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13 夜会
「素敵・・・」
届いたドレスを広げた私は、感嘆の溜息を吐いた。
胸元はグレーで、裾に行くに従ってエメラルドグリーンになるグラデーションの、珍しい色合いの生地。
一見地味に見えるが、落ち着いていて洗練された印象だ。
胸と裾にはシルバーの糸をふんだんに使った、豪華な刺繍が施されている。
マーメイドラインのドレスは、とても大人っぽくてセクシーだった。
二の腕まで隠れる長いレースの手袋で少し露出を抑え、大きく開いた胸元には、プラチナ台に大振りのエメラルドとダイヤが嵌ったネックレス。
耳には揃いのデザインのイヤリング。髪飾りにもエメラルドが使われていて、ジェラルド様の瞳の色をあちこちに散りばめた装いだ。
手先が器用なドナに、髪をアップにセットしてもらって、姿見の中の自分を覗くと、まるで別人のようだった。
「セシリア!・・・・・・っっ!!」
準備を終えたとの知らせを受け、私の部屋に入って来たジェラルド様は、片手で口元を覆い、言葉を失った。
その顔は耳まで真っ赤だ。
「ジェラルド様?どうしました?
もしかして、似合ってませんか?」
「あぁ、済まない・・・。思った以上に似合い過ぎてて・・・。
本当に美しいよ、私の女神。
・・・・・・でも、少し露出が多過ぎたみたいだ。
困ったな。他の男に見せたくない」
「ふふっ。ジェラルド様もとても素敵です」
普段は私ばかりが翻弄されているけど、動揺しているジェラルド様はちょっと可愛かった。
その後も、行きたくないとか、誰にも見せたくないとかゴネるジェラルド様を、なんとか宥めて王城へと向かった。
何度来ても王城の華やかさには圧倒される。
久し振りの社交の場で、少し緊張するけれど、隣を見上げればジェラルド様の優しい瞳と目が合った。
私の婚約破棄と、再婚約の話は既に噂になっているようで、あちこちから嫌な視線を感じる。
「なんだか・・・・・・見られてますね」
「セシリアが美しいからじゃないですか?」
そんな馬鹿な。
私なんかより、ジェラルド様のご尊顔の方がずっと美しい。
これは、美貌の兄弟と次々に婚約した私への嫉妬の視線じゃないかしら?
でも、今日は心強いパートナーがいるからきっと大丈夫。
「美しい姫、踊っていただけませんか?」
「よろこんで」
芝居がかった台詞で誘うジェラルド様に、笑顔で応じる。
ダンスを踊るのも久々だったので、少し心配だったが、体が覚えているようだ。
ジェラルド様のリードも力強くて、とても踊りやすい。
「こんなに楽しい気持ちで踊ったのは初めてです」
私が素直な感想を述べると、ジェラルド様が嬉しそうに目を細めた。
ダンスを終えて、ジェラルド様が飲み物を取りに行ってくださり、少しだけ離れた時にそれは始まった。
「ほら、ご覧になって。
これ見よがしにジェラルド様のお色を身に纏って」
「オズワルド様に捨てられて、直ぐにジェラルド様に取り入るなんて、流石計算高い」
「相変わらず小賢しい女だわ」
「ジェラルド様がお気の毒ですわ。お金の為に仕方なく婚約したそうよ」
態々私に聞こえるように、噂話に花を咲かせる数人の令嬢。
うん。言いたい事はわかったし、大体合ってるけど、〝オズワルドに捨てられた〟の件だけは訂正したい。
捨てたのは私の方だ。
聞こえるように悪口言うくらいなら、いっそのこと面と向かって言いに来れば良いのに。
戻って来たジェラルド様にも、彼女達の話が聞こえてしまったようで、かなりお怒りのご様子。
ジェラルド様は、見る者全てを縮み上がらせるような冷たい視線を、噂好きな令嬢達に向けた。
「ジェラルド様」
窘めるように名前を呼ぶ。このままでは死人が出かねない。
「ですが・・・!」
ジェラルド様は私が言いたい事を正確に理解したようだが、引く気は無いみたい。
「・・・貴女は民の生活を支える為に努力している人だ。
その重圧を想像すら出来ない、着飾るしか能がない無責任なお嬢さん達に、貴女を貶められるなんて我慢ならない」
「捨て置けば良いのです。只の醜い嫉妬なのだから」
周囲で耳をそば立てている人々によく聞こえるように、大きくは無いがハリのある声でそう言って、にっこりと笑ってやった。
騒ぎを大きくしたくはないが、私だって嘲られて黙っているつもりなどないのだ。
私に馬鹿にされた令嬢達は、怒りに顔を紅潮させ、更に口を開こうとしたが、ジェラルド様に鋭く睨まれて、黙って俯いてしまった。
届いたドレスを広げた私は、感嘆の溜息を吐いた。
胸元はグレーで、裾に行くに従ってエメラルドグリーンになるグラデーションの、珍しい色合いの生地。
一見地味に見えるが、落ち着いていて洗練された印象だ。
胸と裾にはシルバーの糸をふんだんに使った、豪華な刺繍が施されている。
マーメイドラインのドレスは、とても大人っぽくてセクシーだった。
二の腕まで隠れる長いレースの手袋で少し露出を抑え、大きく開いた胸元には、プラチナ台に大振りのエメラルドとダイヤが嵌ったネックレス。
耳には揃いのデザインのイヤリング。髪飾りにもエメラルドが使われていて、ジェラルド様の瞳の色をあちこちに散りばめた装いだ。
手先が器用なドナに、髪をアップにセットしてもらって、姿見の中の自分を覗くと、まるで別人のようだった。
「セシリア!・・・・・・っっ!!」
準備を終えたとの知らせを受け、私の部屋に入って来たジェラルド様は、片手で口元を覆い、言葉を失った。
その顔は耳まで真っ赤だ。
「ジェラルド様?どうしました?
もしかして、似合ってませんか?」
「あぁ、済まない・・・。思った以上に似合い過ぎてて・・・。
本当に美しいよ、私の女神。
・・・・・・でも、少し露出が多過ぎたみたいだ。
困ったな。他の男に見せたくない」
「ふふっ。ジェラルド様もとても素敵です」
普段は私ばかりが翻弄されているけど、動揺しているジェラルド様はちょっと可愛かった。
その後も、行きたくないとか、誰にも見せたくないとかゴネるジェラルド様を、なんとか宥めて王城へと向かった。
何度来ても王城の華やかさには圧倒される。
久し振りの社交の場で、少し緊張するけれど、隣を見上げればジェラルド様の優しい瞳と目が合った。
私の婚約破棄と、再婚約の話は既に噂になっているようで、あちこちから嫌な視線を感じる。
「なんだか・・・・・・見られてますね」
「セシリアが美しいからじゃないですか?」
そんな馬鹿な。
私なんかより、ジェラルド様のご尊顔の方がずっと美しい。
これは、美貌の兄弟と次々に婚約した私への嫉妬の視線じゃないかしら?
でも、今日は心強いパートナーがいるからきっと大丈夫。
「美しい姫、踊っていただけませんか?」
「よろこんで」
芝居がかった台詞で誘うジェラルド様に、笑顔で応じる。
ダンスを踊るのも久々だったので、少し心配だったが、体が覚えているようだ。
ジェラルド様のリードも力強くて、とても踊りやすい。
「こんなに楽しい気持ちで踊ったのは初めてです」
私が素直な感想を述べると、ジェラルド様が嬉しそうに目を細めた。
ダンスを終えて、ジェラルド様が飲み物を取りに行ってくださり、少しだけ離れた時にそれは始まった。
「ほら、ご覧になって。
これ見よがしにジェラルド様のお色を身に纏って」
「オズワルド様に捨てられて、直ぐにジェラルド様に取り入るなんて、流石計算高い」
「相変わらず小賢しい女だわ」
「ジェラルド様がお気の毒ですわ。お金の為に仕方なく婚約したそうよ」
態々私に聞こえるように、噂話に花を咲かせる数人の令嬢。
うん。言いたい事はわかったし、大体合ってるけど、〝オズワルドに捨てられた〟の件だけは訂正したい。
捨てたのは私の方だ。
聞こえるように悪口言うくらいなら、いっそのこと面と向かって言いに来れば良いのに。
戻って来たジェラルド様にも、彼女達の話が聞こえてしまったようで、かなりお怒りのご様子。
ジェラルド様は、見る者全てを縮み上がらせるような冷たい視線を、噂好きな令嬢達に向けた。
「ジェラルド様」
窘めるように名前を呼ぶ。このままでは死人が出かねない。
「ですが・・・!」
ジェラルド様は私が言いたい事を正確に理解したようだが、引く気は無いみたい。
「・・・貴女は民の生活を支える為に努力している人だ。
その重圧を想像すら出来ない、着飾るしか能がない無責任なお嬢さん達に、貴女を貶められるなんて我慢ならない」
「捨て置けば良いのです。只の醜い嫉妬なのだから」
周囲で耳をそば立てている人々によく聞こえるように、大きくは無いがハリのある声でそう言って、にっこりと笑ってやった。
騒ぎを大きくしたくはないが、私だって嘲られて黙っているつもりなどないのだ。
私に馬鹿にされた令嬢達は、怒りに顔を紅潮させ、更に口を開こうとしたが、ジェラルド様に鋭く睨まれて、黙って俯いてしまった。
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