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俺が完全に背を向けて美晴と話し始めたせいで周りの女たちも俺抜きで会話が盛り上がり始めた。よし。目論みどおり。俺はここぞとばかりに美晴を質問攻めにする。
「新入社員ってことは、まだ22?」
「あっ、はいっ、22歳です」
「そっかー。若ぇなぁ。家、会社から近いの?」
「はいっ、……えっと、はい、たぶん…。20分くらいです…電車で」
「へー。いいな。休みの日とか何してるの?」
俺はどうにか美晴をこのまま自分のそばに留めておいて共通点を探り出そうと必死だった。何が何でも連絡先を聞き出したい。あわよくば、デートにも誘いたい。
「えっと……、や、休みの日は……、部屋の掃除をしたり、…買い出しに行ったり…」
「うん」
「……あとは……、料理したり……普通です……はい…」
「へー、料理すんの?すげーな。独り暮らし?」
「あっ、はいっ、そうです」
この「あっ、はいっ」て言うのは緊張してる時の癖なのかな。すげー可愛いんだけど。ヤバい、顔がニヤける。
「偉いな。独り暮らしで料理するってことは、恋人に振る舞ったりしてんの?」
何気なく聞いたが、これは緊張の一瞬だ。頼む、どうか違うと言ってくれ……!
「いえっ、違います。…僕恋人とかいないので…」
(よっしゃぁぁぁ!!来たぁぁぁ!!)
俺は心の中でガッツポーズをする。もちろん完全なポーカーフェイスのままで。
「へぇ、意外だな。すげぇ可愛い顔してるから絶対いそうなのに」
「そっ!……そんな、いえ……」
「何でいないの?」
「っ!……え、えっと、……な、…何ででしょうか……」
いかん。嬉しくてつい攻めすぎた。美晴が明らかに困っている。俺は話題を逸らした。
「俺もさー独り暮らしだしいい歳だしさ、いい加減料理ぐらいできなきゃなぁって思ってんだけどさ、なかなか休みの日ってやる気にならなくてなー。平日はもっとならねぇし。瀬尾君は偉いね」
「いっ、いえっ、そんな…」
「どんなの作るの?」
「えっと、普通の家庭料理なら、わりと何でも…」
「へー、すげぇ。家庭料理かぁ。いいなぁ。外食ばっかりだから普通の家庭料理に飢えてんだよなぁ」
「かっ、…彼女さんに、作ってもらってりとか…」
「いやー、もう全然。彼女もいねーし」
「そっ、そうなんですね…」
背後の女性陣がギャーギャー盛り上がってまるっきりこっちに意識がないのをいいことにさっきとは真逆のことをさらっと言う俺。普通の22歳の女の子ならもうこの辺で俺のアピールに気付いてる頃なんだけど、目の前の美晴には今のところ全くそんな気配がない。ただただ緊張して座っているだけだ。
「…今度教えて?料理」
「あ、あは。…はぁ…」
わりと分かりやすく誘って微笑んでみても、社交辞令だと思っているのか特に反応はない。結構どんな女でも男でも落ちるんだけどな、この視線で。うーん…ダメだ。かなりウブそうだな。まぁでもそこがまたいい。
なら次の手だ。俺はしばらく適当な会話を続けながら上手い具合に美晴の住所がどの辺りかを聞き出した。よし、家もそんなに離れてねぇな。
「あ、あのさ、そういえば瀬尾君、映画とか好き?」
「えっ?あっ、はいっ。そ、それなりに観ます…」
「お、よかった。今度行かねぇ?週末の暇な時にでも。何かのチケット2枚もらったんだけどさぁ。なかなか予定合うダチがいなくてさ」
「っ!!ぼっ、…ぼ、僕と、ですか……?」
露骨に怯えている。そりゃそうだよな。めちゃくちゃ緊張してるし、休みの日にまでこんな緊張する相手と一緒に過ごしたくないよな。自分で言うのもなんだけど、超大手取引先のおそらくいつも女子社員たちがキャーキャー騒いでるであろうエリート営業マンだもんな、しかも6個も年上の。ごめんな、美晴ちゃん。でも俺も引けないんだよ。
「うん。何系が好き?映画」
「えっ、あっ……」
顔が真っ赤になって狼狽えまくっている。どうしよう、できればどうにか上手く断りたい、角が立たないように……ってとこだろうな。本当ごめんな。よく分かってるんだけど、今日だけは押させてもらう。だって連絡先欲しいもん、君の。
「アクション系とか、サスペンスとか観る?」
「……なっ、……何でも……はい……」
「そっか。もらったチケット何の映画だったかよく覚えてねーんだけど、観そうなやつだったら行こうよ」
「はっ…………はい…………」
何が好きなんだろうな。どうせ今日は絶対に言わないだろうから、まぁ適当にヒットしてる映画のチケット取っとくか。
ずっとガチガチに緊張して縮こまっている美晴が可哀相ではあったけど、最後にもう一押しすることにした。そろそろ解放してやらねぇと、たぶんこの様子じゃ家帰ってからグッタリだろう。
「俺あの辺最近引っ越したばかりでさ。土地勘あんまねぇんだよな。よかったら今度適当に案内してよ、昼飯奢るからさ」
「あっ、は、い、いえっ、そ、そんな……」
俺はごくごく自然にスマホを取り出した。
「連絡先、教えて?」
「新入社員ってことは、まだ22?」
「あっ、はいっ、22歳です」
「そっかー。若ぇなぁ。家、会社から近いの?」
「はいっ、……えっと、はい、たぶん…。20分くらいです…電車で」
「へー。いいな。休みの日とか何してるの?」
俺はどうにか美晴をこのまま自分のそばに留めておいて共通点を探り出そうと必死だった。何が何でも連絡先を聞き出したい。あわよくば、デートにも誘いたい。
「えっと……、や、休みの日は……、部屋の掃除をしたり、…買い出しに行ったり…」
「うん」
「……あとは……、料理したり……普通です……はい…」
「へー、料理すんの?すげーな。独り暮らし?」
「あっ、はいっ、そうです」
この「あっ、はいっ」て言うのは緊張してる時の癖なのかな。すげー可愛いんだけど。ヤバい、顔がニヤける。
「偉いな。独り暮らしで料理するってことは、恋人に振る舞ったりしてんの?」
何気なく聞いたが、これは緊張の一瞬だ。頼む、どうか違うと言ってくれ……!
「いえっ、違います。…僕恋人とかいないので…」
(よっしゃぁぁぁ!!来たぁぁぁ!!)
俺は心の中でガッツポーズをする。もちろん完全なポーカーフェイスのままで。
「へぇ、意外だな。すげぇ可愛い顔してるから絶対いそうなのに」
「そっ!……そんな、いえ……」
「何でいないの?」
「っ!……え、えっと、……な、…何ででしょうか……」
いかん。嬉しくてつい攻めすぎた。美晴が明らかに困っている。俺は話題を逸らした。
「俺もさー独り暮らしだしいい歳だしさ、いい加減料理ぐらいできなきゃなぁって思ってんだけどさ、なかなか休みの日ってやる気にならなくてなー。平日はもっとならねぇし。瀬尾君は偉いね」
「いっ、いえっ、そんな…」
「どんなの作るの?」
「えっと、普通の家庭料理なら、わりと何でも…」
「へー、すげぇ。家庭料理かぁ。いいなぁ。外食ばっかりだから普通の家庭料理に飢えてんだよなぁ」
「かっ、…彼女さんに、作ってもらってりとか…」
「いやー、もう全然。彼女もいねーし」
「そっ、そうなんですね…」
背後の女性陣がギャーギャー盛り上がってまるっきりこっちに意識がないのをいいことにさっきとは真逆のことをさらっと言う俺。普通の22歳の女の子ならもうこの辺で俺のアピールに気付いてる頃なんだけど、目の前の美晴には今のところ全くそんな気配がない。ただただ緊張して座っているだけだ。
「…今度教えて?料理」
「あ、あは。…はぁ…」
わりと分かりやすく誘って微笑んでみても、社交辞令だと思っているのか特に反応はない。結構どんな女でも男でも落ちるんだけどな、この視線で。うーん…ダメだ。かなりウブそうだな。まぁでもそこがまたいい。
なら次の手だ。俺はしばらく適当な会話を続けながら上手い具合に美晴の住所がどの辺りかを聞き出した。よし、家もそんなに離れてねぇな。
「あ、あのさ、そういえば瀬尾君、映画とか好き?」
「えっ?あっ、はいっ。そ、それなりに観ます…」
「お、よかった。今度行かねぇ?週末の暇な時にでも。何かのチケット2枚もらったんだけどさぁ。なかなか予定合うダチがいなくてさ」
「っ!!ぼっ、…ぼ、僕と、ですか……?」
露骨に怯えている。そりゃそうだよな。めちゃくちゃ緊張してるし、休みの日にまでこんな緊張する相手と一緒に過ごしたくないよな。自分で言うのもなんだけど、超大手取引先のおそらくいつも女子社員たちがキャーキャー騒いでるであろうエリート営業マンだもんな、しかも6個も年上の。ごめんな、美晴ちゃん。でも俺も引けないんだよ。
「うん。何系が好き?映画」
「えっ、あっ……」
顔が真っ赤になって狼狽えまくっている。どうしよう、できればどうにか上手く断りたい、角が立たないように……ってとこだろうな。本当ごめんな。よく分かってるんだけど、今日だけは押させてもらう。だって連絡先欲しいもん、君の。
「アクション系とか、サスペンスとか観る?」
「……なっ、……何でも……はい……」
「そっか。もらったチケット何の映画だったかよく覚えてねーんだけど、観そうなやつだったら行こうよ」
「はっ…………はい…………」
何が好きなんだろうな。どうせ今日は絶対に言わないだろうから、まぁ適当にヒットしてる映画のチケット取っとくか。
ずっとガチガチに緊張して縮こまっている美晴が可哀相ではあったけど、最後にもう一押しすることにした。そろそろ解放してやらねぇと、たぶんこの様子じゃ家帰ってからグッタリだろう。
「俺あの辺最近引っ越したばかりでさ。土地勘あんまねぇんだよな。よかったら今度適当に案内してよ、昼飯奢るからさ」
「あっ、は、い、いえっ、そ、そんな……」
俺はごくごく自然にスマホを取り出した。
「連絡先、教えて?」
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