【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭

文字の大きさ
11 / 16

妹に騙されていた

しおりを挟む
 結局複雑な心境のまま、私は侯爵邸に来てしまった。
 デイジーとアーノルド様は、先に到着していた。

 お揃いの衣装を着た、二人が出迎えてくれた。
 「お父様お母様、お姉様見て下さい。素敵な衣装を仕立てて頂いたの、似合うでしょう」
 「とても素敵よ、デイジー。貴方が幸せで、私も嬉しいわ」
 「デイジー、良く似合っているわ。アーノルド様の衣装も…刺繍が…」
 私は、襟元に刺繍を施してあるブラウスを着たアーノルド様を見て、言葉を失ってしまった。
 「気付かれましたか。私の、一番のお気に入りなのです。襟元の刺繍が美しく繊細で、この様な刺繍が出来る方は、きっと心も美しい方なのだと、感心しておりました」
 その言葉が余計に、私の心をかき乱した。
 あの刺繍は、私が施した物よ。
 友人に頼まれたと、デイジーから聞いていたのに、どう言う事?

 「嫌ですわ、アーノルド様。そんなに褒めて頂いては、恥ずかしいです。でも、お気に入りだと言われて、嬉しいわ。一生懸命刺繍を施した甲斐があります、ねぇお姉様もそう思うでしょう」
 薄ら笑みを浮かべて、私を見つめるデイジーの瞳が、鋭く私の心に突き刺さった。
 余計な事を言えば、デイジーに私の気持ちを、この場で晒されてしまう。
 「そう…ね。デイジーの言う通りだわ」

 「私が、デイジーとの婚約を薦めたのですよ」
 侯爵夫人は、デイジーとお知り合いだったの?
 「母上は刺繍が好きですからね、良い話し相手になりそうだと、とても関心してこのブラウスを見ておりましたね」
 「そうなのよ。でも…デイジーったら、私の前では一度も針を持ってくれないの。どうしてかしら?一緒に刺繍を楽しみたいのに」
 「あの…それは…」
 デイジーは、言い淀んでいる。

 「何時迄も立ち話は失礼だろう、お客様をお通ししなさい。本当に、ご婦人達のお喋りには付き合い切れません」
 「そうですね、レジット侯爵。お招き頂き、ありがとうございます」
 私は、頭の中が、真っ白になっていた。
 今侯爵夫人は、私が施したブラウスの刺繍が気に入って、デイジーとの縁談を薦めたと仰っていたわ。
 私はデイジーの友人が、意中のお相手と上手く行くように、心を込めて刺繍を施したの。
 それなのに、デイジーは初めから、アーノルド様に渡す予定だったの?
 どうして、そんな人を騙す事が出来るの?
 私達姉妹よね?
 デイジーは、アーノルド様の事が、好きではないの?

 あの刺繍は私が施した物だと言ったら、アーノルド様は、私を愛して下さるの?
 侯爵夫人は、私との縁談を望んで下さる?
 一度結んだ縁談を、壊すなんて…
 醜聞にしかならないわ。
 まして妹の婚約者を奪うなんて、無理ね…私には出来ない。
 悔しくて、悲しくて、叫びたくなった。
 私の中にどす黒い物が広がって、全てが憎しみの対象になって行くような気がした。

 もう限界だわ、家を出ましょう。
 これ以上この家族と一緒に過ごしていたら、私は壊れてしまう。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

貴方でなくても良いのです。

豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

貴方の運命になれなくて

豆狸
恋愛
運命の相手を見つめ続ける王太子ヨアニスの姿に、彼の婚約者であるスクリヴァ公爵令嬢リディアは身を引くことを決めた。 ところが婚約を解消した後で、ヨアニスの運命の相手プセマが毒に倒れ── 「……君がそんなに私を愛していたとは知らなかったよ」 「え?」 「プセマは毒で死んだよ。ああ、驚いたような顔をしなくてもいい。君は知っていたんだろう? プセマに毒を飲ませたのは君なんだから!」

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

「庶子」と私を馬鹿にする姉の婚約者はザマァされました~「え?!」

ミカン♬
恋愛
コレットは庶子である。12歳の時にやっと母娘で父の伯爵家に迎え入れられた。 姉のロザリンは戸惑いながらもコレットを受け入れて幸せになれると思えたのだが、姉の婚約者セオドアはコレットを「庶子」とバカにしてうざい。 ロザリンとセオドア18歳、コレット16歳の時に大事件が起こる。ロザリンが婚約破棄をセオドアに突き付けたのだ。対して姉を溺愛するセオドアは簡単に受け入れなかった。 姉妹の運命は?庶子のコレットはどうなる? 姉の婚約者はオレ様のキモくて嫌なヤツです。不快に思われたらブラウザーバックをお願いします。 世界観はフワッとしたありふれたお話ですが、ヒマつぶしに読んでいただけると嬉しいです。 他サイトにも掲載。 完結後に手直しした部分があります。内容に変化はありません。

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。 夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。 ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。 一方夫のランスロットは……。 作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。 ご都合主義です。 以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲

恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。 完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。 婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。 家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、 家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。 理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

処理中です...