百戦錬磨は好きすぎて押せない

紗々

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 至近距離で見つめあう、俺と美晴。

「…………っ、ひ、……ひびき、さん…」
「…………美晴…………。…可愛いな、お前、……本当に……」
「……っ、そ、そんな、…………んっ!」

 俺はたまらずそのまま美晴に唇を重ねた。

「あ……っ!……ん、ふぅ……っ」

 甘い声が可愛くて、俺はますます興奮してもう自分を抑えることができない。何度も角度を変え、柔らかい唇を貪る。

「……っ、……はぁっ!……ひ、……ひびき、さん……っ」
「はぁっ……はぁっ……、……美晴……。…いいんだよな?俺…、今度こそ間違ってないよな?今、……ちゃんとサイン出してたよな?」

 俺は美晴の頬を撫でながら額をコツンと押しつけて尋ねる。

「うん……っ、うん……っ!響さん……、……来て……」

 美晴は色っぽい目で俺を誘い、両腕を俺の首に回し積極的に求めてくる。

(あぁっ……!…可愛い……、美晴……っ!)

 俺は夢中になってその甘い唇を味わいながら、劣情を抑えきれずにそのまま助手席のシートを倒し、完全に美晴の上に体を重ねた。

「あ……ん、…ひ、響さん……っ!こっ、こんな、ところで……」
「……もう、マンションまで待てねぇよ……美晴……。た、頼む、から、……このまま……っ」
「あっ……!……あぁ……ん!」

 俺は美晴の舌に自分のそれを絡めながら、シャツの下から両手を滑り込ませてその滑らかな肌の感触を味わう。




 ピロピロッ…
 ピロピロッ…




「………………。……ん、」

 あれ?俺寝てたのか。仕事から帰ってきて、そのままソファーに……ちくしょう。めっちゃめちゃいい夢見てたのに。誰だ起こしやがったヤツは。
 起き上がってスマホを確認する。……クソ。会社の方のメールかよ。仕事の連絡で起きちまった。
 美晴からのラインだったらよかったのに。

「…………。ああ、クソ。どうする」

 幸せな夢から目覚めたら現実が待っている。結局1週間以上が過ぎてしまった。あれ以来、何も連絡できないまま。

(……いや、だってよぉ……)

 そう。夢と現実はまったく違うのだ。今でもまざまざと思い出す、美晴のあの言葉。


『………………今度何かしたら、………………ブロックするから』


「~~~~~っ!!あぁぁぁ……」

 何かしてしまった。ああまで言われていたのに、俺は……またやっちまったんだ……!あいつが……、美晴が可愛すぎるのがいけない。あの潤んだ目に吸い込まれそうになったんだよ。なんか俺……、美晴のあの綺麗なうるうるした目を見たら、なんか勘違いしてしまって……。
 なんかOKサインが出てるような気がしちまったんだよ!!

 電話したい。食事に誘いたい。……でも怖ぇんだもん。万が一、もし、も、もうブロックされてたらどうしよう。もう生きる気力が湧かない。だって一度目のミスの時にあれだけ心底怯えさせてしまったんだぞ。その辺の女にするみたいに、なんか花とかアクセサリーとか適当に持って行って謝ってすむような感じじゃない。
 俺はブロックされているかもしれないという恐怖から、なかなか連絡もできずにいた。ヘタレにもほどがある。

「……こんな風になるもんなんだなぁ……。…この俺が。……ふ」

 今までの自分とあまりにも違いすぎて我ながら笑えてくる。嫌われることが怖くて、ビビり倒して全然前に進めない。ダメで元々と思えれば、もっとガンガン押せるんだろうけどなぁ……。でも俺が押してダメだったことなんかないんだよなぁ。だからダメだった時の衝撃もことさら大きいだろうと……まして相手はあの美晴……。

「…………はーーー……」

 俺は頭を抱えて深い溜息をついた。

 その時。

 プルル…

「っ?!」

 弾かれたようにプライベートの方のスマホを手に取る。…………み、美晴だ!!一気に心臓がドクドクと激しく高鳴りだす。手が震える。俺はすぐさまラインを開いた。


『ねずみさんの夢の国にはいつ連れて行ってくれるんですか?』


 スチャッ。


 俺は秒の速さで返信した。


『明日です』



 
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