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公爵令嬢のひとり言17

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「ルーナ様。少しよろしいでしょうか?」

 関係者に手紙を送り、ライアン殿下からもパーティーの下準備が出来たとの連絡を受けた。

 あとは、明日の決行日を待つばかりになった夜、珍しくカイルが私の部屋を訪れた。

 慌てて、書きかけの手紙を引き出しに入れる。

「どうしたの?カイル。何かあった?」

 カイルはランス兄様の侍従として、ちゃんとわきまえた行動を心がけている。

 主家の令嬢の部屋を、用もなく訪れたりしない。

 だから、何か緊急の事案かと思ったのだけど。

「お話があります。お部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか?」

「え?ええ。良いけど・・・」

 カイルが私に何かするとは思っていない。
 でも、カイルはランス兄様の侍従であって、私の執事ではない。

 つまりは、未婚の女性の部屋に入るようなことは、今までしなかったのに。

 よほど大事な話ということ?

 それでもカイルは、細く扉を開けたままにしていた。

「それでカイル、何かあったの?カイルらしくないわ。こんな時間にやって来るなんて」

「ルーナ様。明日のパーティーが終わったら、この国から出て行くつもりですか?」

「え?いや、どうして、そんなこと聞くの?」

 カイルは、ジッと私の目から目を逸らさない。

 私がこの世界に転生して、決めたことが三つある。

 まずは、絶対に長生きすること。
それから、自分のやりたいように生きること。

 そして、私の好きな人を絶対に幸せにすること。

 私にとってカイルは前世の推しで、この世界に転生してから出会った実際のカイルのことも好きだなぁって思った。

 最初は、アイドルを好きな気持ちと似たような感じだったけど、それはだんだん恋愛の好きに変わっていった。

 お父様にお母様、ユリシーナたち使用人に、ランス兄様。
 アナ様にリリアナ様、多くのお友達。

 カイルを想う気持ちとは違うけど、彼らのことも大好きだ。

 ライアン殿下のことは、正直言ってどっちでもいいというか、プラスでもマイナスでもないというか、正直興味がないんだけど、大切なアナ様の好きな人だし、リリアナ様の兄でもあるし。

 だから、彼らにとって幸せな選択をしたい。

 私がアデライン王国にいる限り、王妃様は私を諦めない。

 そうなればもう、離宮に幽閉する道しか残らない。

 ライアン殿下もリリアナ様も、本当はそれを望んではいない。

 なら、私がこの国からいなくなれば?
二度と戻らないと。でも、アナ様を傷つければこの国なんか滅ぼしたやると、王妃様に伝えていなくなれば?

 元々、ランス兄様にフィオレンサ公爵家を返したら、他国に行くのもアリかなって考えてた。

 月子の時に出来なかったこと。
いろんなところを旅して、いろんなものを見たい。

 本当は学園卒業してからの予定だったけど、王妃様のこともあるから、偽ヒロイン断罪後に決行するつもりだった。
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