向かって仕事をする姿が増える。
私は少し離れたところで邪魔しないように大人しく絵をかいたり、本を読んだり。
鼻歌も気を付けている。
時々真剣な横顔を見たりするけど、すぐに視線を外す。

邪魔はしない。

キャンペーンはじめの週末は自分でもたくさんのありがとうございますが言えたと思う。商品を買ってもらえたり、カフェコーナーで手作り感満載のランチョンシートを褒めてもらえたり。

ちょっとだけいつもより早く売り切ってお終いにした。

明日は月曜日。お休み!

いつものように掃除をして、務さんに声をかけた。

ロッカーから荷物を出して、携帯を手にしながら外に出る。
その前にちょっとだけカエルの数を確認。
たくさん作ったからまだまだいる。
余っても悲しいから。
しばらくはいいかな。

自転車に乗る前に携帯を確認するとそろそろ駅に着く頃みたい。
終わったとメッセージをいれると返事がきた。
スーパーに集合!

夕飯を一緒に作る日のようだ。
少しずつ成長してると思ってるけど、どうだろう。
何が食べたいかなあと考えながらスーパーに向かった。

明日は雨予報が出ている。

何でお休みの日に・・・・。


先週お金をたくさん使ってもらってしまい、しばらくは大人しくしていてもいい。
年上の男性がお金を出すのは当たり前。
そう思ってるみたい。
私のお給料もまあまあ、そんな・・・だから。
すっかり甘えてる。

スーパーの入り口につながれた犬がいて、撫でようとしたら声をかけられた。

「真奈。」

振り向いたら入り口の内扉のところの涼しい所にいたらしく出て来てくれた。

「光司さん、お疲れ様。」

「真奈もお疲れ。」

「この子、何て犬でしょうか?」

「う~ん、迷子のリストにはいないなあ。珍しい犬だね。」

「毛がクルクルして可愛いです。目がちょっとだけ埋もれてるのも。おでこで毛を縛ってあげたくなります。丁度カエルのヘアゴムを持ってるのに。」

「まさか、さやかちゃんやその友達も犬とお揃いになるとは思ってないと思うよ。」

「ですね。」

バイバイと手を振ってスーパーに入った。

かごを持ってもらって、光司さんが決めた献立の買い物をする。

「光司さん、明日天気悪いみたいです。出かけますか?」

「そうか、じゃあ、念のためにちょっと余分に材料を買っておけばいいよ。」

残った野菜でちゃちゃっと作ろうと思ってるらしい。

素晴らしい。

私はただただ言われた野菜を取ってかごに入れるだけ。

何が出来るんだろう?

一緒に会計を済ませて袋を持って出口を出たところで、光司さんが止まった。

私も止まる。

正面にいたのは商店街の蕎麦屋の人だと思う。
綺麗なOLさん、スーツも似合ってるし、持ってるバッグも機能性重視のビジネスバッグ。

どうして二人で止まってるんだろう。

その人の視線が明らかに私に来た。
明らかに驚いた表情をされてる。
そして、笑顔でない意味、珍しく光司さんが声をかけるのを戸惑ってる意味。
先に女の人が動いた。

「こんにちは、佐野さん。」

「こんにちは、夏目さん。お疲れ様です。」

やっぱり声が少し硬い、そんなこともちゃんと気がつく私。分かりやすい二人だった。

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