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15歳

106ページ:精霊王の花嫁

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『シエル様・・・なんと美しい』

 そう言って、ノワールが私の手に口付ける。
 そろそろ、様もやめてもいいんじゃないのかな。妻になったんだし。

「ノワール、そろそろ様でなく、シエルと呼んでくれていいんですよ?」

 いや、年下の妻がこうも上から目線で言うのもおかしな話だけど。

『いえ、あの、その・・・』

「シ・エ・ル」

『シエルさ・・・ま』

「慣れてくださいね」

 マスターでなくなっただけマシか。
しかし、妻を様呼びするというのも。私の方がノワール様って呼ぶべき?

『やめてください』

 むうぅ。その私の考えを読むのもやめてもらいたい。
 いや。便利ではあるけど。
隠し事とか出来ないよね。しないけど。

『シエル様』

「はい。なんでしょう?ノワールさま」

『お願いですから、様はやめて下さい』

 ええと、そんなに嫌がらなくても。
大体、他の闇の精霊たちからはノワール様って呼ばれてるよね?

 いや、ちょっと待てよ。精霊にとって名前って大切らしいから、もしかしたら精霊王様って呼ばれてるのかもしれない。

 でも、旦那様から様付けで呼ばれて、私が呼び捨てにするのもなぁ。

「よし!旦那様って呼ぶことにする」

『旦那様・・・』

 あれ?喜んでる?
ノワールが何だか嬉しそう。

 なら、いっか。旦那様で。

「ふふっ。旦那様」

『シエ・・・ル・・・』

 辿々しく、それでも私をシエルと呼んだノワール、もとい旦那様は、私を抱き上げた。

『皆を紹介します。世話をする侍女とかも必要ですね』

「別に、がっつりとドレスを着るのでなければ、自分のことは自分で出来ますよ?王女という立場上、侍女を付けないわけにいかなかっただけですから』

 10年間、この世界で王女として生きてはきたけど、仰々しいドレスを着るのでなければ、着替えくらい自分で出来る。

 髪型も、凝った感じに結い上げるのは無理だけど。

 貴族世界では、既婚者は髪を結い上げるものだけど、精霊の世界でも同じなのかな?

『精霊界にそういうしきたりはありません。ですから、お好きな服装をしてくださって構いませんよ』

「旦那様はいつも黒よね。そういえばイービルも黒を着てた。黒の方が良いの?」

『そういう決まりなわけではないのですが』

 苦笑する旦那様に、それもそうかと思う。

 闇の精霊王が、キンキラした服を着てたら、ギャップがあり過ぎるというか、イメージダウンというか。

 全身真っ黒というのは、さすがに葬式じゃあるまいし、あれだけど。
 いや。旦那様は似合ってるけど。
黒を基調としたのにすれば良いよね。


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