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第一章:運命の婚約
七歳で決まった婚約
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私が七歳の春、父は私を書斎に呼んだ。
重い扉を開けると、見知らぬ大人の男性が二人、ソファに座っていた。一人は白髪混じりの髭を蓄えた老侯爵で、もう一人は銀髪の青年だった。青年は窓際に立ち、光を背に受けていた。逆光で顔がよく見えなかったが、背が高く、凛とした佇まいをしていた。
「レティシア、こちらへ」
父が手招きをした。私は緊張しながら父の隣に立った。父の手が私の肩に置かれ、温かさが伝わってくる。
「ハーシェル侯爵家の御子息、エドワール様だ。お前の婚約者となられる方だよ」
――婚約者。
(将来、私の夫となる人……)
エドワールが私に近づいてきた。銀青色の瞳が私を見下ろし、膝を折って目線を合わせてくれた。近くで見ると、整った顔立ちをしていた。冷たそうな印象なのに、瞳は優しかった。
「初めまして、レティシア」
低い声が響いた。大人の男性の声。
(胸がドキドキする)
「は、初めまして……」
小さな声で答えた。エドワールが微笑んだ。口角が僅かに上がり、瞳が柔らかくなる。
「私の可愛いお姫様」
大きな手が私の頭に置かれ、優しく撫でられた。温かく、包み込むような手。父とは違う、大人の男性の手。頬が熱くなり、恥ずかしくて下を向いた。
「よろしくお願いします、エドワール様」
私は丁寧にお辞儀をした。ドレスの裾を摘み、習った通りに膝を曲げる。エドワールが笑った。声を立てない、静かな笑い方だった。
「よろしく頼む、レティシア」
手を差し出された。大きな手。私は小さな手を重ねた。エドワールの手が私の手を包み込み、軽く握ってくれた。
「私、花嫁修行を頑張りますね」
私は無邪気に笑った。エドワールの瞳が揺れ、何か言いかけて口を閉じた。
「ああ、期待しているよ」
穏やかな声で答えてくれた。私は嬉しくなり、エドワールの手を両手で握った。
「エドワール様は、どんな花嫁さんが好きですか?」
無邪気に尋ねた。エドワールが少し驚いたような顔をして、それから優しく微笑んだ。
「そうだね……笑顔が素敵な人かな」
「じゃあ、私、いっぱい笑います!」
私は満面の笑みで答えた。エドワールの表情が柔らかくなり、もう一度頭を撫でてくれた。
「ああ。君の笑顔を、楽しみにしているよ」
老侯爵が笑い声を上げた。
「良い子じゃ。エドワール、大切にしてやれよ」
「はい、父上」
エドワールが頷いた。私を見つめる瞳は、優しく、でも少し切ないような色をしていた。
「一日でも早く大人になれるように頑張りますね」
私は首を傾げた。エドワールが静かに笑った。
「君が大人になるまで、ゆっくり待つよ」
「待つって、どれくらいですか?」
「そうだね……十年くらいかな」
「じゅうねん! すっごく長いですね」
私は目を丸くした。エドワールが優しく微笑む。
「長いね。でも、待つのは苦にならない。君が素敵な女性になるのを、楽しみに待っているから」
囁きが優しかった。私は嬉しくなって、エドワールに抱きついた。
「私、頑張ります! エドワール様に相応しい花嫁さんになります!」
エドワールが僅かに身体を強張らせたが、すぐに優しく私を抱きしめ返してくれた。大きな手が背中を撫で、髪に触れる。
「ああ。君はきっと、素敵な花嫁になる」
囁きが頭上で響いた。温かく、優しい声。私はエドワールの胸に顔を埋めた。心臓の音が聞こえる。規則正しく、力強い鼓動。この音を聞いていると、安心した。
「エドワール様、大好き」
無邪気に告白をする。
「……私も、君が好きだよ、レティシア」
囁きが聞こえた。とても優しくて、顔が勝手に緩んできてしまう。
父と老侯爵が微笑ましそうに私たちを見守っている。エドワールの手が私の背中を優しく撫で続けていた。
「月に一度は会いに来よう。君の成長を、見守らせてほしい」
エドワールが囁いた。
「本当ですか! 嬉しいです!」
私は顔を上げ、エドワールを見つめた。銀青色の瞳が、優しく私を見下ろしている。
「ああ、約束だ」
エドワールが私の小さな指に、自分の指を絡めた。
「嘘はつかない。必ず、君に会いに来る」
――その約束は、十一年間守られ続けた。
重い扉を開けると、見知らぬ大人の男性が二人、ソファに座っていた。一人は白髪混じりの髭を蓄えた老侯爵で、もう一人は銀髪の青年だった。青年は窓際に立ち、光を背に受けていた。逆光で顔がよく見えなかったが、背が高く、凛とした佇まいをしていた。
「レティシア、こちらへ」
父が手招きをした。私は緊張しながら父の隣に立った。父の手が私の肩に置かれ、温かさが伝わってくる。
「ハーシェル侯爵家の御子息、エドワール様だ。お前の婚約者となられる方だよ」
――婚約者。
(将来、私の夫となる人……)
エドワールが私に近づいてきた。銀青色の瞳が私を見下ろし、膝を折って目線を合わせてくれた。近くで見ると、整った顔立ちをしていた。冷たそうな印象なのに、瞳は優しかった。
「初めまして、レティシア」
低い声が響いた。大人の男性の声。
(胸がドキドキする)
「は、初めまして……」
小さな声で答えた。エドワールが微笑んだ。口角が僅かに上がり、瞳が柔らかくなる。
「私の可愛いお姫様」
大きな手が私の頭に置かれ、優しく撫でられた。温かく、包み込むような手。父とは違う、大人の男性の手。頬が熱くなり、恥ずかしくて下を向いた。
「よろしくお願いします、エドワール様」
私は丁寧にお辞儀をした。ドレスの裾を摘み、習った通りに膝を曲げる。エドワールが笑った。声を立てない、静かな笑い方だった。
「よろしく頼む、レティシア」
手を差し出された。大きな手。私は小さな手を重ねた。エドワールの手が私の手を包み込み、軽く握ってくれた。
「私、花嫁修行を頑張りますね」
私は無邪気に笑った。エドワールの瞳が揺れ、何か言いかけて口を閉じた。
「ああ、期待しているよ」
穏やかな声で答えてくれた。私は嬉しくなり、エドワールの手を両手で握った。
「エドワール様は、どんな花嫁さんが好きですか?」
無邪気に尋ねた。エドワールが少し驚いたような顔をして、それから優しく微笑んだ。
「そうだね……笑顔が素敵な人かな」
「じゃあ、私、いっぱい笑います!」
私は満面の笑みで答えた。エドワールの表情が柔らかくなり、もう一度頭を撫でてくれた。
「ああ。君の笑顔を、楽しみにしているよ」
老侯爵が笑い声を上げた。
「良い子じゃ。エドワール、大切にしてやれよ」
「はい、父上」
エドワールが頷いた。私を見つめる瞳は、優しく、でも少し切ないような色をしていた。
「一日でも早く大人になれるように頑張りますね」
私は首を傾げた。エドワールが静かに笑った。
「君が大人になるまで、ゆっくり待つよ」
「待つって、どれくらいですか?」
「そうだね……十年くらいかな」
「じゅうねん! すっごく長いですね」
私は目を丸くした。エドワールが優しく微笑む。
「長いね。でも、待つのは苦にならない。君が素敵な女性になるのを、楽しみに待っているから」
囁きが優しかった。私は嬉しくなって、エドワールに抱きついた。
「私、頑張ります! エドワール様に相応しい花嫁さんになります!」
エドワールが僅かに身体を強張らせたが、すぐに優しく私を抱きしめ返してくれた。大きな手が背中を撫で、髪に触れる。
「ああ。君はきっと、素敵な花嫁になる」
囁きが頭上で響いた。温かく、優しい声。私はエドワールの胸に顔を埋めた。心臓の音が聞こえる。規則正しく、力強い鼓動。この音を聞いていると、安心した。
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「……私も、君が好きだよ、レティシア」
囁きが聞こえた。とても優しくて、顔が勝手に緩んできてしまう。
父と老侯爵が微笑ましそうに私たちを見守っている。エドワールの手が私の背中を優しく撫で続けていた。
「月に一度は会いに来よう。君の成長を、見守らせてほしい」
エドワールが囁いた。
「本当ですか! 嬉しいです!」
私は顔を上げ、エドワールを見つめた。銀青色の瞳が、優しく私を見下ろしている。
「ああ、約束だ」
エドワールが私の小さな指に、自分の指を絡めた。
「嘘はつかない。必ず、君に会いに来る」
――その約束は、十一年間守られ続けた。
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