幼なじみの有効期限は?

羽月☆

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28 飾らない自分と

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汗で冷えた体を抱き寄せ合うようにして眠る。
「タスク、絶対・・・・大好き。」
「ん・・・・。」
疲れてるのか半分寝てるタスク。

最後に寝顔を見たのは・・・。

寂しい夏をすごして、寒い冬を過ごしてた大学受験の頃。
あの頃も必死でタスクに会わないようにしていた。
でも本当は会いたくて会いたくて。

こっそり・・・・。
何度か電気を消した暗い部屋から、少しだけカーテンを開けて窓の向こうを見た。
勉強机に両手をついてぐっすりと眠りこんでるようなタスク。
ちょうど目を閉じた顔がこっちを見ていた。
カーテンも全開で。

暖かい恰好をして毛糸の帽子までかぶってるタスク。
寝てる間にずれたらしくて頭にちょこんと乗ってるみたいな感じ。
小さいころと変わってない顔。
いつも近くにいたのに。

カーテンを大きく開けて窓ガラスに手を当ててずっと見ていた。
でもどんどんタスクの顔がにじんできて。
だって涙がどんどん出てきて。

なんでこんな遠くに感じるの?
すぐそこにいるのに。
窓を開けて消しゴムを投げつけて、毛糸の帽子を落としたりしてふざけ合いたい。
前までだったらきっとそんなことをして、眠気を覚まししてたと思う。
タスクが、あんなことさえ言わなければ。

大嫌い、タスクの馬鹿。
なんであんなこと言うの?
私はただの隣の子?
それだけの存在だったの?
私はどこにでもいる、そんな普通の存在だったの?

だってタスクはその内誰かを好きになって、あの家に連れてくる。
「しおり、恋人だよ。」って。
「しおり、今度結婚するんだ。しおりは?いい人いないの?」
なんて平気な顔をして言うの?
その内子供なんて抱いてあの神社に行くのよ。
「僕も小さい頃に、ここによく来てたんだよ。」
なんて・・・・勝手に思い出を語らないで。
その思い出の半分は私の物なのに。
嫌よ・・・・そんなの・・・・、タスク・・・・・・。
泣きながら叫ぶ自分の声が聞こえる。


「しおり・・・・しおり・・・・どうしたの?」

タスクの声が近くで聞こえる。

目を開けると、心配そうにのぞき込んでる顔がうっすらと見えた。
ここは・・・今・・・・。
しばらくぼんやりとする。いつの間にか眠っていた。
思い出が夢になって・・・・・現実は違う。
ここにいるのは大人の私、隣にはタスク。

タスクはなにも着ていない。自分も。
夢が深すぎてとらわれて、本当の現実に戻るのに時間がかかった。

「しおり、大丈夫?泣きながら名前を呼ばれたから。」
「ごめん。タスク寝てたのに、起こしたでしょう?」
「うん、いいよ。大丈夫?怖い夢見たの?」

横になりながら抱きしめて、見つめ合い、頭を撫でてくれる。
こんなこと小さい頃にもあったと思い出せる。
本当に変わってない私たち。

「タスクの夢見てた。受験の時に勉強机で眠ってるタスクを自分の部屋から見てた。もう随分会ってないし、喋ってない頃。あの頃ずっと辛くて。ぜったい悲しい未来しか待ってないと思ってた。タスクが彼女を連れてきて私に紹介して、結婚するって報告に来て、子供を連れて神社にいったり。そんな事を思ってたから、久しぶりにそんな夢を見た。」
「なんで、そんな夢を?ここにいるのに。」

キスをしてくれる。

「タスク。やっぱり私が悪かったの。あの頃、意地を張り通した私が。だから今も時々変な夢を見る。全然今と違うふたりの夢。」
「そんなことないよ。僕が悪かったって言ったじゃない。でもしおりも意地っ張りだし、彼の事もあったし、いろんなタイミングだよ。でも今は違うから。」

そう言って大丈夫だと伝えるように頭を撫でてくれる手。
本当にそこにいる、そこにある。確かにある。

「うん、ねえ、タスク。」
「ん?」
「ダメ?」
「いいよ。」

明日は休みだから。寝坊してもいいし。
不安な未来は、夢だとしても見たくない。





「しおりちゃん、ひらりです。」
「こんばんわ、ひらりさん。どうぞ。」
「ありがとう。お邪魔します。あと、これお土産、気に入ったら使ってね。」
「ひらりさん、いつもありがとうございます。」
「この間の香水使ってみた?」
「はい、すごく爽やかだから仕事でも大丈夫で使ってます。」
「で、大好きなタスク君はなんて?」
「凄く可愛いって、似合うって。」

そう褒め言葉を伝えたのに。
ひらりさんが変な顔をした、また。

「ね、しおりちゃんちのタスク君は匂いが可愛いとか思う人?香水をつけてるいい香りのするしおりちゃんが・・・・可愛いんだよね。」
「・・・・そう?・・・可愛い香りってあると思うけど?」
「う~ん、開発の人もまさかそんな感想を言われるなんて思ってないと思う。でもタスク君も気に入ってくれるならうれしい。きっと大人っぽい香りなんてつけたら反対するんじゃない?」
「そうかな?でも大人っぽくなるって言われ・・・・。何でもないです。」
「何?ぐんと大人っぽくなったって言われた?」
「はい。そうですそうです。」
「違うでしょう、その反応。タスク君と暗い中にいると大人っぽくなるって事でしょう、はいはい。もう言いよどんだだけでバレるんだから。最後まで言ってください。」

・・・・・ああ。タスクの馬鹿。私はもっと馬鹿。
なんだかバカップルエピソードじゃない。
否定はできないけど。


「ひらりさんも順調ですか?」
「うん、順調よ。」
「良かったです。あ、おせんべいありがとうございました。タスクと食べてたらあっという間にバリバリと食べてました。」
「うん、また送ってきたら食べるの協力してね。」
「はい、いつでも。」

「で、この間の会い過ぎて飽きられるよ~の悩みは解決した?」
「はい。・・・・大丈夫みたいです。」
「ほら、やっぱりタスク君はしおりちゃんラブ度が半端ないから。『僕はもっと会いたいよ、しおり』なんて言われたでしょう?」
「物真似は似てませんが。」
「内容は合ってたのね。」

まあまあ、その通りです。

「なんだかしおりちゃんの話聞いてると、幼なじみに憧れちゃう。いいなあ。」
「もう、何言ってるんですか。ひらりさんは幼なじみじゃなくても引く手あまたです。」

本当にきれいなひらりさん。色っぽいって、こんな女性のことを言うのに。
タスクの基準は大丈夫かしら?

「大人になるといろいろと駆け引きもするし、のちのち価値観が違うって何かと喧嘩の種になるけど。幼なじみだと何でも知ってるし、分かり合えてる感じでいいじゃない。」
「う~ん、そのあたりはそうかな?よくわからないです。」
「だって小さい頃から同じ体験をして同じものを食べて、同じ人に影響を受けてきたんでしょう。やっぱり大きいわよ。」
「そう言えばそうなのかもしれません。ほとんど家族みたいに環境は一緒です。でも家族でもそりが合わないとかあるじゃないですか?分かり合えないパターン。」
「個性のレベルはね。」
「なかなか深い議論です。」
「なんだか一切飾らなくていいって楽そう。うらやましい。全力で自分を受け止めてくれるなんて、すっごい贅沢よ。」
「じゃあ、タスクに感謝しておきます。」
「うん、そうして。」

飾らない、ありのまま。
きっと私が勝手に怒っても、タスクが謝って仲直りするってパターン。
それはこの後も続きそう。
タスクが気を回してあれこれ心配するのに私が呆れるのも。

ずっと今までそうだったから、きっとこのまま私もタスクも変わらない。
変わらない二人のままで。
ありのままの私で。
変わらないタスクとふたりで。
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