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私の婚約者は屑だった

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「ミリム・アデライン!お前との婚約の破棄をここに宣言する!」

 皆様、初めまして。
私の名前は、ミリム・アデライン。このヴァルフリーデ王国の子爵家の娘です。

 え?今、その名前が叫ばれていなかったか、ですって?

 ええ。
私にも聞こえました。

 しかも不名誉なことに、婚約破棄とか何とかいうオマケ付きで。

 本当に、迷惑なことです。

 今日は、ヴァルフリーデ王国の公爵家のひとつ、ジャグリング家のご令嬢セシリア様のお誕生日パーティーです。

 その場で、こともあろうにセシリア様に全く関係のない婚約破棄宣言をするなんて。

 本当に、本当に、迷惑極まりないですわ。

 それにセシリア様に申し訳なくて。

「セシリア様。本当に申し訳ございません」

 私が頭を下げると、セシリア様はニコニコと笑って下さいました。

「ミリムお姉様が悪いのではないでしょう?ふふっ。面白い余興ですわ。皆様もそう思いますわよね?」

「「「はい、セシリア様」」」

 セシリア様は、本日をもって十歳になられましたが、さすが公爵令嬢。
 大人びた言動も、周囲への影響力も、すでに身につけていらっしゃいます。

 容姿は十歳の少女らしく、金色の髪をハーフツインにし、その空色の瞳と同じ、ふわふわとしたドレスをまとわれています。

 私とは五歳の歳の差があり、セシリア様の家庭教師をしている私のことを「お姉様」と呼んで、親しくしてくださっています。

 ですので、子爵令嬢である私もこのジャグリング公爵家のパーティーに参加できているのです。

 ちなみに、先ほど婚約破棄を叫ばれていたご令息は、残念なことに私の婚約者・・・もうすぐ元婚約者になりますね、のランドル・デルモンド様です。

 デルモンド侯爵家の次男で、そうですね、私の趣味ではありませんが、それなりに見目は麗しい方ではないでしょうか。

 金髪は王家と同じだとご本人のご自慢です。
 瞳は、オレンジ色。しっかりとした体躯をされています。

 ご令嬢の中には、その見目に惹かれる方もいらっしゃるみたいですが、少なくとも高位貴族のご令嬢は歯牙にもかけません。

 ランドル・デルモンド様は、ご自分を尊き人だと勘違いされているのか、常に発言は上から目線。

 爵位が低い者を馬鹿にし、まるで使用人扱いをする始末。

 かと思えば、自分よりも権力のある相手には、揉み手をするようにゴマをするという卑屈さ。

 ええ。
このような場所で、仮にも婚約者を「お前」呼びで名前を呼び捨てにして、婚約破棄を宣言するくらいですもの。

 ご理解いただけますわよね。





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