【完結】金で買われた婚約者と壊れた魔力の器

miniko

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7 友達の恋人(リチャード視点)

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幼い頃からの友人である、サミュエルに恋人が出来た。
俺はそれを嬉しく思うと同時に、未だに政略結婚が多い貴族社会で、想い合える相手に出会えたサミュエルが羨ましかった。

彼が、入学当初から一人の女性をいつも見ている事には気付いていた。
特に派手な容姿でもなく、目立つ要素がないその女性を、サミュエルはいつも目で追っていた。

当初、彼女には婚約がいたが、その婚約が解消された為、晴れて二人は付き合えるようになったのだ。

地味な容姿ではあるが、意志を持ったオリーブグリーンの瞳が印象的な彼女はメリッサ・ハミルトン子爵令嬢。

子爵家と公爵家の縁談を整えるのは難しいけれど、二人には幸せになって欲しい。

ーーー確かにそう思っていたのだ。その頃は。



「きゃっ・・・・・・」

少しだけ空いた教室の扉から、小さな悲鳴が聞こえて、慌てて中を覗いた。

「ハミルトン嬢、どうした?」

意外な事に、笑顔で振り向いた彼女は、両手で何かを包み込んでいる。

「驚いただけです。只の蛙ですわ」

彼女の白い指の間から、鮮やかな緑色の小さな顔がひょっこり覗いた。
鞄の中に入れられていたそうだ。
大方、どこかの令嬢の嫌がらせだろう。

「この子もこんな子供じみた悪戯に利用される為に生まれた訳じゃないでしょうに」

ため息を吐いた彼女は、一階にある教室の窓から、その蛙を逃した。

「でも・・・どなたがこんな事を?
普通のご令嬢は、蛙を触ったり出来ないですものねぇ。
まさか、偶然鞄の中に入ったとも思えませんが・・・」

つい先程、蛙を素手で平然と捕まえていた普通のご令嬢が、呑気な笑顔でそう言った。

「大方、従者にでもやらせたんだろ」

「ああ、成る程。主人が低能だと従者も大変ですね」



彼女は、それまで俺が知っていた令嬢とは異なる存在だった。


公爵家の嫡男に見初められた彼女は、羨望と嫉妬の入り混じった視線を一身に浴びており、一部の令嬢からは様々な嫌がらせを受けている。

しかし、魔力を持て余した彼女の教科書や筆記用具には、悪意のある者が触れないように防御魔術が仕掛けられていた。
一度、教科書を破ろうとした令嬢が発動させてしまい、強い電撃を喰らったそうだ。

それでも令嬢達は嫌がらせを止めない。
破られたドレスを運んでいた彼女に、俺とサミュエルが偶然遭遇したこともあった。
彼女は「うっかり破いた」と言っていたが、そんな筈は無い。
どう見ても刃物を使って切り裂いた跡だろう。
彼女に嫌がらせをしている令嬢達にも、それに気付かないサミュエルにも妙に腹が立つ。

「あのドレスは古かったので、サミュエル様に買い替えて貰えて、逆にラッキーです」

彼女は何も気にしてないように、へらりと笑う。


「何かあったらサミュエルに相談しろよ」

「今の所、実害は無いので、何もされていないのと同じです」

何をされても、彼女は自分からサミュエルに相談したりはしない。
護られる事を当然と考えて、周りを頼ってばかりの令嬢達には辟易するが、こうも頑なに助けを求めないのも逆に苛立ちを覚える。

いつも自分一人で解決しようとする彼女を見ていられなくて、何度か俺からサミュエルに報告した。
普通ならばもっと怒るだろうと思うのだが、アイツはあまり興味がなさそうで、具体的な対策を打っている様にも見えなかった。
好きな女があんな目に合っているのに、なぜ平気でいられるのだろうか?

もどかしくても、無関係な俺は何も出来ない。
彼女を助ける権利を持つのは俺じゃ無いのだから。


「サミュエル様のような素敵な方と、私のような何の取り柄もない女が恋仲だなんて、納得出来ないと言うご令嬢達の気持ちは良くわかりますもの」


彼女が嫌がらせに耐えているのは、サミュエルへの想いがあるからなのだろうか。

俺は初めてアイツを妬ましく感じた。
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