俺があいつをいじめていた理由は絶対誰にも分からない

神崎 ルナ

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【最終話】 絶対誰にも分からない

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 俺は優を探した。

 真っ先に優の実家に行ったがそこは空き家になっていた。

 嘘だろ。

 小中の卒業アルバムも、高校の――いや中退したからないか――卒業アルバムにも、優の写真はなかった。

 ほうぼう手を尽くしてわかったのは。
 
 優は最初からいなかったことになっていた。
 
 マンションでぼうっとしていた俺はふとあることに気付いた。

 どうして優の存在がなかったことになってるんだ?

 落とし物を拾った場合、二十歳まで生きられないか、大事なものをなくすかの二択だったはずだ。

 どちらのパターンでも優の存在が消えるのはおかしいだろ。

 思い出せ、と自分の記憶に喝を入れているとふいにある会話が蘇った。

『この落とし物、どうしようか』

 肝試しで拾った黒い小銭入れを手に悩む優に俺が告げたのは。

『それなら俺が預かっとく。明日にでも先生に出せばいいだろ。夜中に行ったってのはぼかして』

『そっか。ありがとう。陣くん』

 その頃にしては珍しく礼を言われた希少な場面だった。

 何で覚えてなかったんだよ、俺。

 それでその小銭入れはどうしたんだった?

 記憶を爪繰るもなかなかその後が出て来ない。

 そこで俺は嫌な可能性に行きついた。

 待てよ。これってもしかして俺も『落とし物を拾った』ことになるのか?

 は、と一瞬息が詰まった。

 その解釈だと優が消えるのは、いや待て。

 大事なものが消える――優の存在そのものが消えた。

 俺にとって優の存在はていのいい手下で常に下にみる存在だが、だから俺が護ってやらないとならない存在だった。

『初めての友だちだからかな』

 斎藤たちとの関係を大切なもののように話す優。

 待てよ。何でそうなるんだ。

 俺は、俺は優の――

 ああ、そうか。

 部屋の隅に転がるまだカバーも何も外してないペットボトルが視界に写る。

 俺は優の友人になりたかったんだ。

 そしてあの時何か聞こえて来たような気がしたのは――




                              もーらった






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