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第三章:新たな生活へ
新しい選択肢
家に帰ると、スマホの画面には篤志からの通知が何件も並んでいた。
メッセージアプリを開くと、未読のメッセージが十件以上溜まっている。何が書かれているのか見るのが怖い――。
僕は篤志の連絡をブロックした。
(ごめん……篤志)
スマホを置き、ベッドに倒れ込んだ。
夜になり、スマホが鳴った。
鬼頭さんからのメッセージで、家に来いという内容だ。
(今日は遅いんだな)
今夜は弟が寝た後に連絡が届いた。途中で起きたときのために、スマホにメッセージを送ってから僕は鬼頭さんのマンションに向かう。
いつものように部屋に行くと、鬼頭さんは寝室にいた。
月明かりが窓から差し込んでおり、部屋を淡く照らしている。
「来ました」
「――ああ」
いつもなら「遅い」と不機嫌そうに声をあげるのに、何も言わずに甘いキスを一つ落とす。
私服のボタンを外され、シャツが肩から滑り落ちていく。ズボンも脱がされ、下着も剥ぎ取られて裸身が晒される。いつもと同じ流れなのに、恥ずかしさが抜けない。
ベッドに押し倒され、鬼頭さんが覆い被さってくる。唇が重なり、優しいキスをする。舌が絡み合い、唾液が混じり合う。
最近の鬼頭さんは優しく時間をかけて抱いてくれる。愛撫で身体の緊張を解し、鬼頭さんの熱を受け入れられるように指で慣らしていく。まるで愛されているかのように甘く濃密なキスを重ねて、指を絡めて手を強く握られた。
長いキスが終わると、衣擦れの音ともに鬼頭さんの身体が動く。繋いでいた手が離れて、僕の足の間へと滑り込んでいく。
鬼頭さんの指が秘所に触れた。割れ目をなぞられ、入口を探られる。指先が押し込まれていき、内壁を優しく擦られた。ゆっくりと、丁寧に、身体を慣らすように指が動いていく。
「ん……」
声が漏れる。指が増え、内壁が押し広げられていく感覚に息が詰まった。
指が抜かれ、代わりに熱いものが押し当てられる。ゆっくりと、少しずつ入ってくる。今夜は深くゆっくりと繋がっていく。奥まで入り込むと、鬼頭さんが動きを止めて僕の身体が慣れるのを待ってくれる。
しばらくすると腰が動き始めた。引いて、押し込む。ゆっくりとした動きで、優しい律動だ。僕の反応を見ながら丁寧にゆっくりと快楽の海へと沈ませていく。
「あ……ん」
奥を擦られるたびに、快感が身体を駆け巡っていった。途中で腰の動きを止めた鬼頭さんが僕の目尻にキスを落とした。
「今日も泣いたのか」
静かに問われ、胸が締めつけられる。
「別に」
視線を逸らすと、鬼頭さんの手が顎を掴んだ。
「こっちを見ろ」
命令され、仕方なく視線を戻す。鬼頭さんの黒い瞳が、じっと僕を見つめていた。
「泣いたのかと聞いている」
「泣いてない」
「目が腫れてる。嘘をつくな」
鬼頭さんの指が目の下を撫でた。優しい仕草なのに、問い詰められているような圧迫感がある。
「わかってるなら、質問しないでください」
僕は言い返した。鬼頭さんの眉が僅かに動き、不機嫌さが滲む。
「なんで泣いた?」
「泣きたいから泣いた」
「理由を聞いている」
「言いたくない」
「理由を言え」
鬼頭さんの声に圧力がかかった。低く、抑えた声で命令してくる。逃げられない。観念して口を開いた。
「――卒業式の予行演習で、泣いた。卒業式本番じゃないのに、泣いたのが恥ずかしかったから言いたくなかった」
篤志のことを言えるはずがない。交際相手と別れて、辛くて泣いただなんて。鬼頭さんにとったら、どうでもいいことだろう。
「……そうか」
鬼頭さんが小さく返事をした。
予行演習で泣いたなんて、きっと鬼頭さんは嘘だとわかっている。それでも深く追求しないのは、鬼頭さんなりの優しさだと思いたい。
腰の動きが再開される。さっきまでの優しい律動ではなく、荒々しく激しい動きだった。奥を強く突き上げられ、思わず声が漏れる。
「あっ……!」
苛立ちをぶつけるかのように荒々しく抱き始めた鬼頭さんの表情には、怒りが滲んでいた。眉を寄せて唇を噛み、黒い瞳が僕を見下ろしている。
(――全然、優しくなかった……)
最奥を容赦なく突き上げられ、弱いところを的確に刺激してくる。身体が勝手に反応してしまい、快感が背筋を駆け上がっていく。
「ん、ああっ、そこ……」
声が大きくなっていく。堪えようとしても、勝手に口から漏れてしまう。鬼頭さんの動きはさらに激しくなり、ベッドが軋む音が響いていく。
あっさりと頂点へと導かれた。
身体が震え、全身が痙攣する。視界が真っ白になった。
「あ、ああっ!」
叫び声が口から漏れ、腰が浮く。内壁が鬼頭さんを強く締めつけ、収縮を繰り返した。
ベッドの上で激しく痙攣を起こす僕の脇腹を、鬼頭さんがいやらしく撫でた。手のひらが肌を這い、腰の線をなぞっていく。少しばかり止めていた律動を、また激しく振りだす。
まだ中が収縮を繰り返しているのに、鬼頭さんは気にも止めずに中を擦っていく。
「待って、まだ……!」
抗議する間もなく、奥を突かれる。敏感になった内壁は過剰に反応してしまい、また快感が押し寄せてきた。イったばかりなのに、身体がすぐに次の頂点へと誘われていく。
「うっ……!」
苦しそうな声をあげて腰を浮かし、また痙攣を起こす。二度目の絶頂が身体を貫き、思考が停止する。
それでも鬼頭さんの動きは止まらない。
容赦なく奥を突き続け、僕の身体から快楽を搾り取っていく。
汗が額に滲み、首筋を伝って落ちていく。鬼頭さんの表情は厳しく、苛立ちを隠しもせずに僕にぶつけてくる。
三度目の絶頂が来た。
身体が限界を迎え、意識が遠くなっていく。視界が暗くなっていき、鬼頭さんの声が遠くで聞こえたが、何を言っているのか分からなかった。
奥を強く突かれる感覚で意識がはっきりして、目を勢いよく開けた。
(――まだ、終わってない!)
鬼頭さんが覆い被さっており、腰を激しく動かしていた。
「ん、ああ……」
声が漏れる。身体はまだ敏感なままで、奥を擦られるたびに快感が走る。抵抗する気力もなく、ただ鬼頭さんに身を委ねるしかなかった。
また頂点が近づいてくる。
身体が震え、内壁が収縮し始める。
「ああっ……!」
叫び声とともに、また意識が途切れていたようで奥を突かれた快感で意識が復活した。
(気絶しても抱き続けるなんて……獣か!)
鬼頭さんの荒い呼吸が耳に届く。汗が僕の身体に落ちてきて、肌に触れる感触だけが鮮明に感じられた。
気がつくとベッドに横になっており、四肢を投げ出していた。
(やばい……また意識が飛んでた)
全身がぐったりとして力が入らず、指一本動かすのも辛い。頭がぼんやりとしており、まだ意識が完全には戻ってこない。
隣を見ると、鬼頭さんが本を読んでいる。
ページをめくる音が静かに響いており、落ち着いた様子で活字を追っている。鬼頭さんの身体からは汗が引いており、シャツを着直している姿を見て、いつの間にか行為が終わっていたのだと知った。
(僕はどれくらい気を失っていたんだろう)
鬼頭さんはイケたのだろうか?
僕が寝返りを打つと、どろりと中から精液が零れて太腿を濡らす感覚があり、「イケたんだ」とわかった。
「帰るか?」
鬼頭さんが本から視線を上げて問いかけてきた。
「……はい」
起き上がろうとすると、本を閉じて立ち上がった鬼頭さんが僕の手を取った。
「大学の話だが」
唐突に切り出され、身体が強張る。
「調べたところ、入学金と前期分の入金はすでに終わっている」
鬼頭さんが淡々と告げる内容に、胸が苦しくなった。姿を消す前に父が払ってくれたのだろうか。
「大学に通いたいなら通える。前期分は払い済みだ」
「でも、後期からは――」
「後期からは俺が支援する」
鬼頭さんが言い切り、驚いて顔を上げた。鬼頭さんの表情は真剣で、冗談を言っているようには見えなかった。
「借金が増えるから嫌です」
借金を返すために身体を売っているのに、さらに借金を増やすなんてできない。
「お前の成績なら奨学金も受けられるはずだ」
鬼頭さんが教えてくれ、言葉に詰まる。
(僕のこと……考えてくれてる?)
「諦めなくていい。行きたいなら」
「そうすると、生活費が稼げなくなります」
現実を突きつけると、鬼頭さんが首を横に振った。
「うちでバイトすればいい。家も、ここに弟と一緒に引っ越してこい。家賃が浮くだろ」
鬼頭さんの提案され、頭が混乱する。
「前のときも思ったけど、鬼頭さんが優しいのは……怖い」
正直な気持ちを口にすると、鬼頭さんが僕の髪を撫でた。
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囁かれ、驚いて鬼頭さんを見つめる。鬼頭さんの表情は柔らかく、優しい眼差しで僕を見ていた。
「バイトって、何をすればいいの?」
僕は聞いた。鬼頭さんが微笑み、答える。
「事務所の雑務と家での家事を頼みたい」
「――考えとく。すぐには答えは出せない」
「ああ」
鬼頭さんが頷き、髪を撫で続けてくれる。温かい手のひらの感触に、少しだけ心が軽くなった気がした。
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