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私は恋愛感情が欠落しています

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 とりあえず、ジュリアーノ殿下がやっていたことで、今回の縁を得たのだから、そのことについて追及することはしないようにとフロラリアにも念を押した。

 大体、すでにジュリアーノ殿下は隣国の更生施設に送られたと聞く。

 ちゃんと更生して欲しいと思う。
もう王族には戻れなくても、まだ若いのだしやり直すことはできるんだから。

 え?女神としての慈悲かって?
残念ながら、私にそんな意図はない。

 両親のことも使用人のことも、フロラリアのことも国王陛下や王妃様のことも、そしてジュリアーノ殿下のことも、みんな均等なのだ。

 間違ったことをすれば同じように責めるし、助けが必要な時は同じように助ける。

 家族としての情はあるけど、特別ではない。

 私には、人としてのそういう感情が欠落しているのだ。

 それは女神として、可でもあり不可でもある。

 神は、個人に入れ込み過ぎてはいけない。

 でも神は機械ではないのだから、感情を理解できないようでもいけない。

 そのための『研修』なのだけど・・・

「ローイン様」

「ユースティティア様、どうか僕のことはルーカスとお呼び下さい」

「ルーカス様・・・私は、人としての、恋愛とかそういう感情が欠落しております。ルーカス様のこともエモンド様のことも、それこそ殿下のことも・・・私の中では同じなんです。誰かを特別に思うことができないかもしれません。それでも、私と婚約してもかまわないと思われますか?断っても何も問題はありません。正直なお気持ちをお聞かせください」

 フリーでいることで、私を利用しようとする貴族はいるかもしれないけど、ヴェルザンディ公爵家とフロラリアにさえ迷惑がかからないのなら、問題はない。

 むしろ私の婚約者となったことで、ルーカス様が愛情を交わせないと傷つくことの方が問題だ。

 だから、正直な気持ちを聞きたいと思った。

 ルーカス様は、その整った顔に笑みを浮かべて、水色の瞳を柔らかく細められた。

「ユースティティア様。僕は貴女と初対面ですが、貴女のことを好ましく思っています。もちろん、恋愛感情の好きではないかもしれません。ですが、ユースティティア様にも僕を知ってもらい、恋愛感情の好きでなくてもお互いが尊敬し合える、そんな関係を築きたいと考えています。政略結婚が主の貴族です。ユースティティア様に愛していただけなくても、僕を婚約者そして夫として尊敬し、家族として思い合ってもらえるなら、僕は貴女の婚約者になりたいです」

 その誠実な答えに、私の胸が熱くなった。
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