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15歳

105ページ:嫁ぐ日に

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「お父様、お母様、本当にお世話になりました」

 現在私は、ウエディングドレスに身を包み、お父様たちに抱きしめられている。

 結婚式をするわけにはいかないから、ドレス姿を両親に見てもらった後、私はノワールの元に嫁ぐことになっている。

 お父様たちは、私がノワールの指輪をした日から、少しずつアル兄様に譲位する準備をしていたそうだ。
 この後、正式にアル兄様に譲位し、少しの間様子を見てから、旅に出るのだとか。

「シエルちゃん、幸せになってね」

「まさかこんなに早く、シエルを嫁にやることになるとは思わなかったよ」

「ふふっ。そうですね。私も自分が嫁に行くとは思いませんでした」

 アル兄様に幼い頃から愛情を向けられてたけど、残念ながら全く恋愛感情というものを持てなかった。

 年は離れていたけど、アル兄様は見目も麗しい人だし、好きになってもおかしくなかったのだけど。

 随分と愛されていたし、大切にされていた。だから、それに応えられない私は、恋愛欠陥者なのだと思った。

 マモンともそれなりに仲良くなったけど、恋愛というよりは友情って感じだったから、私は嫁に行かずにいるんだろうと思っていた。

「シエルが望まなければ、絶対に嫁になどやらなかったのに」

「まさかお相手が精霊王様で、シエルちゃんが精霊王様を好きになるなんてね。縁って不思議ねぇ~」

 確かに、最初に出会った精霊王はノワールだったけど、まさか恋愛感情を持つとは思わなかった。

 あの指輪を、ノワールが他の人のために作ったのだとしたら?なんて考えるまでは、自分のこの気持ちが愛情だとは気付かなかった。

 誰よりも大切なお父様とお母様と離れてまで、そばにいたいと思える相手ができるなんて。

 転生前の私は、彼氏もしないアラフォーで、恋愛経験もほとんどなかった。

 恋とか愛とかは、本やテレビの中のお話であり、私には縁のないものだった。

 シエルとして転生した時、まだ5歳のシエルは、とても可愛くて、だから本当なら恋愛だってたくさん出来たかもしれない。

 王女だったけど、お父様とお母様は私に政略結婚なんて求めてなかったから。

 だけど、シエルの中の私が、それを邪魔していたと思う。

 恋愛に対する抵抗感が、もしかしたらアル兄様からの愛情を受け入れようとしなかったのかもしれない。

 そんな私が、ノワールを特別だと、ノワールの特別でいたいと思った。

「こんな綺麗なシエルちゃんを他の誰にも見せられないのは残念だわ」

「本当に、そうだな。本来なら王女として国中から祝われることができるのにな」

「そんなの、必要ありません。私は、お父様とお母様に祝ってもらえたら、それで十分ですから」

 本心だ。

 








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