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第15話 ベリルside ⑦
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やはり為政者、そして貴族としての立場をよく分かっているのだろう。
俺を気遣って出来る限り早く引継ぎを済ませると言われたが、そこまで物分かりがよくなくてもいいのでは、と思ってしまう。
俺にとっては願ったりの展開なのだが、隣の視線が痛いんだが。
(俺は国王なんだが。そのジト目は止めて欲しい)
「こちらにございます」
あの後、客室に案内されたが侍女の声音に冷たさが宿っているような感じがするのは気のせいではないだろう。
(この侍女は――)
先ほど俺を不審者扱いしてくれたな。
だが、ローズを見つめる視線には優しさが込められているように見えた。
(聞いて見るか)
俺は下がろうとした侍女を引き留めた。
「聞きたいことがあるんだが」
「何でございましょう?」
「我が番はどうしてここの領主代行をしている?」
代行とはいえ、その手腕は他の上流貴族にも劣らないのではないか。
まだ一部を見ただけだがそう思えた俺が疑問をぶつけるとその侍女は躊躇した後に告げる。
「申し訳ございません。お嬢様――領主代行様の私事を勝手に話す権限は私にはございません」
必要な際にはお呼びくださいませ、と礼をすると侍女は下がって行った。
一応リヨンは隣の客室をあてがわれているが、呼ぼうと思えばすぐに呼べる。
しかし、俺はそうしなかった。
考えることが多すぎたからだ。
(想定外のことがありすぎるな)
番が俺を認識していないこともそうだが、それでも通常貴族の令嬢といったものは婚姻の申し込みには敏感に反応するはずだが。
まるで関心がない――いや、忌避するような反応だった。
(以前何かあったのか?)
そう言えば、と思い返していた時だった。
(――ッ!!)
俺はそれに気づくと同時に窓へら飛び出していた。
(こっちか!!)
もどかしさを感じながら俺は駆けた。
――番が哀しんでいる。
番の危機を察知したとかいう話は眉唾物だと思っていたがどうやら本当らしい。
俺はローズが居るだろう部屋へ向けて駆けようとした。
「そこまでです」
「……リヨン。何故お前が」
「あー、もうっ、そこで親の仇みたいに睨まないで下さいよ!! 番様は恐らく動揺されていらっしゃるでしょうし、貴方のことを自分の番だと認識していらっしゃらないですよ。そんなところに踏み込んだらどうなると思います?」
その先は言われなくても分かった。
「……今の俺ではダメか」
「お分かりになられたようで何よりです。ではお戻りを――ってどちらに行くんです!!」
「少し、顔を見るだけだ」
「顔を見るだけで終われるんですか!?」
「……ああ」
「今の間は何ですか!? 戻りましょう。これ以上番様を刺激されてはいけないと思いますし」
リヨンが更に声を潜めた。
「どうも何やら事情がありそうですね」
「お前もそう思うか?」
「勿論ですよ。あの侍女もそうですが、番様に付いて来たという護衛達も何か獣人に対して思うところがあるような態度なんですよね」
「……少し、調べてみるか」
「既に他の者にさせているので、陛下はお気遣いなくお願い致します」
「早いな」
「長年待った陛下の番様ですからね。――ってそちらは違いますよ!!」
「調べ物はそっちでしてくれるんだろう? なら俺はちょっと番の様子を見に――」
「何言ってるんですか!!」
小刀が俺の頬を掠める。
本気でないのは分かっているので避ける手間を掛けるまでもなかったが、リヨンは不満だったらしい。
「次は本気で行きますよ」
正直そこまで邪魔される意味が分からず俺は首を傾げた。
相手は人族だ。
気配を殺して様子を見てくること位、俺にとっては何でもないことである。
「何故だ?」
「本気で聞いてるんですか!? ……今番様が動揺されているのは恐らく貴方が原因ですよ」
「――っ!!」
「領主代行としてきっと充実した日々を送っていらしたんでしょう。人族の、それも貴族のご令嬢が仕事に邁進されているというのも珍しいことですが、今日までは満足した日々だったと思いますよ」
それは街の人々を見れば分かった。
彼らの明るい雰囲気を見ればそこを治める者の器量が知れるというものだ。
俺が悟ったのが分かったのだろう。
「ですから戻りましょう」
「分かった」
だが、心は納得しても体の方はそうではなかったらしい。
「言う端から貴方って方は!!」
「おい、今のは危なかったぞ」
小刀をすれすれのところで避けた俺にリヨンの冷たい視線が向けられた。
「自業自得です」
容赦ない小刀の投擲が来る。
「大体貴方という方は――」
(不味いな。説教体系に入ってる)
こうなると長いのだ。
経験からそれが分かっているので俺はさっさと退散することにした。
「分かった。ではな」
「って、まだ話は終わってませんよ!!」
番の本能に従いかけたせいか、リヨンの説教は長引いた。
「ですからそもそも王族と言うのはですね――」
俺を気遣って出来る限り早く引継ぎを済ませると言われたが、そこまで物分かりがよくなくてもいいのでは、と思ってしまう。
俺にとっては願ったりの展開なのだが、隣の視線が痛いんだが。
(俺は国王なんだが。そのジト目は止めて欲しい)
「こちらにございます」
あの後、客室に案内されたが侍女の声音に冷たさが宿っているような感じがするのは気のせいではないだろう。
(この侍女は――)
先ほど俺を不審者扱いしてくれたな。
だが、ローズを見つめる視線には優しさが込められているように見えた。
(聞いて見るか)
俺は下がろうとした侍女を引き留めた。
「聞きたいことがあるんだが」
「何でございましょう?」
「我が番はどうしてここの領主代行をしている?」
代行とはいえ、その手腕は他の上流貴族にも劣らないのではないか。
まだ一部を見ただけだがそう思えた俺が疑問をぶつけるとその侍女は躊躇した後に告げる。
「申し訳ございません。お嬢様――領主代行様の私事を勝手に話す権限は私にはございません」
必要な際にはお呼びくださいませ、と礼をすると侍女は下がって行った。
一応リヨンは隣の客室をあてがわれているが、呼ぼうと思えばすぐに呼べる。
しかし、俺はそうしなかった。
考えることが多すぎたからだ。
(想定外のことがありすぎるな)
番が俺を認識していないこともそうだが、それでも通常貴族の令嬢といったものは婚姻の申し込みには敏感に反応するはずだが。
まるで関心がない――いや、忌避するような反応だった。
(以前何かあったのか?)
そう言えば、と思い返していた時だった。
(――ッ!!)
俺はそれに気づくと同時に窓へら飛び出していた。
(こっちか!!)
もどかしさを感じながら俺は駆けた。
――番が哀しんでいる。
番の危機を察知したとかいう話は眉唾物だと思っていたがどうやら本当らしい。
俺はローズが居るだろう部屋へ向けて駆けようとした。
「そこまでです」
「……リヨン。何故お前が」
「あー、もうっ、そこで親の仇みたいに睨まないで下さいよ!! 番様は恐らく動揺されていらっしゃるでしょうし、貴方のことを自分の番だと認識していらっしゃらないですよ。そんなところに踏み込んだらどうなると思います?」
その先は言われなくても分かった。
「……今の俺ではダメか」
「お分かりになられたようで何よりです。ではお戻りを――ってどちらに行くんです!!」
「少し、顔を見るだけだ」
「顔を見るだけで終われるんですか!?」
「……ああ」
「今の間は何ですか!? 戻りましょう。これ以上番様を刺激されてはいけないと思いますし」
リヨンが更に声を潜めた。
「どうも何やら事情がありそうですね」
「お前もそう思うか?」
「勿論ですよ。あの侍女もそうですが、番様に付いて来たという護衛達も何か獣人に対して思うところがあるような態度なんですよね」
「……少し、調べてみるか」
「既に他の者にさせているので、陛下はお気遣いなくお願い致します」
「早いな」
「長年待った陛下の番様ですからね。――ってそちらは違いますよ!!」
「調べ物はそっちでしてくれるんだろう? なら俺はちょっと番の様子を見に――」
「何言ってるんですか!!」
小刀が俺の頬を掠める。
本気でないのは分かっているので避ける手間を掛けるまでもなかったが、リヨンは不満だったらしい。
「次は本気で行きますよ」
正直そこまで邪魔される意味が分からず俺は首を傾げた。
相手は人族だ。
気配を殺して様子を見てくること位、俺にとっては何でもないことである。
「何故だ?」
「本気で聞いてるんですか!? ……今番様が動揺されているのは恐らく貴方が原因ですよ」
「――っ!!」
「領主代行としてきっと充実した日々を送っていらしたんでしょう。人族の、それも貴族のご令嬢が仕事に邁進されているというのも珍しいことですが、今日までは満足した日々だったと思いますよ」
それは街の人々を見れば分かった。
彼らの明るい雰囲気を見ればそこを治める者の器量が知れるというものだ。
俺が悟ったのが分かったのだろう。
「ですから戻りましょう」
「分かった」
だが、心は納得しても体の方はそうではなかったらしい。
「言う端から貴方って方は!!」
「おい、今のは危なかったぞ」
小刀をすれすれのところで避けた俺にリヨンの冷たい視線が向けられた。
「自業自得です」
容赦ない小刀の投擲が来る。
「大体貴方という方は――」
(不味いな。説教体系に入ってる)
こうなると長いのだ。
経験からそれが分かっているので俺はさっさと退散することにした。
「分かった。ではな」
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