【完結】金で買われた婚約者と壊れた魔力の器

miniko

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4 協力者の令嬢

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スタンリー公爵監修の茶番劇は、学園の入学式から始まった。

人でごった返し騒めく講堂の中、私は偶然を装い、サミュエル様の隣に座る。
まるで初対面の様に挨拶を交わし、お互いに笑顔で好意的な言葉を重ねる。

その後も、すれ違う度に見つめ合ってみたり、稀に休み時間にサミュエル様が私に会いに来たりして、〝恋をしている〟アピールをするのだが、会いに行く頻度とかも、なかなか匙加減が難しいものだ。


「次の休み時間、第二校舎の裏で」

廊下ですれ違いざまに、サミュエル様が私の耳元で短く囁く。
距離の近さに内心動揺しつつ、小さく頷いた。
周囲のご令嬢達の視線が痛い。

私の婚約が正式に解消されるまで、暫くの間は〝付き合いたくても付き合えない〟と言うのため、人前での魔力供給は出来ない。
アピールとは別に、人目につかない場所で定期的に落ち合って、魔力を流さなければいけないのだ。

「面倒をかけて、済まない」

正直言って非常に面倒臭い。
しかし、これもお金の為だ。
既に対価を貰っている以上、仕事だと思って頑張るしか無い。

「そういう約束ですので、問題ありません。
最近体調は如何ですか?」

「お陰様で、最近は魔力不足には陥ってないよ。
来月頃には、君の婚約者が次の婚約者になるご令嬢と恋に落ちる予定だから、そうすればもう少し楽になるな」

「そうですね。コソコソ隠れて魔力提供する必要は無くなりますものね」

公爵夫妻もそうだったが、サミュエル様も傲慢な態度では無いのが救いだ。
魔力提供者としての私に、一応は敬意を払ってくれている。
本当に恋に落ちる予感とかは今の所ないけど、なんとかやって行かなければ。



そんなある日、サミュエル様は私に一人の協力者を紹介した。

「ソフィア・ロブソン侯爵令嬢だよ。
僕の幼馴染で友人の中で唯一、魔力欠乏症の件を知っているんだ」

「ソフィア・ロブソンです。
ソフィーって呼んでね」

「初めまして。メリッサ・ハミルトンと申します」

「メリッサね。メルって呼んでも良いかしら?」

「勿論です。自由に呼んでください」

人懐っこく握手を求めるソフィー様は、サラサラの黒髪に紫の瞳のとても美しい人だった。
侯爵家のお嬢様を愛称で呼ぶなんて恐れ多いが、小心な私には断ることも難しい。

「ソフィーは、なかなかの才女でね。
幼い頃から魔術や魔力に関する研究を続けていて、既に世界的な論文を幾つか発表しているんだ。
実は僕の症状が、魔力欠乏症かもしれないって最初に言い出したのは彼女なんだよ」

成る程、それでこの件に関してご存知なのね。
そう言えば、確かロブソン侯爵家は魔術師の家系だったっけ。
そのご息女については、『魔力量は然程多くないが、研究者としては一流だ』と私でも聞いた事があった。

「もしかして、お二人は本当は恋仲だったり・・・」
「「それだけは無い!」」

綺麗に声を揃えて、食い気味に否定された。

「サミュエルが恋人とか、ないわー。
弟みたいな物よ」

「同い年のクセに。お前の方が妹だろ」

「こんな頼りにならない兄なら要らないわよねぇ」

同意を求められ、曖昧に微笑んで誤魔化す。
お二人とも、幼馴染と話す時は口調が随分砕けて楽しそうだ。

でも良かった。
〝想い合ってる人がいる〟とかだと、私の役割はとてもやり難い。

「私が呼ばれたのはね、恋人になる前の設定の二人が、隠れて会っているのを誰かに見られたりしたらマズいからなの。
私も含めて三人で会うのなら、見つかってしまっても色々誤魔化しが効くでしょ?」

「それは私も心配していたので、有り難いです」

「サミュエルの珍しい症例には興味があるから、私にとってもメリットがあるのよ」

「ああ、研究対象って事ですね」

「そう言われると複雑だな」

モルモット扱いされたサミュエル様は、渋面を作った。

「それ以外にも、何か困った事があったらなんでも相談してちょうだい。
サミュエルへの愚痴とか、あとサミュエルへの愚痴とかも大歓迎よ」

ーーー『サミュエル様への愚痴』って二回言ったぞ。

「はあ、よろしくお願いします」

私は苦笑いを抑えて頷く。

「お友達になりましょう。
私、妹も欲しかったのよね」

ロブソン侯爵家の一人娘である彼女は、どうしても姉になりたいらしい。
ソフィー様は、勿論私とも同い年だ。
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