6 / 46
6.
しおりを挟む
「……。……?」
だがなぜだか美晴はピタリと会話を止めてしまった。なんとも言えない表情で少し俯いて助手席で静かに座っている。
「……?おーい、美晴」
「っ!…え、……あ」
「おめーの番だよ。早く吐け。お前の好みのタイプを」
「…そっ、……そうですね……。ええっと……、」
「うん」
「…………か、……カッコよくて」
「うんうん」
(よかった。やっぱり男の方がいいんだな。オッケーオッケー)
「…………大らかで、……優しくて……」
「ほぉ」
「…………つ、…包み込んでくれるような……包容力が、あって……」
「…………。」
「…………。…そっ、そんなかんじの人ですかね。あはは」
「それ俺そのものじゃねぇか。参ったなおい」
「あっははは」
……はぁ。やっぱり少しも意識してねぇな、クソ。頬を赤らめることさえしない。
…………っていうか。
気のせいか?なんか、美晴はなんとなく、今。
特定の誰かを思いながら語った気がした。
「うわぁ……っ!すごい……!いい眺めですねー」
「だな。ちょっとさみーなやっぱ」
真冬にこんな高台に来るのもどうかと思ったが、良い景色が見たいと言っていた美晴はそれなりに喜んでいる。「寒いだろ?もっとこっち来いよ」とか言える関係だったらいいんだが……。たぶん今俺がそれをやってしまうと美晴の顔が引き攣る気がする。失敗が怖くてなかなかいけない。失敗しても次がある、とは言えない相手だからだ。瞳を輝かせて頬をピンク色に染めながら景色を見ることに夢中になっている美晴。……なんでその表情をさっき車の中ではしなかったんだ……美晴……!
……あー……。ダメだなぁ。マジで少しも先に進める気がしねぇ。俺が焦りすぎなのか?それとももうこの段階でやんわりと俺の気持ちだけ伝えておいた方がいいのか…?その方がむしろ俺をそういう対象として意識させられるのかもしれない。……いやでもなぁ……。万が一ってことがあるからなぁ。「せっかくいいお友達ができたと思ってたのに……下心があったんですか……?」なんて言われたら……
「……響さん?」
「……ん?…………っ!」
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
(……こっ!……こいつ、マジで…………!)
俺がボーッとしてしまったからか、美晴は心配そうに俺の顔を下から覗き込んでくる。身長差があるからどうしてもこういう時は上目遣いで……しかも頬がピンク色で目がキラキラしてるもんだからもう可愛くてしょうがねぇ。可愛さが俺を殺しに来る。
(……み、…………美晴……っ!)
「……や、なんか眠くて。寒いと眠くなる時あるよな」
「えぇ?それって遭難した時とかじゃないですか?」
「そこまで死にかかってねーよ」
ぐあぁぁぁ!!助けてくれ誰か!!こいつが可愛すぎて死にそうなんだ俺は!!そこのカップル!その大して可愛くない女とこいつを一時取り替えてくれ!俺の心臓が落ち着くまで!
帰りの車中、もうすぐ美晴のアパートが見えてくるというところまで辿り着いた時、美晴が口を開いた。
「今日は楽しかったです。ありがとうございます、響さん」
「おー。でも結構寒かったな。風邪ひかねーようにな」
「ふふ、大丈夫です。すみません、いつもアパートまで送ってもらっちゃって。次は寒くないところに行きましょうね」
(っ!)
お、……すげぇ。こいつの方から“次は”なんて言葉が出てくるとは……。俺はひそかに感動し、少し調子に乗った。
「だな。俺んちで鍋パでもするか。お前の手料理で」
「あはは。いいですよ。美味しいか分からないけど」
「っ!!」
い、いいのかよ……。家に誘っても全く嫌がられる素振りがなかったことで、俺の気持ちはざわつき、体が妙に熱くなった。また心臓が高鳴りだす。俺は何気ない風を装いさらりと言った。
「よし。んじゃ次は俺んちな」
「ふふ。はい。楽しみにしてます」
(……楽しみにしてくれんのかよ……)
……え、これもしかして、もう行ける?結構押しても大丈夫じゃね?
…いやでも、なんかそんな感じでもないんだよなぁ。たぶん違うな。こいつのこの感じは、まだ違う。俺はこいつと違ってそんなに鈍くない。そういうのはだいたい分かる。……早まるな。タイミングを間違ったらせっかくの関係が台無しになる。
(……部屋を掃除しねぇとな)
美晴を降ろした帰り道、俺は一人で不気味にニヤつきながら運転していた。
(今日も楽しかったなぁ……)
僕はバスタブの中でぼんやりと今日のことを思い返していた。
最初はあんなに緊張していたのに、この数週間でなんだかすっかり昔から知っている先輩のように親近感を覚えるようになった。さすがだなぁ。一流の営業マンなだけあるよ。きっと僕みたいな引っ込み思案との距離を縮めるのも朝飯前なんだろう。だってあっという間に僕にとって居心地のいい人になってしまった。最近響さんと一緒に週末を過ごすのや仕事帰りに食事に行くことが楽しくてしかたない。いつもいつもご馳走になっているのが申し訳ないんだけど…。俺は高給取りなんだよ、お前みたいなペーペーには一円も出させねぇよ、なんて言われたら、もうありがとうございますというしかない。
今度はおうちにお邪魔して鍋パしようって言ってくれた。よし。僕の手料理でいつもの恩返しをするぞ。響さんは独り暮らしで自炊もしないから家庭料理に飢えてるって話を、あの日の会社の食事会の時にしていたし。ふふ。楽しみだなぁ。
僕は響さんと過ごす時間が本当に楽しくて待ち遠しくなっていた。
だがなぜだか美晴はピタリと会話を止めてしまった。なんとも言えない表情で少し俯いて助手席で静かに座っている。
「……?おーい、美晴」
「っ!…え、……あ」
「おめーの番だよ。早く吐け。お前の好みのタイプを」
「…そっ、……そうですね……。ええっと……、」
「うん」
「…………か、……カッコよくて」
「うんうん」
(よかった。やっぱり男の方がいいんだな。オッケーオッケー)
「…………大らかで、……優しくて……」
「ほぉ」
「…………つ、…包み込んでくれるような……包容力が、あって……」
「…………。」
「…………。…そっ、そんなかんじの人ですかね。あはは」
「それ俺そのものじゃねぇか。参ったなおい」
「あっははは」
……はぁ。やっぱり少しも意識してねぇな、クソ。頬を赤らめることさえしない。
…………っていうか。
気のせいか?なんか、美晴はなんとなく、今。
特定の誰かを思いながら語った気がした。
「うわぁ……っ!すごい……!いい眺めですねー」
「だな。ちょっとさみーなやっぱ」
真冬にこんな高台に来るのもどうかと思ったが、良い景色が見たいと言っていた美晴はそれなりに喜んでいる。「寒いだろ?もっとこっち来いよ」とか言える関係だったらいいんだが……。たぶん今俺がそれをやってしまうと美晴の顔が引き攣る気がする。失敗が怖くてなかなかいけない。失敗しても次がある、とは言えない相手だからだ。瞳を輝かせて頬をピンク色に染めながら景色を見ることに夢中になっている美晴。……なんでその表情をさっき車の中ではしなかったんだ……美晴……!
……あー……。ダメだなぁ。マジで少しも先に進める気がしねぇ。俺が焦りすぎなのか?それとももうこの段階でやんわりと俺の気持ちだけ伝えておいた方がいいのか…?その方がむしろ俺をそういう対象として意識させられるのかもしれない。……いやでもなぁ……。万が一ってことがあるからなぁ。「せっかくいいお友達ができたと思ってたのに……下心があったんですか……?」なんて言われたら……
「……響さん?」
「……ん?…………っ!」
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
(……こっ!……こいつ、マジで…………!)
俺がボーッとしてしまったからか、美晴は心配そうに俺の顔を下から覗き込んでくる。身長差があるからどうしてもこういう時は上目遣いで……しかも頬がピンク色で目がキラキラしてるもんだからもう可愛くてしょうがねぇ。可愛さが俺を殺しに来る。
(……み、…………美晴……っ!)
「……や、なんか眠くて。寒いと眠くなる時あるよな」
「えぇ?それって遭難した時とかじゃないですか?」
「そこまで死にかかってねーよ」
ぐあぁぁぁ!!助けてくれ誰か!!こいつが可愛すぎて死にそうなんだ俺は!!そこのカップル!その大して可愛くない女とこいつを一時取り替えてくれ!俺の心臓が落ち着くまで!
帰りの車中、もうすぐ美晴のアパートが見えてくるというところまで辿り着いた時、美晴が口を開いた。
「今日は楽しかったです。ありがとうございます、響さん」
「おー。でも結構寒かったな。風邪ひかねーようにな」
「ふふ、大丈夫です。すみません、いつもアパートまで送ってもらっちゃって。次は寒くないところに行きましょうね」
(っ!)
お、……すげぇ。こいつの方から“次は”なんて言葉が出てくるとは……。俺はひそかに感動し、少し調子に乗った。
「だな。俺んちで鍋パでもするか。お前の手料理で」
「あはは。いいですよ。美味しいか分からないけど」
「っ!!」
い、いいのかよ……。家に誘っても全く嫌がられる素振りがなかったことで、俺の気持ちはざわつき、体が妙に熱くなった。また心臓が高鳴りだす。俺は何気ない風を装いさらりと言った。
「よし。んじゃ次は俺んちな」
「ふふ。はい。楽しみにしてます」
(……楽しみにしてくれんのかよ……)
……え、これもしかして、もう行ける?結構押しても大丈夫じゃね?
…いやでも、なんかそんな感じでもないんだよなぁ。たぶん違うな。こいつのこの感じは、まだ違う。俺はこいつと違ってそんなに鈍くない。そういうのはだいたい分かる。……早まるな。タイミングを間違ったらせっかくの関係が台無しになる。
(……部屋を掃除しねぇとな)
美晴を降ろした帰り道、俺は一人で不気味にニヤつきながら運転していた。
(今日も楽しかったなぁ……)
僕はバスタブの中でぼんやりと今日のことを思い返していた。
最初はあんなに緊張していたのに、この数週間でなんだかすっかり昔から知っている先輩のように親近感を覚えるようになった。さすがだなぁ。一流の営業マンなだけあるよ。きっと僕みたいな引っ込み思案との距離を縮めるのも朝飯前なんだろう。だってあっという間に僕にとって居心地のいい人になってしまった。最近響さんと一緒に週末を過ごすのや仕事帰りに食事に行くことが楽しくてしかたない。いつもいつもご馳走になっているのが申し訳ないんだけど…。俺は高給取りなんだよ、お前みたいなペーペーには一円も出させねぇよ、なんて言われたら、もうありがとうございますというしかない。
今度はおうちにお邪魔して鍋パしようって言ってくれた。よし。僕の手料理でいつもの恩返しをするぞ。響さんは独り暮らしで自炊もしないから家庭料理に飢えてるって話を、あの日の会社の食事会の時にしていたし。ふふ。楽しみだなぁ。
僕は響さんと過ごす時間が本当に楽しくて待ち遠しくなっていた。
54
あなたにおすすめの小説
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが…
*オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ
*『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。
【本編完結】黒歴史の初恋から逃げられない
ゆきりんご
BL
同性の幼馴染である美也に「僕とケッコンしよう」と告げた過去を持つ志悠。しかし小学生の時に「男が男を好きになるなんておかしい」と言われ、いじめにあう。美也に迷惑をかけないように距離を置くことにした。高校は別々になるように家から離れたところを選んだが、同じ高校に進学してしまった。それでもどうにか距離を置こうとする志悠だったが、美也の所属するバレーボール部のマネージャーになってしまう。
部員とマネージャーの、すれ違いじれじれラブ。
ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話
NANiMO
BL
人生に疲れた有宮ハイネは、日本に滞在中のアメリカ人、トーマスに助けられる。しかもなんたる偶然か、トーマスはハイネと交流を続けてきたネット友達で……?
「きみさえよければ、ここに住まない?」
トーマスの提案で、奇妙な同居生活がスタートするが………
距離が近い!
甘やかしが過ぎる!
自己肯定感低すぎ男、ハイネは、この溺愛を耐え抜くことができるのか!?
男同士で番だなんてあってたまるかよ
だいたい石田
BL
石堂徹は、大学の授業中に居眠りをしていた。目覚めたら見知らぬ場所で、隣に寝ていた男にキスをされる。茫然とする徹に男は告げる。「お前は俺の番だ。」と。
――男同士で番だなんてあってたまるかよ!!!
※R描写がメインのお話となります。
この作品は、ムーンライト、ピクシブにて別HNにて投稿しています。
毎日21時に更新されます。8話で完結します。
2019年12月18日追記
カテゴリを「恋愛」から「BL」に変更いたしました。
カテゴリを間違えてすみませんでした。
ご指摘ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる