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14 危険な魔獣討伐
もうすぐ、学園に入学して初めての夏季休暇が始まる。
約一ヶ月の長期休暇なので、私と兄様も領地へ帰る予定だ。
そして、テオも私達と一緒に辺境へ向かう事になってしまった。
毎年夏に行われる、魔獣の討伐に参加する為に・・・・・・。
グルーバー辺境伯の領地内には、魔獣が多く生息する森がある。
魔獣には様々な種類がいるが、どれも夏が繁殖の季節である。
繁殖期を迎えた魔獣は凶暴化するし、食べる餌の量も増える。
そんな魔獣達が、餌を求めて市街地にまで出て来るのを防ぐ為、夏に大規模な討伐を行って個体数を減らすのだ。
そんな危険な討伐に、なぜ王子が参加するのかと言うと、そこには側妃の陰謀が潜んでいる。
側妃が、「テオフィルを王太子に指名するならば、未だに根強く残っている病弱だったと言う印象を払拭した方が良い」などと、陛下へ奏上したのだ。
しかし、テオと兄様はそんな不穏な空気に気付く事は無く、辺境への移動を旅行気分で楽しみにしていた。
「グルーバー邸には何度も通ったけど、移動もエルザと一緒なのは初めてだから、凄く楽しみだなぁ。
途中の街で寄り道して行こう!」
「適度に休憩を兼ねて寄り道をするのは賛成です。
馬車に座りっぱなしでは、エルザが疲れてしまいますからね」
「馬車の座席はエルザの隣が良いな」
「何を言ってるんですか!?
兄様の隣が良いよな?エルザ」
ああ、また面倒な小競り合いが始まった。
「・・・・・・お二人が隣同士に座ったらいかがですか?
私は向かい側に座りますので」
二人とも、既にヒロインであるユリアと出逢っているにも関わらず、何故いつまでも私にベッタリなのか?
特に兄様は、このままだと結婚出来ないんじゃないかと心配になる。
まぁ、次男なので後継を残す義務はないけれど。
出来ればシスコンを卒業して、愛する人を見つけて幸せになって欲しいと願ってしまう。
・・・・・・なんて、結婚なんかもう懲り懲りだって思ってる私が言うのも変な話だけど。
でも、兄様はシスコンさえ無ければ、結婚に向いてそうな気がするんだよなぁ。
なんだかんだ言って、愛情深いし(変態だけど)
頼りになるし(変態だけど)
真面目だし(変態だけど)
・・・・・・・・・いや、やっぱ無いな。
まだ見ぬ未来のお義姉様、ご愁傷様です。
いけない。
今は兄様の事なんて考えてる場合じゃなかった。
魔獣討伐の対策を考えなければ。
テオも兄様も、今回の討伐任務など楽勝だと思って油断している。
確かに二人は、ゲームの中とは比べ物にならないくらい強くなっているし、精鋭部隊を連れて行くので、普通の魔獣討伐ならば楽勝だろう。
だが、精鋭部隊のはずのその討伐隊の中に側妃派に寝返っている者がいて、討伐前夜、夜の闇に紛れて、魔獣を引き寄せ興奮させる作用がある薬剤を森に散布するのだ。
それを阻止出来れば、討伐自体は問題ないはずなのだが・・・・・・。
特に名案も浮かばぬまま、辺境に帰る日がやって来てしまった。
道中、三人で観光を楽しんだり、すぐに張り合い始めるテオと兄様を仲裁したりしながら、あっという間にグルーバー邸に辿り着いた。
「エルザ~~~!!!」
馬車を降りた途端、駆け寄って来て私を抱き締めたお父様は、ちょっと涙目だった。
「三人とも、お帰りなさい。
さあさあ、エルザ達は長旅で疲れているのですから、そんな所で抱き合って無いで、早く邸に入って座らせてあげましょう」
お母様が私からお父様を引っ剥がして、有無を言わさぬ笑顔を向けた。
お母様ったら、テオに対しても「お帰り」って言わなかった?
聞き捨てならないんだけど。
「ただいま戻りました」
テオも普通に返してるんだけど。
いつの間に〝ウチの子〟認定されてるの!?
他の討伐隊メンバーは私達とは別行動だったが、既に全員が辺境に着いていた。
到着日はそのまま体を休めて、翌日には打ち合わせをし、翌々日に討伐に向かう予定だそうだ。
私は討伐には参加させて貰えなかったが、打ち合わせを見学させて貰う事にした。
辺境騎士団の本部にある、巨大な会議室にメンバー全員が集まって、今回の作戦内容が説明される。
私は、なるべく邪魔にならない様にと、一番後ろの目立たない席に兄様達と座って話を聞いていたのだが・・・。
今回のメンバーには女性騎士はいないので、女であると言うだけで悪目立ちしてしまったらしく、騎士達が振り返ってはチラチラと視線を送ってくる。
目が合ってニコリと笑えば、慌てて顔を逸らされてしまう。
失礼じゃなかろうか?
そんな騎士達の顔の中に、目当ての人物を見つけた。
私は左右に座っている兄様達にそっと耳打ちする。
「前から三列目の一番左の席に座っている、赤髪の騎士の顔をしっかり覚えておいてくださいませ」
兄様達はさり気なく彼をチェックすると、小さく頷いた。
約一ヶ月の長期休暇なので、私と兄様も領地へ帰る予定だ。
そして、テオも私達と一緒に辺境へ向かう事になってしまった。
毎年夏に行われる、魔獣の討伐に参加する為に・・・・・・。
グルーバー辺境伯の領地内には、魔獣が多く生息する森がある。
魔獣には様々な種類がいるが、どれも夏が繁殖の季節である。
繁殖期を迎えた魔獣は凶暴化するし、食べる餌の量も増える。
そんな魔獣達が、餌を求めて市街地にまで出て来るのを防ぐ為、夏に大規模な討伐を行って個体数を減らすのだ。
そんな危険な討伐に、なぜ王子が参加するのかと言うと、そこには側妃の陰謀が潜んでいる。
側妃が、「テオフィルを王太子に指名するならば、未だに根強く残っている病弱だったと言う印象を払拭した方が良い」などと、陛下へ奏上したのだ。
しかし、テオと兄様はそんな不穏な空気に気付く事は無く、辺境への移動を旅行気分で楽しみにしていた。
「グルーバー邸には何度も通ったけど、移動もエルザと一緒なのは初めてだから、凄く楽しみだなぁ。
途中の街で寄り道して行こう!」
「適度に休憩を兼ねて寄り道をするのは賛成です。
馬車に座りっぱなしでは、エルザが疲れてしまいますからね」
「馬車の座席はエルザの隣が良いな」
「何を言ってるんですか!?
兄様の隣が良いよな?エルザ」
ああ、また面倒な小競り合いが始まった。
「・・・・・・お二人が隣同士に座ったらいかがですか?
私は向かい側に座りますので」
二人とも、既にヒロインであるユリアと出逢っているにも関わらず、何故いつまでも私にベッタリなのか?
特に兄様は、このままだと結婚出来ないんじゃないかと心配になる。
まぁ、次男なので後継を残す義務はないけれど。
出来ればシスコンを卒業して、愛する人を見つけて幸せになって欲しいと願ってしまう。
・・・・・・なんて、結婚なんかもう懲り懲りだって思ってる私が言うのも変な話だけど。
でも、兄様はシスコンさえ無ければ、結婚に向いてそうな気がするんだよなぁ。
なんだかんだ言って、愛情深いし(変態だけど)
頼りになるし(変態だけど)
真面目だし(変態だけど)
・・・・・・・・・いや、やっぱ無いな。
まだ見ぬ未来のお義姉様、ご愁傷様です。
いけない。
今は兄様の事なんて考えてる場合じゃなかった。
魔獣討伐の対策を考えなければ。
テオも兄様も、今回の討伐任務など楽勝だと思って油断している。
確かに二人は、ゲームの中とは比べ物にならないくらい強くなっているし、精鋭部隊を連れて行くので、普通の魔獣討伐ならば楽勝だろう。
だが、精鋭部隊のはずのその討伐隊の中に側妃派に寝返っている者がいて、討伐前夜、夜の闇に紛れて、魔獣を引き寄せ興奮させる作用がある薬剤を森に散布するのだ。
それを阻止出来れば、討伐自体は問題ないはずなのだが・・・・・・。
特に名案も浮かばぬまま、辺境に帰る日がやって来てしまった。
道中、三人で観光を楽しんだり、すぐに張り合い始めるテオと兄様を仲裁したりしながら、あっという間にグルーバー邸に辿り着いた。
「エルザ~~~!!!」
馬車を降りた途端、駆け寄って来て私を抱き締めたお父様は、ちょっと涙目だった。
「三人とも、お帰りなさい。
さあさあ、エルザ達は長旅で疲れているのですから、そんな所で抱き合って無いで、早く邸に入って座らせてあげましょう」
お母様が私からお父様を引っ剥がして、有無を言わさぬ笑顔を向けた。
お母様ったら、テオに対しても「お帰り」って言わなかった?
聞き捨てならないんだけど。
「ただいま戻りました」
テオも普通に返してるんだけど。
いつの間に〝ウチの子〟認定されてるの!?
他の討伐隊メンバーは私達とは別行動だったが、既に全員が辺境に着いていた。
到着日はそのまま体を休めて、翌日には打ち合わせをし、翌々日に討伐に向かう予定だそうだ。
私は討伐には参加させて貰えなかったが、打ち合わせを見学させて貰う事にした。
辺境騎士団の本部にある、巨大な会議室にメンバー全員が集まって、今回の作戦内容が説明される。
私は、なるべく邪魔にならない様にと、一番後ろの目立たない席に兄様達と座って話を聞いていたのだが・・・。
今回のメンバーには女性騎士はいないので、女であると言うだけで悪目立ちしてしまったらしく、騎士達が振り返ってはチラチラと視線を送ってくる。
目が合ってニコリと笑えば、慌てて顔を逸らされてしまう。
失礼じゃなかろうか?
そんな騎士達の顔の中に、目当ての人物を見つけた。
私は左右に座っている兄様達にそっと耳打ちする。
「前から三列目の一番左の席に座っている、赤髪の騎士の顔をしっかり覚えておいてくださいませ」
兄様達はさり気なく彼をチェックすると、小さく頷いた。
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