嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

文字の大きさ
112 / 215

常識も良心もないのか〜ハデス視点〜

しおりを挟む
「ゔーっ!うゔー!」

 目の前で縄でぐるぐる巻きにされている男に、ため息がもれた。

 堂々と現れジュエル嬢に、婚約者が謝りたいと言っているから一緒に来て欲しいと言い、無理やり連れ去ろうとしたコイツに「俺の婚約者をどこに連れて行く?」と立ち塞がった。

 なんていうか、話には聞いていたけど酷すぎないか?

 婚約者が謝りたいいうのは理解できる。
 だが、相手に無理強いするというのはおかしいだろう?

 本当にこの王太子の頭の中は、自分と自身の婚約者のことしかないんだな。

 王太子という立場でありながら、単独で他国に来たことも身分を理解できていない証拠だ。

 腕に自信があるのかもしれないが、襲われたら?

 それで死んでも本人の責任だが、後継を失くす国は荒れるだろう。

 身代金を請求されたら?

 それに、国王陛下にも止められているのに、何故他国の令嬢であるジュエル嬢を国に連れ帰ろうとするんだ?

 そのことが問題になると、考えなかったのか?

 婚約者だと告げたのに、全く聞く耳を持たずに連れて行こうとする王太子に、ジュエル嬢が俺に助けを求めた。

 王太子の手を取り払い、ジュエル嬢を抱き込む。

 その時点で初めて、王太子は俺という存在を認識したように見えた。

 そして、剣を抜こうと手をかけた時点で、俺は王太子の腹を蹴り飛ばし・・・陛下から預かっていた騎士たちに捕縛を頼んだ。

 俺が王太子を蹴り飛ばしたことに、ジュエル嬢は目を丸くしていた。

「俺も剣が使えないわけじゃないが、お上品な腕前じゃないからな」

「まさか、蹴られるとは思いませんでしたわ」

「剣と違って、死にはしないだろう?」

 まぁ、王族を蹴り飛ばすことになるとは、俺も思わなかった。

 話が通じるとは思わなかったので、猿轡を噛ませ、縄でぐるぐる巻きにしてもらった。

 陛下に頼んで、マクラーレン王国に迎えを寄越すように知らせてもらう。

 さすがにぐるぐる巻きでは一人では帰せないし、かといって護衛を付けて帰すにしても何故こんなことになっているのか説明しなければならない。

 今回のことは、見逃すことが出来ない。
 なら、相手方の責任者を呼び寄せて対処を求めた方が早い。

 連絡をとったところ、王弟殿下つまりは王太子の叔父が引き取りに来るとのことだった。

 俺は王太子の前にしゃがみ込む。

「なぁ、なんでアンタは自分のことしか考えないんだ?そりゃ婚約者が大事なのは分かるが、だからといって他の人間の気持ちを無視していいわけじゃない。彼女の人生を好き勝手する権利はアンタにはないよ」

「ゔゔーっ!」

 まぁ、諭した程度で理解するなら、こんなことしないよな。
しおりを挟む
感想 577

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

あなたの愛はもう要りません。

たろ
恋愛
15歳の時にニ歳年上のダイガットと結婚したビアンカ。 この結婚には愛などなかった。 16歳になったビアンカはできるだけ目立たないように学校でも侯爵家でも大人しくしていた。 侯爵家で肩身の狭い思いをしながらも行くところがないビアンカはできるだけ問題を起こさないように過ごすしかなかった。 でも夫であるダイガットには恋人がいた。 その恋人にちょっかいをかけられ、ビアンカは我慢の限界を超える。 そして学園を卒業さえすればさっさと離縁して外国で暮らす。 その目標だけを頼りになんとか今の暮らしに耐えていた。 そして、卒業を控え「離縁して欲しい」その言葉を何度となく夫に告げた。 ✴︎今回は短めの話を投稿していく予定です。 (作者の時間の都合により)

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

【完結】愛してました、たぶん   

たろ
恋愛
「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。 「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

処理中です...