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はじまり
力の暴走
しおりを挟む学び舎から帰ったライラは自室に引きこもり、ベットの上で震える膝を抱えていた。
あの後、騒ぎを聞きつけた教師たちに何があったとのかと説明を求められたライラはありのままを説明した。言い争っていたら急にレイスが苦しみだしたこと。誰も、何も、していないことを。
だが、話を聞いた教師たちはみな一様に訝しげに眉を顰め最終的にはライラの魔力の暴走だろうと結論付けた。レイスの大きく爛れた傷口からは微かにだが闇の魔力が残っていたからだ。
だが、ライラはあのとき魔術など放ってなどいない。それだけは絶対に違うと言いきれた。
(どうしよう・・・・・・わたし、自分が知らないうちにとんでもないことをしてしまったの?)
帰り際にマリアナとは顔を合わせたが、互いの従者に促され直ぐに帰路に着いたため言葉を交わすことは出来なかった。
マリアナの服を奇麗に赤く染めたレイスの血が脳裏にちらつく。
(あんなにたくさんの血が・・・・・・もしかしたら、レイス様は死んでしまうかもしれない!!)
次から次へと悪い考えが頭の中に浮かぶ。
恐怖で今にも押しつぶされてしまいそうになったとき、控えめなノック音が室内に響く。
「ライラ?入るよ」
優しい声とともに姿を現したのは、学園の制服に身を包んだ兄であるミシェルとだクランだ。騒ぎを聞きつけ、早々に帰宅してくれたのだろう。
だが、その表情にいつもの笑みはなく兄達からも戸惑いが伝わってくる。
「お兄様!!」
堪らず、不安をかき消すかのようにライラは二人に駆け寄り顔を埋める。
「ライラ、大丈夫?いったい何があったの?」
「ライラ、落ち着け」
駆け寄ったライラを受け止め優しく頭を撫でながら、あやす二人にライラはふるふると首を横に振る。
「本当に、私は何もしていません。何も分からないんです」
「うん。僕たちもライラがそんなことをするなんて思っていないよ?でもね、」
「万が一のこともある。もしかしたら、お前が気付かないうちに魔力を放ってた可能性もある。だから、」
二人の言葉に顔を上げ、ドキリとした。ライラを気遣う表情を浮かべる二人だったが、その瞳にはライラに対する疑いが色濃く浮かんでいたからだ。二人にはそんなつもりはなかったのかも知れない。だが、その不安げに揺れる瞳はライラが嫌というほど知っているものだった。その眼差しを向けられた瞬間、サッと血の気が引いた。
「ライラ?・・・・・どうしたんだい?」
ライラの異変に気付いたミシェルの優しい声に、さっきとはうって変わりビクリと肩を震わせる。
急に二人の兄が恐ろしい者のように感じライラは一歩、二歩と後ろに下がる。
「ライラ、・・・・・お前顔色が」
ミシェルに続き異変に気付いたクランがライラに手を伸ばそうとした瞬間、バシリと大きな音が室内に響く。
クランが伸ばそうとした手は見えない何かによって、ライラに触れる前に弾かれてしまう。
余りの出来事に、室内に静寂が訪れる。
弾かれた手を見つめ驚愕で固まるクランに、唖然とするミシャルだったが、ハッと我に返り二人はライラへと視線を戻す。
その瞳には先ほどの不安げな色は消え失せ、確信に満ちた色が浮かんでいた。
二人の強い視線を受けライラは思わず息を呑む。
(・・・・・・違う、違う、違う、違う!!私じゃない!!私は何もしていない!!そんな眼で私を見ないで!!今も、あの時も!!私は何もしていないのに!!)
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生まれ変わりの作品楽しみです
元旦那達がどうなってるのか気になる
これからもライラちゃんは色々苦労していくのですが、温かく見守って頂けたらと思います!
お兄ちゃん達もちょっと驚いちゃったんですね。でも、お兄ちゃん達はライラちゃんのこと大好きなのできっと大丈夫!!