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1 僕にとっての三人目の大人、明石のおじさん。
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小さい頃から、多分生まれた時から、母さんとの二人暮らしだった。
それがちょっと普通とは違うと気がついたのは幼稚園に入ってからだった。
だってみんなおじさんと手をつないでる、家族は少なくとも二人、絵を書くと三人以上になる。
『風斗くんのお父さんは?』
そう友達に聞かれた。
自分のお父さん紹介みたいにどんなお父さんだって皆が言ってたんだと思う。
絵本に出てくるお父さん。でも絵本の中だけだと思った時期もあったと思う。
でも、そんな家族の形はどこでも見ていた。
テレビでも、近所でも、公園でも、どこでも。
人間だけじゃなくてうさぎにも猫にも誰にでもいるお父さん。
なんで疑問に思わなかったんだろう。
それはなんとなく似た存在がいたからだと思う。
「僕のお父さんはどんな人かなあ?」
家に帰って母さんに聞いた。
悲しい疑問じゃないつもりだった、単純に『いるじゃない。』って言われるくらいの軽い疑問だと思ったのに。
その時に何と答えられたのかはまったく記憶にない。
だから子供心には理解できない答えだったんだろう。
それ以降同じようなことを聞いたことはなかった。
もしかしたら母さんの顔が困っていたのかもしれない、それとも・・・・・。
それにそんな二人家族も他にも何人かいたみたいだった。
たいていは僕と同じお母さんとの二人暮しの子だった。
でも、そんな子にも『おじさん』はいると思ってた。
時々来るおじさん。『明石さん』と母さんが呼んでる人。
その日は掃除しててもそわそわして、出かけないのにちゃんとおしゃれな服を着て。
もらったお土産を僕が開けて喜んでる間、母さんは料理を作って出して、おじさんは当たり前のように食べて、でも美味しかったとお礼を言って、くつろいで、話をして。
ほとんど出かけることはしない日。ずっと家にいる日。一人増えて三人でいる日。
バイバイを言うタイミングはいつも夜。
僕の家なのにくつろぐおじさん。
たまに来るおじさん、明石さんのおじさん。
流石にそれが誰だかわかる。
ぼんやりとお父さんになってくれる人だと思っていた。
でもそれも違うと思い始めた。
いつまでたっても優しいおじさんのままだった。
じゃあ、やっぱり最初から僕のお父さんなんだろうと思った。
一緒には居れないことと父親だと言われないことの理由。
僕の事は風斗君と呼ぶおじさん。
僕の名前も母さんの名前も『黒羽』さん。
その時に想像できたのは、おじさんには他にも家があり、そこには家族がいるんだろう。
自分だけのお父さんじゃなくて、母さんだけの大切な人でもなくて。
自分の中ではそういう結論になった。
不倫した母親、人の旦那さんを好きになった母親、それでも僕を生みたいと思った母親、そして僕を可愛がってくれるおじさん。
いつも優しい明石のおじさん。
大きな手、たくさんのお土産の袋、少し賑やかなご飯、一緒に学校のことも聞いてくれて、時々宿題も見てくれて、ゲームにも付き合ってくれて。
友達にも内緒にしてた。
大きくなるとそんな裏の事情を考えることもする。
今まで金銭面も愛情面も不満に思ったことはない。
じゃあなんらかの事情があっても母親が不幸じゃなきゃいいかとも思った。
もっと幸せな方法があるならそっちを選んでるだろう。
多分おじさんと会えない時間も決して不幸じゃないんだろう。
自分がそう感じたことはない。
まして自分を一人にして外で会ってる様子もない。
働くこともせずに家にいて僕を可愛がり、帰ってくるのを待っていた。
それくらいの経済的余裕もあったんだから僕は恵まれてた。
我慢を強いられるなんてこともなかった。
『お父さん』がいない事で卑屈になるような思いもしたことがなかった。
ちょっとは寂しいこともあったけど、それでも子供の心でも『なし』にできるくらいだったから。
大人の事情というものは子供には伺いしれない。
こまめな連絡はしてるんだと思う。
おじさんの聞いてくる学校の質問も的を得てる。
母親が一人で判断できないことは相談してただろうし、それなりの成長も知らされてたと思う。
じゃあ、いいじゃないか。
自分のお父さんは海外赴任中、たまに帰ってきて会える、そう思うことにしたのだ。
それに他の一人親の家庭よりは裕福だっのは確かだった。
むしろ両親揃った家庭よりも、兄弟姉妹が多い家庭よりも。
一人親の家庭は貧しくなければいけない、そんな決まりはないのに、不幸で貧しくないと困るやつが世の中にはいた。たいてい問題のあるやつだ、自分より下のやつを見て安心するタイプかもしれない。
中一の夏にカメラをもらった。
旅行に行った写真をおじさんに見せてもらって、景色などの写真の中身よりその写真その物に興味を持ってしまったのだ。ついいいなあ、カメラがあったら自分もきれいな写真が撮れるのに、そう言ったのだ。
携帯は持っていたけど、それとは違う。
携帯で風景を取りに出かけたりはしてなかった。
あくまでもすぐそこにある日常用だった。
「風斗くん、カメラが欲しいの、旅行よりもカメラ?」
「ごめんなさい、旅行も楽しそうだし景色はきれいだった、全然知らないところも興味あるけど。でもカメラも興味ある。すごくかっこいい写真だった。勉強したの?」
「そんなことないよ、ただ好きなだけだし。カメラはたくさんあるから一つあげようか?まずは取扱いの簡単なのから始めるといいから。大切に扱うならあげるよ、勿論勉強そっちのけじゃダメだし、危ないところに行ったり無茶はしないように、約束出来て気をつけて撮るなら一つあげるよ。」
「本当に?もちろん最初は花とかそのへんの景色とか動物とか撮る。今度見てもらっていい?」
「いいよ、さっきの約束は守ること。」
「もちろん。」
そんな経緯でカメラをもらった。
小さくて薄い手頃なデジタルカメラだった。何枚でも撮れる。でも一枚一枚大切に撮った。今度来たときに見てもらうつもりでデータは母親のパソコンに移してためておいた。
本当に身近にありふれた景色だ。それでも携帯でとるよりはずっと『写真』って気がする。
中には友達と遊んだ写真もあったし、こっそり母さんを撮ったものもあった。
週末の午後には首から下げて自転車ででかけた。
気をつけてはいた。
遠慮なく人を撮らないように、動物も飼い主さんに声をかけて許可をもらったし、危ないとこにも行かず、自転車に乗ってるときもルールは守った。
ただ他にも気をつけるべき事があったらしい。
それがちょっと普通とは違うと気がついたのは幼稚園に入ってからだった。
だってみんなおじさんと手をつないでる、家族は少なくとも二人、絵を書くと三人以上になる。
『風斗くんのお父さんは?』
そう友達に聞かれた。
自分のお父さん紹介みたいにどんなお父さんだって皆が言ってたんだと思う。
絵本に出てくるお父さん。でも絵本の中だけだと思った時期もあったと思う。
でも、そんな家族の形はどこでも見ていた。
テレビでも、近所でも、公園でも、どこでも。
人間だけじゃなくてうさぎにも猫にも誰にでもいるお父さん。
なんで疑問に思わなかったんだろう。
それはなんとなく似た存在がいたからだと思う。
「僕のお父さんはどんな人かなあ?」
家に帰って母さんに聞いた。
悲しい疑問じゃないつもりだった、単純に『いるじゃない。』って言われるくらいの軽い疑問だと思ったのに。
その時に何と答えられたのかはまったく記憶にない。
だから子供心には理解できない答えだったんだろう。
それ以降同じようなことを聞いたことはなかった。
もしかしたら母さんの顔が困っていたのかもしれない、それとも・・・・・。
それにそんな二人家族も他にも何人かいたみたいだった。
たいていは僕と同じお母さんとの二人暮しの子だった。
でも、そんな子にも『おじさん』はいると思ってた。
時々来るおじさん。『明石さん』と母さんが呼んでる人。
その日は掃除しててもそわそわして、出かけないのにちゃんとおしゃれな服を着て。
もらったお土産を僕が開けて喜んでる間、母さんは料理を作って出して、おじさんは当たり前のように食べて、でも美味しかったとお礼を言って、くつろいで、話をして。
ほとんど出かけることはしない日。ずっと家にいる日。一人増えて三人でいる日。
バイバイを言うタイミングはいつも夜。
僕の家なのにくつろぐおじさん。
たまに来るおじさん、明石さんのおじさん。
流石にそれが誰だかわかる。
ぼんやりとお父さんになってくれる人だと思っていた。
でもそれも違うと思い始めた。
いつまでたっても優しいおじさんのままだった。
じゃあ、やっぱり最初から僕のお父さんなんだろうと思った。
一緒には居れないことと父親だと言われないことの理由。
僕の事は風斗君と呼ぶおじさん。
僕の名前も母さんの名前も『黒羽』さん。
その時に想像できたのは、おじさんには他にも家があり、そこには家族がいるんだろう。
自分だけのお父さんじゃなくて、母さんだけの大切な人でもなくて。
自分の中ではそういう結論になった。
不倫した母親、人の旦那さんを好きになった母親、それでも僕を生みたいと思った母親、そして僕を可愛がってくれるおじさん。
いつも優しい明石のおじさん。
大きな手、たくさんのお土産の袋、少し賑やかなご飯、一緒に学校のことも聞いてくれて、時々宿題も見てくれて、ゲームにも付き合ってくれて。
友達にも内緒にしてた。
大きくなるとそんな裏の事情を考えることもする。
今まで金銭面も愛情面も不満に思ったことはない。
じゃあなんらかの事情があっても母親が不幸じゃなきゃいいかとも思った。
もっと幸せな方法があるならそっちを選んでるだろう。
多分おじさんと会えない時間も決して不幸じゃないんだろう。
自分がそう感じたことはない。
まして自分を一人にして外で会ってる様子もない。
働くこともせずに家にいて僕を可愛がり、帰ってくるのを待っていた。
それくらいの経済的余裕もあったんだから僕は恵まれてた。
我慢を強いられるなんてこともなかった。
『お父さん』がいない事で卑屈になるような思いもしたことがなかった。
ちょっとは寂しいこともあったけど、それでも子供の心でも『なし』にできるくらいだったから。
大人の事情というものは子供には伺いしれない。
こまめな連絡はしてるんだと思う。
おじさんの聞いてくる学校の質問も的を得てる。
母親が一人で判断できないことは相談してただろうし、それなりの成長も知らされてたと思う。
じゃあ、いいじゃないか。
自分のお父さんは海外赴任中、たまに帰ってきて会える、そう思うことにしたのだ。
それに他の一人親の家庭よりは裕福だっのは確かだった。
むしろ両親揃った家庭よりも、兄弟姉妹が多い家庭よりも。
一人親の家庭は貧しくなければいけない、そんな決まりはないのに、不幸で貧しくないと困るやつが世の中にはいた。たいてい問題のあるやつだ、自分より下のやつを見て安心するタイプかもしれない。
中一の夏にカメラをもらった。
旅行に行った写真をおじさんに見せてもらって、景色などの写真の中身よりその写真その物に興味を持ってしまったのだ。ついいいなあ、カメラがあったら自分もきれいな写真が撮れるのに、そう言ったのだ。
携帯は持っていたけど、それとは違う。
携帯で風景を取りに出かけたりはしてなかった。
あくまでもすぐそこにある日常用だった。
「風斗くん、カメラが欲しいの、旅行よりもカメラ?」
「ごめんなさい、旅行も楽しそうだし景色はきれいだった、全然知らないところも興味あるけど。でもカメラも興味ある。すごくかっこいい写真だった。勉強したの?」
「そんなことないよ、ただ好きなだけだし。カメラはたくさんあるから一つあげようか?まずは取扱いの簡単なのから始めるといいから。大切に扱うならあげるよ、勿論勉強そっちのけじゃダメだし、危ないところに行ったり無茶はしないように、約束出来て気をつけて撮るなら一つあげるよ。」
「本当に?もちろん最初は花とかそのへんの景色とか動物とか撮る。今度見てもらっていい?」
「いいよ、さっきの約束は守ること。」
「もちろん。」
そんな経緯でカメラをもらった。
小さくて薄い手頃なデジタルカメラだった。何枚でも撮れる。でも一枚一枚大切に撮った。今度来たときに見てもらうつもりでデータは母親のパソコンに移してためておいた。
本当に身近にありふれた景色だ。それでも携帯でとるよりはずっと『写真』って気がする。
中には友達と遊んだ写真もあったし、こっそり母さんを撮ったものもあった。
週末の午後には首から下げて自転車ででかけた。
気をつけてはいた。
遠慮なく人を撮らないように、動物も飼い主さんに声をかけて許可をもらったし、危ないとこにも行かず、自転車に乗ってるときもルールは守った。
ただ他にも気をつけるべき事があったらしい。
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