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「………………はぁ」
バスタブの中でもう何度目になるか分からない溜息をつく。大人気ない態度のままで帰ってきてしまった。だって……本当にびっくりしたんだもん。すごい怖かったんだ。そりゃ響さんにとっては、ああいう流れは日常茶飯事なんだろうけど、ぼ、僕は…………
「………………はぁーーー…」
でもさすがに申し訳なかったかな。響さんはあんなに一生懸命謝ってくれていたのに。もう二度と絶対にしないって約束してくれたのに。僕は最後まで「もういいですよ」の一言も言わずに帰ってきた。なんて子どもっぽいんだ。
(…あんな響さん、初めて見たな)
や、いきなり男の顔で迫ってこられたのもそうだけど。
あんなに取り乱して、必死になって謝ってくれて。驚いたし傷付いたけど、…あの謝罪には、誠意を感じた。
(……今度会う時には、ちゃんといつもどおりでいよう。もうさすがにこれ以上引っ張っちゃダメだ)
僕は温かいお風呂に長く浸かり、心も体もゆっくりとほぐしながら、そう思っていた。……でもそれにしても、落ち着いて思い返すとなんかすごいドキドキするな……。一方的ではあったけど、僕あんなカッコいい人とキスしちゃったんだ。…なんかすごい。
(……ねぇ、大輝さん。僕ついにしちゃったよ、ファーストキス)
もう彼にはきっと、何も関係ないけれど。
「あぁぁぁぁぁ……………う゛ぅぅぅぅ……」
ヨロヨロと部屋に戻るやいなや俺は床のラグの上に倒れ込んだ。
(…………やって……しまった…………)
人生最大の大失敗だ。かつてこれほどの過ちを犯したことがあっただろうか。俺はそこそこ順風満帆に生きてきた。そこそこ恵まれた家庭環境で育ち、勉強もスポーツもできたし、人間関係も女関係も問題なくやってきた。昔から本当に要領が良かった。上手いこと業界最大手の会社に就職した後も、高いコミュ力と頭の回転の速さで同期たちを一気に出し抜いた。
そんな俺が。
あろうことか、美晴に溺れるあまりに空気を読み間違えて襲ってしまった。
いや、きっちり分かっていたはずだ。頭の一部分では絶対に行ってはダメだと警報が鳴っていたのに、それでも一縷の望みにかけて、案外イケるんじゃね?みたいな…………美晴のことが好きすぎて、触りたくてたまらなくて、一瞬の空気感を自分に都合の良いように解釈した……まるで恋愛経験に乏しいこじらせた童貞のオッサンのように…………ほんのちょっとした間を、…………都合良く……
「あぁぁぁぁ!!止めろ!!馬鹿だ俺は!!」
脳内一人反省会に耐えきれずのたうち回る。ちくしょう。最悪だ。せっかくこんなに仲良くなってきていたのに。ゼロからのスタートどころか、一気にマイナスラインに急降下しちまった。
(……しかも…………何より最悪なのは……)
許してほしいあまりに、俺は美晴に言ってしまったんだ。
『美晴、本当に、本当に、マジでごめん。ごめんなさい。もう二度と、絶対にこんなことしねぇから。約束するから』
『もう絶対に、一生、何があっても、手は出しません』
『酒も性欲も絡まない、清く正しい関係だ。な?』
「~~~~~~~っ!!クッソォォォッ!!」
何を言ってるんだ俺は!!何を!!言ってるんだ馬鹿野郎!!もうこれ絶対ダメじゃねーか!もうこれで完全に進めなくなっちまったじゃねーか!!なんだよこれ!!
俺は頭を抱えて呻きながら転がりまわった。あぁぁ……マジでやり直したい……。時間を戻してくれ、誰か…………金ならいくらでも払うから…………!
こうして苦しみのたうち回り、週末いっぱいかけてたっぷり落ち込んだ俺は、月曜の朝どうにか気持ちを切り替えた。
もうしょうがねぇ。やっちまったもんはなかったことにはできない。とにかく、これからできるだけ早くいつもの話しやすい優しいお兄さんポジションに戻り(あいつにとって俺がそんなポジションなのかどうかは分からんが)、そして長い時間をかけつつ徐々に徐々に、焦らずゆっくり関係を進めていくしかねぇ。…俺の我慢がどこまで持つのか不安なところだが、美晴を失うよりは欲求不満に悶えている方がまだマシだ。
「はーーー……。……よし、行くか」
身支度を整え、部屋を出る。仕事は仕事だ。集中しろ。
午前中いっぱい仕事に没頭し、昼の休憩中に食事をした店の中からおそるおそる美晴にラインを送ってみる。
(あくまで何気なく、さり気なく……、下心は一切なく……)
『お疲れー。土曜はごめんな。今日飯行ける?』
心臓がバクバクする。判決を言い渡されるのを待つ気分だ。……落ち着け、俺。
スマホを握りしめたまま、返信を待つ。
ピロ…
音が鳴った瞬間バッと画面を見ると、
『お疲れさまです。今日は無理です。ごめんなさい』
「~~~~~っ!!」
バタン!とテーブルの上に突っ伏し、呻き声を堪える。
え…………?!これ、どっちだ……?!本当に用事があるのか?それとも、や、やっぱり、……俺と会うのが嫌なのか…………
「どっちだよもう…………泣きそう…」
外なのに、周りに人がたくさんいるのに、俺はテーブルに突っ伏したまま大きく溜息をつき頭を抱えた。
バスタブの中でもう何度目になるか分からない溜息をつく。大人気ない態度のままで帰ってきてしまった。だって……本当にびっくりしたんだもん。すごい怖かったんだ。そりゃ響さんにとっては、ああいう流れは日常茶飯事なんだろうけど、ぼ、僕は…………
「………………はぁーーー…」
でもさすがに申し訳なかったかな。響さんはあんなに一生懸命謝ってくれていたのに。もう二度と絶対にしないって約束してくれたのに。僕は最後まで「もういいですよ」の一言も言わずに帰ってきた。なんて子どもっぽいんだ。
(…あんな響さん、初めて見たな)
や、いきなり男の顔で迫ってこられたのもそうだけど。
あんなに取り乱して、必死になって謝ってくれて。驚いたし傷付いたけど、…あの謝罪には、誠意を感じた。
(……今度会う時には、ちゃんといつもどおりでいよう。もうさすがにこれ以上引っ張っちゃダメだ)
僕は温かいお風呂に長く浸かり、心も体もゆっくりとほぐしながら、そう思っていた。……でもそれにしても、落ち着いて思い返すとなんかすごいドキドキするな……。一方的ではあったけど、僕あんなカッコいい人とキスしちゃったんだ。…なんかすごい。
(……ねぇ、大輝さん。僕ついにしちゃったよ、ファーストキス)
もう彼にはきっと、何も関係ないけれど。
「あぁぁぁぁぁ……………う゛ぅぅぅぅ……」
ヨロヨロと部屋に戻るやいなや俺は床のラグの上に倒れ込んだ。
(…………やって……しまった…………)
人生最大の大失敗だ。かつてこれほどの過ちを犯したことがあっただろうか。俺はそこそこ順風満帆に生きてきた。そこそこ恵まれた家庭環境で育ち、勉強もスポーツもできたし、人間関係も女関係も問題なくやってきた。昔から本当に要領が良かった。上手いこと業界最大手の会社に就職した後も、高いコミュ力と頭の回転の速さで同期たちを一気に出し抜いた。
そんな俺が。
あろうことか、美晴に溺れるあまりに空気を読み間違えて襲ってしまった。
いや、きっちり分かっていたはずだ。頭の一部分では絶対に行ってはダメだと警報が鳴っていたのに、それでも一縷の望みにかけて、案外イケるんじゃね?みたいな…………美晴のことが好きすぎて、触りたくてたまらなくて、一瞬の空気感を自分に都合の良いように解釈した……まるで恋愛経験に乏しいこじらせた童貞のオッサンのように…………ほんのちょっとした間を、…………都合良く……
「あぁぁぁぁ!!止めろ!!馬鹿だ俺は!!」
脳内一人反省会に耐えきれずのたうち回る。ちくしょう。最悪だ。せっかくこんなに仲良くなってきていたのに。ゼロからのスタートどころか、一気にマイナスラインに急降下しちまった。
(……しかも…………何より最悪なのは……)
許してほしいあまりに、俺は美晴に言ってしまったんだ。
『美晴、本当に、本当に、マジでごめん。ごめんなさい。もう二度と、絶対にこんなことしねぇから。約束するから』
『もう絶対に、一生、何があっても、手は出しません』
『酒も性欲も絡まない、清く正しい関係だ。な?』
「~~~~~~~っ!!クッソォォォッ!!」
何を言ってるんだ俺は!!何を!!言ってるんだ馬鹿野郎!!もうこれ絶対ダメじゃねーか!もうこれで完全に進めなくなっちまったじゃねーか!!なんだよこれ!!
俺は頭を抱えて呻きながら転がりまわった。あぁぁ……マジでやり直したい……。時間を戻してくれ、誰か…………金ならいくらでも払うから…………!
こうして苦しみのたうち回り、週末いっぱいかけてたっぷり落ち込んだ俺は、月曜の朝どうにか気持ちを切り替えた。
もうしょうがねぇ。やっちまったもんはなかったことにはできない。とにかく、これからできるだけ早くいつもの話しやすい優しいお兄さんポジションに戻り(あいつにとって俺がそんなポジションなのかどうかは分からんが)、そして長い時間をかけつつ徐々に徐々に、焦らずゆっくり関係を進めていくしかねぇ。…俺の我慢がどこまで持つのか不安なところだが、美晴を失うよりは欲求不満に悶えている方がまだマシだ。
「はーーー……。……よし、行くか」
身支度を整え、部屋を出る。仕事は仕事だ。集中しろ。
午前中いっぱい仕事に没頭し、昼の休憩中に食事をした店の中からおそるおそる美晴にラインを送ってみる。
(あくまで何気なく、さり気なく……、下心は一切なく……)
『お疲れー。土曜はごめんな。今日飯行ける?』
心臓がバクバクする。判決を言い渡されるのを待つ気分だ。……落ち着け、俺。
スマホを握りしめたまま、返信を待つ。
ピロ…
音が鳴った瞬間バッと画面を見ると、
『お疲れさまです。今日は無理です。ごめんなさい』
「~~~~~っ!!」
バタン!とテーブルの上に突っ伏し、呻き声を堪える。
え…………?!これ、どっちだ……?!本当に用事があるのか?それとも、や、やっぱり、……俺と会うのが嫌なのか…………
「どっちだよもう…………泣きそう…」
外なのに、周りに人がたくさんいるのに、俺はテーブルに突っ伏したまま大きく溜息をつき頭を抱えた。
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