スパイ気取りが仕掛けてくる取引には用心すべきです!

羽月☆

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8 疲れた日の次の日の寝起きには注意が必要。

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「お休み。」

小さく呟いて、藤井さんも静かにしてくれた。
お互いにお互いの身じろぎを感じてると思う。

寝息か、ただの呼吸か、本当に寝てるか。


我慢比べのように、じっとしてる。


私よりは気短だったらしい。
体を起こして上からのぞかれてる気がする。
だからと言って何も言われず、されず、でも動かず。

目を閉じたまま感じてる気配だから、もしかしたら間違ってるかもしれない。

今度は私が根負けして、ゆっくり薄眼を開いた。
真っ暗な闇に慣れると、大きな影が横にいるのが分かる。
目を開けたら、やっぱり見下ろされていた。
そのやっぱりな状態にちょっとだけ満足した。

思わず笑顔になったのはそんな満足の笑顔。
思った通り、気配を読んでやった!
そんな感じだったのに。

「可愛い、僕も大好き。」

も・・・・・って、何?

上から顔を寄せられた。

「そんな笑顔でこたえられると、『はい、喜んで。』って言いたくなるね。」

近づいた体に腕を突っ張り、止める。

「何?」


「だって愛したいって、繰り返して伝えてたら、目が開いた途端、『やっぱり、私も!』って答えてくれた。」


また勝手に闇の中でもストーリーを作ったらしい。

否定しても、最後はそうなる。
それにそう否定したい事でもなかったりする。
もうこの段階じゃあ、そうなるでしょう。

突っ張ったままの腕を緩めた。


久しぶりに唇が触れた。

なんだかすごく時間をかけた感じがする。
出会ってそう時間も経ってないのに。
すごく一緒にいる気がする。



抱き寄せられるままに引き寄せて、体をくっつけた。


Tシャツ越しの体温を感じる。
勢いを持った部分を押し当てられて、自分で腰を浮かして足を絡める。

浮いた腰から手を入れられて、数時間ぶりにパジャマを脱いだ。
お返しにTシャツを脱がせたら、インナーの下着を脱がされた。


やっと肌が直接触れ合った。

上半身がくっついてお互いの体温を肌で感じ合う。


さすがスパイ。思ったよりがっしりしていた。
力を入れて抱きしめられて、腕や背中に固い大きな筋肉を感じる。

パジャマ越しに与えられる刺激に声が出る。
とっくにキスは終わってる。

降りてくる唇の刺激に背中が反る。

もはや少しも隠すことなく快感を伝える。


「藤井さん・・・・・。」

「まだ、もっとだよね。」

押し付け合う腰の揺れが強くなる。


「嫌・・・・・・お願い・・・。」


足を緩めたら分かってくれた。

丸ごと全部脱がされた。
その後自分でも下着を脱いでくれた。


ぐるりと位置が変わり、体の上に乗り、もっとお互いの体の中心を感じた。
腕をついて、自分で揺れる。
下から腰を支えられて、同じように揺れてくれて。

声を出し合って感じ合いながら、違う音も混じる。

「有希さん、もっと動いて。もっと激しく動いて。」


そう言ってるのに腰を押さえられてぴったりと張り付けられた、動けない。
隙間なく重なったまま激しく動かされて、我慢できない。


息が荒くなり、口が閉じなくて。


「ああっ、気持ちいいっ。」

繰り返し伝えて、声が出なくなった後、力が抜けた。


抱きしめられて、横に下ろされた。

隣でバタバタと動いた後、また抱きしめられて、上から重なった。ぴったりと。



お互いにもう隠さない。

だったら最初から見せてくれてればよかったのに。

そう思う。

だって、本当に疲れた。
ものすごく疲れた。




「疲れた。すごく疲れた。気持ち良くて・・・・張り切り過ぎだよ。」


クレームのように言われた。私が思ってたことだ。
少なくとも前半は私のセリフだ。


「やっとここまで来た。遠かった。」


肩に顔をくっつけて、大きく息を吐いた藤井さん。

そんな事言っても、普通に考えると急展開でしょう?
よく考えて、一緒にいた時間なんて本当にちょっとなんだから。


でもこんなやり方じゃなかったらなかなか進まなかったかも。
そう考えたらご苦労と言いたい。
言葉をちょっとだけ変えて伝えた。

「来てくれてありがとう。」


腰のあたりにある手に自分の手を重ねて、肩の辺りにある頭に伝えた。


「有希さん、後の続きは明日でいい?・・・・本当に疲れた。」


「分かった。」


一体何時?
まあ、いいや。

目を閉じて大人しく睡魔に体を渡した。



半分くらい目が覚めた。
だるい・・・・。

ソファに足を乗せて両手を広げて最高のリラックスポーズ!

ただ、ソファは思ったより低く、固く、生暖かく・・・・・。
広げた両手は何かに当たった、それはテーブルの足やバッグじゃないはず。

だって私の手よりも何かが音を立てた。

「イタッ。」

人間の言葉。

変な夢を見てるかと思ったけど・・・すぐに足が抱えられてビックリして目が覚めた。
目を開けた時にそこに声の主がいた。
本当に忘れてたのはさっきまで。
ちゃんと思い出したけど・・・・。

抱えられた足が何をしたのかは明らかだ。

堂々と隣の人の体に足を乗せてたらしい、それは少しも色っぽくもなく、両脚をガッと乗せたみたい。
そして大の字に広げた手は、きっとどこかに当たったんだろう。
まだ足を揃えてた・・・・と思いたい、決して・・・・。


「すみませんでした。・・・・・・変な夢を見てたのかもしれません。」

とりあえずそう言った。

「ただ、『疲れてる~。』って声は聞こえたけど、寝相が悪かったんだ。まさかクレームじゃないよね、僕も本当に疲れたって言ったよね。」

脚は揃えて下ろしてもらえた。

ちゃんと大人しく棒のような姿勢になった。
一本にまっすぐに。
ちゃんとベッドの半分しか使ってない。


「起こしてしまいましたか?」

「起きてたよ。ぐっすり寝てるようだったから、そうっと寝顔を眺めてたら、半目を開けそうな気配のまま、蹴られて殴られた。」

藤井さん独特の表現だとしておこう。
手足が当たったという事実だけは反省しよう。
なんとなく思い当たることがあるとしても。

「本当にすみませんでした。今、何時ですか?」

「分からない。まだ朝になるくらいかな。」


近くで囁いて答えてくれた。


「そんなに疲れてたの?」

「覚えてません。寝言かもしれません。」

「寝言言ったり寝相が悪いって言われたことは?」
「ないです!!」

そこは強く否定した。
ちょっと勢いがあり過ぎたかもしれないけど、そんな隣に寝てる人に・・・・手足が当たるなんて、ない。

「そう?」

「誰も言わない?」

じりじりと顔を寄せられた。
ムキになって否定しながら、距離をとったから、とうとうベッドの三分の一くらいに寄ってきた気がする。

「・・・・・ないです。」

「誰も言わなかったんだ・・・過去の人たちは。」

なんですか、急に・・・・。

「友達と旅行に行っても、親と旅行に行っても、大人しく寝てました。布団の乱れもそうないです。」



「藤井さんは?」


「今まで、寝相が悪いとか、寝言を言ったとか、言われたことないですか?」

「ない。」


短い返事で終わった。


このやりとりにオチはあった?
いつもならもっと呆れる話になるのに。

近づいた体と顔。
さっきと同じように足を持たれて・・・また藤井さんの上に乗った。
今度は他力だ、明らかに乗せられた、文句は言うまい。

乗せられたまま大人しく・・・乗せていた。

顔を近づけられたから首に捕まった、キスをした。

そのまま起き上がられて。

なるほど。

こんなオチか・・・・。


布団を引き寄せて自分の体を覆う。
余分な部分を掛けてあげた・・・形にはなった。


「確かにじっとしてないし、所かまわず力入れて来るし、ガンガン体をぶつけられるし・・・・・・・・ 寝相悪いのも想像できたはずなのに。」


まだオチじゃなかったらしい。
続くのなら聞いてやってもいい、ムキに否定なんてしてやるもんか。



「僕もムキになって相手になったからもう疲労困憊、熟睡してて寝てる間に殴られたのも、蹴られたのも気がつかなかったかもしれない。」


「・・・そうですか。」


さり気なくさわさわと手を動かされて、そんな言い合いをしたいらしい。


「でも懲りないタイプなんだ。またする?」


「・・・・・しません。」



「そう?」


無言、唇を結んでそう答える。

ただ、やはり言いくるめられうように自分のペースで進めたいらしいから。
乗ってやってもいい、ここまで流されてしまったんだったら、ついでにもう少しうまく流されてあげてもいい。

腰のあたりでゆっくり揺れる手を感じてる。

眉間にしわが寄る、我慢も無理で、ちょっと唇が開いて、声が出る。


「前言撤回?」

悔しさはぶつけたいから首筋に乱暴にキスした。

「痛いなあ・・・・。」

倍のお返しをされて、流された。


今度は大人しく目が覚めた。
ギチギチに抑え込まれるように狭いスペースにいて、自由に動くのも難しかったから。



結局靴の修理中にナンパされたってことになるんだろうか?
再会して、話をして、次の日のランチまでは本当に『運命の再会』の始まりで披露できた話なのに。
こうなったら礼二が一役買ってくれたようで、それもちょっと癪な気もしたけど、後々お礼が言えたりするんだろうか?


ゆっくり起きだしてギチギチの狭い場所から抜けた。
パジャマを拾いながらバスルームへ。

お腹空いた~。


本当に長い一日だった。
昨日から今日までの切れ目が分からない。
丸ごとつながった一日みたいだった。

今やっと今日になり再会三日目になった、やっと・・・・。

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