私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

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1.婚約者との定例お茶会で忘れ物をしました

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「それでは、ウィリアム様。失礼いたします」

「ああ、アイシュ。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうね。また、来月にね」

 ウィリアム王太子殿下は、いつも通りに優しい笑顔で手を振ってくれた。

 金髪に青い瞳のウィリアム様は物腰が柔らかで、本当に絵に描いたような王子様だ。

 一方、私は銀髪に銀の瞳をしている。
 名をアイシュ・フローレンスと言い、フローレンス公爵家の長女だ。

 そして、マデリーン王国王太子殿下ウィリアム様の婚約者でもある。

 ウィリアム殿下と私は、同い年の十六歳。
 生まれた時からの婚約者で、幼い頃から毎月、必ず王宮と公爵家で月に二回お茶会をしている。

 今日も、王宮での定例のお茶会を終えたところだ。

 馬車まで戻ったところで、ハンカチをテーブルに忘れたことに気付いた。

「いけない」

「どうされましたか?お嬢様」

「お茶会のテーブルにハンカチを忘れて来てしまったわ」

「わかりました。お嬢様は馬車でお待ちください。取って参ります」

 フローレンス公爵家の護衛で、私付きのリュカがすぐに踵を返した。

 リュカは私より三歳年上で、物心付いた頃から、私の護衛としてそばにいてくれている。

 リュカのお父様が、私のお父様の護衛をしてくれているので、その関係で私とリュカは子供の頃からずっと一緒だ。

 もちろん、生まれた時からの婚約者であるウィリアム様とも子供の頃からの顔見知りである。

 私とウィリアム様にとってリュカは、兄のような存在だった。

 普段は護衛だけで王宮内へ行かせたりはしないけど、リュカなら王宮の方々も顔見知りだから許して下さるだろう。

 私はリュカに言われた通り、大人しく馬車の中で待つ。

 少し待つと、リュカが戻って来た。

「ありがとう、リュカ。あら?どうかした?」

 少し顔がこわばった様子のリュカに、首を傾げる。

 もしかして、誰かに注意されたのかしら?

「・・・いえ、何でもありません」

「何でもって、誰かに何か言われた?ごめんなさい。ハンカチくらい諦めれば良かったわ」

「いえ、本当に何でもありませんから。さぁ、公爵家へ戻りましょう」

 忘れ物をしたりしたら、お優しいウィリアム様に気を遣わせてしまうかもしれないと思ったのだけど、リュカに嫌な思いをさせるくらいなら私が取りに戻れば良かったわ。

 それでも、リュカは言い出したら引かないから、素直にお礼を言ってハンカチを受け取った。

「どうして・・・」

 御者席に座ったリュカの呟きは、動き出した馬車の音にかき消されて、隣に座る御者の耳にも届かなかった。





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