【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭

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妹の婚約者に、恋をした

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 翌日、頬を腫らした私を見たお父様が、深い溜息を付いた。
 何処かにぶつけたと思われているのね…
 「今日は休みなさい」
 「大丈夫です。お父様」

 最初の頃は、何も言わずに医者を呼んでくれていたのだけれど…
 頻繁に顔を腫らしている私に、愛想を尽かされてしまったのかもしれないわね。

 執務室で書類を整理していると、アーノルド様が入って来た。
 「おはようございます。今日も宜しくお願いします」
 「おはようございます」
 「どうしたのですか、頬が腫れています。マーガレット様、何があったのですか?」
 「な…何でもありません。不注意でぶつけてしまったのです」
 「直ぐに冷やしましょう、氷嚢は何処にありますか?」
 「大丈夫ですから、放置してても、数日で治まります」
 「いけません。女性の顔に傷が残ったら、どうするおつもりですか。待って居て下さい、直ぐに使用人を呼んで来ます」
 アーノルド様のお蔭で、医者を呼んで貰えたわ。

 「どうされましたか?頬が随分と腫れておりますね、どなたに打たれたのでしょうか。訴訟は起こされますか」
 「いえ、ぶつけただけですから、大丈夫です」
 「打撲の跡ではありませんね。診た所女性の平手打ちのようですが、言いたくないのであれば、それで結構。ですが、家族からでも、暴力に変わりはありません。今後も続くようでしたら、きちんとするべきです」
 「はい。すみません」
 手当が済むと、医者は何かあった時の連絡先を置いて、帰って行った。

 「傷跡が残らなくて良かった、直ぐに腫れは治まるそうです」
 「アーノルド様、ご心配をお掛けしてすみません。あの…この事は、ご実家には内緒にして頂けませんか?」
 「………分かりました。その代わり、誰に打たれたのか教えてください」
 「……母です」
 「そうでしたか…医者の話しでは、何度か経験されているようですが、デイジーも夫人から暴力を受けているのでしょうか?」
 「いいえ、デイジーは母に愛されていますから、ご心配なさらないで下さい」
 「そうですか…まるで、マーガレット様は、愛されていない様な言い方ですね」
 私は、何も言えなかったわ。
 思わず本心を零してしまった、気を付けないと駄目ね。
 アーノルド様はそれ以上何も聞いては来なかったので、私もデイジーに打たれた事があるとは、言わなかった。
 
 優しい方、婚約者の心配だけではなく、私の事も気に掛けて下さった。
 心配してくれた人は、初めて。
 嬉しい、私の心が幸せで満たされていく。
 ああ、人を愛するって、こんな感じなのね。
 この時、私の中にある、彼への恋心に気付いてしまった。

 私…アーノルド様が好きなの?
 駄目よ、何を考えているの、彼は妹の夫になる人だもの。
 いけないわ、こんな気持ちを知られたら、アーノルド様を、困らせてしまう。
 私は必死に、芽生えた恋心に蓋をした。

 けれど、妹とアーノルド様の仲睦まじい姿を見る度に、私の心は荒んで行った。
 どうしてデイジーなの?
 誰も私を見てくれない、愛してもくれない。
 神様は、意地悪だわ。
 私の初恋が、妹の婚約者だなんて、こんなのあんまりだわ。




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