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27 とんだ勘違い・・・・本当にそうでした
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しょうがない、奥の手だ。
そうつぶやきながら兄に連絡した。
『琉輝と真奈さんは元気?ちょっと相談があるんだけど、電話で話せる時間を後で教えて。』
内容はシンプルに。
返信が来た。素早い。
『8時頃帰る。』
『僕はもう帰るから、色々済ませて時間が空いたら電話が欲しい。』と送る。
『9時ごろする。』
『お願いします。』
よし、しょうがないので相談だけしておこう。
取り越し苦労でもいずれ役に立つかもしれない。
あと貯金しよう。こうなったらいつそんなことが起こってもいいように。
それも相談しよう。
いっそプロポーズも考えていいかもしれない。
次のしおりの誕生日に向けて。来年の夏に向けて。
こうなったら前向きに考えよう。
堺が言った、今か未来かの話だ。
通帳を見ながら利まわりのいい貯金方法を調べて、夏に向けて予想金額を計算する。
春には先に親に許しをもらって一緒に住んでもいいかもしれない。
そうしたら二人の家賃分のお金が半分浮く。
それは見込みだけど、何とか貯金を頑張ればいい。ボーナス込みで。
あとはプロポーズはバレンタインとかにしてと。
そんな幸せなことを考えていたら電話が鳴った。兄から。
一気に現実の問題に戻った。
『もしもし、お疲れ。』
『おう、久しぶり。珍しいなあ、弟よ。何かあった?もしかして子供でもできたか?』
冗談か?冗談だろう?
それとも何か聞いたのか?
しおり→お母さん→母親→真奈さん→光輝。
思わず無言になったからびっくりしたみたいだ。
「何だ、もしかして本当に?」
後ろで『えっ?』という真奈さんらしい声がする。
「一人じゃないんだね。」
「当たり前だ、家にいるからな。」
そういえばアニメの声もする。琉輝も起きてるらしい。
音が遠ざかる気配がした。
「移動したよ。何だ、本当なのか?」
「分からない。しおりは何も言わないけど体調悪そう、レモン欲しがってる、太ったって、だるそう。」
「心当たりはあるんだな?」
「うん、ちょっとだけ。」
「でもそのくらいはっきり言うなら結構進んでるぞ。そうしたらしおりちゃんも相談するだろう。」
「そうなの?分からないし、しおりは何も言ってこない。」
「多分。俺もその辺はあんまり、個人差もあるし。どうしたいんだ?」
「もちろん受け入れる。決める。結婚するし子供も欲しい。」
「そんな話したことあるのか?」
「具体的にはない、結婚とかは言ったことない。ずっと一緒にいたいとは言うけど。」
「しおりちゃんが内緒にするとは思えないなあ。お前が琉輝を可愛がってるのも知ってるだろう?子供好きだって知ってるのに、絶対喜ぶって信じてるのに内緒にする理由が分からない。」
「でもしおりはまだ早いと思ってるかもしれないじゃない。結婚はともかく、妊娠は。」
「そうだけど、そういう風に悩むのもちょっとだけだよ。いざとなったらさっさと決めるから、言うと思うぞ。」
堺と同じことを言う。堺よりしおりを知ってる兄が言うのだから、一層納得も行く。
「そうだとも思う。でもそろそろ一緒に住んで貯金して、結婚を目標にしようかと今考え始めたんだ。両親に挨拶に行って一緒に住みたいって言いたいし。」
「まあ、大体お互いに分かってると思うけどな。今更だけどけじめは大切だから一回帰って挨拶したほうがいいだろうな。合わせて俺も帰るから教えてくれ。」
「うん。」
「まあ、子供の事も、真奈に相談すると少しはいいかも。俺も真奈もフライングしたし。いろいろと体の事も参考になればな。」
「分かった、ありがとう。もう少し様子を見てみる。」
「おう、うれしい報告待ってる。」
「うん、真奈さんと琉輝にもよろしく。」
「ああ、じゃあな。」
スッキリした。大分スッキリした。よし。
しおりに電話する。
もう帰ってるだろう。
「もしもし、タスクお疲れ。」
「お疲れ、しおり。・・・ねえ、何か変わったことあった?」
「別にないかな?」
「そう。・・・・・」
「何、何かあった?」
「うん、ちょっとね。今度会った時に話すよ。さっき兄さんと電話してたんだけど、しおり実家はどのくらい帰ってない?」
「全然。だって休みの日はそこにいるじゃん。」
「そうか、琉輝がだいぶん大きくなったから、会いに来いって言われて。今度一緒に帰らない?」
「そうだね、来月。忙しくなる前に一度帰ろうか?」
「うん、そうしよう。」
「ね、琉輝君かっこよくなったかな?楽しみだね。光輝さんに似ていい男になったら楽しみ。」
「なんでよ。真奈さんに似て優しい柔らかい男になってもいいじゃん。」
「『僕みたいな?』って言いたい?タスクに似るかもね。」
「そうしたらうれしいなあ。兄のコピーは複雑。」
「光輝さんの見かけでやさしい男の子かもよ。将来楽しみじゃん。」
「なんだか僕より兄さんの見かけがいいって言われてる気がするけど。」
「もう、なんでよ。好みはタスクの見た目、中身もタスクがいいって。馬鹿なこと言わないでよ。」
「そう?」
「うん、もちろん。ずっとそうでしょう?」
「何も隠してない?」
「え~、隠してない。ずっとタスクの方がよかったってば。」
「分かった。」
「いまさら、変なの?」
「週末どこか行こうか?」
「うん、考えとく。」
「うん。じゃあね。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
やはり気のせいだろうか?
琉輝の話題を出しても少しも変わらない。
さぐりをいれてくる気配も全くないなんて。
とんだ勘違い・・・・・、そんな気がしてきた。どうしよう。
2人の男の時間をもらって。
兄と真奈さんが期待してるかも。
ちょっと・・・早まったかも。ちらりと後悔の思いが押し寄せてきた。
週末天気も上々。
しおりの希望で広い植物園に出かけた。
「最近太ったから運動かねて。」
そう言ってジーンズにスニーカーのしおり。
髪もまとめてカジュアルな恰好で。
子どもが出来たら、そんな恰好で一緒に手をつないで歩くんだろうか?
そんな想像を心の隅でする。
すごくリアルだけど、子供の片手をつなごうとする自分まで想像できる。
何年後の予想図だろう、少なくとも二、三年後だよ、って、そんな自分に呆れる。
広い広い敷地にはたくさんの植物がある。
地図を片手に手をつないでゆっくり見て回る。
今日はお腹を気にすることもない様子。
走ったりもするし、ジャンプもする。
・・・・やはり大丈夫?勘違い?
小さな山があった。登り口に説明書きがあった。
昔富士山が見えたらしい。
さくっと登れるこんもりした築山のようなもの。
富士山はどこにも見えない。
空気が濁り、高い建物が増えたせいだ。
後ろからしおりを抱きしめる。
広すぎて誰もいないから。
「ねえ、しおり、僕に何か言いたいことある?」
さり気なく?聞いてみた。
後ろを振り返るしおりから手を離す。
「え、何だろう?別にないかな?どうしたの?何か変?」
「ううん、勘違いかも。」
なんだかすごく勘違いだと、今分かった。
あれからちょっとだけ調べた。
今でも手帳にこっそりつけてた印と注文履歴と妊娠に関する情報と。
やっぱり違うかもと思いはじめた。
「ね、もしかして今日の事?」
「ん?何?」何だろう?
「今日泊っていい?」
「うん、もちろん。」
「この間食べ過ぎて・・・ほら勝手に寝ちゃんったから。ごめんね。今日は大丈夫だから。少しダイエットもしたいし、運動も。」
ちょっと小声になった。
他の人が見たら頬にキスしたと思ったかもしれない。
ちょっと赤くなったしおり。
手をつないで富士山の見えない築山を降りる。
富士山は見えなくても、ちょっとした内緒ごとを聞いたり聞かされたりするには十分。
それに問題が解決する場所でもあるかも。
少し安心して、少しがっかりもして、少し・・・・寂しかった。
ちょっとだけした想像した画が消えた。
「桜の頃はすごいみたい。船から見るのもいいらしいから、いつか来ようね。」
今思ったのは自分としおりと子供の三人で見る桜。
今じゃなくても、いつかの未来に。
「しおり、あの・・・・ごめん。」
「何?」
くるりと起き上がり上から見下ろされる。
僕も横を向いてしおりと向き合う。
腰に手を回してくっついて。
「あの、誤解したんだ。先に謝る。ごめん。」
「何を?」
「もしかして、しおりが妊娠したかもと思った。」
「ええっ?何で?いつ?」
「この間、レモン欲しがって、だるそうでお腹さすって、太ったって言って先に寝たから。」
「うっそ、・・・それで?タスク、それで妊娠?」
「だって、一度、ほら、切らしたことあったから。」
「だって、すぐ太る?あれからそんなに経ってないし。私全然心配してなかったじゃない。相談もしてないのに、勝手に考えたの?」
「だって・・・・。」
「なんで、タスクはどう思ったの?もしそうだったら困ると思ったの?だから何度となく聞いてきたの?言いたいことはないかとか何か隠してないかとか、聞いてきたよね?」
しおりの顔がちょっと怖い。
怒ってるか、悲しんでるか、両方か。
「ううん、しおりが言わないのは、もしかしてしおりが悩んでるのかもと思って。しおりはまだ早いって思ってて、それでまだ覚悟が出来ないのかもって。」
「違うよ、タスクの気持ち聞いてるの。タスクは?」
「僕はうれしい。しおりは僕が喜ぶって分かってると思ったから、だから余計にしおりの心の問題かと思った。僕は単純にうれしくても、しおりは仕事のこともあるし、体が変わるのはしおりだから。だからしおりが言ってくるまでに覚悟を決めようと思って、いろいろ考えてた、順番を。」
「・・・・。」
「・・・ごめん、しおり。怒ってる?だからごめんね。今言っていい?今度にした方がいい?」
「とりあえず、今言って!でも今度ちゃんと言い直して。」
「うん。しおりと結婚したい。してくれる?」
「嫌って言うわけない。いいよ。タスクと結婚したい、してください。」
抱き寄せてくっついた。
「ありがとう。しおり。両親に挨拶して、一緒に住んで貯金して、夏のしおりの誕生日とか記念の日に籍をいれたい。とりあえずそこまで考えた。だから帰ろうって言ったんだ。」
「うん。一緒に帰る。タスクの言うとおりでいい。」
「しおりあと一つ謝らなきゃ。ごめんね。」
「もう、今度は何?」
「兄さんに相談したんだ。話があるって電話したら、すぐに『しおりちゃんに子供でもできたのか』って冗談で言われて。びっくりしたら驚かれて悩んでるのがバレた。その時真奈さんも後ろで聞いてたみたい。そのあと場所を移して兄さんだけと電話で話したけど、まだ勘違いだって言ってない。明日言うから。あと、同僚1人にも相談した。」
「ねえ、タスク、何でそこまで人に言えたのに、私には一言も聞けなかったの?」
「だって本当に困ってるって言われたらどうしようと思って。半分以上責任は僕にあるし、もともと原因は僕だし。それにこっそりしおりに会いに行った時に、ちょうどしおりがお腹をさすって売り場からどこかに行くところだった。具合悪そうで。先輩の人に聞いたら最近ちょっと体調悪そうだって。そう言われたら、そう思うじゃない。」
「いつよ、知らない。」
「だって内緒にしてくださいってお願いしたから。ごめんね。」
「内緒ごとはしないよ。タスクはきっと気が付くから。本当に食べ過ぎだったの最近。だからちょっと便秘といろいろ。もうすっかり大丈夫だし。」
「うん、良かった。あ、体調がよくて良かったって事で。」
「分かってる。もし赤ちゃんできてもタスクが喜んでくれるのは分かってる。だから私もびっくりしても、やったあって思うよ。仕事はいろいろ考えれば何とかなるし。ちゃんと言うから。そんなビッグニュース隠したくても隠せないし。」
「うん。待ってる。」
「もう、それはないよ、タスク。ちゃんといろいろ順番どおりがいいよ。」
「あ、そうだよね。」
「うん。ちゃんと注文してよ。」
「うん。」
「すぐなくなるよ。」
「分かった。」
笑い話。本当に一人でグルグルと考え過ぎた。
でも本当にたくさんのチャンスをごみ箱に捨ててるから。
ただ、それはいいのかな?
今じゃなくてもいい、まだまだ未来の話でいい。
今はまだしおりと2人でいい。
結局兄と堺には謝った。
勘違いでしたと。
ただ『アホ』と『馬鹿』と言われたけど。
先に進むって話をしたら喜んでくれた。
『それなら良かった』と。
二人の男たちだけにとどめておいてよかった。
これで両親にでも相談してたら、ガッカリさせただろう。
何はともあれ、順番をひとつづつ。
少しずつ話をして目の前のゴールに向かっていこう!
そうつぶやきながら兄に連絡した。
『琉輝と真奈さんは元気?ちょっと相談があるんだけど、電話で話せる時間を後で教えて。』
内容はシンプルに。
返信が来た。素早い。
『8時頃帰る。』
『僕はもう帰るから、色々済ませて時間が空いたら電話が欲しい。』と送る。
『9時ごろする。』
『お願いします。』
よし、しょうがないので相談だけしておこう。
取り越し苦労でもいずれ役に立つかもしれない。
あと貯金しよう。こうなったらいつそんなことが起こってもいいように。
それも相談しよう。
いっそプロポーズも考えていいかもしれない。
次のしおりの誕生日に向けて。来年の夏に向けて。
こうなったら前向きに考えよう。
堺が言った、今か未来かの話だ。
通帳を見ながら利まわりのいい貯金方法を調べて、夏に向けて予想金額を計算する。
春には先に親に許しをもらって一緒に住んでもいいかもしれない。
そうしたら二人の家賃分のお金が半分浮く。
それは見込みだけど、何とか貯金を頑張ればいい。ボーナス込みで。
あとはプロポーズはバレンタインとかにしてと。
そんな幸せなことを考えていたら電話が鳴った。兄から。
一気に現実の問題に戻った。
『もしもし、お疲れ。』
『おう、久しぶり。珍しいなあ、弟よ。何かあった?もしかして子供でもできたか?』
冗談か?冗談だろう?
それとも何か聞いたのか?
しおり→お母さん→母親→真奈さん→光輝。
思わず無言になったからびっくりしたみたいだ。
「何だ、もしかして本当に?」
後ろで『えっ?』という真奈さんらしい声がする。
「一人じゃないんだね。」
「当たり前だ、家にいるからな。」
そういえばアニメの声もする。琉輝も起きてるらしい。
音が遠ざかる気配がした。
「移動したよ。何だ、本当なのか?」
「分からない。しおりは何も言わないけど体調悪そう、レモン欲しがってる、太ったって、だるそう。」
「心当たりはあるんだな?」
「うん、ちょっとだけ。」
「でもそのくらいはっきり言うなら結構進んでるぞ。そうしたらしおりちゃんも相談するだろう。」
「そうなの?分からないし、しおりは何も言ってこない。」
「多分。俺もその辺はあんまり、個人差もあるし。どうしたいんだ?」
「もちろん受け入れる。決める。結婚するし子供も欲しい。」
「そんな話したことあるのか?」
「具体的にはない、結婚とかは言ったことない。ずっと一緒にいたいとは言うけど。」
「しおりちゃんが内緒にするとは思えないなあ。お前が琉輝を可愛がってるのも知ってるだろう?子供好きだって知ってるのに、絶対喜ぶって信じてるのに内緒にする理由が分からない。」
「でもしおりはまだ早いと思ってるかもしれないじゃない。結婚はともかく、妊娠は。」
「そうだけど、そういう風に悩むのもちょっとだけだよ。いざとなったらさっさと決めるから、言うと思うぞ。」
堺と同じことを言う。堺よりしおりを知ってる兄が言うのだから、一層納得も行く。
「そうだとも思う。でもそろそろ一緒に住んで貯金して、結婚を目標にしようかと今考え始めたんだ。両親に挨拶に行って一緒に住みたいって言いたいし。」
「まあ、大体お互いに分かってると思うけどな。今更だけどけじめは大切だから一回帰って挨拶したほうがいいだろうな。合わせて俺も帰るから教えてくれ。」
「うん。」
「まあ、子供の事も、真奈に相談すると少しはいいかも。俺も真奈もフライングしたし。いろいろと体の事も参考になればな。」
「分かった、ありがとう。もう少し様子を見てみる。」
「おう、うれしい報告待ってる。」
「うん、真奈さんと琉輝にもよろしく。」
「ああ、じゃあな。」
スッキリした。大分スッキリした。よし。
しおりに電話する。
もう帰ってるだろう。
「もしもし、タスクお疲れ。」
「お疲れ、しおり。・・・ねえ、何か変わったことあった?」
「別にないかな?」
「そう。・・・・・」
「何、何かあった?」
「うん、ちょっとね。今度会った時に話すよ。さっき兄さんと電話してたんだけど、しおり実家はどのくらい帰ってない?」
「全然。だって休みの日はそこにいるじゃん。」
「そうか、琉輝がだいぶん大きくなったから、会いに来いって言われて。今度一緒に帰らない?」
「そうだね、来月。忙しくなる前に一度帰ろうか?」
「うん、そうしよう。」
「ね、琉輝君かっこよくなったかな?楽しみだね。光輝さんに似ていい男になったら楽しみ。」
「なんでよ。真奈さんに似て優しい柔らかい男になってもいいじゃん。」
「『僕みたいな?』って言いたい?タスクに似るかもね。」
「そうしたらうれしいなあ。兄のコピーは複雑。」
「光輝さんの見かけでやさしい男の子かもよ。将来楽しみじゃん。」
「なんだか僕より兄さんの見かけがいいって言われてる気がするけど。」
「もう、なんでよ。好みはタスクの見た目、中身もタスクがいいって。馬鹿なこと言わないでよ。」
「そう?」
「うん、もちろん。ずっとそうでしょう?」
「何も隠してない?」
「え~、隠してない。ずっとタスクの方がよかったってば。」
「分かった。」
「いまさら、変なの?」
「週末どこか行こうか?」
「うん、考えとく。」
「うん。じゃあね。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
やはり気のせいだろうか?
琉輝の話題を出しても少しも変わらない。
さぐりをいれてくる気配も全くないなんて。
とんだ勘違い・・・・・、そんな気がしてきた。どうしよう。
2人の男の時間をもらって。
兄と真奈さんが期待してるかも。
ちょっと・・・早まったかも。ちらりと後悔の思いが押し寄せてきた。
週末天気も上々。
しおりの希望で広い植物園に出かけた。
「最近太ったから運動かねて。」
そう言ってジーンズにスニーカーのしおり。
髪もまとめてカジュアルな恰好で。
子どもが出来たら、そんな恰好で一緒に手をつないで歩くんだろうか?
そんな想像を心の隅でする。
すごくリアルだけど、子供の片手をつなごうとする自分まで想像できる。
何年後の予想図だろう、少なくとも二、三年後だよ、って、そんな自分に呆れる。
広い広い敷地にはたくさんの植物がある。
地図を片手に手をつないでゆっくり見て回る。
今日はお腹を気にすることもない様子。
走ったりもするし、ジャンプもする。
・・・・やはり大丈夫?勘違い?
小さな山があった。登り口に説明書きがあった。
昔富士山が見えたらしい。
さくっと登れるこんもりした築山のようなもの。
富士山はどこにも見えない。
空気が濁り、高い建物が増えたせいだ。
後ろからしおりを抱きしめる。
広すぎて誰もいないから。
「ねえ、しおり、僕に何か言いたいことある?」
さり気なく?聞いてみた。
後ろを振り返るしおりから手を離す。
「え、何だろう?別にないかな?どうしたの?何か変?」
「ううん、勘違いかも。」
なんだかすごく勘違いだと、今分かった。
あれからちょっとだけ調べた。
今でも手帳にこっそりつけてた印と注文履歴と妊娠に関する情報と。
やっぱり違うかもと思いはじめた。
「ね、もしかして今日の事?」
「ん?何?」何だろう?
「今日泊っていい?」
「うん、もちろん。」
「この間食べ過ぎて・・・ほら勝手に寝ちゃんったから。ごめんね。今日は大丈夫だから。少しダイエットもしたいし、運動も。」
ちょっと小声になった。
他の人が見たら頬にキスしたと思ったかもしれない。
ちょっと赤くなったしおり。
手をつないで富士山の見えない築山を降りる。
富士山は見えなくても、ちょっとした内緒ごとを聞いたり聞かされたりするには十分。
それに問題が解決する場所でもあるかも。
少し安心して、少しがっかりもして、少し・・・・寂しかった。
ちょっとだけした想像した画が消えた。
「桜の頃はすごいみたい。船から見るのもいいらしいから、いつか来ようね。」
今思ったのは自分としおりと子供の三人で見る桜。
今じゃなくても、いつかの未来に。
「しおり、あの・・・・ごめん。」
「何?」
くるりと起き上がり上から見下ろされる。
僕も横を向いてしおりと向き合う。
腰に手を回してくっついて。
「あの、誤解したんだ。先に謝る。ごめん。」
「何を?」
「もしかして、しおりが妊娠したかもと思った。」
「ええっ?何で?いつ?」
「この間、レモン欲しがって、だるそうでお腹さすって、太ったって言って先に寝たから。」
「うっそ、・・・それで?タスク、それで妊娠?」
「だって、一度、ほら、切らしたことあったから。」
「だって、すぐ太る?あれからそんなに経ってないし。私全然心配してなかったじゃない。相談もしてないのに、勝手に考えたの?」
「だって・・・・。」
「なんで、タスクはどう思ったの?もしそうだったら困ると思ったの?だから何度となく聞いてきたの?言いたいことはないかとか何か隠してないかとか、聞いてきたよね?」
しおりの顔がちょっと怖い。
怒ってるか、悲しんでるか、両方か。
「ううん、しおりが言わないのは、もしかしてしおりが悩んでるのかもと思って。しおりはまだ早いって思ってて、それでまだ覚悟が出来ないのかもって。」
「違うよ、タスクの気持ち聞いてるの。タスクは?」
「僕はうれしい。しおりは僕が喜ぶって分かってると思ったから、だから余計にしおりの心の問題かと思った。僕は単純にうれしくても、しおりは仕事のこともあるし、体が変わるのはしおりだから。だからしおりが言ってくるまでに覚悟を決めようと思って、いろいろ考えてた、順番を。」
「・・・・。」
「・・・ごめん、しおり。怒ってる?だからごめんね。今言っていい?今度にした方がいい?」
「とりあえず、今言って!でも今度ちゃんと言い直して。」
「うん。しおりと結婚したい。してくれる?」
「嫌って言うわけない。いいよ。タスクと結婚したい、してください。」
抱き寄せてくっついた。
「ありがとう。しおり。両親に挨拶して、一緒に住んで貯金して、夏のしおりの誕生日とか記念の日に籍をいれたい。とりあえずそこまで考えた。だから帰ろうって言ったんだ。」
「うん。一緒に帰る。タスクの言うとおりでいい。」
「しおりあと一つ謝らなきゃ。ごめんね。」
「もう、今度は何?」
「兄さんに相談したんだ。話があるって電話したら、すぐに『しおりちゃんに子供でもできたのか』って冗談で言われて。びっくりしたら驚かれて悩んでるのがバレた。その時真奈さんも後ろで聞いてたみたい。そのあと場所を移して兄さんだけと電話で話したけど、まだ勘違いだって言ってない。明日言うから。あと、同僚1人にも相談した。」
「ねえ、タスク、何でそこまで人に言えたのに、私には一言も聞けなかったの?」
「だって本当に困ってるって言われたらどうしようと思って。半分以上責任は僕にあるし、もともと原因は僕だし。それにこっそりしおりに会いに行った時に、ちょうどしおりがお腹をさすって売り場からどこかに行くところだった。具合悪そうで。先輩の人に聞いたら最近ちょっと体調悪そうだって。そう言われたら、そう思うじゃない。」
「いつよ、知らない。」
「だって内緒にしてくださいってお願いしたから。ごめんね。」
「内緒ごとはしないよ。タスクはきっと気が付くから。本当に食べ過ぎだったの最近。だからちょっと便秘といろいろ。もうすっかり大丈夫だし。」
「うん、良かった。あ、体調がよくて良かったって事で。」
「分かってる。もし赤ちゃんできてもタスクが喜んでくれるのは分かってる。だから私もびっくりしても、やったあって思うよ。仕事はいろいろ考えれば何とかなるし。ちゃんと言うから。そんなビッグニュース隠したくても隠せないし。」
「うん。待ってる。」
「もう、それはないよ、タスク。ちゃんといろいろ順番どおりがいいよ。」
「あ、そうだよね。」
「うん。ちゃんと注文してよ。」
「うん。」
「すぐなくなるよ。」
「分かった。」
笑い話。本当に一人でグルグルと考え過ぎた。
でも本当にたくさんのチャンスをごみ箱に捨ててるから。
ただ、それはいいのかな?
今じゃなくてもいい、まだまだ未来の話でいい。
今はまだしおりと2人でいい。
結局兄と堺には謝った。
勘違いでしたと。
ただ『アホ』と『馬鹿』と言われたけど。
先に進むって話をしたら喜んでくれた。
『それなら良かった』と。
二人の男たちだけにとどめておいてよかった。
これで両親にでも相談してたら、ガッカリさせただろう。
何はともあれ、順番をひとつづつ。
少しずつ話をして目の前のゴールに向かっていこう!
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