スパイ気取りが仕掛けてくる取引には用心すべきです!

羽月☆

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9 二日目がやっと終わった、そんな週末。

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とりあえずパジャマを着てコーヒーをいれる。

ランチのお店も考えてたから、早めのランチで出かけてもいい。

取りあえず起きるのを待とう。


テーブルの上には昨日のトランプがあった。
修学旅行何とかは本当なのかもしれない、結構箱も角が取れてるし、中身を見ても一時期使われてたかもしれないと思うくらいの使用感はあった。

どんな高校生?

あんなに軽く相手をしてくれるなら人気があったのかもしれない。
頭もよさそうだし、要領もいいのだろう。

部屋で男子とトランプよりは、こっそり女の子とどこかで椅子に座ってジュースを飲んでるタイプかもしれない。

簡単にそんなシーンは想像できた。


そんな想像を消すように勢いよくトランプをシャッフルする。


一枚ひいた。
ダイヤの12 クイーンのカードだった。

もう一枚。

スペードのキング。


横に並べるのも嫌で遠くに離した。

もう一枚、ハートのクイーン・・・・。


「えい!」

スペードのキング。


おかしくない?


やっぱりおかしかった。
裏返してみたら全部絵札だった。
1~10の数字のカードはなし。

これって何の遊び用?
大人数向け神経衰弱?
だいたいジョーカーもいないじゃない。

パラパラ捲っていっても本当に絵札だけ。


意味不明でテーブルに放り投げた。

これで何をして遊ぶつもりだったのか、そんなゲームに心当たりがない。
ルールを説明されて、二人で遊んで、盛り上がるとも思えない。
しょせん小道具だったんだから何でも良かったのかもしれない。

『マジ?』って思われるくらいの突飛なものだったら。

ソファに寝転がって目を閉じた。
普通に座って上半身を横にしただけ。
脚は揃えて下ろしてる。
足を上げた方が気持ちいいのに。楽なのに。

一応控えた。

それにしても起きてこない。
お腹空いたんだけど・・・・・。


あ、車じゃない。今日もお酒を飲めないじゃない。
もう、何してるの・・・・・。


「また寝言?」

そう言われて目を開けた。

Tシャツに下着の姿を下から見上げた。
ちゃんと顔を見た。

「寝てない。」

「じゃあ、独り言だった?」

体を起こしてちゃんとする。

「シャワーどうぞ。おなか空いてるんだけど。」

「ランチの約束したよね。ちょっと待ってて。」


そう言われたら自分の準備に時間がかかるのに気がついた。
着替えと化粧。

とりあえず寝室に行って、さっさと着替えをして、窓を開けた。


入れ違いで化粧をして、仕事の朝より短時間で仕上げた。



「相当お腹空いてるんだね。分からないでもないけど。」


「待たせるのは悪いと思っただけです。」


「そんな気遣いが出来るなんて、さすがだね。」

普通の感想を言われた。
確かに『気遣う』なんて言葉とは真逆よね。



「何?」


「『藤井さんほどじゃないですよ。』って言いたい?」

嬉しそうに言う。
だから真逆だってば。


アクセサリーを選んで、鏡を見てつける。

何が楽しいのか一緒に鏡を覗き込む。
ピアスホールしか見てません。
気遣いが出来るなら邪魔はして欲しくない・・・・・。

なんだか鏡と本物の私の方を交互に見られて恥ずかしいだけだった。


バッグはそのまま、昨日のまま。

「OKです。」


藤井さんのバッグはそのまま。
ポケットに携帯と財布を入れて、玄関へ。
また戻ってくるらしい。


昨日決めたレストランに向かった。
本当にオープン直後。一番乗りだった。


メニューを決めて、私もお酒は頼まなかった。
別に一人の時は飲まない。
我慢でも、付き合ったのでもない。

「車だと飲めないじゃないですか。」

「しょうがない。今度から電車で来ることにするよ。あ、でも荷物どうしようかなあ~、ちょっとかさばるかなあ、毎回持って来て持って帰るって面倒だしなあ~。」

スカスカだったくせに。
大して重くないだろうに。
それでも素直に答えてあげた。


「お好きなように。」

「了解。有希さんの望むようにします。」


はいはい。
ついでにトランプもどうぞ、また小道具として使うつもりなら、そんなのもどうでもいいです。


「なんだかぐうたらな週末で、仕事が面倒だね。」

そうかも・・・。

「ここで本当のスパイだったら業務にかこつけて、いつでも、どこでも会えるのにね。本当に憧れるよね。」

そんな理由で憧れられるのも不本意だと思う。
もっとその筋の人たちは真剣に仕事してると思うのに。

「でも僕の方の駅に来て、直帰出来るときは連絡してね、この間のスペースで待ち合わせもいいよね。」

「天気と気温によります。もっと普通に駅中でも良くないですか?」


「ええ~、有希さん、知らないの?あの場所の都市伝説。」

「知りません。」

何で知ってると思うの?あの場所が何か?

「あの辺の会社で囁かれてる話なんだけどね・・・・・・。」

じゃあ知ってるわけないじゃん!

「あの場所で上手く二人だけになる時間が持てたら、ご縁が太くなるって言われてるんだって。女子社員にはありがたくも有名な話なんだよ。」

「でも、この間も誰もいませんでしたよ。」


「・・・あああ・・・・すごいね。そうかそうか、夕方のことしか考えてなかったけど、昼間でもいいのかな?明日確認しよう。そうか、そうか・・・。」


とりあえず納得してくれた。
昼と夜何が違うんだろう?
それは噂の『信憑性』。
夜の方が二人きりが特別に思えるから。
きっとそうだろう。

残念でした。ノーカウントの対象外の時間とチャンスでした。


「外に出ることが多いですか?」

「そんなでもないよ。三割くらいかな。慣れたところを定期的に回るのがあるだけ。」

だから急に寄り道も出来たんだろう。
靴を磨くのにそんなに時間はかからないとはいえ、いきなりの思い付きだったみたいだし。
そう考えると最初から短時間で丸め込めると思われたんだろうか?

「何?ちゃんと真面目に仕事してます。決して誰かの情報を入手して喜んはだりはしてないです。そこは一筋のスパイです。」

胸を張る、多分わざと。
その活動もここ二日くらいのはずなのに。

「あんまり情報を探られた気がしないですけど。」

「そんなのは一緒にゴロンとしたらわかるよ。だいたい終了。」

そのゴロンはソファに足乗せのゴロンじゃないよね。
あれを見たら何と思うんだろう。
部屋でだらだらと過ごす私を見ても、それでもそう言えるんだろうか?
いまのところそんなにだらっとしたところは見せてないと思う。
掃除だってちゃんとやってるし。
ソファの使い方も間違ってない。



ランチは大いに満足してもらえたらしい。
愛想良くお店を後にして、部屋に戻ってきた。

「お腹いっぱいだね。」

「そうですね。」

「いつも一人で行ってたの?」

「誰か来た時に、時々です。」

礼二とも行った、二回くらい。
お店の人も二回じゃあ覚えてないだろう。
後は友達が来た時に、数回。

頭に手を当てられてくるくる回された。

「急に、何ですか!」

気分悪くなる・・・・。
目が回る。
食後の今、なんてことをする。


「元カレとも行ったんだ。あの気取り屋とも行ったんだ。」

本当にそこは鋭い。
気分の悪い振りをして、答えないでいた。

「ああ、気分悪っ。」

それはこっちのセリフだ。

顔をあげてゆっくり呼吸を整える。
振りじゃなくても、結構気持ち悪い。
容赦ない奴め。

睨もうと横を見たら、見下ろされてた。
捨て犬みたいな表情をしていた。
ふざけた表情しか思い出せないのに。

視線を外した。


「世の中って、どうにもならない先着順ってあるよね。同じ親からだって先に生まれたら、それは一生だし、後れをとってもどうしても追い越せないし。先輩だってちょっと先にいたからって唯々諾々と従ったり、殴りたいのを我慢したり。」

家庭的にトラウマでも?
仕事の愚痴が結構ある?
ヘラヘラしてそうでも、それなりの苦労はある・・・よね。


「まあ、そんな事はどうでもいいんだ。順番は遅れても、何かのきっかけで下剋上はあるから。でも元カレの思い出には絶対敵わない。そこだけ記憶を無くしてもらっても・・・・それは無理だね。」


そんなにこだわる?
元カノともそれでトラブルになった経験があるの?

「そんなのは誰にだってあります。でも同じことはおきないから、別に気にしなければ・・・・。」

「そうだけどね。」


「そんなにつらい経験があるんですか?」


「何?」


「だから本当に好きだった人に元カレと比べられて捨てられたとか、別れの理由がそれらしかったとか。」

仕事の事と家庭の事は聞かずにおこう。

「ない。今まではない。ただ今回はある。だって目撃したし。」

「本当にちらりとじゃないですか。忘れてもいいですよ。」

「僕より先に忘れて欲しい。」

ああ・・・鬱陶しい。
不毛なやり取り。
冗談のように言われるなら答えようもあるのに。
綺麗に忘れることは出来ない。ゼロには出来ない。
別に未練があるわけじゃないからいいじゃない。


「分かってる。ちょっと言っただけ。あんまり頻繁に思い出さないようにしてもらえれば、我慢するし。」

「そうしてください。」

「そっちこそ、そうしてください。」

ムムッ。

深呼吸した。

まったくあのレストランは止めよう。
あんなに愛想良く出てきたのに、もう行くことがないのは寂しいけど、一緒に行くのは止めよう。

テレビを見ながら、程よくダラダラとして、やっと長い週末が終わった。

手にしたバッグは膨らんでる。
置いていくことになった下着とTシャツ。
そうなるとほぼ空っぽなはずなのに、膨らんでるのだ。

そこには私の着替えが入ってる。
パジャマになる部屋着と下着と化粧品と、ちょっとした楽な服。
連れて帰ると言われた。

「僕の部屋に置いてれば、便利だよね。だって本当に大きな荷物を持って電車に乗るのは面倒だしさ。」

薄っぺらいバッグを車で運んだだけの癖に。
でもそうしてもらうと、いざという時にも楽は楽。
どうせ車に積むだけだしね。

「じゃあ、お願いします。このまま開けないままで部屋の隅に置いててください。」

「分かった。寂しいときは僕のパンツでも抱きしめて寝ていいからね。大活躍するかもしれないし。」

「しません。」

逆に私のでそんな事をしないように!!
絶対ファスナーは開けるな!!
そんな活躍なんて期待しない事。


「やだなあ、僕は抱きしめなくても大丈夫。こう見えて想像力が豊かだからさ。」


何を思ったのかはバレたのかもしれない。
とりあえずしないと言う、本当に冗談だと分かって安心。
想像力が豊かなのは知ってるし、それが意味するところは考えまい。


「じゃあ、来週も遊ぼうね。」

そう言って立ち上がった。
一緒について行く。
駐車場までは送ろう。

玄関でくるりと振り向いてキスされた。

「また来週だね。」


「連絡するから無視しないでね。」


「あんまりしつこいと保証はしませんが。」

「普通普通。」

その普通が安心できないんだ。


手をつないで外に出た。
コンビニの近くの駐車場にとめていたらしい。

「どのくらいかかりますか?」

「急げば30分くらい。」

「気をつけて帰ってください。」

「もちろん、ご機嫌で気をつける。」

車に乗って、通りに出るまで見送った。


本当に週末は終わった。
かつてないほど慌ただしく、変化のあった週末だった。
まさかなつみも想像もしてないだろう。

もうしばらくは内緒にしておこう。



のんびりとコンビニで買い物をして、部屋に戻った。

遅くなったけど洗濯をして、外に干した。



ダラダラと過ごしてたから普通にソファに座ってる。
疲れたと思ったのに、そんな事もとびぬけていた。

テレビをつけて、にぎやかにして、夜になったらさっさと寝た。


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