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15歳

100ページ:もし彼じゃなければ?

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 魔族を精霊の国から放り出した後、私はこの国に結界を張ることにした。

 精霊に悪意を持つ者は、入れないように。
 もちろん、私よりも力の強い者ならば結界は破れると思うけど、今のところは大丈夫だと思う。

 それよりも・・・

 セイクレッドや、他の精霊たちの視線が痛い。

『マスター。その指輪・・・まさか本当にノワールに求婚されたのですか?』

 何故に女性体のセイクレッドが、そんなショックな表情なの?
 え、もしかしてセイクレッドはノワールのことを・・・

『絶対に違います!その男のような、性格の悪い・・・いえ、マスターはノワールをお好きなのですか?』

 私に反論していたセイクレッドが、ノワールの顔を見て言葉に詰まり、そして、再び私に話を向けた。

 ん?性格の悪い?
私を抱きしめたまま離そうとしないノワールを見上げると、セイクレッドに向けていた顔を私に向け・・・

 蕩けるように微笑んだ。

「!!」

 その顔は、反則だと思う!
超絶美形が向けてくる、愛しいものを見る蕩ける顔!

 恋愛情緒に乏しい私でも、ドキドキする。好かれてるって思ってしまう。

 お父様もお母様も私のことを好きでいてくれていて、優しい目でいつも見てくれるけど、ノワールのはちょっと違う。

 今までは、お父様たちと同じような表情だったのに、指輪をしてここに来てからはずっと、熱を孕んだ目をしてる。

『ちょっとノワール!マスターを誑かさないで!』

『うるさいですよ、セイクレッド。自分の妻を愛でて何が悪いのです?』

『マスターがあなたを望んで、指輪をしたとは限らないでしょ!精霊の国のために、たまたま他に手段がなかったから、指輪をしたのかもしれないじゃない!』

 言い合っているノワールとセイクレッドを、私を含め、全員が傍観している。
 いや、私が傍観してちゃ駄目だわ。当事者じゃん。

 確かに、セイクレッドの言ってることは間違いじゃない。

 精霊の国に来るために、ノワールの指輪をつけて、縁を結ぶ必要があった。それは事実だ。

『シエル様・・・』

 そんな不安そうな、悲しそうな顔をしないで?

 私は確かに、恋愛とかには全然疎くて、ずっと想ってくれていたアル兄様の気持ちにも応えることが出来なかった。

 王女だから、政略結婚も仕方ないことだから受け入れるとか言いながら、恋愛としての好きが今ひとつ分かっていなかった。

 でも、もしこの指輪がノワールのものでなくて、アポステリオリや、イフリートたちのだったら?

 今、私を抱きしめているのが、ノワールじゃなかったら?




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