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1章 幼少期編

この世界は乙女ゲーム?

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 前世を思い出してからなんだかおかしいと思っていた理由はコレか!

 私、スカーレット・ブルームフィールドが転生した世界は、前世の私である茅ヶ崎緋彩が好きでプレイしていた乙女ゲーム。

『運命の君に口づけを』の世界だった。

 とりあえず今は詳しく説明してる暇がないので簡単に言うと、目の前にいる王子様の第2王子はこのゲームのメイン攻略対象者だ。
 のちの王太子となる第1王子は2周目以降に攻略可能となるキャラクターだ。
 そして、私のお兄様はもちろん攻略対象者でした。あははは。

 なぜお兄様の名前を知った時点で気が付かぬかな私。アスターは第2王子に次ぐ人気キャラだったんだぞ!!

 さて、この世界が本当に君キスの世界なら彼が居るはず。

 まぁそれは後々説明するとして、今はこの現状を突破する事が重要案件だ。

 私は傍にいたお父様にぎゅっと抱き着くと

「スーどうした?」
 
 心配そうに私を見つめるお父様に向かって私は瞳を潤ませながら。

「私は将来お父様のお嫁さんになりたいのです!だから王子様の婚約者にはなれませんっ!!」

 イヤイヤとそう言い放つと、謁見の間がシン……とした。

 みんなが私に注目している中一番に意識を取り戻したのは。

「スー!!嬉しいぞ。大丈夫だスーはずっと家に居ていいんだからなお嫁になんか行かなくていい」
 
 私を抱き上げ誰にもやらんとばかりに親ばか全開のお父様。

「あらあら、困ったわねぇ」

 と、全く困った様子がないお母様。

「えー。ダメだよ!スーは僕のお嫁さんになるんだからね」

 間違った方向から爆弾を投げ込んでくるお兄様。

「そ、そうか。息子達ではスカーレット嬢のお眼鏡には叶わなかったか……。残念だ娘にしたかったのに」

 王様、本音が駄々洩れすぎです。

「父上、もう良いではないですか、僕達と結婚しなくとも親戚には変わりないのですから。それより僕達もきちんと挨拶させてください」

 王様を慰める第1王子、さすが将来の王太子様だしっかりしてらっしゃる。

「あぁ、そうだなお前たち挨拶しなさい」

「はい、初めまして私はブルクハルト国、第1王子ジュリアン・ブルクハルトと申します。これからよろしくお願いしますね可愛いいとこ殿」

 私にウインクを投げてくる第1王子のジュリアン。か、軽い。こんなに軽い人だったっけ?もっとまじめで面白みの薄い人だった気がするけれど、悪い人ではないのよね。

 ん?なんだなんだか第2王子に睨まれてる気がするんだけど……何かしたかしら?
 不機嫌そうな態度と私を睨みながら第2王子が口を開く。

「私はブルクハルト国、第2王子フレデリク・ブルクハルトだ。お前みたいな不細工な女と婚約なんかこっちからお断りだ!!」

 そう言い放つとフレデリク殿下は謁見の間を飛び出した。

 扉が閉じた瞬間、謁見の間が地獄に変わった。

 あーフレデリク面白すぎるほどゲーム通り。だけどそれ言う相手が違うぞ!!

「あんのぉクソガキぃぃぃぃ」
 
 ギリギリと怒りを滾らせるお父様。

「まぁ、こんなに可愛いスーちゃんを不細工だなんてご自分の顔を鏡で見て出直せですわ」

 ニコニコしているのに一番酷い事を言い放つお母様。

「スーが不細工ならこの世の女はみんなゴミくずだぞ」

 なんだか違う方向に怒り出すお兄様。

 そんなブルームフィールド家の怒りをまともに受ける王家の方々。

「す、すまない。スカーレット嬢。フレディは……」

 ジュリアン王子がなにやら言い淀む。

「あの、何か理由があるのでしょうか?」

「実は、フレディはキミと会うのを楽しみにしていたんだ」

 申し訳なさそうに言い始めるジュリアン殿下。

「楽しみに?ですか?」

「あぁ、アスにずっとスカーレット嬢の話を聞いていて姿絵を見せて貰ってからはずっと会いたいと父上に何度も言っていたんだけど……公爵様にいつも誤魔化されて今日まで対面が伸び伸びになってたんだよ」

 お父様……ちらっとお父様を見るとお父様の目が泳いでいた。

「はぁ、そうなんですね」

「それに、フレディは父上からスカーレット嬢が婚約者候補だと知らされてからは特にね。今日はキミに会って婚約するものだと勝手に思い込んでたんだろうね」

 と、苦笑いするジュリアン殿下。

 いや、待ってちょっと待ってください。フレデリク殿下の婚約者は私じゃなくてクラウディア・フィールズ侯爵令嬢のはず。
 なんで私なの?訳がわからない。

「そ、そうでしたのね。それは……悪い事をしました」

 シュンとする私に王様が

「じゃあ、フレディと婚約してくれ「するかっ!!」

「ふざけんな!兄上の息子と言えど、私の大切な娘を侮辱するようなヤツに嫁になどやらないこの話は二度としないでくださいね」

 笑顔だけど目で射殺す勢いのお父様に今度こそ王様が黙った。

「あの王様お願いがあるのですが」


 そう王様に願い出た私はお兄様と共にある場所へ向かった。




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