内緒にしていた視線の先にいる人。

羽月☆

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5 制服を脱いだだけなのに、自然に横にいる人。

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卒業して、家に帰ったあと庭に出て卒業証書を持って写真を撮ってもらった。
笑顔で、そう言われたけど難しい。
一人じゃあ、それは難しい。

制服を脱いでいつものようにハンガーにかけた。
でももう着ることはないだろう。

皆の顔をひとりづつ思い出していたら最後に話をした委員長の顔も浮かんだ。


「美波~、電話よ~。」

階段の下からお母さんの声がした。

誰?
おじいちゃん?

下に下りたらにっこりした顔で囁かれた。

「宇津木君だって。」

すぐには分からなかったけど、ああ・・・・・と思った。
ちょっとの間を置いて、委員長だと分かった。
お母さんも声を潜める必要はない。
保留になってるし・・・・・。


受話器を受け取って考えた。

何だろう?


ポケットの携帯を見たけど、特に誰からも連絡はない。

「もしもし。」

『急にごめんね。宇津木です。』

「はい。ちゃんと分かるよ、委員長でしょう?」

明日良かったら一緒にご飯を食べようと誘われた。
返事をどうすべきか、何で私なの?
さっきの時には何も言ってなかった。
特別に誘われるなんて、そんな風に感じたこともない。
本当に今日が初めてちゃんとしゃべったくらい。

「ああ、二人じゃなくて、他にもいるんだけど、どうかな?」

そう言われて納得。
二人じゃないと分かった。

「うん、大丈夫だよ。」

じゃあ簡単に返事もできる。

「じゃあ、とりあえず明日の12時に。」


委員長の最寄り駅なのか、少し離れた駅を指定された。
誰が来るのか聞く前に電話は切られた。


お母さんにお昼はいらないことを伝えに行った。


「クラス委員の子よね。頭いいって言ってた子でしょう?」

「そう、委員長。」

「丁寧に挨拶されたんだけど、デート?」

「違うよ。他にも何人か集まるみたいだし、連絡を回してるみたい。」

「そうなの?携帯じゃなくて?」

「そうだね・・・・委員長は私の携帯知らないけど。」

じゃあ、何で自宅の番号を知ってたんだろうとも思う。

「4月になったら新しい友達も出来るだろうけど、それまでは最後のクラスの友達と遊べばいいわよ。」

友達と出かける日もカレンダーに書いた。

「この日は友達と出かけるから、お昼はいらない。」

「他の日は?」

「別に、買い物しようかな。大学生の準備したり。」

「部屋の掃除もね。」

「はい。」

「デート優先でいいわよ。」

「そんな予定ない。」


「好きな人は?」


「いないと思う。」


「もう、そういえば一度も聞いたことがない。内緒にしてるの?本当にいないの?」


「本当にいないと思う。」

そんな話をしても誰の顔も思い浮かばない。
委員長がいて、仲良しグループの男の子数人が丸ごと思い出されて、ゆめちゃんの付き添いの時のあの人の顔も、瞳ちゃんの好きな後輩君の顔も思い浮かんで。

・・・ああ、全然、違う違う。


やっぱり誰もいない。


部屋に帰って制服をたたんで、高校の参考書などをまとめて、部屋の隅に寄せた。
ついでに服も衣替えをして、いらないものは捨てて。

制服をすぐに捨てるのは忍びなくて、クローゼットの隅に置いた。

宿題もない日。
掃除を軽くしても時間が余った。

下に降りてお母さんとお茶の時間にした。

「おじいちゃんに手紙を書きなさい。明日写真をプリントしてきてね。」

「うん、分かった。」


「お母さん同窓会ってある?」

「お母さんはもうすっかりないわよ。だって住んでたのはおじいちゃんのところだから、遠いわよね。でも遠くても美波がご飯作ってお父さんの面倒を見てくれるなら、旅行のついでに行けるかもしれない。」

「行けばいいよ。私は大丈夫だし、お父さんも大丈夫だよ。」

「そうね、すごく久しぶりだけど、そんな機会があったらお願いするわね。」


「皆で集まるのは成人式の日じゃないかって、そう言ってた。友達とは連絡を取るけど、それでも遠くに行く子もいるし。」

「そうね。成人式は集まるからね。」

「うん。」

「早いなあ、生まれた日のことはよく覚えてて、本当についこの間みたいなのに。美波が大きくなった分、お母さんもお父さんも年をとったのね。」

「お父さんはまだまだ若いし、かっこいいじゃない。お母さんも全然だって。」


お父さんとお母さんが結婚したのは大学を出て二年目。
私にしたら6年後になる。

そんな日々もあっという間って言うんだろうか?



お父さんもわざわざケーキを買って早く帰ってきてくれた。

「卒業おめでとう。」

お父さんとお母さんが笑顔で言ってくれた。

「ありがとう。」

二人に言う。


いつもとあまり変わらないご飯を食べてデザートにケーキを広げる。
もちろん一番に選ぶのは私。

昔からそうだった。
家の中で私は一番だった。
何もかも、一番が許された。

外でそうはならないけど、別にストレスもない。
二人は私を一番にしてくれたけど、私も二人が一番だから。


夜になっても委員長からの続報もなく。

朝、昨日まとめたたくさんのゴミの一部を捨てた。
それ以外も玄関に持って降りて、次のゴミの日に出せるようにした。
部屋はスッキリした。


普通の日と同じように早起きして、お父さんを見送って、お母さんの手伝いをしてから出かける準備をした。


お母さんにおじいちゃんからだと卒業入学祝いとして貰っていたお金を渡された。
写真をプリントして、少し贅沢に財布にいれて、残りは自分の銀行口座に入れた。

手紙は昨日ちゃんと書いた。
でもお礼を書いてないから、帰ったら付け足そうと思った。



約束の場所に着いたけど、知ってる顔はいなかった。
ぼんやりとしながら、もう一回携帯を確認した。
特になんの連絡もない。
待ち合わせまで後5分くらいだけど、そろそろ集まってもいいと思うのに。

委員長に連絡を取った。
昨日教えてもらっていた。

『駅の噴水の見えるところでいいんだよね?』

すぐに返信が来た。

『ごめん、今頑張ってるんだけど・・・・時間通りに行けそうになくて。無理かも。妹を病院に連れて行くことになりそう。』


ええっ。それは仕方なくても、後は誰が来るの?

そう思ってたら続きが届いた。

『もうすぐ着くみたいだから、こっちは終り次第連絡するけど、ちょっと無理かも。気にしないで。楽しんでね。』

そう言われたら待つしかない。



キョロキョロしてたら知ってる顔を見つけた。
向こうもこっちを見て気がついたらしく、ちょっと表情が出た。

とりあえず森友君がいるならいいかな。
良かった。


「お待たせ、ごめんね。急にナオが来れなくなるって連絡が来たんだけど。」

『ナオ』と委員長の事を呼ぶ森友君。

「うん、今聞いた。妹さんを病院に連れて行くって。」

「そうらしい、頼まれたみたいなんだ。寝かせて薬飲ませておけばいいってわけじゃないからって、無理かもって言ってる。」

「うん、しょうがないね。でも他には誰も来ないんだけど、後は誰が来るの?」

「あ・・・・二人になったんだ。」

「言い出した委員長が来れないのに?今日でいいの?」



「もしかして日にちを変えたほうが良かった?」

「どうだろう。どうする?委員長はあきらめたほうがいいよね。ご飯に行く?」


「良かったら。」

「うん、お腹空いてるんだ。どこかでご飯は食べたい。」


「じゃあ、そうしよう。僕もこの辺知らないんだけど、ナオにお店は聞いておいたんだ。」

「じゃあ、そこに行こう。」

二人で並んで歩く。

不思議な感覚。
昨日までだったら気になったことが、少しだけ気にならなくなってる気がする。
ゆめちゃんがいないことが少し自然に思えてきてる気がする。

それでもちょっとだけ距離はとってる。

歩いてるときに一度振り向かれた。
気がつかない振りでキョロキョロと通りのお店を見てる振りした。

ゆめちゃんじゃなくても、他の誰かに見られることも、避けたい気はするから。
もし森友君の好きな人まで届いたりしたら、それはすごく申し訳ないし。


目的のお店の看板を見つけたみたい。嬉しそうに森友君が振り向いた。

「あそこみたい。黄色い看板がある。」

そういって少し歩調を緩めて、距離も縮められて真横に並ばれた。


私が気を遣ってることにも、まったく気にしてない風で笑顔が変わらない森友君。
委員長が一緒にって誘ってくれなかったら、昨日が最後だったと思う。
そして今日が本当の最後かもしれない。



「ねえ、委員長とは春休みの間に会うの?」

「うん、多分。・・・・・何か伝えたいことがある?」

「私?ううん、別にないよ。やっぱり仲が良かったんだなあって思っただけ。」

「そうだね。お世話になってる、いろいろと。」

じゃあ、数学だって委員長に教わってた?


お店の前で二人立ち止まった。
思ったより大人っぽいお店だった。
ガラスから見えるお客様はほとんど大人のカップルだった。
昨日制服を脱いだばかりの自分たちが幼く見えるくらい。

でも大学生なら変じゃない。
そう思ったら、私たちも変じゃない?

ランチはそう高くないコース設定になっていた。
お酒は無理だけど、そこはお水とデザートの時の飲み物でいい。


おじいちゃんのお祝いのお金があるから、ちょっとだけ贅沢も出来る。


ドアを引いて二人で入った。

テーブルに案内されて、荷物入れに荷物を入れる。

メニューを見て、説明されて、メインをお肉とお魚から選んで。



「委員長、残念だったね。ここは来たことあるお店なのかな?」

「そうみたい。家族で何度か来たみたいだよ。」

「そうなんだ。妹がいるって初めて知った。森友君は知ってる?会ったことある?」

「小さいときに会ったことあるよ。すごく可愛い子だった。」

「そうなんだ。頭いいのかな?」

「そうみたい。」


想像してみる。やっぱり頭いいんだろうなあ。


「僕、三年のクラスが一番好きなんだ。」

「そうなんだ、委員長もいるしね。」

そういったら赤くなった。
あ・・・違う人のことだったのかな?


「誰かが三年のクラスが一番重要だって言ってた。同窓会は三年の時のメンバーでやるだろうからって。」




「ねえ、汐さん、僕、汐さんの駅によく行くと思うんだ。」

そうなんだ。結局何の用だかは聞いてない。
知り合いがいるのか、欲しいものがあるのか、なじみの店があるのか、親戚がいたりするのか。それともやっぱり特別な誰かがいるのか。


「近くに行ったら連絡していい?」

そう聞かれた。
何で?

「春休みのこと?」


「そうじゃなくても、大学生になってからも。」

やっぱり何でだろう?

「ナオも大学は別だし、なんだか会おうって言う友達もどんどん少なくなりそうだよね。だから、時々会いたいなあって・・・・思うから・・・・。」


「・・・・うん、そうかもね。いいよ、委員長の大学生も見てみたい。」

何故か仲良し二人に入れてくれるらしい。

「あ、でも私以外あの駅じゃないよ。だから拘らないでもいいけど。どのくらい忙しくなるかは分からないね。友達もどんどんできるかもしれないし、そうしたら会うこともなくなるかもね。」


「それはやっぱり寂しいから、・・・・・連絡していい?」


「うん。別に、いいよ。私も寂しいかも。友達付き合いも手探りだしね。」


「・・・・ありがとう。」


食事をしながらそんな話をした。
先のことは本当に分からない。
環境が変わって、自分も変わるかもしれない。

それに好きな人が出来るかもしれない。
お母さんが喜ぶくらい、楽しい恋愛が出来るかもしれない。
お父さんが寂しく思ってくれるくらいの・・・・・。

できるかな?

私にも二次元のようなドキドキがあるんだろうか?


小さな前菜とスープが載ったお皿を食べ終わって、メイン料理が来る。


「本当にお腹すいた。今日もいつもと同じ時間に起きたの。昨日ゴミをまとめたら結構な量になったんだ。色んなものを捨てたら部屋がスッキリした。」

「偉いね、掃除してたんだ。」

「途中写真とか見たら、すっかり手が止まってて、皆で撮った写真、一緒に写ってるのもあるよね。」

「うん。いい思い出だね。」




「ねえ、聞くのは変だけど、僕の、話は、来生さんとはしない?」

「うん、あれからは、何も。」



「何か伝える?来週会うよ。」

さっき同じような会話をした。

「ううん、全然、大丈夫。」

もう一度考え直したというパターンや、告白されてから意識し始めたってパターンもないわけじゃないと思う。
でも私にそれを言うことはないだろう。
私も、聞きたいわけじゃない。

「もし、連絡先が必要だったら、教えられるから。遠くに引っ越すんだけど。」

知ってるのかな?

とりあえず、そう言っておいた。
少し関わったんだし、それくらいは手伝ってもいい。


でも全然そんな必要はないって顔をされた。
なんでそんなことを言うのって顔だったんだろうか?
分からない。

じゃあ、何で聞いたの?知りたかったの?


「僕は汐さんの連絡先を知らないよ。」

あ・・・・そうだ。
そうか、そう言いたい顔だったのか。
委員長とは昨日交換したけど、そう言えば知らない。
会ったのは二回の偶然だけ。

「後で教えてもらってもいい?」

「うん、そう言えばそうだよね。」


メインを食べ終わって紅茶を頼んでデザートを待つ。
携帯を出してみても委員長から連絡はない。

同じように森友君が携帯を出した。

「何か連絡来てる?」


「誰から?」

「・・・・委員長。」


「ああ、来てない。駄目だろうって言われてたから。」

やっぱり来てないらしい。大丈夫だったんだろうか?

「もう食べ終わったしね。」



「・・・・連絡先交換してもらっていい?」

「うん、そうしようか。」


私はお父さんが可愛がってる金魚の写真をアイコンにしていた。
もともと私が金魚すくいでとった小さな金魚の子供だった。
大きな水槽にいれてたらびっくりするほど大きくなった。

お父さんがチリチリと朝の通勤前にご飯をあげている。
週末は時々水を入れ替えてあげたり、水槽を洗ってあげたり。
名前を呼んでるのもお父さんだけ。
私がアニメの主人公の名前をつけたのに、私の関心はあっさりと消えたから。


「犬を飼ってるの?」

画面に出てきた犬のアイコンを見てそう聞いた。
盲導犬と同じ種類の賢そうな犬。
それでも優しそうな顔をしていた。
女の子だろうか?

「うん。もう三代目なんだ。種類もずっと同じで、名前も一緒。頭に三代目ってついてる。」

「名前は何?」

「草次郎。」

漢字も教わった。渋い名前だ。

「三代目草次郎?」

「うん。お母さんが子供の頃に飼ってたのが初代。」

「他の種類がいいって話にもならないんだ。」

「うん。だって一番一緒にいるのはお母さんだから。僕とお父さんは時々だし。」


「散歩は?」

「時々してる。春休みは僕がずっとすることになってる。」

「いいなあ。楽しそう。」

天気のいいときに犬に引っ張られて散歩する森友君を思い浮かべた。
楽しそうに笑ってる顔を思い浮かべた。



「良かったら一緒に行かない?」

えっ?

「あの、もし良かったらだけど。途中草次郎が疲れるからお水休憩するし、お母さんがいつも休憩してるお店があって。そこでランチを食べることもあるって言ってた。一緒に行かない?」


さっき思い浮かべた楽しそうな森友君と草次郎の映像に自分も簡単に入れた。

「行きたい。一緒に行ってもいいの?」

「うん、是非。」



「休み中は二時間くらい歩かせてといわれてるんだ。いい運動にはなるんだ。」

「楽しそう。お腹も空きそうだね。」

「うん。一緒に行けたら、草次郎もすごく喜ぶと思う。」

「そうかな?大丈夫かな?」

「絶対喜ぶよ!!」


そういってデザートを食べ終わってから予定をあわせた。
と言ってもお互いに本当に予定は真っ白なくらいで。
とりあえず明日。
天気が良かったら、お昼前に森友君の家の最寄り駅がスタートになる。





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