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おやつの時間〜魔王視点〜

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「サウロン、何だ?それは」

 レイに手を引かれて部屋を出て行ったロゼと入れ替わりに、サウロンが入ってくる。

 サウロンは両手に、何やら見たこともないものが入った器を持っていた。

「え?えーとね、プリンとか言うらしいよ。今日のおやつだってさ」

 ああ。先ほどレイが言っていたやつか。

 いや。それはともかく、何故それを執務室ここに持って来た?

「変わった食感で面白いから、王様も食べるかなって。本当、聖女の記憶って面白いなぁ」

「サウロン、食べるなら座って食べろ。ロゼの教育に悪い」

「あー、はいはい。ノインに見つかったらお説教されそ。はい、コレ王様の分」

 机に置かれた器には、プルプルと揺れる黄色い物体。

 なんだ、コレは。スライムか何かか?

 おそるおそるスプーンですくって口に運ぶ。

 ノインがロゼに、妙なものを食べさせるわけがない。
 なら俺も食べて、ロゼと感想を共有するべきだろう。

「・・・甘いな」

 見た目と違い、プリンとやらは口の中であっさりと砕けて消えた。

 サウロンの口には合うのか、ソファに腰掛けて、パクパクと口に運んでいる。

「サウロン。残り、食べるか?」

「え?いいの?やった!」

 空になった器を恨めしそうに見ているサウロンに、一口食べた残りを差し出す。

 嬉しそうに受け取ったサウロンは、思い出したように口を開いた。

「そういや、あの薬を使った人間、どんな感じ?」

「ああ。昨夜ようやく例の薬の方も効果が出始めたようだ。今朝は今にも倒れそうだった」

「あー、例の欲情するやつね。アレ、ノインが遅効性にしてくれって言ってたから。そっか。ようやく効き出したんだ」

「怪我の痛みが強くなることに気付けば、用心するようになるでしょう?ですから油断した頃に効くようにお願いしたんですよ」

 ノインが扉を開けて、入室して来た。

 なるほどな。そういう意図があったのか。

「ロゼは?」

「プリンがたいそうお気に召したようで・・・バケツサイズで作ってくれと言われまして。どうしたものか陛下にお伺いに来たのですよ」

「バケツ・・・」

 あんな甘いものをバケツサイズで食べたら、太ってしまうんじゃないか?
 いや、ロゼはコロコロとしても可愛いと思うが。

「あ。いいね!それ。さすが姫様だな~。僕もそれ食べたい!」

「お子様向きなおやつのようだな。腹を壊さんようなら構わない。ただ、甘さはもう少し控えめにしてやってくれ」

「かしこまりました。ところであの人間がどうかしましたか?」

「ロゼが痛みの発生の理由を知りたがって、な。レイがおやつで誤魔化したのだが。これから毎朝になると、誤魔化すのが難しくなりそうだ」

 ロゼは子供だが、ローズリッテの記憶を持っているせいか、時々気難しい時がある。
 子供扱いをすれば、拗ねかねない。

 どうするべきか。
俺とノインが頭を抱える横で、プリンを食べ終えたサウロンはキョトンとしていた。
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